2021年09月20日更新
株式譲渡した際、登記申請や定款変更は必要?
当記事では、株式譲渡を実施した際の登記申請・定款変更についてまとめています。株式譲渡時に登記申請・定款変更は必要なのか、登記申請・定款変更手続きの流れ、などを解説しています。また、株式譲渡手続きの流れについても紹介しています。
1. 株式譲渡とは
今回は、株式譲渡における「登記申請・定款変更」について解説しており、「株式譲渡」を実施した際に、登記申請・定款変更は必要なのかについてまとめていきます。まずは、「株式譲渡」とは何をさしているのか見ていきましょう。
「株式譲渡」とは、M&A手法の一つです。M&Aにおける「売り手側企業」の株主が保有している株式を、M&Aの「買い手側企業」に譲渡することによって、会社の経営権を買い手側に引き継ぐことができる手続きです。
「株式譲渡」は、複数あるM&A手法の中で頻繁に活用される一つで、「手続きが容易」「会社を存続できる」といったメリットがあります。
2. 登記や定款とは
続いて、「登記」や「定款」とは何なのかについて説明します。「『登記』『定款』という言葉自体は聞いたことがあるけれど、意味をよく理解していない」という方は、ここで確認しておきましょう。
登記とは
「登記」とは、会社を設立するにあたり、「会社名」や「会社の目的」など、法律で定められた事項を世間に公表するために、「登記簿に記載」することです。この「登記」の手続きを行わなければ、正式に会社を設立できません。
定款とは
「定款」とは、会社を設立するにあたって必ず作成しなければならない書類の一つで、「会社の憲法」に当たるものと理解もできます。定款を作成することで、これから設立する会社の「根本規則」を決定します。
「定款」の作成においては、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」や、定款に記載しない限りその効力を発揮できない「相対的記載事項」などがあります。「絶対的記載事項」には以下のものがあります。
【絶対的記載事項】
- 会社の目的
- 会社の称号
- 会社の所在地
- 会社設立に際して出資される最低金額
- 発起人の氏名および住所
- 発行可能株式総数
3. 株式譲渡の際に登記申請や定款変更は必要か?
株式譲渡と登記・定款について説明したところで、「株式譲渡の際に登記申請や定款変更は必要になるのか」という当記事のメインテーマについて解説していきます。
結論からいうと、株式譲渡を実施した際に「登記申請・定款変更」を行う必要はありません。株式譲渡の手続きは、すべて「会社の内部」で完結します。
「株式の譲渡」は原則自由
基本的に、「株式の譲渡」は自由に行うことができます。なぜなら「株式譲渡自由の原則」というものがあるからです。「株式譲渡自由の原則」とは、株式は「いつでも」「誰とでも」自由に売買ができるとする原則のことです。
株式譲渡が行われる際には、株主間で株式の取引が行われ、その時点で「株主」が変更されます。
登記申請の必要性について
「株主」の変更は「登記事項」には含まれません。そのため、たとえ会社の株主に変更が加えられたとしても、法務局へ「登記申請」をする必要はありません。
定款変更の必要性について
「株主」が変更されたからといって、「定款変更」に当たるものではありません。そのため、株式譲渡が実施され、株主が変わっても、「定款変更」手続きを行う必要はありません。
株主兼役員の存在には注意が必要
ただし、「株主兼役員」の存在には注意しておきましょう。株式譲渡が実施され、「株主兼役員」が株主と同時に役員も辞めてしまう場合には、法務局において「役員変更登記」の手続きが必要となります。
株式譲渡時における手続きの注意点
株主が親族だけの場合「株主総会は開かずに簡単に書類だけ作成すればいい」と考える人もいます。しかし株式は財産であり相続の対象なので安易に考えると、後で不仲になったり相続でもめたりしたときにトラブルになることがあります。
株主総会の決議に瑕疵があったり株式譲渡手続きが適法に行われていない場合は、決議自体が取消されたり無効となったりすることもあります。
株主や取締役などに関係なく、誰もが株主総会の決議が存在していないことを訴えられるので、手続きはきちんと行うことが大切です。
役所や法務局の確認が入らないからこそ、会社法に則った厳格な手続きが必要です。手続きに不安がある場合は、専門家に相談しましょう。
4. 株式譲渡の手続き
上記で「株式はいつでも・誰とでも売買できる」と説明しましたが、これは上場企業・大企業・公開会社が発行している株式に限ったことです。「公開会社」とは、定款に「株式に対する譲渡制限がない会社」のことです。
多くの中小企業は、「株式の譲渡制限」を定款に定めている「非公開会社(株式譲渡制限会社)」となっています。「非公開会社(株式譲渡制限会社)」では、株式譲渡に関して制限が設けられており、自由に株式を売買できません。
「非公開会社(株式譲渡制限会社)」の株主が、株式譲渡によって保有する株式を第三者に譲渡・売却する際には、会社法に準拠した手続きを行う必要が出てきます。「非公開会社(株式譲渡制限会社)」における株式譲渡手続きの流れは、以下です。
【「非公開会社(株式譲渡制限会社)」における株式譲渡手続きの流れ】
- 株式譲渡人による株式譲渡承認請求
- 取締役会・株主総会による譲渡承認
- 株式譲渡人への株式譲渡の承認通知
- 株式譲渡契約の締結
- 株主名簿書換請求
- 株主名簿記載事項証明書の交付請求
- 株式譲渡の完了
①株式譲渡人による株式譲渡承認請求
多くの中小企業は「非公開会社(株式譲渡制限会社)」として、株式譲渡に対して制限をかけているケースが多いです。「非公開会社(株式譲渡制限会社)」が発行する株式を譲渡する際には、「株式譲渡人による株式譲渡承認請求」から始める必要があります。
つまり、株式譲渡をしようと考えている株主は、保有株式を譲渡する際に、会社からの承認をもらわなければなりません。「株式譲渡承認請求書」という書類に、譲渡する株式の種類や株式数、株式譲渡する相手などを記載して、請求する会社に提出します。
②取締役会・株主総会による譲渡承認
「株式譲渡承認請求書」に必要事項を記載し、会社に提出したら、続いて「取締役会・株主総会による譲渡承認」が行われます。
「株式譲渡人による株式譲渡承認請求」を受けた会社側は、臨時の「取締役会」または「株主総会」を開催し、2週間以内に株式譲渡承認をするかどうか決議します。
会社に取締役会があり、株式譲渡承認機関が「取締役会」である場合には、取締役会による株式譲渡の決議が行われます。取締役会が設置されていない会社の場合、臨時の株主総会が開催され、そこで株式譲渡の決議を行います。
③株式譲渡人への株式譲渡の承認通知
「取締役会・株主総会による譲渡承認」が決定したら、会社は「株式譲渡人への株式譲渡の承認通知」を行う必要があります。この通知は、株式譲渡人が株式譲渡請求をした「2週間以内」に通知しなければいけません。
④株式譲渡契約の締結
「株式譲渡人への株式譲渡の承認通知」が届いたら、株式譲渡人と譲受人の間で「株式譲渡契約の締結」が実施されます。この段階で「株式譲渡契約書」を作成します。
⑤株主名簿書換請求
「株式譲渡契約の締結」が完了したら、株式譲渡人・譲受人が会社に対して「株主名簿書換請求」をします。特に、株式譲渡によって新たに株主となる譲受人は、自身が株主であることを主張するために、株主を譲渡人から譲受人に変更するように請求する必要があります。
会社側は、株式譲渡人・譲受人から「株主名簿書換請求」を受けたら、株主名簿を必ず書き換えなければいけません。
⑥株主名簿記載事項証明書の交付請求
株式譲渡によって新しい株主となった「株式譲受人」は、会社側に「株主名簿記載事項証明書の交付請求」を行って、実際に株主名簿が書き換えられて自分が株主となっているのかを確認します。
⑦株式譲渡の完了
「株主名簿記載事項証明書」が交付され、自分の名前が新しい株主として掲載されていれば、無事に株式譲渡が完了していると確認できます。
「株式譲渡」は最もよく活用されるM&Aスキームの一つです。ただ、株式譲渡に関して詳しい知識がない場合、手続きに戸惑うことも多いでしょう。
そのような場合は、株式譲渡を失敗させないためにも、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けることをおすすめします。
M&A総合研究所には、M&Aの実務経験や知識が豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、株式譲渡をフルサポートいたします。
当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
5. 登記申請する際の手続き
ここからは、「登記申請」と「定款変更」に関する手続きについて解説していきます。まずは「登記申請手続き」から説明します。「登記申請する場面はいつなのか」「登記申請はどこで行えるのか」について知らない方は確認してください。
登記申請を行う場面
「登記申請」を行う場面は、主に「不動産登記」と「法人登記」です。建物や土地といった「不動産」や「会社・法人」などの情報に変更があった場合に、「登記申請」を行って情報の更新を実施します。登記申請の場面としては、具体的に以下のものがあります。
【登記申請が必要な場面】
- 不動産を購入した
- 相続によって土地をもらった
- 会社を設立した
- 本社の場所が移転した
代表的な「会社の登記申請」例
ここで代表的な「会社・法人の登記申請」例をご紹介します。
- 株式会社設立時の登記申請
- 株式会社の役員変更時の登記申請
- 株式会社の内容変更時(商号変更・吸収合併・資本金額の減少など)の登記申請
- 合併による株式会社設立時の登記申請
- 合併による株式会社解散時の登記申請
- 株式会社本店移転時の登記申請
- 株式会社支店設置時の登記申請
上記の「『会社・法人の登記申請』例」でもわかりますが、M&Aスキームの一つである「合併」を実施した際は「登記申請」する必要があります。しかし、すでに説明しているように、「株式譲渡」を実施した際には、特に「登記申請」をする必要はありません。
登記申請は法務局で行う
「登記申請」は「法務局」で行うことができます。登記申請する流れとしては、以下のとおりです。
【登記申請する流れ】
- 登記申請書を作成・添付書類の用意
- 登記申請書を「法務局」へ提出する
【法務局へ登記申請書を提出する方法】
- 登記申請書を「郵送」で提出する
- 登記申請書を「オンライン」で作成・提出する
- 登記申請書を「法務局の窓口」で提出する
6. 定款変更する際の手続き
続いて、「定款変更」する際の手続きについて解説していきます。「商号」や「本店住所」の変更、「出資一口金額の減少」などがあった場合は、「定款変更」を実施する必要があります。
定款の変更は2パターン
定款の変更には、定款の変更と同時に「登記申請」が必要になるケースと、「登記申請」が必要ないケースがあります。それぞれ説明していきます。
登記申請が必要
定款変更には、同時に法務局へ「登記申請」が必要なケースがあります。定款変更と同時に「登記申請」する必要があるケースは以下です。
【登記申請が必要なパターン】
- 会社の商号変更
- 本社の住所変更
- 事業目的の変更
- 公告方法の変更
- 取締役会の設置・廃止
- 監査役の設置・廃止
- 株式に関する変更
上記のケースにおいて、株主総会の決議後2週間以内に法務局へ登記申請する必要があります。
登記申請が不要
定款変更には、法務局への「登記申請」が不要なケースもあります。例えば、会社の「決算月の変更」です。「決算月の変更」だけであれば「登記申請」は必要ありません。ただし、税務署に対する「異動届出書」の提出に「株主総会の議事録」を添える必要があります。
定款の変更には株主総会の特別決議が必要
定款変更をする際は、「株主総会による特別決議」が必要です。「登記申請が必要なケース・必要ないケース」のどちらも「株主総会による特別決議」が必要です。
「定款変更に関する特別決議」は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主が保有する議決権のうち、3分の2以上の賛成が得られない場合、否決されてしまいます。
定款変更と同時に登記申請が必要なケースにおいては、株主総会で定款変更に関する決定が下されたことを示す「議事録」を法務局へ提出する必要があります。
変更に関する受理を法務局から得られたら、変更された定款と株主総会の議事録を保存しておきます。
7. まとめ
今回は、「株式譲渡における『登記申請・定款変更』」について解説してきました。「株主譲渡」が実施された場合、基本的に「登記申請・定款変更」は必要ありません。
ただし、「株主兼役員」が株主・役員のどちらも辞めてしまう場合には、法務局での手続きが必要となることを覚えておきましょう。
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