EBITDAとは?意味や計算方法・営業利益との違い・M&Aとの関係性を解説!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

EBITDAとは、企業の合併や買収(M&A)などで利用される指標です。会社の最終的な利益から、支払い利益・減価償却費・税金を足し戻した利益を指します。会社経営をする際に必要なEBITDAのメリットやデメリット、計算方法など解説していきます。

目次

  1. EBITDAとは?
  2. EBITDAのメリット
  3. EBITDAのデメリット
  4. EBITDAを使用するときの注意点
  5. M&AにおけるEBITDAの活用方法
  6. EBITDAを有効活用して企業を分析しよう!
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1. EBITDAとは?

EBITDAとは、Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略語で、「利払前・税引前・償却前利益」と日本語に訳され、会社の最終的な利益から、支払い利息、償却費、税金を出し戻した利益です。
会社の収益力を示す指標のひとつであり、キャッシュベースに近い本業の儲けを示す指標でもあります。
EBITDAの意味を理解し、活用することで、M&Aや株式投資をする際に判断材料として、リスクを減らすことができます。
 

EBITDAの読み方と意味

EBITDAは、イービットディーエーと読みます。
Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略語となり、それぞれの意味は以下の通りです。

Earnings Before:考慮する前の利益
Interest Taxes:支払利息・税金
Depreciation:有形固定資産の減価償却費
Amortization:無形固定資産の減価償却費


EBITDAという用語だけでなく意味を覚えておくことで、今後の経営や投資活動に活かすことができます。

EBITDAと営業利益との違いは?

EBITDA営業利益の違いは、減価償却費や経常利益・支払利息を加えるのかまたは、加えないのかの違いとなります。
例えば、営業利益に減価償却費を加えたもの、これはEBITDAに該当します。
一方、減価償却費を加えない売上高の場合は、営業利益です。
上記のように、キャッシュアウトのない費用である減価償却費をなくしたものと考えます。
EBITDAを営業利益として考えてしまうと、判断を間違え、リスクを背負ってしまうことになるのです。
この2つの違いを理解して活用しましょう。

EBITDAの計算方法

EBITDAの計算方法について解説していきます。
EBITDAには、経常利益や営業利益から算出する方法など、いくつかの計算方法があります。
統一された計算式があるわけではないため、EBITDAの計算対象となる企業によって,
臨機応変に考えることができるのがメリットです。
代表的なEBITDAの計算方法は以下の通りです。

EBITDA=営業利益+減価償却費
EBITDA=経常利益+減価償却費+支払利息
EBITDA=税引前当期純利益+減価償却費+支払利息+特別損失
EBITDA=当期純利益+減価償却費+支払利息+法人税等


上記方法によって、その企業におけるEBITDAを計算することができます。

2. EBITDAのメリット

ここからは、EBITDAのメリットについて紹介していきます。
EBITDAのメリットは以下の通りです。

・グローバル企業の業績・同業他社間の業績を比較できる
・財務諸表に基づいた計算が容易にできる
・投資の影響を受けない


それでは、それぞれについて見ていきましょう。

グローバル企業の業績・同業他社間の業績を比較できる

EBITDAのメリット1つ目は、グローバル企業の業績を比較できるということです。
例えば、以下のような比較が可能です。

・借入金や税の影響を排除して比較
・投資の償却方法の違いを排除して比較
・経年比較ができ、規模の異なる会社間で比較


上記のように、減価償却費や金利・税金は国ごとに異なりますが、EBITDAはこれからの影響を排除しながら比較できるのです。

財務諸表に基づいた計算が容易にできる

EBITDAのメリット2つ目は、財務諸表に基づいた計算が簡単にできるということです。
上場企業であれば、財務諸表の作成が義務付けられております。
財務諸表の目的として、投資家や債権者などの利害関係者などに企業の財政状況や経営成績を開示し、決算の報告を行うことです。
その際、EBITDAを活用することで財務諸表に基づいた計算を簡単に行うことができます。

投資の影響を受けない

EBITDAのメリット3つ目は、減価償却費の影響を除外することができるので、投資の影響を受けないことです。
主に製造業などでは大規模な設備投資が欠かせません。
そのため、減価償却費を差し引いた営業利益だけに着目してしまうと、正確な利益が見えにくくなります。
また、継続した投資がない場合、当初の投資に対する減価償却費は年々減少していくため、相対的に営業利益が増えてしまい、業績が伸びているように見えてしまいます。
しかし、EBITDAを指標とすれば、このような感覚を防ぐことができるのです。

3. EBITDAのデメリット

続いては、EBITDAのデメリットについて解説していきます。
EBITDAのデメリットは以下の通りです。

・過剰な設備投資・M&Aによる損失がマイナス要因とならない
・正確なキャッシュフローを把握できない


それでは、それぞれについて見ていきましょう。

過剰な設備投資・M&Aによる損失がマイナス要因とならない

前述のメリットで紹介した、EBITDAの「減価償却費の影響を除外できる」というメリットは、裏を返すと過剰な設備投資の負担やM&A等による多額に計上された額の損失を反映できない、ということになります。
そのため、企業が設備投資によって経営状況が悪化してもEBITDAでは気づくことができません。
EBITDAのデメリットは、過剰な設備投資・M&Aによる損失がマイナス要因に扱えない点です。

正確なキャッシュフローを把握できない

EBITDAで算出されて企業価値・キャッシュフローには、支払利息や減価償却費、税金の控除が行われいません。
そのため、EBITDAのみで、該当する企業の価値やキャッシュフローを調べ、判断することは難しいといえるでしょう。

4. EBITDAを使用するときの注意点

ここからは、EBITDAを使用したときの注意点について解説していきます。
EBITDAを活用することで得られるメリットについて理解していても、注意点を把握していないとトラブルを起こす可能性があります。
トラブルを起こさないためにも注意点を確認しましょう。
注意点は以下の通りです。

・正常利益をベースにしてEBITDAを割り出す
・営業利益や経常利益など総合的な指標で判断する
・保険料や役員報酬も注視する


それでは、それぞれについて見ていきましょう。

正常利益をベースにしてEBITDAを割り出す

EBITDAは正常利益ベースにしてEBITDAで割り出すことが望ましいです。
正常利益とは、企業あるいは事業の平常時における継続的な収益力に基づく利益のことです。
例えば、多額の役員報酬や節税目的のために保険料を支払っていたり、私的な費用を計上していることにより、本業の利益が正しく出ているにも関わらず、利益が出ていないように見えることがあります。
一方、役員報酬を少額で支給していたり、粉飾していたりすることにより、実際は本業の利益があまり出ていないのに、高額の利益が出ているように見えることもあります。
EBITDAは高い比較可能性を備え、優れた業績測定指標ではある一方、このような注意点もあります。
そのため、EBITDAだけで収益性を判断するのではなく、営業利益や経常利益をベースに総合的に判断することが大切です。
誤った判断を下さないためにも、EBITDAは便利だからといって全てを判断するのではなく、ひとつの指標として活用しましょう。

営業利益や経常利益など総合的な指標で判断する

EBITDAは、営業利益などの会計基準に基づいて算出された「利益指標」ではありません。
また、EBITDAの計算方法はさまざまな方法があり、企業によって算出方法が異なります。
EBITDAで算出したからといって、全てをEBITDAで判断するのではなく、営業利益や経常利益など、総合的な指標で判断することが重要です。
EBITDAで算出した指標は、参考指標として理解しましょう。

保険料や役員報酬も注視する

EBITDAの注意点の3つ目は、保険料や役員報酬も注視することです。
特に中小企業で、EBITDAを用いるときは、保険料や役員報酬を注視しましょう。
中小企業では、オーナー経営者の意向が強く反映されるため、ライフイベントに合わせて役員報酬を増額したり、節税のために保険料を計上したりすることがあります。
決算書上では、このような費用も差し引いた経常利益、営業利益、税引前当期純利益が記載されます。
役員報酬を増額した結果、EBITDAが小さくなっても、本業でお金を稼ぐ力が衰えた訳ではありません。
そのため、中小企業でEBITDAを活用するときは保険料と役員報酬の影響を除いた上で通期比較するなど、ふらっとに比較分析する必要があるのです。

5. M&AにおけるEBITDAの活用方法

ここからはM&AにおけるEBITDAの代表的な活用方法について紹介していきます。
EBITDAの活用方法は以下の通りです。

・EV/EBITDA倍率を用いて投資回収年数を割り出す
・業種が異なる会社の価値を算出する
・国内企業と海外企業を比較する


それでは、それぞれについて解説していきます。

EV/EBITDA倍率を用いて投資回収年数を割り出す

EV/EBITDA倍率とは、企業価値(EV)がEBITDAの何倍かを表す指標です。
EVとは、Enterprise Valueの略語で、株式譲渡によって企業を買い取るために必要な金額を表す指標です。
EVは以下の計算式で表すことができます。

EV=株式時価総額+有利子負債ー現金・預金など(すぐにキャッシュ化できるもの)

上記のように、全株式の代金に有利子負債の返済費用を足し、すぐに返済のためにキャッシュかできる現金・預金などを引いたものがEVです。
企業の価値を市場での売買という観点で示した指標とも言えます。
EV/EBITDA倍率の計算式は以下の通りです。

EV/EBITDA倍率=EV(株式時価総額+有利子負債ー現金・預金)÷EBITDA

上記計算式によって、投資回収年数を割り出すことができます。

業種が異なる会社の価値を算出する

EBITDA倍率を用いて業種が異なる対象案件の企業価値を算出することができます。
事業価値の計算方法は以下の手順で算出することが可能です。

1.複数の類似上場企業のEVおよびEBITDAから各社のEBITDA倍率を計算し、その平均値を計算する
2.対象企業のEBITDAに類似企業平均のEBITDA倍率を乗じることで、対象企業のEVを計算する
3.上記2で計算された対象企業のEVに日事業用資産を加算し、有利子負債等を控除し株式価値を求める

上記の手順で業種が異なる会社の価値を算出することができます。

国内企業と海外企業を比較する

EBITDAは国内企業とグローバル企業の業績や多国間、同業他社の業績の比較や分析のときに活用できます。
グローバル経済が進行する現在、企業評価や投資判断に用いる利益指標にはさまざまな種類がありますが、企業の収益力だけを見るのであれば当期純利益でも可能ですが、グローバル企業や多国間などの比較・分析には適していません。
当期純利益は税金・減価償却費・支払利息を差し引いており、国によって税金や金利、減価償却費が異なるため、適していないと言えるでしょう。
一方、EBITDAは税率や金利、償却方法などの影響を排除する指標のため、海外にある企業の収益性評価や海外拠点の業績評価などに活用でき、比較ができます。

6. EBITDAを有効活用して企業を分析しよう!

EBITDAは、企業価値を分析するために活用できる一方、EBITDAだけをもとに判断してしまうと、その企業が本当に価値があるのか分からない可能性もあります。
そのため、EBITDAは悪までも指標として有効活用することがおすすめです。
国内だけでなく、国外の企業の価値と比較することができるため、M&Aをするときなどには有効活用できます。
EBITDAをひとつの指標として活用し、EBITDAをうまく有効活用して企業の価値を分析しましょう。

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