SIer業界のM&A動向!売却・買収事例5選と成功のポイントを解説!【2024年最新】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

もともとSIer業界では、M&Aが活発でした。さらに、近年はDX化の推進のための企業の統合や、SEの人材不足を背景としたM&Aが更に増えつつあります。この記事では、SIer業界でのM&Aの動向について詳しく解説します。

目次

  1. SIer業界の概要と動向
  2. SIer業界のM&A動向
  3. SIer(システム受託開発会社)をM&Aで売却するメリット
  4. SIer(システム受託開発会社)のM&A・買収・売却事例5選
  5. SIer業界のM&Aの成功のポイント
  6. SIer業界のM&A・事業譲渡まとめ
  7. IT業界の成約事例一覧
  8. IT業界のM&A案件一覧
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1. SIer業界の概要と動向

SIer業界でもM&Aが活発に行われていますが、M&Aにはどのようなメリットが有るのでしょうか。この記事では、SIer業界の動向とM&Aの状況について詳しく解説します。まずは、SIer業界の概要です。

SIer業界とは

SIer(システムインテグレーター)とは、ITシステムの設計、開発、運用を一貫して行う事業のことです。IT業界の中の一つであり、医療機関や官公庁、金融機関といった非IT系の企業や機関が利用するITシステムの開発から運用までを担います。

通常は、大手のIT企業が受注して、細分化した業務を子会社や下請け会社に委託します。この業界構造が建設業界とよく似ていることから、「ITゼネコン」と呼ばれることもあるようです。

SIer業界の市場規模と動向

SIer業界の市場規模は、NIKKEI COMPASSによると2022年は6兆734億円でした。これは前年比3.3%増となっています

従来は、顧客企業ごとに個別にシステム開発を行っていましたが、近年はクラウドサービスの利用が主流となりつつあります。

2023年以降は世界的なインフレなどを背景とした景気後退が懸念されていますが、国内のDX関連需要は今後も増加することから、今後もSIer業界は2027年まで年間平均成長率2.9%で推移すると分析されています。

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2. SIer業界のM&A動向

SIer業界では、国内のDX化の流れを受けて需要が増加している一方で、エンジニアの人手不足が深刻化しています。そのために、優秀な人材を確保する目的でのM&Aが活発化しています

また、多重下請けの業界構造で、新規参入しやすいことから中小零細企業が多いのですが、下層の零細企業は利益を上げることが難しいことから、大手企業の傘下に入るM&Aも行われています。

今度も国内のDX化の流れは加速し続けることから、SIer業界におけるM&Aは活発に行われていくでしょう。

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3. SIer(システム受託開発会社)をM&Aで売却するメリット

SIer会社をM&Aで売却することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。3つのメリットについて詳しくみていきましょう。

売却益の獲得

会社をM&Aで売却することで、会社のオーナーはまとまった売却資金を得ることができます。この資金で新しい事業を立ち上げたり、個人の負債を返済したりすることもできるでしょう。

会社の売却の理由が経営者の引退であるのなら、引退後の生活費に充てることも可能です。

廃業の回避

SIer会社へシステム開発を依頼するようになったのは、1990年代以降です。1990年代に30代から40代でSIer会社を立ち上げた経営者は、現在、60代から70代となっています。

身内や社内に後継者がいない場合には、経営者の引退とともに廃業を選択せざるを得ません。廃業してしまうと、その会社が積み上げてきたノウハウや技術が失われてしまいます。

しかし、M&Aで会社を売却できれば、会社を存続させることができます。買収に名乗りを上げる会社が現れれば、事業の継続が可能です。

経営の安定化

SIer業界には中小零細企業が多く、経営がなかなか安定化しない会社も少なくありません。その一方で、チャレンジ精神に溢れたベンチャー企業には優秀なエンジニアが集まる事が多いので、買収したいという企業も少なくありません。

M&Aでの買収を希望する企業には多くのリソースがあり、そのような企業の傘下に入ることで会社の経営を安定化させて、従業員の待遇改善も図ることができます

経営が不安定な状態から脱却するためには、M&Aでの売却も選択肢として検討する価値があるでしょう。

多重下請け構造からの脱却

さらに、ITゼネコンとも呼ばれるSIer業界では、多重下請け構造が問題になっています。二次下請け、三次下請け、四次下請けと、何度も下請けに出されるうちに、中抜されてしまい、下の階層の会社にはほとんど利益が残らない状態です。

多重下請け構造での下の階層から脱却するためには、発注側企業の傘下に入る、という選択肢もあります。

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4. SIer(システム受託開発会社)のM&A・買収・売却事例5選

SIer会社をM&Aで売却、買収した事例を紹介します。

アイティエルホールディングスが駅探に子会社3社を株式譲渡した事例

2023年4月に、株式会社アイティエルホールディングス(以下、ITLHD)から、完全子会社であるグロースアンドコミュニケーションズ株式会社、株式会社サイバネット、株式会社アイティジェイの3社の全株式を、駅探が新設する合弁会社、株式会社駅探I&Iに譲渡するM&Aが発表されました。

新設する合弁会社、駅探I&Iには駅探が90%、ITLHDが10%を出資します。

駅探は乗換案内サービスの大手ですが、地域の生活者のニーズと事業者のサービスを結びつける地域マーケティングプラットフォーム構想を推進しています。

ITLHDは、まだ世の中にないITプラットフォームの構築と新しいマーケットの開拓というビジョンを掲げている会社です。

新設される合弁会社では、駅探グループの投資・インキュベーション事業を行います。そのために、システム・エンジニアリング、ソフトウェア、システム開発などに高い実績とノウハウを有している3社を子会社化する必要があったとのことです。

参考:株式会社駅探「合弁会社(連結⼦会社)の設⽴及び 合弁会社による株式取得に関するお知らせ

INCLUSIVEがグルコースを株式譲渡した事例

2023年3月に、INCLUSIVE株式会社から、連結子会社の株式会社グルコースの全株式を株式会社PR TIMESへ譲渡するM&Aの実施が発表されました。

株式会社グルコースは、Webやソーシャルメディア、モバイルアプリなどのソリューションの提供とプロトタイプを得意とするエンジニア集団です。

PR TIMESはプレスリリース配信サービスで、7万6,000社以上に利用されています。

このM&Aにより、PR TIMESとしては、DX化の流れの中で増大化するクライアントのニーズに応えるためのリソースを拡充し、マーケティングを強化したいとしています。

参考:株式会社 PR TIMES「株式会社グルコースはPR TIMESグループへ参画いたします

ゼネテックがログインを子会社化した事例

2023年1月に、株式会社ゼネテックから、ログイン株式会社の全株式を取得して子会社化するM&Aの実施が発表されました。

ゼネテックはシステムやエンジニアリングのソリューションを提供しているシステム開発会社で、位置情報通知アプリ「ココダヨ」の運用などを行っています。

ログインは大阪を拠点とするシステム開発受託会社で、確かな技術力を有しています。このM&Aにより、ゼネテックとしては大阪を中心とした関西エリアにおける顧客基盤の強化を図るとともに、即戦力となるエンジニア人材を獲得できるとしています。

参考:株式会社ゼネテック 「ログイン株式会社の株式取得(子会社化)に関する 株式譲渡契約締結完了のお知らせ

あいホールディングスがInnovation Farmを子会社化した事例

2022年8月に、あいホールディングス株式会社から、Innovation Farm株式会社の第三者割当増資の引受を行い、全株式を取得して子会社化するM&Aが発表されました。

あいホールディングスはIoT、節電、省エネシステムの開発、製造、販売などを行っています。

Innovation Farmは前身がLPガスの販売者ですが、現在はロボット、IoT、ネットワーク技術に優れた強みを持つ会社で、現在はLPガスの遠隔検針システムを開発して事業化を進めているところです。

このM&Aにより、LPガスの遠隔検針システムと、あいホールディングスのIoT技術との相乗効果が見込めるとしています。

参考:あい ホールディングス株式会社「Innovation Farm株式会社の第三者割当増資引受(子会社化)に関するお知らせ

テモナがサックルを子会社化した事例

2022年4月に、テモナ株式会社から、株式会社サックルの全株式を取得して子会社化するM&Aが発表されました。

テモナは主に事業者が消費者にサブスクリプションサービスを提供するための「サブスクストア」というクラウド型サービスの提供などを行っている会社です。

サックルは、Webサービスの開発を得意とする会社で、特に開発、デザイン、マーケティングの専門家による一元的、包括的なサポート体制に強みがあります。

このM&Aにより、テモナとしては開発力を強化するとともに、サブスクリプションビジネスを支援するための多様なソリューション開発と提供を実現できるとしています。

参考:テモナ株式会社「株式会社サックルの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

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5. SIer業界のM&Aの成功のポイント

SIer会社のM&Aを成功させるためのポイントを解説します。

専門家に相談する

M&Aによる会社の売却や買収を考え始めたら、まずはM&Aの専門家に相談してみましょう。M&Aを成功させるためには、最適な相手とのマッチングが大切です。専門家なら、売却側、買収側、それぞれの企業の状況をじっくりと把握した上で、最も適切な相手を探してくれるでしょう

また、法律や財務に関して高度な専門的な知識が必要なM&Aの手続きのサポートも万全に行ってくれます。まずは、M&Aの専門家への相談から始めましょう。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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優秀な人材を確保する

SIer会社の良し悪しは、エンジニアの質で大きく左右されます。会社を将来的により高額で売却したいと考えるのなら、その前からできるだけ優秀なエンジニアをたくさん確保することに務めましょう。

実際に、高額でいい条件での売却に成功しているSIer会社は、人材の質が決め手となっています。会社を売却したいけれども、優秀な人材が少ない、という場合には、まずは優秀な人材を集めることから始めましょう

売却後の人材流出に注意する

さらに、M&Aでの会社の売却後の人材流出も防止しましょう。M&AでSIer会社を買収する目的の一つが人材確保です。人材が流出する可能性が高いと判断されれば、金額も安く抑えられてしまいます。

M&Aの交渉で、現在いる人材の待遇をしっかりと交渉して、従業員の理解を得られるように努力しましょう。

自社の強みを明確にしてアピールする

M&Aの交渉のときには、売却側は自社の強みをしっかりとアピールできるようにしておきましょう。自社の得意な分野やエンジニアの質などを、経営者が的確に理解していなければ、アピールすることもできません。

買収側にとってどのようなメリットが有るのかを明確化できなければ、売却金額が安く抑えられてしまう可能性もあります。

売却先は同じ業界・業態の会社を選ぶ

SIerと一口に言っても、組み込み開発、アプリ開発、業務システム開発など、分野は幅広くあります。

違う分野の会社では、自社の価値を正しく算定してもらえない可能性があります。
M&Aで会社を売却するときには、自社の経営資源の価値を最大化させることができるように、同じ分野の会社を売却先に選ぶようにしましょう。

優良な取引先を増やす

M&Aで会社を買収する目的の一つが、収益の拡大という会社もあります。そのような会社にとっては、売却側の会社の取引先がとても重要なポイントになります。

今まで取引がなかった大手企業とのコネクションを作りたい、今まで基盤がなかった地域や海外へ進出したい、という場合に、自社でゼロから基盤を作るよりも、M&Aでの会社の買収に乗り出すこともあるのです。

そのような会社に高額で買収してもらうためにも、優秀な取引先を増やすように日頃から努力していきましょう。

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6. SIer業界のM&A・事業譲渡まとめ

社会全体のDX化の流れの中で、SIer会社の重要性も増しています。その中で、業界再編の意味もあり、M&Aが活発化しています。M&Aで会社を高額売却するためには、適切な相手へ最適なタイミングでの売却が大切です。

M&Aの相手探しは専門家の手を借りるのが安心でしょう。M&Aでの会社の売却を考えているのなら、まずはM&Aの専門家に相談して下さい。

7. IT業界の成約事例一覧

8. IT業界のM&A案件一覧

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