2025年02月20日更新
バス会社のM&A事例!案件例やメリット・スキーム紹介【2025年最新】
本記事では、乗合バス・貸切バス・観光バスなどを運行するバス会社のM&A事例やバス会社の現状、近年のM&A動向などについて解説します。バス会社のM&A案件一覧も紹介しますので、バス会社のM&Aをご検討の方はぜひ参考にしてください。
目次
1. バス会社・業界を取り巻く現状
バス会社とは、一般乗合旅客自動車運送事業、または一般貸切旅客自動車運送事業の許可を運輸局から取得して事業を行っている会社をさします。一般乗合旅客自動車運送事業とは、路線バスなどの乗合バス事業のことです。一般貸切旅客自動車運送事業とは、観光バスなどの貸切バス事業のことを言います。
貸切バス事業とは、団体客などがバスを1台借り切って利用する事業のことです。不特定多数の個人乗客が乗り込む乗合バス事業とは、許認可の種類が異なります。
また、観光バス事業は、貸切バス事業に含まれます。団体客が借り切ってバスを利用する点は同じですが、観光バスの場合は観光用に改装されていることがほとんどです。
バス会社業界の現状を、4つのトピックに分けて解説します。
輸送人員は増加傾向にある
バスやタクシーの輸送人員は、コロナ禍の影響が薄れたことで増加傾向にあります。2023年度の輸送人員は、乗り合いバスが前年比4.7%増の約37.9億人、貸し切りバスが14.7%増の約2.3億人、ハイヤー・タクシーが2.7%増の約9.9億人となりました。
しかし、運転手の人手不足は依然として深刻で、「2024年問題」も業界の経営に大きな影響を及ぼしています。国土交通省の推計では、2029年にはタクシー運転手が約6万7,000人、バス運転手が約2万2,000人不足すると見込まれており、業界全体で抜本的な対策が求められています。
参考:日経コンパス「バス・タクシー」
慢性的な人材不足
バス会社業界は慢性的な人材不足となっており、特にバス運転手の数が足りていません。バス運転手の不足が現役バス運転手の過剰労働を生み出し、労働環境の悪化がバス運転手志望者を減らすことになるといった悪循環となりました。
帝国データバンクが全国のバス会社127社を対象に実施した調査によると、2023年に路線の減便や廃止を実施した会社は98社(全体の77%)に上りました。
これまで、バス会社は運転手の残業を増やすことで人手不足を補ってきましたが、残業規制の強化により対応が困難となり、多くの会社が路線網の縮小を余儀なくされました。運転手不足の深刻化に伴い、公共交通機関の利便性低下が懸念される状況となっています。
バス運転手不足を解消するため、国では免許取得の優遇措置を設け、バス会社各社は労働環境の改善に努めています。
信頼性の向上が求められている
バス会社による重大事故が頻発し、ニュースでも大きく取り上げられたことで、バス会社業界の信頼性は一時期、大きく下がりました。バス会社業界の信頼性を回復するため、バス会社各社は労働環境の改善や運行システムの見直し、ITシステムの導入など、さまざまな施策を行っています。
今後は、自動運転バスや環境にやさしいバスの導入など、バス会社業界のさらなる安全性・信頼性の向上が求められていくでしょう。
大手・中堅バス会社によるM&A需要が高まっている
地方の中小路線バス会社は、経営的に厳しかったり後継者が不在であったりしても、利用客の利便性があるため簡単に廃業できません。そこで、生き残りをかけて中小バス会社同士がM&Aで企業規模を拡大する動きがあります。
大手・中堅バス会社にM&Aで会社を売却する中小バス会社もあり、その目的は事業承継です。大手・中堅バス会社側でも、積極的にM&Aで買収を図る企業があります。それらの企業では、数が増えた子会社とその事業エリアなどを再編するため、子会社同士の合併を行うケースも少なくありません。
2. バス会社のM&Aスキーム
大手・中堅バス会社グループ内では、組織再編のために合併が行われることもありますが、中小バス会社が関係するM&Aで用いられるM&Aスキーム(手法)は、ほとんどが株式譲渡か事業譲渡です。ここでは、2つのM&Aスキームの概要を説明します。
株式譲渡
売り手側バス会社の株式を買い手が買収することで、買い手が売り手のバス会社の経営権を取得するスキームが株式譲渡です。もちろん、経営権を得るには、過半数以上の株式を取得する必要があります。中小バス会社の場合、経営者やその親族で全株式を所有していることが多く、全株式取得も難しくないでしょう。
株式譲渡には以下のようなメリットがあります。
- 株式の売買で成立するため、交渉や手続きがM&Aスキームの中で最も簡便。
- 売り手が個人の場合、株式譲渡所得は分離課税であるため低い税率で納税できる。
- 包括承継であるため、買い手は許認可をそのまま引継げる。
- 会社組織はそのまま維持されるため、買収後も一定の独立性が保たれる。
一方で、以下の点は株式譲渡のデメリットになります。
- 経営が苦しく負債を抱えているようなバス会社の場合、買い手が見つかりづらい。
- 売り手側経営者は、経営権を失う。
- 包括承継であるため、偶発債務などの簿外債務や訴訟リスクなどM&A後、経営にダメージを及ぼす事象を引継いでしまうリスクがある(買い手側)。
事業譲渡
売り手側バス会社の事業や、それに関連する資産、権利などを選別して売買するM&Aスキームが事業譲渡です。売り手側の会社組織は、そのまま経営者の手元に残ります。会社の事業の売買なので、売り手側当事者は経営者個人ではなく会社です。事業譲渡には、以下のようなメリットがあります。
- 相手との合意は必要だが、売りたいものだけを売れるし買いたいものだけを買える。
- 売り手側バス会社に負債があっても、それを取引内容にしなければ株式譲渡よりも買い手が見つかりやすい。
- 売り手は会社組織が手元に残るので、継続して新規事業立ち上げや税金対策の運用などに役立つ。
- 買い手は、譲受内容を選別できるので、株式譲渡のような経営リスクの承継を排除できる。
一方で、以下の点は事業譲渡のデメリットです。
- 個別承継であるため、取引先との契約や従業員との労働契約などは全て個別に締結し直す必要があり手続き面が非常に煩雑。
- 株式譲渡のような包括承継ではないため、買い手は許認可を引継げず新たに取得し直す必要がある。
- 上記2点の手間を踏まえると株式譲渡よりも時間がかかる。
- 法律により、売り手には競業避止義務が発生する(20年間、同一地域および隣接地域で譲渡した事業を行えない)。
3. バス業界のM&A案件例
弊社M&Aが取り扱っているバス業界のM&A案件例をご紹介します。
【2社譲渡/首都圏】貸切バス・タクシーの運営企業
保有車両はそれぞれ25台以上です。業歴長く地域での実績と信頼度が高いです。
運行管理者や整備管理者が複数名在籍しており、譲渡後の運営リスクも軽微です。コロナ禍を脱し業績は回復中で、進行期は前期と同等以上で推移しています。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 5億円〜10億円 |
譲渡希望額 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【東日本エリア・業歴30年以上】自動車解体・中古バス買取販売業
業界でも名が知れている企業であり、業歴も申し分ありません。現在は積極的な営業をしていませんが、ピーク時の売上は3億円弱であり、仕入の資金力と販売先があれば有効活用が見込めます。売主より、成長余地やシナジー有無の協議の場として、早期のTOP面談の応諾を受けています。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 〜1000万円 |
譲渡希望額 | 希望なし |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
他にもM&A総合研究所で取り扱っている案件について詳しく知りたい方は以下の「M&A・事業承継案件一覧」のページよりご確認ください。
4. バス会社のM&A事例【2025年最新版】
ここからは、近年におけるバス会社のM&A事例を紹介します
北海道中央バスによるニセコバスの株式取得
2024年9月13日、北海道中央バスは、連結子会社であるニセコバス(北海道虻田郡)の完全子会社化を決定しました。
本件は、ニセコバスが北海道中央バス以外の株主から株式(自己株式)を取得し、取得後に消却する形で実施されました。
北海道中央バスは、旅客自動車運送事業(乗合・貸切)をはじめ、不動産、ホテル、飲食、公衆浴場、旅行業を展開。一方、ニセコバスは旅客自動車運送事業を行っています。
本件M&Aの目的は、グループ経営の自由度を高め、経営資源を効果的に活用することにあります。
南海電気鉄道による明光バスの株式取得
2024年8月9日、南海電気鉄道は、近鉄バスホールディングス株式会社および近鉄保険サービスが保有する明光バス(和歌山県西牟婁郡)の発行済株式を取得し、子会社化することを決定しました。
南海電気鉄道は、鉄道事業を中心に、開発事業、流通事業、土地建物賃貸事業などを展開。明光バスは、和歌山県内で路線バス・貸切バス・高速バス事業を運営しており、特に熊野古道や南紀白浜温泉など観光地と都市圏を結ぶ重要な交通インフラを担っています。
本件M&Aにより、南海電気鉄道は和歌山エリアでのツーリズム関連事業を強化し、事業拡充を進めます。さらに、本件を契機に紀伊半島エリアにおける観光事業で近鉄グループとの連携を深める方針です。
関東鉄道による関鉄パープルバスと関鉄グリーンバスの吸収合併
2024年5月24日、関東鉄道(茨城県土浦市)は、関鉄パープルバス(茨城県下妻市)および関鉄グリーンバス(茨城県石岡市)を吸収合併する方針を発表しました。本合併は、関東鉄道を存続会社とし、関係官庁の認可を前提に進められます。
関東鉄道は鉄道およびバスによる一般運輸業や不動産事業を展開。一方、関鉄パープルバス・関鉄グリーンバスは、一般乗合・貸切バス事業を運営しています。
今回の合併は、2024年4月1日に改正された「バス運転者の改善基準告示」により深刻化した乗務員不足への対応策として、グループ全体での乗務員採用の強化や管理部門の一本化による事業運営の効率化を図ることを目的としています。
茨城交通によるなの花交通バスの株式取得
なの花交通バスは2021(令和3)年8月、みちのりグループの茨城交通へ全ての株式を譲渡しました。茨城交通は茨城県の県央・県北地区を中心にバス事業や旅行業、タクシー事業、管理事業などを展開している企業です。
なの花交通バスは、貸切バス事業をメインとして、企業の送迎や路線バス、都市型ハイヤー事業などを行っていました。今回のM&Aにより、茨城・千葉・東京と広域連携の事業展開の拡大など、相互に連携した事業運営を図ります。
丸建つばさ交通による丸建自動車の事業取得
丸建自動車は2020(令和2)年5月15日に、民事再生法の適用を申請し、民事再生手続廃止決定を発表しました。その後2020年10月、丸建つばさ交通との間で事業の全部を譲渡する契約を締結し、関東運輸局に対して各事業の譲渡譲受に関する認可申請を行ったのです。
そして、2021年2月に関東運輸局から事業譲受認可が下り、事業や公式サイトが丸建つばさ交通へ譲渡されました。今回のM&Aにより、以前からの施設様送迎バス、スクールバスなどは、現行どおり運行を目指します。
ナオヨシによる海部観光の株式取得
海部観光は2020年10月、ナオヨシにグループ会社を含む株式を譲渡し傘下に入りました。ナオヨシは、経営コンサルティングを行う会社です。海部観光は徳島県美波町に拠点を置き、徳島と関西圏や東京を結ぶ高速バスを運行していました。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴うバス需要の急減で経営環境が悪化し、M&Aで株式譲渡を行ったのです。今回のM&Aにより、本社を阿南市に移し、ナオヨシのもとで観光や物流などの事業拡大で収益改善を目指すとしています。
住友商事によるテロプラン社への出資
テロプラン社は2020年6月、住友商事から出資を受けました。テロプラン社はポーランドに拠点を置いており、アプリを活用したオンデマンドバスなどの事業を行う交通会社です。他にも民間バス会社への運行管理、価格設定のシステムなどを提供しています。
今回の出資により、住友商事は、運行管理システムを行っているテロプラン社のノウハウを吸収し、次世代移動サービス「MaaS(マース)」に生かすなど、欧州や他の国での展開を目指す狙いです。
5. バス会社のM&Aを行うメリット
後継者難などで事業承継問題に直面するバス会社の企業経営者にとって、自社の苦境を救う方法の1つとしてM&Aが注目されています。ここでは、バス会社のM&Aにおける売却側、買収側それぞれのメリットを確認しましょう。
売却側のメリット
バス会社のM&Aにおける売却側のメリットは、以下のとおりです。
- 従業員の雇用をそのまま維持できる
- 後継者問題の解決
- 大手グループ会社の傘下に入ることで、安定的・効率的な事業経営が可能
- ドライバーを採用しやすい
- 創業者利益の獲得
- 借入金の個人保証や担保を解消できる(株式譲渡の場合のみ)
買収側のメリット
バス会社のM&Aにおける買収側のメリットは、以下のとおりです。
- M&Aによりバス車両を一括で取得可能
- 許認可を獲得できる(事業譲渡の場合は除く)
- 技術・資格を有する人材を確保できる
- 事業基盤の拡大によりスケールメリットを享受できる
6. バス会社のM&A相場
日本ではM&Aに関して譲渡価額など詳しい内容が公開されないことも珍しくありません。いずれにしても、売却されるバス会社の規模によって、取引価額は大きく変動します。一般的な相場としては、小規模であれば数百万円、中規模であれば数千万円、大規模の場合は数十億円程度です。
実際にM&Aでどのくらいの売却価額となるかは、M&A仲介会社などに相談し企業価値評価を受けることで目安を把握できるでしょう。
7. バス会社のM&Aでおすすめの相談先
バス会社のM&Aでおすすめの相談先をご確認します。
金融機関
M&Aを進める際、取引のある銀行や証券会社などの金融機関に相談することは有効な選択肢です。資金調達や財務面での課題が多いM&Aにおいて、金融の専門家である金融機関のサポートを受けることで、適切なアドバイスを得られる可能性があります。
金融機関は広範なネットワークを持ち、会計士や税理士と同様に企業を定期的に訪問するため、信頼関係を築きやすいです。また、大手金融機関ではM&Aを専門に扱う部署があり、経験豊富なスタッフによるサポートを受けられる点も強みです。取引実績のある企業であれば、スムーズに対応してもらえる可能性が高まります。
金融機関は一般的に中小企業向けのM&A支援には消極的で、相手企業の選定が難しく、手数料も高額になりがちです。また、大規模な組織であるため、柔軟かつ迅速な対応を期待するのは難しい場合があります。
公的機関
商工会議所や自治体などの公的機関も、M&Aの相談先として利用できます。特に地方企業とのネットワークを持つため、地方でのM&Aを検討している場合に有効です。
公的機関は、中小企業向けの助成金や補助金制度を提供しており、資金面での支援を受けられる可能性があります。金融機関の融資とは異なり、返済不要の制度が多いため、資金調達の選択肢として活用しやすい点も魅力です。
商工会議所や自治体はM&A専門の機関ではないため、相手企業の選定や手続きのサポートは十分に期待できません。また、支援を受けるには会員登録が必要で、費用がかかる場合があります。助成金や補助金は申請期間が限られており、受給までに時間がかかるため、事前に申請要件を確認することが重要です。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&A業務を専門に手掛ける企業であり、豊富な知見と実績を持つため、スムーズな相談が可能です。初期相談から実行、アフターフォローまで幅広い支援を提供します。
M&Aに関する専門知識や最新の市場動向を熟知しており、適切なアドバイスを受けられます。アドバイザーが在籍し、幅広いネットワークを活用できるため、希望に合う相手企業を見つけやすい点も強みです。また、金融機関に比べて成功報酬が低いケースが多い点も利点です。
相談料や着手金が発生する場合があり、成功報酬は売却金額の5~10%、最低でも300万円程度かかることが一般的です。また、一部の仲介会社では、成功報酬を優先しM&Aの成立を急ぐケースがあり、慎重な選定が必要です。
8. バス会社のM&A事例まとめ
バス会社業界のM&Aは、大手・中堅バス会社による中小バス会社へのM&A需要が高まっている状況です。バス会社のM&Aを成功させるには、戦略策定・交渉力などが不可欠となるため、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。
バス会社のM&Aを成功させるには、売り手・買い手双方が満足のいく取引相手を見つけることが重要です。M&A総合研究所では、幅広い情報や培ったノウハウによって、ご希望条件に最適な売却・買収先を探します。
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9. バス業界の成約事例一覧
10. バス業界のM&A案件一覧
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