D2C業界のM&A最新動向とは?注目業界のM&Aの事例を紹介!

企業情報第七本部長 兼 企業情報第七本部第一部 部長
猪狩 有智

慶應義塾大学卒業後、三井住友銀行の法人営業部で中小企業から上場企業まで様々な企業を担当。企業の成長戦略や企業再生支援、事業承継などに携わる。
その後、トレーダーとして為替や債券の運用業務に従事。日々経済活動を追う中で日本の後継者不足やM&Aによる企業の成長に可能性を感じ、M&A総合研究所に参画。
M&A総合研究所ではIT業、広告業、製造業、小売業、建設業、海外案件など、数多くの成約実績を保有。

近年、D2C業界が非常に盛り上がっています。それに伴いD2C業界のM&A動向も増加傾向にあり、多くの企業のM&Aが行われていることをご存知でしょうか。本記事ではD2C業界のM&A最新動向や業界で注目のM&Aの事例をご紹介します。

目次

  1. D2Cの業界のM&A最新動向
  2. D2CのM&A事例5選!
  3. D2Cの失敗事例
  4. D2C事業を高くM&Aで売却するコツ
  5. D2CのM&Aを行うときの注意点
  6. D2C業界のM&A動向を把握しよう!
  7. IT業界の成約事例一覧
  8. IT業界のM&A案件一覧
  • セミナー情報
  • セミナー情報
  • IT会社のM&A・事業承継

1. D2Cの業界のM&A最新動向

D2C業界のM&A動向としては、増加傾向にあります。

2018年に多くのアパレルブランドがZOZOTOWNから撤退をしています。これらは「消費者と直接ECサイトでやりとりをした方が良い」と多くのアパレルブランドが判断した証拠と言えるでしょう。このようにD2C業界も盛り上がりを見せていますし、それに伴いM&A動向も増加傾向にあります。

そもそもD2Cとは?

そもそもD2Cとは、「Direct to Consumer」の略称をいいます。

消費者と企業が直接やりとりをするビジネスモデルをD2Cといい、余計なコストをかけずに商品やサービスをダイレクトに消費者へ伝えることができます。また最近ではSNSを活用する企業が増えてきており、D2Cに注力をする企業の数はどんどん増加していくことが考えられるでしょう。

【関連】アパレル業界のM&A・買収の動向を解説【2022年最新事例】

D2Cのビジネスモデルのメリット

そんなD2Cのビジネスモデルですが、いくつかの強みがあります。

  • 利益率が高い
  • 顧客の声をすぐに反映できる
  • リピーターを獲得しやすい

それぞれ解説します。

メリット1:利益率が高い

まず、利益率が高いということが特徴の一つです。

D2C以外のビジネスモデルは仲介業者が存在し、いくらかマージンを支払わなければなりません。しかし、D2Cになると消費者に直接製品・サービスを届けられるため、仲介業者へのマージンが必要ないのです。

これにより、同じ売上でもかかるコストが低く、利益率がUPします。

メリット2:顧客の声をすぐに反映できる

続いて、顧客の声をすぐに反映できます。

D2C以外のビジネスモデルは企業から消費者へ製品・サービスが一方通行で提供されていました。そのため顧客が「この製品は使いにくい」と感じていても、企業にその声はなかなか届かなかったのです。しかし、D2Cの場合は顧客との距離が近いためすぐに改善すべき声を聞くことができます。

事業を存続させる上で顧客の声は大切です。

メリット3:リピーターを獲得しやすい

続いて、リピーターを獲得しやすくなります。

D2Cの場合、顧客との距離が近いためあらゆる改善がスムーズに行えます。これにより顧客ファーストな製品・サービスを提供することができ、結果的にリピーターになってくれる可能性がグンと上がるのです。顧客の声を即座に反映できない製品・サービスは次々と淘汰されていましたから、顧客の声が聞きやすくリピーターになってくれる可能性が高いD2Cは非常におすすめです。

D2Cのビジネスモデルのデメリット

一方でD2Cのビジネスモデルのデメリットもあります。

  • サイト制作にコストがかかる
  • ECサイトに陳列する魅力的な商品が必要になる
  • ブランディングが必要になる

それぞれ解説します。

デメリット1:サイト制作にコストがかかる

まず、サイト制作にコストがかかります。

D2Cのビジネスモデルを運営するためにはECサイトをはじめとする専用サイトの存在が欠かせません。自社で何かしらのサイトを構える必要がありますが、サイト制作には莫大なコストがかかります。

最近はサイト制作にコストがかからないようになってきていますが、数万円の初期投資が必要になるケースがほとんどです。

デメリット2:ECサイトに陳列する魅力的な商品が必要になる

続いて、ECサイトに陳列する魅力的な商品が必要になります。

これはD2Cに限らず「魅力的な商品」を陳列できるかどうかは非常に重要です。どれだけサイトを作り込んでいても肝心の商品に欠陥があっては購入されることはありません。それであればD2Cに拘らず仲介業者を入れて商品を宣伝してもらった方が売り上げは立つでしょう。

D2Cのビジネスモデルにおいては「これはおすすめです!」と自信を持ってアピールできる魅力的な商品を陳列する必要があります。

デメリット3:ブランディングが必要になる

続いて、ブランディングが必要になります。

D2Cの大きなデメリットなのですが、仲介業者が存在しないということは消費者が自社サイトを見つけてもらえる確率がグンと下がってしまいます。直接、消費者へ製品・サービスを届けられるメリットはありますがそもそも消費者に知られていないとそのフェーズに入ることができません。

消費者の目に止まるようなブランディングは必須です。

2. D2CのM&A事例5選!

ではここからはD2CのM&A事例を見ていきます。

  • 資生堂×ドランクエレファント
  • ポーラ×トリコ
  • ワコール×IO
  • P&G×Native Cos
  • ワールド×神戸レザークロス

それぞれ大規模なD2CのM&Aになりますので参考にしてください。

事例1:資生堂×ドランクエレファント

まずは、資生堂とドランクエレファントのD2CのM&A事例です。

  • 買収:資生堂
  • 売却:Drunk Elephant Holdings, LLC(拠点:アメリカ 創業:2012年)
  • 買収額:910億円
  • 買収された年:2019年

ドランクエレファントはアメリカで誕生したスキンケアブランド「DRUNK ELEPHANT」を展開。資生堂はドランクエレファントを約910億円で買収しました。

事例2:ポーラ×トリコ

続いての事例は、ポーラとトリコのD2CのM&A事例です。

  • 買収:ポーラ・オルビスホールディングス
  • 売却:トリコ株式会社(拠点:日本 創業:2018年)
  • 買収額:38億円
  • 買収された年:2021年

M&Aが行われるまで、トリコはポーラの投資先の会社でした。しかし、グループ傘下に入ることでシナジー効果が期待できると判断しポーラはトリコを約38億円で買収しました。

事例3:ワコール×IO

続いての事例は、ワコール社とIO社のD2CのM&A事例です。

  • 買収:ワコールホールディングス
  • 売却:Intimates Online, Inc. (拠点:アメリカ 創業:2015年)
  • 買収額:92億円
  • 買収された年:2019年

ワコール社は2019年に女性用インナーウェアブランド「LIVELY」を展開するIO社を約92億円で買収しました。IO社は独自のバリューチェーンを構築していたことから買収額が非常に高くなっています。

事例4:P&G×Native Cos

続いての事例は、P&GとNatibe CosのD2CのM&A事例です。

  • 買収:P&G
  • 売却:Native Cos(拠点:アメリカ 創業:2015年)
  • 買収額:1億ドル(1.1億円)
  • 買収された年:2017年

Native Cosはナチュラルデオドラントブランドです。2017年、P&Gはシナジー効果を期待しNative Cosを約1.1億円で買収しました

事例5:ワールド×神戸レザークロス

続いての事例は、ワールド社と神戸レザークロス社のD2CのM&A事例です。

  • 買収:ワールド
  • 売却:神戸レザークロス
  • 買収額:約6億円
  • 買収された年:2019年

神戸レザークロス社は1948年に創業された歴史ある企業です。ワールド社とのシナジー効果が期待されるということで約6億円で買収されました

3. D2Cの失敗事例

D2CのM&Aを考えておられる方々は以下の失敗事例を抑えておくことをおすすめします。

  • 消費者ニーズに応えられていない
  • サイトに直接集客ができていない
  • 顧客満足度が低い

それぞれ解説します。

事例1:消費者ニーズに応えられていない

まず、消費者ニーズに応えられていないことです。

D2Cは消費者との距離が近く、消費者ファーストな製品・サービスの開発が必要です。「たぶんこういう製品を欲しがっているだろう」といった企業主体の販売方法はもう通用しなくなっているのです。消費者の声を直接聞けるようになった時代ですから、消費者ニーズを汲み取る方法はいくらでもあります。

できるだけ消費者に寄り添う形で製品やサービスを提供する必要があります。

事例2:サイトに直接集客ができていない

続いて、サイトに直接集客ができていないことです。

D2Cは消費者と直接商品のやり取りを行いますので、サイトに集客ができないとそもそもスタートラインに立つことができません。サイトに消費者が訪問してくれて初めてD2Cらしく販売ができるのです。

サイトへ集客する方法はSEO対策をしたりSNSを活用したりといくらでもありますので、それぞれ施策を試してみることをおすすめします。

事例3:顧客満足度が低い

続いて、顧客満足度が低いことです。

これはD2Cでなくても改善すべきことですが、顧客満足度が低いままだと魅力的な商品をECサイトに陳列しても売れることがありません。また、仮に売れたとしてもリピーターになってくれることは少ないでしょう。
 

  • 受注確認メールはきちんと送られているか
  • 受注から発送までに時間がかかりすぎていないか
  • 問い合わせに迅速に回答しているか

顧客目線に立てているかを今一度確認する必要があります。

  • IT会社のM&A・事業承継

4. D2C事業を高くM&Aで売却するコツ

せっかくM&A案件として掲載するのであれば、できるだけ高く売却したいですよね。そんな方は以下のD2C事業を高くM&Aで売却するコツを抑えておきましょう。

  • シナジー効果を生み出す
  • 営業利益を確保する
  • 強みをアピールする
  • 市場の動向を確認する
  • PVや会員数を増やす

それぞれ解説します。
 

コツ1:シナジー効果を生み出す

まず、シナジー効果を生み出しましょう。

例えば、資生堂とドランクエレファントのM&A事例を見てみるとどちらも「化粧品を展開している」という共通点があります。資生堂はドランクエレファントの企業技術を駆使するためにM&Aによる買収を行いましたが、シナジー効果が期待されているからこその買収です。全く異業種の企業をM&Aにより買収をしても何の意味もありません。

M&Aによる売却を考えている場合、市場調査を行いどういったシナジー効果を生み出せばより多くの企業の目に止まるのかを自分なりに考えなければなりません。

【関連】M&Aのシナジー効果とは?分析に使うフレームワーク・メリットが得られた事例も紹介!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

コツ2:営業利益を確保する

続いて、営業利益を確保しましょう

中には営業利益が0円、もしくは赤字でも買収されている企業があります。ただそういった企業は独自のスキルがあったり珍しい顧客を持っていたりと営業利益以外の価値を保有しています。もしそういった独自の強みがない場合は、単純な営業利益で勝負するしかありません。

ベースとして営業利益がない事業を売却することは難しいです。

コツ3:強みをアピールする

続いて、強みをアピールしましょう

ここでいう「強み」とは企業として、そして事業として他の企業にはないものを指します。例えば、以下のように差別化を図れる強みがあればどんどんアピールしていくべきです。

  • 顧客数が他企業よりも圧倒的に多い
  • 独自のスキルを持っている
  • 人材確保のスキームが完成している

普遍的な強みをアピールするのではなく、「あなたの企業だからこそ」な強みをアピールしましょう。

コツ4:市場の動向を確認する

続いて、市場の動向を確認しましょう

市場の動向を確認することで世のトレンドがどのように動いているのかを把握することができます。例えば、「AIサービスが流行している」と市場の動向を掴んだのであれば、事業の中にAIサービスを導入してみるといいかもしれません。導入すれば他の企業にはない強みになるかもしれませんし、何かしらの改善が期待できます。

もちろん、確認するだけでなく実行に移すことが大切です。

コツ5:PVや会員数を増やす

続いて、PVや会員数を増やしましょう

企業の資産として「PV」や「会員数」は重宝されます。単純な営業利益よりも高く評価されることもありますし、買収企業によっては以下のように考えているケースもあります。

  • PVを獲得するまでのプロセスを買収できる
  • 会員数を獲得するための仕組みを買収できる

営業利益を出すことよりも難しいような要素があれば高く売却ができます。

5. D2CのM&Aを行うときの注意点

では最後にD2CのM&Aを行うときの注意点について解説します。

  • 契約は自分が不利にならないようにする
  • M&Aによる売却益に税金がかかることを把握する
  • M&Aの手順を把握する

それぞれM&Aでの売買を考えている方は知っておくべき情報です。

注意点1:契約は自分が不利にならないようにする

まず、契約は自分が不利にならないようにしましょう

代表的な契約内容として「競業防止」があります。「競業防止」は「今後~~年間は同じ業種で事業を行うことはできません」という意味を持ち、そのまま契約してしまうと契約書に記載されている年数が経過するまでは同じ業種で事業を行うことができなくなります。今後、同じ業種で事業展開を考えている方は「競業防止」の契約書にサインをしてはいけません。

細かいところまで契約書を読み込みましょう。

【関連】M&Aの競業避止義務とは?該当事例と注意点を解説!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

注意点2:M&Aによる売却益に税金がかかることを把握する

続いて、M&Aによる売却益に税金がかかることを把握しましょう

例えば、ECサイトを売却した場合に得られる利益に税金がかかります。ただ、どういった税金が課せられてどれだけ支払う必要があるのかはECサイトの属性やM&Aでの売買契約によって異なる場合があります。そのため、詳しく税金について聞きたい場合は税務署に問い合わせをしましょう。

「分からないから」という理由で滞納をすると追徴課税を支払わなくてはなりません。

注意点3:M&Aの手順を把握する

続いて、M&Aの手順を把握しましょう

M&Aの全体的な流れというよりかは、いつ相手企業に譲渡をするのかのタイミングについて把握しておく必要があります。売却代金が着金していないのにもかかわらず譲渡してしまうと、そのまま持ち逃げされてしまう可能性があります。契約書がある限りそんな事態にはならないはずですが、前例があるため注意が必要です。

6. D2C業界のM&A動向を把握しよう!

これからD2C業界のM&Aによる売買を検討されている方は、まずM&A動向を把握するところから始めましょう。

現在はD2C業界の市場規模がどんどん拡大していますし、M&A動向も増加傾向にあります。そのため、D2C関連の事業をM&Aにより売却するのは今がチャンスと言えるかもしれません。また、自社とのシナジー効果が期待される事業はM&Aにより買収をした方が効率よく事業展開ができるようになるケースが多いです。

7. IT業界の成約事例一覧

8. IT業界のM&A案件一覧

M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 譲渡企業様完全成功報酬!
  2. 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
  3. 上場の信頼感と豊富な実績
  4. 譲受企業専門部署による強いマッチング力
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。

>>完全成功報酬制のM&A仲介サービスはこちら(※譲渡企業様のみ)

関連する記事

新着一覧

最近公開された記事
IT会社のM&A・事業承継