日本語学校業界のM&A・買収・売却!業界動向・相場・手法を解説!【案件事例あり】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

日本の文化が世界に広がりをみせるなか、日本語を学習しようとする外国人の数が増加しています。日本語学校の需要も伸びており、M&A市場においても注目を集めている業界です。本記事では、日本語学校の業界動向やM&A相場・手法について解説します。

目次

  1. 日本語学校とは
  2. 日本語学校業界のM&A・買収・売却動向
  3. 日本語学校業界のM&A・買収・売却相場
  4. 日本語学校業界のM&A・買収・売却手法
  5. 日本語学校業界のM&A・買収・売却の案件事例
  6. 今、日本語学校業界のM&A・買収・売却がおすすめ理由
  7. 日本語学校業界のM&A・買収・売却の際に確認すべきポイント
  8. 日本語学校業界のM&A・買収・売却におすすめの相談先
  9. まとめ
  10. 学校法人・専門学校業界の成約事例一覧
  11. 学校法人・専門学校業界のM&A案件一覧
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1. 日本語学校とは

日本語学校とは、日本語を母語としない外国人に対して、日本語教育を実施する機関です。

主に日本の大学や専門学校に入学するための前準備として利用されており、昨今は日本で就職するために日本語を学習しようとする外国人も増えています。

法務省の告示を受けている日本語学校は、日本語学習を目的とする外国人に対して、在留資格「留学」を取得させることが可能です。日本に滞在していない外国人も日本に招いて日本語を学習させることができます。

所轄する省庁が複数存在

日本語学校は複数の省庁によって所管されています。文化庁・外務省・法務省などが、日本語学校と高等教育機関の連携を高める施策などを通して、多くの外国人に対して日本で働きやすい環境を整えることを目的に管理しています。

日本国内の少子化によって労働力不足が深刻化するなか、外国人の労働力を確保するために積極的な施策を行っています。

さまざまな経営主体

日本語学校は経営主体が多様化しています。個人経営や株式会社経営の日本語学校もあれば、学校法人や一般社団法人が経営している日本語学校もあります。

経営主体によって規模も大きく異なり、日本語学校業界全体の経営実態を把握することが難しい特徴があります。また、経営主体によって経営状態に大きな開きがあるのも事実です。

英会話スクールとの違い

英会話スクールとは、日本人に対して英語教育を実施するスクールです。ネイティブ講師との会話を通じて実践的な英語を学習できるとして、1980年代から日本国内で急速に広まっています。

日本語学校と英会話スクールには、言語学習を目的とする共通点がありますが、対象者と学習言語の2点において大きな違いがあり、日本語学校は外国人に日本語を、英会話スクールは日本人に英語を教育します。
 

  日本語学校 英会話スクール
対象者 外国人 日本人
学習言語 日本語 英語

2. 日本語学校業界のM&A・買収・売却動向

外国人による日本語学習の需要が高まっていることで、日本語学校業界全体の需要が上がりつつあります。その一方でM&A・買収・売却が活性化していることにも注目が集まっています。

M&A活性化の要因は、日本語学校業界全体の動向や業界が抱えている問題点です。この章では、それぞれのポイントを解説します。

日本語学校業界の動向

日本語学校は経営主体が多岐に渡るため、業界内に身を置いていても動向が分かりづらい問題があります。まずは日本語学校業界の動向から確認します。

【日本語学校業界の動向】

  1. 施設数などは横ばい傾向
  2. 教師数・生徒数は増加傾向
  3. 生徒はアジア地域出身者が全体の80%程度

1.施設数などは横ばい傾向

文化庁の「日本語教育実態調査」によると、直近10年の国内の日本語教育実施機関・施設数は2000件前後の横ばい傾向にあります。

法務省による告示を受けて新規参入する日本語学校も多いですが、抹消を受ける日本語学校も多く、結果的に施設数は横ばいになっているとみられます。

2.教師数・生徒数は増加傾向

文化庁の「日本語教育実態調査」によると、平成29年度時点で日本語教師数39,588人、生徒数239,598人となっています。

相互作用によって年々増加の一途を辿っており、日本語学校と日本語教師の需要が高まっていることが伺えます。

3.生徒はアジア地域出身者が全体の80%程度

平成29年度の日本語学校生徒は、239,597人中202,127人(84.4%)がアジア地域出身者であり、最も大きな割合を占めているのは中国人76,432人(全体の31.9%)です。

韓国は2011年の中等教育の教育課程改定で第二外国語が必修科目から外されたことにより、日本語を学習しようとする韓国人が減っていますが、依然として中国人が多いことでアジア地域出身者が大半を占めています。

日本語学校業界が抱える問題点

日本語学校は需要が高まっているものの、いくつかの問題点を抱えていることからM&Aが活性化しているのも事実です。ここでは、日本語学校業界でM&Aが活性化する要因を解説します。

【日本語学校業界が抱える問題点】

  1. 生徒が置かれた状況に影響を受けやすい
  2. 生徒数に対して教師数が足りない状況も目立つ
  3. 学費が未納となるケースもある

1.生徒が置かれた状況に影響を受けやすい

日本語学校は生徒が外国人留学生ということもあり、生徒や出身国の政治経済状況に大きく影響を受けやすい特徴があります。

出身国の政治経済の変動によって生徒の経済状況にも変化を与え、居住環境・収入や支出・健康状態などに大きな影響を与えることも少なくありません。

2.生徒数に対して教師数が足りない状況も目立つ

日本語学校の教師数は年々増えていますが、それでも増加する生徒数に対して教師数が追いついていない問題があります。

足りない教師を補うために非常勤の日本語教師を採用する機関も多く、対応に追われている日本語学校が多いのが現状です。

日本語教師が不足する原因は、日本語教師になるハードルの高さです。日本語教師に求められる特定の資格は存在しませんが、文化庁が推奨する420時間の講座受講というものがあります。

日本語教師の質と安定した向上を目指すためとしていますが、ハードルを高いと感じる方も多いのも事実となっており、日本語教師が不足する一因として考えられています。

3.学費が未納となるケースもある

日本語学校の生徒数は増えている一方で、継続した授業料を支払うことができず、途中退学する外国人も多いのも現状です。

目先の問題としては生徒と収入の減少ですが、途中退学して失踪する外国人が一定以上の割合を超えると認定取り消しという問題もあります。

今後の入学生の数にも大きな影響を及ぼすことになるため、長期的な視野でみても大きな損失となっています。

3. 日本語学校業界のM&A・買収・売却相場

日本語学校のM&A・買収・売却相場は、企業価値評価と呼ばれる計算方法を用いることで価値を算出します。日本語学校の企業価値評価で大きく影響するのは以下の3点です。
 

  • 教師数
  • 生徒数
  • 適正校の認定

適正校とは、法務省より外国人の在籍管理が適正であることを通知されている日本語学校のことです。

適正校に認定されると、残留資格期間の更新が不要になったり生徒の定数が増員されたりと、さまざまなメリットを受けられます。

教師数や生徒数についてはM&A後の安定した収益を期待することができるので、純粋に価値として評価されやすい傾向にあります。

これらの要素を無形資産として計上して、土地や建物などの有形資産と合わせた価値が日本語学校のM&A・買収・売却相場になります。

【関連】M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?算定方法を解説【事例あり】
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4. 日本語学校業界のM&A・買収・売却手法

日本語学校業界のM&Aで主に利用されている手法は「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つがあります。それぞれ異なる効果をもっているので、特徴を把握したうえで適切な手法を選択することが大切です。

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手の保有する株式を譲渡することで経営権を移転するM&A手法です。株式会社は保有する株式に応じて経営に干渉できる仕組みになっており、保有株式が1/2を超えると経営権を掌握することができます。

会社の保有する資産を包括的に承継することができるので、ほかのM&A手法と比較すると手続きが簡便な特徴があります。

また、中小規模の会社は経営者が100%の株式を保有していることが多いので、M&Aに株式譲渡が用いられることが多くなっています。

事業譲渡

事業譲渡とは、事業の全部あるいは一部を譲渡するM&A手法です。会社そのものの買収・売却ではなく、事業を対象としている特徴があります。

譲渡対象を自由に選択できるメリットがある一方で、包括的な承継ができないというデメリットもあります。教師など従業員の引き継ぎを希望する場合は、転籍に関する同意を個別に得なくてはなりません。

また、株式譲渡は株式の売買が伴うM&A手法ですが、事業譲渡は事業の売買を行うものです。売り手が個人事業主のように法人形態ではない場合は、事業譲渡を用いてM&Aすることになります。

【関連】事業譲渡とは?会社譲渡との違いや手続きの流れを分かりやすく解説!

5. 日本語学校業界のM&A・買収・売却の案件事例

日本語学校業界はM&Aが活性化しています。この章では、数ある日本語学校のM&A案件から一部をピックアップして紹介します。

【日本語学校業界のM&A・買収・売却の案件事例】

  1. 都内の日本語学校のM&A売却案件
  2. 定員200名の日本語学校のM&A売却案件
  3. アジア生徒対象の日本語学校のM&A売却案件

1.都内の日本語学校のM&A売却案件

東京都23区内に構える日本語学校のM&A売却案件です。現在の営業利益は赤字となっており、経営戦略の見直しを理由に事業譲渡を希望されています。

赤字となる主な理由には生徒の定数による問題を挙げており、校舎規模は200名であるものの定数100名ということで経営が圧迫しています。

しかし、今後は150名の認可がおりる予定となっており、黒字転換も目前ということです。
 

地域 東京都23区
売上高 2500万~5000万円
希望譲渡価格 1億~2億5000万円
法務省の認定 適正校

2.定員200名の日本語学校のM&A売却案件

東京都内の最寄り駅徒歩7分圏内の日本語学校のM&A売却案件です。事業の選択と集中を目的に事業譲渡を希望されています。

譲渡対象は、不動産・設備・営業権・FC・ノウハウであり、教師の引き継ぎは別途相談になります。現在の定員数は200名で、分校を作ることで最大300名まで拡張することが可能です。
 

地域 東京都
売上高 500万円未満
希望譲渡価格 1億~2億円
法務省の認定 適正校

3.アジア生徒対象の日本語学校のM&A売却案件

アジア圏の留学生を対象にしている日本語学校のM&A売却案件です。別事業へ注力することを理由に事業譲渡を希望されています。

強みとして挙げられているポイントは、アジア現地の募集・仲介機関とのネットワークです。高い審査通過率を持っていることから募集・仲介機関からの信頼も厚く、生徒を確保するまでの流れを確立しています。

正社員は常勤教師5名と事務員3名の合計8名で、講師は全員日本人であり日本語を用いて留学生に日本語を教えています。M&Aによって経営者は抜けることになりますが、正社員8名の引き継ぎを希望されています。
 

地域 関東
売上高 5000万~1億円
希望譲渡価格 2億~5億円
法務省の認定 適正校

6. 今、日本語学校業界のM&A・買収・売却がおすすめ理由

日本語学校業界のM&Aが活性化する背景には、M&Aで得られるさまざまなメリットがあります。この章では、日本語学校業界のM&Aがおすすめな理由を解説します。

【日本語学校業界のM&A・買収・売却がおすすめな理由】

  1. 閉校以外の選択肢を広げる
  2. 人材が集まらない問題の解決手段になる
  3. 後継者問題の解決ができる
  4. 経営不安から開放される
  5. 需要のある業界である

1.閉校以外の選択肢を広げる

日本語学校の経営状態が悪化すると真っ先に閉校を視野に入れてしまいがちですが、実は閉校以外にも取りうる選択肢は沢山あります。

M&A・買収・売却であれば、日本語学校の存続が叶い、教師が失業したり生徒が学び場を失ってしまったりすることがありません。

2.人材が集まらない問題の解決手段になる

日本語学校業界では日本語教師不足が深刻化しています。外国人による日本語学習の需要が高まる一方で、教師の確保ができずに思うように事業規模を拡大できない悩みを抱えている日本語学校も多いです。

M&Aなら優秀な教師を同時に確保することも可能なので、M&A・買収・売却で人材問題を一気に解決しようとする動きも強まっています。

3.後継者問題の解決ができる

少子高齢化や経営環境による影響から後継者問題を抱える日本語学校も増加しています。経営者が高齢を迎えているものの、適任となる後継者が存在しないというもので日本語学校の存続に関わる深刻な問題です

M&Aなら適任者に日本語学校の経営を託すことができ、後継者問題に頭を悩ませることもなくなります。

【関連】後継者不足の解決策・対策10選!【M&A/事業承継/廃業】

4.経営不安から開放される

経営者は常に経営に関する不安と戦い続けています。母体の大きい日本語学校であれば周囲に相談できる人材も多いですが、中小や個人事業のように規模の小さい日本語学校は経営者一人で経営の全てを担っているところも少なくありません。

また、資金面による不安もあります。銀行からの融資に対して個人保証・担保を提供している場合は、事業の失敗は個人資産の喪失も意味しています。

経営者である以上、こうした悩みには向き合い続けなければならないものですが、M&Aを実施することで経営者としての立場から離れると同時に経営不安から開放されることも可能です。

5.需要のある業界である

日本語学校業界のM&Aが活性化する最も大きな要因が、業界全体の需要増加です。生徒数はアジア地域を中心に増加傾向にあり、教師数も不足気味ではありながらも総数は着実に増えています。

今後も日本での進学や就職を目的とする外国人が増加していく見方がされており、日本語学校業界全体も上向きになることが想定されています。

7. 日本語学校業界のM&A・買収・売却の際に確認すべきポイント

日本語学校業界のM&A・買収・売却の際は、いくつかの注意すべきポイントがあります。M&A後の経営に大きな影響を及ぼす可能性もありますので、事前に把握しておくことが大切です。

【日本語学校業界のM&A・買収・売却の際に確認すべきポイント】

  1. 施設・設備・物件の所有者はだれか
  2. 教師は常勤か非常勤か
  3. 収益性や利益の確保ができているか
  4. 法令に遵守した経営をしているか
  5. 効率化が進んでいるか

1.施設・設備・物件の所有者はだれか

日本語学校の施設・設備・物件は原則として設置者の保有であることが求められています。

外国人が日本語を学習できる安定した環境を整えるためとされており、日本語学校を設立するうえで重要なポイントの一つです。

2.教師は常勤か非常勤か

日本語学校の教師は常勤と非常勤に分類され、M&A後の経営状態に大きな影響を与えるものなので、常勤と非常勤の割合も把握しておく必要があります。

常勤はフルタイムで就業する教師です。毎日行う授業以外に教材作りや生徒の進学指導など、幅広い業務を担当することが多いです。

非常勤は授業のコマ数で契約する教師です。授業や採点業務のみを担当しており、その他の業務内容は日本語学校によって多少の違いはありますが、基本的に事務・雑務はありません。

3.収益性や利益の確保ができているか

日本語学校の収益性をみるうえで重要なポイントは生徒数です。毎年安定した数の生徒が入学しているのであれば、収益性が安定していると判断することができます。

一方で、入学する生徒数のバラツキが激しかったり、収益が見込めないほど生徒数が少なかったりする場合、経営状態が好ましくないという判断になるためM&Aの条件も厳しくなるでしょう。

4.法令に遵守した経営をしているか

日本語教育機関が留学生を受け入れるためには、法務省の入国管理局より発行される在留資格認定証が必要になります。

交付後も定期的な更新が必要となっており、在学中は日本語教育機関は責任を持って行うことが求められます。

これらの法令を遵守できていない場合は法的リスクが高いことを意味しており、M&A後に認可を取り消されてしまう恐れもあります。

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5.効率化が進んでいるか

日本語学校は生徒の管理・申請・証明書等の管理業務が多くなる傾向にあります。管理業務に割くリソースが増えるほど業務全体の効率性が損なわれてしまうため、効率化は欠かせません。

在留資格申請や生徒の情報を管理するシステムを導入することで、入学から卒業までの管理業務フローを一元化させることも可能です。

また、効率化が行われている日本語学校であれば、M&Aの円滑な進行と統合にも期待できます。

8. 日本語学校業界のM&A・買収・売却におすすめの相談先

日本語学校業界のM&A・買収・売却は、事前に確認しておくべきポイントがいくつもあります。全てを押さえたうえで実施するためにはM&Aの専門家によるサポートがおすすめです。

M&A総合研究所は、中堅・中小規模のM&Aを請け負うM&A仲介会社です。さまざまな業種で成約実績を有しており、日本語学校業界に精通したアドバイザーが専任につきフルサポートいたします

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9. まとめ

日本語学校業界の動向やM&A事情を解説しました。日本語を学ぼうとする外国人は増加の一途を辿っていて、業界全体の需要増加とM&A・買収・売却の活性化が激しい業界です。

今後も日本での生活を目指す外国人の増加が見込まれており、状況は常に変化していくものですが、業界動向に気を払っておくことでM&Aの成功率を高めることができます。

【日本語学校業界の動向】

  1. 施設数などは横ばい傾向
  2. 教師数・生徒数は増加傾向
  3. 生徒はアジア地域出身者が全体の80%程度

【日本語学校業界が抱える問題点】
  1. 生徒が置かれた状況に影響を受けやすい
  2. 生徒数に対して教師数が足りない状況も目立つ
  3. 学費が未納となるケースもある

【日本語学校業界のM&A・買収・売却がおすすめな理由】
  1. 閉校のみ選択肢を広げる
  2. 人材が集まらない問題の解決手段になる
  3. 後継者問題の解決ができる
  4. 経営不安から開放される
  5. 需要のある業界である

10. 学校法人・専門学校業界の成約事例一覧

11. 学校法人・専門学校業界のM&A案件一覧

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