秘密保持契約(NDA/CA)とは?目的や種類から注意点まで解説!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、秘密保持契約(NDA/CA)の意味や条文例、契約に関してのポイントなどを解説します。秘密保持契約(NDA/CA)とは、M&Aを行う際に知り得た営業上の秘密や情報を第三者に開示しないと約束する契約のことです。秘密保持契約について知りたい方は必見です。

目次

  1. 秘密保持契約(NDA/CA)とは
  2. 秘密保持契約(NDA/CA)の目的
  3. 秘密保持契約(NDA/CA)の手順
  4. 秘密保持契約(NDA/CA)の注意点
  5. 秘密保持契約(NDA/CA)の記載内容と雛形
  6. M&Aの際の契約書一覧
  7. 秘密保持契約(NDA/CA)に関する相談先
  8. 秘密保持契約(NDA/CA)のまとめ
  • 今すぐ買収ニーズを登録する
  • 経験豊富なM&AアドバイザーがM&Aをフルサポート まずは無料相談

1. 秘密保持契約(NDA/CA)とは

秘密保持契約NDAまたはCAとは、M&Aの際に相手方の企業またはファイナンシャルアドバイザー(FA)と締結する契約の1つです。

具体的には、M&A取引を行う際に営業秘密や個人情報などの業務に関して知り得た情報を第三者に開示しないとする契約のことです。

CAについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】CAとは?M&A業界における意味を解説!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

2. 秘密保持契約(NDA/CA)の目的

NDAまたはCA契約は、英訳すると「Non discrosure agreement(NDA)またはConfidencial Agreement(CA)」です。M&Aにおいては、このような企業取引を検討実施すること自体が秘匿されている場合が多いでしょう。

買い手企業は売り手企業の経営上の営業秘密を知り得る強い立場にあるため、情報の漏えいはM&Aの不成立だけではなく売り手企業にとってもその存続を大きく左右しかねません。NDA/CA契約といった秘密保持契約が求められます。

秘密保持契約(NDA/CA)の種類

NDA/CA契約書には、NDA/CA式と差し入れ式の2つがあります。以下では、それぞれの内容や特徴を解説します。

NDA/CA式

NDA/CA式秘密保持契約とは、M&A取引を行う際に法人同士または個人双方で締結し、営業秘密や個人情報などの秘匿事項(公開済みや別の情報源から入手したものを除く)を、第三者(当該取引の関係者・弁護士・公認会計士などは除く)に開示しないとする契約です。

NDA/CA契約は、機密保持契約または守秘義務契約ともいいます。NDA/CA契約は非開示契約と呼ばれることもありますが、これは本来の秘密でない情報も対象に含まれる場合に用いられる用語です。

法律で定められた守秘義務との違いを説明すると、NDA/CA契約は契約上の義務であり、守秘義務の範囲を超えた取り扱いや守秘義務のない職業の人に依頼する場合に用います。

差入式

NDA/CA契約書における差入式とは、当事者双方が署名捺印するのではなく一方のみで作成する書面のことです。

当事者の一方だけが秘匿情報を受け取る場合や、一方だけが秘密保持義務を担うような場合、NDA/CA契約にこの方式が採用されます。

3. 秘密保持契約(NDA/CA)の手順

ここでは、秘密保持契約(NDA/CA)の一般的な手順を解説します。専門的な要素が多いため専門家に依頼することが一般的ですが、流れを把握しておくとスムーズに進めることが可能です。

  1. NDA/CA契約書原案の作成
  2. NDA/CA契約書原案の確認
  3. NDA/CA契約書の締結

まず、NDA/CA契約書の原案を作成し、その後は相互にPDFまたはWardファイルなどで内容を確認・検討します。確認する際は、一方的に不利にならないようしっかりチェックしましょう。内容の確認が済んだら、押印締結です。

メール送信で契約する「電子契約」もありますが、書面での締結が法的に必要な場合もあるので注意が必要です。

4. 秘密保持契約(NDA/CA)の注意点

秘密保持契約(NDAまたはCA)が民事上の契約である場合、罰則は該当しません。

しかし、不正競争防止法や個人情報保護法など、NDA/CA契約の内容がこれらの法律に抵触すれば、罰せられる可能性があります。

不正競争防止法とは、同一または類似する商品の表示もしくは営業表示を使用し混同を生じさせるような行為・商品の模倣・営業秘密の不正取得などを不正競争行為として定義し、侵害する場合は相手方に対して差し止め請求、損害賠償請求および刑事制裁を定める法律です。

個人情報保護法とは、企業や団体などが所有する個人情報に関して、個人の人格尊重のもと慎重に取り扱い、適正な扱いを図ることを目的に制定された法律です。

秘密開示の目的について

NDA/CA契約に基づいて基礎情報を開示することで基本的部分の情報共有が両社によってなされ、それらに基づいた事前交渉が合意に至った時点で基本合意締結を行います。

NDA/CA契約の基本合意締結では、買収価格や今後行われるさまざまな項目に関する協議を円滑に行う旨を記載した項目が盛り込まれます。

秘密開示の範囲について

NDA/CA契約書の目的は、サンプルのようにM&Aの達成を目的としておけば問題ありません。営業秘密や秘密情報の範囲は、基本的に開示者が受領者に渡したすべての情報です。

ただし、すでに世の中に知られていた事実や元から知っていた情報などは、営業秘密・秘密情報に該当しません。

NDA/CA契約では、営業秘密や秘密情報の範囲を広げると開示者に有利になり、狭めると受領者にとって不利になります。

受領者が開示者から得た情報を複製することも、NDA/CA契約書で禁止しておく必要があります。

受領者が開示者から得た情報を使って発明を行ったり特許を取ったりした場合などは、知的財産権がどちらに帰属するかをNDAまたはCA契約書で明確にしましょう。

契約終了後について

秘密保持契約NDA/CA契約の目的を達成したら情報を開示しておく必要はなくなるので、すぐに情報を返還してもらいましょう。

ただし、NDAまたはCAに基づく秘密情報がデータなどの形になっている場合、受領者が廃棄した方が手間・時間がかからないケースもあります。

秘密保持期間について

NDA/CA契約書を締結する際は契約期間を定めるのが一般的ですが、期間が終了しても情報を漏えいされてしまえば開示者側にとって不利益です。

そのようなことを考慮すると、NDA/CA契約期間終了後も秘密保持義務などの規定は一定期間有効としておきましょう。

5. 秘密保持契約(NDA/CA)の記載内容と雛形

この章では、秘密保持契約(NDAまたはCA)の記載内容を解説します。一般的なNDAまたはCA契約書の雛形も紹介しますので、作成時にご参考ください。

秘密保持契約(NDA/CA)の5つの記載内容

秘密保持契約NDAまたはCA契約書には、主に以下5つの事項を盛り込みます。

  1. 秘密情報の定義
  2. 秘密情報保持
  3. 損害賠償義務
  4. 有効期間
  5. 合意管轄裁判所

①の秘密情報とは、M&Aにおいて開示される営業秘密を含むすべての情報をいいますが、営業秘密などを受領した時点で公知されている項目や、自らがすでに保有している情報は秘密情報から除外されます。

②は、営業秘密や秘密情報をM&Aのためだけに利用する旨が記載されています。NDAやCAを契約した会社であっても、秘密情報の開示は検討のために必要な最小限に限る旨が記載されるのが一般的です。

営業秘密や秘密情報を漏えいさせた場合は、損害賠償責任を負う旨も規定されています。この損害賠償の範囲は、直接損害のみならず間接損害も含む場合も少なくありません。

④の有効期間は、NDAまたはCA契約を締結してから根幹部分に関する合意を行う基本合意締結までの期間です。通常は数週間程度かかり、この段階では従業員の就業条件や買収価格の交渉などが行われます。

⑤は合意内容または条項に関してトラブルが発生した場合に第一審が行われる裁判所のことです。自社に近い裁判所を指定すると有利です。

ただし、基本合意締結NDAまたはCAに対して法的な拘束力を持たせない場合もあります。なぜなら、この後行われるデューデリジェンスで企業の詳細がわかることにより、契約変更が生じる場合があるためです。

デューデリジェンスとは、基本合意が締結された後に行われる詳細調査のことです。

M&Aのデューデリジェンスについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】M&Aのデューデリジェンス(DD)とは?用語の意味、項目別の目的、業務フロー、注意点を徹底解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

秘密保持契約(NDA/CA)の雛形

以下では、秘密保持契約NDAまたはCAの雛形を紹介します。あくまでも参考資料であり、実際の内容と異なる場合もあるため、実際に作成する際は専門家のサポート下で行うことを推奨します。
 
【秘密保持契約(NDA/CA)の雛形】
 
株式会社Aと株式会社Bは、M&Aにおいて以下の通りNDAまたはCA契約を結ぶものとする。
 
第1条 本旨
この契約の本旨は、A、Bが○○取引を実現するため、企業秘密の取り扱いについて定める。
 
第2条 企業秘密
この契約において企業秘密とは、A、Bがデータやパスワードなどを問わず公開した事項などであり、契約時にAが企業秘密にあたるとした事項などのこと。ただし次に該当するものは除く。

1.開示の際にすでに一般に知られていた事項
2.開示のときにすでにBが知り得ていた事項  
3.Bが他社より守秘義務を課されずして入手したもの
4.BがAから企業秘密を明かされたのち、A、Bの責任によらないで明らかとなった秘密
 
第3条 秘密保持義務
Bは企業秘密を他社にもらしてはならない。ただし次にあたるときは例外とする。
 
1.Aがこの契約の趣旨を実行するために必要な範疇でBに秘密情報を開示する際、Bが開示について事前にAから了解されていたとき
2.Bが法律に従い、公的機関に企業秘密を開示するとき、しかし、A、Bは開示があった事実を通知し合わなければならない。
3.Bが前述した項目の1.または2.に沿って企業秘密を開示時に、Aに対し企業秘密の開示をされる企業が当契約と同じ秘密保持義務を担うことを確約するとき
4.Aが上記項目1.あるいは2.によって企業秘密を、当事企業を含まない企業に開示した場合、Aは当事企業による企業秘密の維持にも責任を課すものとする。
 
第4条 主旨以外の利用の禁止
BはAから知ることとなった企業秘密をこの主旨のみに使用し、他の主旨のために利用してはならない。
 
第5条 複製
Bは前もってAの許可を得ずして、企業秘密を複製できない。 
 
第6条 成果の所属
BがAの企業秘密を活用して著作などの製作をした場合にはAにそのことを知らせ、権利の所属について話し合う機会を持つ。
 
第7条 秘密情報の返還 
1.Bはこの契約が終わった際、すぐに企業秘密が残されたデータなどすべてをAに返さなければならない。
2.AはBに対し、前項の返還のかわりに前項に残されたデータを破壊し、文書は返却または廃棄処分を行う。
 
第8条 差し止めと損害賠償について
1.Bの契約違反判明のとき、AはBに対し企業秘密を使うことを差し止め請求できる。
2.Bがこの契約に反してAに損害を与えたとき、Bは発生した損害を賠償しなければならない。
 
第9条 反社会的勢力の排除
A、Bは次の各号に該当しないことを確約する。
 
1.自社または自社のCEOなどが暴力団を含む反社会的勢力であること。
2.反社会的勢力が経営を支配している。
3.反社会的勢力が経営に参画している。
4.自社が不正な利益を得るため、反社会的勢力に協力を得ているとき。 
5.反社会的勢力に対して資金を拠出している。
6.自社のCEOなどが反社会的勢力と関係がある。 
7.A、Bはともに次の事項にあたる行いをしないことを確約する。
(1)暴力的に不当な請求を行う。
(2)相手の名誉や信用を損なう。
(3)暴力よって相手方の業務を妨害する。
(4)その他準ずる行為。 
(5)A、Bは、双方前二項のどれかに違反もしくは偽りの申告をしたとき、契約を取りやめる旨を通知したのち、直ちにこの契約を解除できるものとする。この場合、前二項の何かに違反した企業は、相手方に対して損害賠償を行えないものとする。
(6)前項の解除は解除権を行使した企業によるものとする。
 
第10条 有効期間
1.この契約は調印の日より〇〇年とする。
2.前項の有効期間の経過した後であっても、3条ないし5条は定める期間が経過したあとも〇〇年間効有効とする。 
 
第11条 合意管轄裁判所
この契約において協議が不能のときは、○○地方裁判所を合意管轄裁判所とする。

この契約が成立したことを証するため、この契約書を2通作成の上、各々の企業が記名し捺印して各1通を保存する。
 
この契約を証するため書面にて2通を作成の上、A、B記名押印をし、各々1通を保管する。

〇〇年〇〇月〇〇日
   
  住所
  企業名A
  代表者            印
 
  住所
  企業名B 
  代表者            印

6. M&Aの際の契約書一覧

最後に、M&Aの際の主な契約書を紹介します。M&Aの手法によって必要な契約書は異なりますが、ここでは以下の3つを簡単に説明します。

  1. アドバイザリー契約書
  2. 基本合意書
  3. 最終合意書

アドバイザリー契約書は、契約当事者とM&A仲介会社との間で交わす基本契約のことです。

②の基本合意書とは、 買い手と売り手の間でM&Aを進めるにあたり、基本的事項がすでに合意されている旨を記載する契約書です。

秘密保持の義務や独占交渉権に関する事項が盛り込まれますが、一般的に一部内容を除いて基本合意書に法的拘束力はありません。

③の最終合意書とは、当事者間の権利および義務について最終的に締結した契約書のことであり、株式譲渡契約書」や「事業譲渡契約書」というように用いた手法によって呼び方が変わります。

M&Aで用いる契約書については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】M&Aで用いる契約書を徹底解説【ひな形・サンプルあり】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所
【関連】LOI(意向表明書)とは?MOU(基本合意書)との違いは?【契約書サンプル/雛形あり】

7. 秘密保持契約(NDA/CA)に関する相談先

秘密保持契約(NDA/CA)の作成・締結の際は、専門家による確認のもとで進めなければ、思わぬ不利益を被りかねません。M&Aをご検討の際や秘密保持契約(NDA/CA)の作成・締結でお悩みの場合は、M&A総合研究所へご相談ください。

M&A総合研究所は中小企業のM&Aに数多く携わっており、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーがクロージングまで丁寧にサポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。着手金は、譲渡企業様・譲受企業様ともに完全無料です。

無料相談はWeb・電話より受け付けていますので、M&Aをご検討の際や秘密保持契約(NDA/CA)の作成・締結でお悩みの場合は、どうぞお気軽にご相談ください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
電話で無料相談
0120-401-970
WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

8. 秘密保持契約(NDA/CA)のまとめ

M&Aを行う際は、相手先企業に自社の営業秘密や機密情報を開示します。秘密を漏えいされると重大な不利益が及びかねないため、秘密保持契約(NDA/CA)を締結してリスクを軽減しておくことが大切です。

秘密保持契約(NDA/CA)を作成・締結する際は、法的な観点から見て不備や漏れがないかを確認しておかなければならないため、専門家のサポート下で行うことをおすすめします。

M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 譲渡企業様完全成功報酬!
  2. 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
  3. 上場の信頼感と豊富な実績
  4. 譲受企業専門部署による強いマッチング力
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。

>>完全成功報酬制のM&A仲介サービスはこちら(※譲渡企業様のみ)

関連する記事

新着一覧

最近公開された記事