2018年12月31日公開
2018年12月31日更新
譲渡制限株式とは?メリット・注意点を解説!

譲渡制限株式とはどういった株式を表しているのでしょうか。譲渡制限株式を発行する事で、自社にはメリットとなる部分が数多く存在します。一方で、注意点もあります。ここでは、日本の企業で多く見られる譲渡制限株式とは何かについて解説します。
目次
1. 譲渡制限株式とは
譲渡制限株式とは、株式を譲渡するにあたり、制限が掛けられている事を表しています。譲渡制限株式は、会社法で定められた方式です。ここでは、譲渡制限株式とはどういった事なのか、どのような譲渡を行うにはどのような手続きが必要なのかなどを解説します。
株式譲渡制限を行う理由
譲渡制限株式が設けられた会社の株式を譲渡する場合、基本的には取締役会もしくは株主総会での承認が必要となります。
それでは、譲渡制限株式を取り入れる理由とは一体どういった事があるのでしょうか。それは、会社が不利益となってしまう第三者に対して株式が渡らない事と、株式の所有者を明確にさせる事にあります。
もちろん、株式譲渡制限を取り入れるメリットや注意点は少なくありません。しかし、用途を考えて状況に合わせれば、株式譲渡制限を有効的に活用する事ができるでしょう。
公開会社と非公開会社の違い
公開会社という言葉を聞くと、株式を上場している会社ではないかというイメージを持つ事が多いとは思います。しかし、会社法による公開会社とは、譲渡制限株式を設けていない株式を、最低1株発行している会社という事になっています。
そのため、非公開会社とは、譲渡制限株式以外の株式を、1株も発行していない会社となります。ですから、株式上場を行っているいない関わらず、譲渡制限株式がなければ公開会社、譲渡制限株式を発行しているのであれば非公開会社となります。
2. 譲渡制限株式の発行パターン
譲渡制限株式を発行する方法として、2つのパターンがあります。ここでは2つのパターンとはどういった物なのか、簡単に紹介します。
- 発行する全株式を対象に行う
- 発行する一部の株式を対象に行う
①発行する全株式を対象に行う
まず最初のパターンとは、会社が発行している株式の全てに対して譲渡制限を設けるパターンです。株式会社では、発行する全ての株式において、会社法により「譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること」を設ける事が可能となっています。
全ての株式を譲渡制限株式にするためには、定款で決められた事項を定める事を、会社法で規制されています。事項を定める事で全ての株式に譲渡制限を設けられるのです。
ちなみに、日本における株式会社が発行している株式の多くは、譲渡制限株式が設けられています。会社の株式が、譲渡制限株式かどうかを確認するには、会社の定款と会社の登記簿謄本を見る事で確認する事ができます。
②発行する一部の株式を対象に行う
多くの場合は、会社が発行している全株式を、譲渡制限株式にしていますが、譲渡制限株式とは全ての株式を制限するものではありません。一部の株式に対して譲渡制限をかける事も可能なのです。このパターンとは、会社の発行株式は、複数種類の発行となります。
一部の株式を譲渡制限株式にする場合も、定款で事項を定める事を会社法により決められています。一部譲渡制限株式が一定量の場合は、譲渡が承認された株式の、発行可能総数も記載する必要があります。
3. 譲渡制限株式のメリット
譲渡制限株式とは、どういったパターンがあるか理解できたのではないでしょうか。それでは、譲渡制限株式とは、どういったメリットがあるのでしょうか。以下のメリットに焦点をあて解説させて頂きます。
- 乗っ取りを予防できる
- 役員の任期を延長できる
- 取締役会を設置する必要がない
- 取締役会や監査役を置かなくても良い
- 後継者に株式を集める事が可能
- 株主総会の手続きを簡単にできる
①乗っ取りを予防できる
まず考えらえるメリットとは、乗っ取りを予防できる事です。譲渡制限株式を設けていない場合、株式の取引は基本的に自由となります。株式を持っている株主から株式を買い集める事で、株式発行の会社経営者の意思とは関係なく、乗っ取りを完了できてしまいます。
こうした敵対的な乗っ取りに対して譲渡制限株式はメリットを発揮します。譲渡制限株式を全ての発行株式としておくことで、承認なく株式の譲渡が認められなくなり、望んではいない相手に対しての株式譲渡を阻止する事ができるのです。
このように、経営者が経営以外の不安要素を取り除くためにも、譲渡制限株式の設定はメリットとも言えます。もちろん、譲渡制限株式であっても、相手の出方によってはやっかいな事になりかねませんので、乗っ取りには注意が必要です。
②役員の任期を延長できる
次に考えられるメリットとは、役員の任期を延長できる事です。基本的には取締役や会計参与の任期期間は2年、監査役などは4年と定められいます。しかし、譲渡制限株式会社であれば、定款にそれぞれ10年まで任期延長を記載する事が可能です。
役員たちが長く活躍する事で、会社経営が安定するなどメリットがある一方で、人材の育成や若返りなどと言ったところに弊害が出る可能性もありますので、注意する必要はあります。
③取締役会を設置する必要がない
次に考えられるメリットとは、取締役会の設置の有無です。譲渡制限株式を設けていない会社においては、取締役会の設置が義務付けられています。一方で、譲渡制限株式会社には取締役会を設置する義務がありません。
④取締役会や監査役を置かなくても良い
上記のメリットとは重なる部分でもありますが、譲渡制限株式を設けていない会社は取締役会を設置する必要があるため、取締役が3人以上と監査役または会計参与が1人以上必要です。
一方で、譲渡制限株式会社であれば、取締役会の設置義務がありませんので、取締役が1人から経営を行えるメリットがあります。また、譲渡制限株式会社では、取締役や監査役などの役員になる資格を、株主に制限する事を定款に定める事が可能となっています。
⑤後継者に株式を集める事が可能
譲渡制限株式とは、株式が意図しない第三者に渡る事を防げるため、後継者に株式を集める事が可能です。株式を後継者に集める事で、会社の経営者の存在を明確にさせてくれます。
ただし、一点集中の株式には注意が必要ですので、ある程度の分散を行うなどリスクに対しての対処は必要だと言われています。
⑥株主総会の手続きを簡単にできる
譲渡制限株式が設けられていない会社における株主総会は、開催日の2週間前に書面などで通知する事が原則として定められいます。一方で、譲渡制限株式を発行している会社の場合は、1週間前または条件によりさらに短期間での株主総会の招集が可能です。
しかも、株主総会の通知は、書面などによる通知だけではなく、口頭による通知も認められていますので、譲渡制限株式を発行していない会社とは、比べ物にならないほど簡易的に株主総会を招集する事が可能となっています。
4. 譲渡制限株式の注意点(デメリット)
一方で、譲渡制限株式における注意点となるデメリットとは、どこにあるのでしょうか。以下の注意点について解説します。
- 決算公告が必要となる
- 相続の際に乗っ取りの可能性がある
- 株式買取請求権に注意
①決算公告が必要となる
まず、譲渡制限株式の会社となる場合の注意点は、決算公告の必要性です。株式に譲渡制限を行う時には、その旨を公告する必要があるのです。決算公告の手続きは、会計的手続きとして、場合によっては時間のかかる場合もありますので注意しておきましょう。
②相続の際に乗っ取りの可能性がある
譲渡制限株式の注意点としてあげられる、相続の際に乗っ取られる可能性とはどういうことなのでしょうか。これは、例えば後継者に対して経営者が株式を相続した場合に、他の株主が後継者に対して株式の売渡請求を行う事ができます。
譲渡請求を行い株主総会が招集された場合、相続人となる後継者は売渡請求に対する議決権がありません。ですから、後継者がどんなに大量の株式を所有していたとしても、売渡請求に反対を行う事が出来ないという訳です。
そのため、相続人以外の株主が賛成票を投じ、株主総会により売渡請求が議決されてしまえば、本来意図していない後継者が誕生してしまいます。こういった事が譲渡制限株式の注意点となるのです。
③株式買取請求権に注意
さらに、譲渡制限株式の注意点としてあげられるのが、株主が第三者に株式を譲渡する事です。実は、譲渡制限が株式についていても、株主が第三者に株式を譲渡する事は違法には当たらないのです。
第三者に株式が譲渡された後に、株主には株式譲渡を認めさえせる権利があります。これを「譲渡承認請求権」といいます。さらに、会社を買い取る事や買い取ってもらう相手を指定する権利も定められています。これは「株式買取請求権」です。
このように、株式に譲渡制限をしていても、譲渡されてしまう場合があるのです。そして譲渡されてしまうと、相手によっては非常に大きなトラブルを抱えるという事は注意しておく必要があるでしょう。
5. 譲渡制限株式会社の株式を譲渡する場合
さて、譲渡制限株式会社の株式を譲渡する場合には、一般的にどのような手続きを行うのでしょうか。ここでは、一般手続きの流れとはどういったものか、以下のフローに沿って解説します。
- 株式譲渡の承認請求
- 取締役会・臨時株主総会での承認
- 株式譲渡承認の通知
- 株式譲渡承認の締結
- 株主名義の書き換え請求
- 株主名簿記載事項の証明書の交付
①株式譲渡の承認請求
株式譲渡において、譲渡される側と譲渡する側の間で株式譲渡契約に対する締結が行われた後、「株式譲渡承認請求」を会社に行います。「譲渡承認請求」は、譲渡する側・される側、どちらから請求しても構いませんが、譲渡される側が行う場合は共同で行うとしています。
ここで注意しておきたいのが、譲渡内容を書面として発行する事です。「譲渡承認請求」を書面にする事は義務付けられている行為ではありませんが、トラブル回避のためにも譲渡を予定している株式の数や譲渡される側の指名などを記載しておきます。
②取締役会・臨時株主総会での承認
譲渡制限株式における譲渡の承認は、原則として取締役会または株主総会で決定されます。また、取締役会などを行わない事を定款で定めておけば、特に取締役会など必要とせずに、承認を決定する事もできます。
③株式譲渡承認の通知
譲渡制限株式の譲渡の承認が決定されると、会社は2週間以内譲渡承認を請求したものに対して通知を行う義務があります。もし、2週間以内に通知を行わなかったとしても、「みなし承認」と呼ばれる形式により、譲渡の承認が決定されたものとなります。
④株式譲渡承認の締結
株式譲渡の承認通知を受けると、株式を譲渡する側とされる側で、一般的には株式譲渡契約を締結が行われます。場合によっては、承認を実行条件としたうえで契約締結を承認前に行う事もあります。
⑤株主名義の書き換え請求
株式譲渡契約締結の後に、譲渡する側がとされる側が共同で、株式を発行している会社に対して株主名簿の書き換え請求を行います。株式発行会社は株主名義の書き換え請求にのっとり、株主名簿の書き換えを行います。
⑥株主名簿記載事項の証明書の交付
株主は、株式を発行している会社に対して、株主を証明する「株主名簿記載事項証明書」の交付を請求する事が可能です。この証明書の交付により、自分が株式発行会社の株主であるという事を、会社から証明されます。この証明書は「株主証明書」とも呼ばれています。
6. 譲渡制限株式の売却価格の決め方
譲渡制限株式を売却する場合、売却価格の決め方とは、どういった方法があるのでしょうか。以下の決め方について解説します。
- 当事者間の協議により決定
- 裁判所への申請申立で決定
- 法が定める供託価格で決定
①当事者間の協議により決定
まず、譲渡する当事者同士の協議により売価が決定されます。株式の売却価格は定められた計算方法により算出されます。当事者の協議により売却価格が決定されない場合は、次の手段へと移行します。
②裁判所への申請申立で決定
株式譲渡の価格協議が整わない場合は、裁判所への申請申し立てで、売却価格を決定する方法があります。申請には手順がありますので、専門家などに相談すると良いでしょう。
③法が定める供託価格で決定
さらに、価格競技が整わず、さらに裁判所に申立てがない場合は、会社法に定めら供託された価格で売買の価格が決定されます。
7. 譲渡制限株式会社にする手段
譲渡制限株式会社にする方法とは、どういった手段があるのでしょうか。自分自身で行う方法や弁護士などを活用する方法などいろいろとあります。
しかし、おすすめしたいのは、こうした企業関係の知識を豊富に備えている専門家に相談する方法です。専門家であれば、譲渡制限株式会社とはどういったメリットがあるか、また注意点はどういった所にあるかなどを熟知しています。
さらには、そうした方法以外にもどういった方法が自社に合っているかなどを選択してくれます。さまざまな事例から、トラブルなどにも強く、色々なパターンに対処してくれます。企業に関わる事や株式に関わる事は、ぜひ専門家を活用してみると良いでしょう。
8. まとめ
譲渡制限株式について解説しました。譲渡制限株式とは、譲渡に制限が掛けられている株式で、その取り扱いには注意点もある事が理解できたのではないでしょうか。
株式の取り扱いにはそれぞれメリットとデメリットがあり、注意点も数多くあります。会社経営とは、簡単な事でも計画を立てて進めるべきことです。失敗しない経営を目指すためにも、専門家などの知識を活用すると良いでしょう。
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