M&Aにおける焦土作戦とは?買収防衛策のリスクや事例を解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

近年はM&Aが盛んに行われているので、時には焦土作戦などの防衛策を駆使して自社を敵対的買収から自社を守る必要があります。この記事では、M&Aにおける焦土作戦とは何か、焦土作戦の注意点や買収防衛策の種類や焦土作戦の事例などを解説していきます。

目次

  1. M&Aにおける焦土作戦
  2. 敵対的買収に対する焦土作戦など買収防衛策のリスク
  3. M&Aにおける買収防衛策についておすすめの相談先
  4. まとめ
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1. M&Aにおける焦土作戦

近年では、海外企業を交えたグローバルM&Aや中小企業の事業承継目的のM&Aなど、企業規模を問わずM&Aが行われるようになってきています。

M&Aが広く認知されるようになったため、ある日突然、敵対的買収を仕掛けられるリスクはどのような企業にも内在しています。M&A隆盛下で生き残るためには、敵対的買収への対抗措置を把握しておくことも大切です。

この章では、M&Aにおける買収防衛策の「焦土作戦」とは何か、また「焦土作戦」の注意点などを解説します。

M&Aの焦土作戦とは

戦争における焦土作戦とは、自らの領土内の家屋や田畑など町すべてを焼き払うことにより、敵軍に利用価値のある物を一切残さないことによって、敵軍を生存の窮地に追い込む作戦です。

M&Aにもこれに似た焦土作戦が存在しますが、果たしてどのような内容なのでしょうか。ここではM&Aの焦土作戦について解説します。

買収防衛策の一種

M&Aにおける焦土作戦とは、被買収会社の資産・ノウハウ・事業などを売却して企業価値を意図的に下げ、買収意欲を削ぎ落とすことを狙った買収防衛策の一種です。

焦土作戦を「クラウンジュエル」と呼ぶこともありますが、クラウンジュエルは正式には焦土作戦の一形態です。

被買収会社を王冠(クラウン)、被買収会社が保有する価値ある資産・ノウハウ・事業などを宝石(ジュエル)と例え、王冠から宝石を切り離すことで、価値の下がった宝石なしの王冠は欲しがらないだろうというところからきています。

焦土作戦の注意点

M&Aにおける焦土作戦は、被買収会社の事業や財産の処分を伴う行為です。財産の処分は取締役会決議で原則決定することができますが、重要な事業を第三者へ譲渡する場合は株主総会の決議が必要になります。

焦土作戦は経営陣の独断で実施できる買収防衛策ですが、一定の場合は株主の同意を得なければなりません。また、焦土作戦には以下のような点にも注意が必要です。

【焦土作戦の注意点】

  • 資産や事業を失ってしまう
  • 取締役が善管注意義務違反等に問われるおそれがある

資産や事業を失ってしまう

前述のように、焦土作戦では買収会社の買収意欲を削ぎ落とすために、被買収会社は保有する価値ある資産・ノウハウ・事業などを第三者に売却して防衛します。

焦土作戦によって買収は回避できたとしても、結果として被買収会社の企業価値の下落を招くことにもなり、被買収会社の株主にも大きな影響を与える可能性もあります。

取締役が善管注意義務違反等に問われるおそれがある

焦土作戦を実施して買収防衛に成功しても、被買収会社の企業価値が下落してしまうため、取締役は経営責任を株主などから追及されるリスクがあります。

取締役は会社から委任を受け業務執行を行う立場にあり、会社に対して善管注意義務・忠実義務を担っています。

そのため、これらの義務を怠った場合は、株主や債権者など会社のステークホルダーから責任追及をされる立場にあります。

適正な経営判断の場合にはこの責任は免れますが、買収防衛策としての焦土作戦の実施が適正な経営判断とされるかどうかがポイントになります。

2. 敵対的買収に対する焦土作戦など買収防衛策のリスク

日本では友好的なM&A成立がほとんどですが、敵対的買収が行われるケースもあります。この章では、敵対的買収に対抗する買収防衛策について、種類やリスクを解説します。

敵対的買収とは

買収対象会社の同意なしに、株式公開買付(TOB)などによって買収を仕掛ける行為を「敵対的買収」といいます。

対して、買収対象会社の同意を得て実施する買収行為を「友好的買収」と呼びます。日本のM&Aでは友好的買収が大半を占めますが、どちらも合法的かつ合理的な企業戦略です。

買収防衛策とは

買収防衛策とは、被買収会社が敵対的買収を仕掛けられた際に、買収を阻止するための策です。買収防衛策のパターンとしては、大きく敵対的買収を予防するための防衛策と、敵対的買収を仕掛けられてからの防衛策があります。

敵対的買収を予防するための防衛策

予防するための策としては、安定株主の確保や友好的関係企業との株式持ち合いなどがあります。

現在の日本で主流となっている買収防衛策は、「事前警告型防衛策」といわれるものです。被買収会社が買収する際のルールを定めておき、ルールに従わない買収企業者が現れた場合に対抗措置を講じることを通告します。

そのほか、新株予約権を発行する「ライツプラン(ポイズンピル」、役員退職金を高額に設定して買収意欲を削ぐ「ゴールデンパラシュート」(従業員の場合は「ティンパラシュート」)、株主や債権者に株式買取請求権などを与える「プットオプション」、経営権変更時に制限・解除が発動される「チェンジ・オブ・コントロール」などがあります。

株式に関しては、買収議案を拒む「黄金株(拒否権付き株式)」、株主総会で厳格な議決要件を求める「絶対的多数条項」、会社が株式の強制取得が可能な「全部取得条項付き株式」などを活用することもできます。

敵対的買収を仕掛けられてからの防衛策

実際に敵対的買収を仕掛けられてからの措置としては、「友好的第三者に協力を依頼する対抗措置」と「意図的に企業価値を下げることで買収意欲低下を狙う対抗措置」があります。

友好的第三者に協力を依頼する対抗措置には、相手企業より先に友好的第三者に被買収会社を買収してもらう「ホワイトナイト(白馬の騎士)」、買収企業の持ち株比率を下げるための「第三者割当増資」などがあります。

意図的に企業価値を下げることで買収意欲低下を狙う対抗措置としては、先に挙げた「焦土作戦」のほか、資産売却の制限を定款に記す「資産ロックアップ」、マスコミにネガティブ情報を流す「ジューイッシュ・デンティスト」などがあります。

買収防衛策のリスク

買収防衛策の選択をミスしてしまうと、買収を阻止できないばかりか、事業評価を落として株主などに不利益を与えるリスクが内在しています。

また、突然の敵対的買収にうろたえてしまい、株主の不利益などを考慮せずに経営サイドや会社だけの観点で買収防衛策を講じてしまう可能性もあります。

買収防衛策には多くの種類がありますが、どれを選んだとしても少なからずリスクがあることを念頭に置く必要があります。

買収防衛策の種類

買収防衛策は、前述した敵対的買収を予防するための防衛策、敵対的買収を仕掛けられてからの防衛策以外に、以下のような策もあります。

  • スタッガードボード
  • 労働組合のストライキの発動
  • パックマン・ディフェンス
  • 非上場化

「スタッガードボード」は、役員の任期を変えて、買収しても役員全員の変更ができないようにすることで、買収意欲の低下を図る対抗措置です。

「労働組合のストライキの発動」は、買収を仕掛けられた企業が買収に反対の労働組合のストライキをちらつかせて、相手企業の買収意欲の低下を図る対抗措置です。

「パックマン・ディフェンス」は、敵対的買収を仕掛けられそうな時に、逆に相手企業に買収を仕向ける方法です。

「非上場化」は、買収を働きかけられた会社を上場廃止させることによって、株式の市場取引をストップさせ、買収自体を行えないようにします。

3. M&Aにおける買収防衛策についておすすめの相談先

買収防衛策を講じる際は、さまざまな策のなかから状況に適したものを選択しなければ、株主に不利益を与えてしまうリスクがあります。

買収防衛策を選択する際は、M&A仲介会社など専門家の意見を聞くなどして慎重に検討することが大切です。

M&Aの実施や買収防衛策についてお考えの際は、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに精通した専門アドバイザーが親身になってフルサポートいたします。

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4. まとめ

M&Aにおける買収防衛策は、焦土作戦をはじめとして数多く存在します。買収防衛策の選択によっては、買収を阻止できないばかりか、株主などに不利益を被らせたり取締役としての責任追及をされるリスクもあります。

リスクを下がるためにも、M&A仲介会社など専門家の意見なども参考にしながら、自社に適した買収防衛策を選択する必要があります。

【M&Aにおける焦土作戦とは】

  • 買収目的である被買収会社の資産・ノウハウ・事業などを売却して企業価値を意図的に棄損させ、買収意欲を削ぎ落とすことを狙った買収防衛策
【焦土作戦の注意点】
  • 資産や事業を失ってしまう
  • 取締役が善管注意義務違反等に問われる可能性がある

【買収防衛策のリスク】
  • 買収防衛策の選択ミスによる買収防衛の失敗
  • 企業価値が下がり、株主などに不利益を与える

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