2018年12月31日公開
2018年12月31日更新
同族会社における非上場株式譲渡の税金まとめ!個人から法人、個人から個人に売却するとどうなる?

同族会社間での非上場株式譲渡を行った場合、税金はどのように課税されるのでしょうか。個人から個人、法人から個人など、場合によって課税される方法は様々です。複雑な同族会社間の非上場株式譲渡の税金について事例を用いて解説します。
1. 同族会社とは
同族会社とは、会社の株主の3人以下、およびこれらの人々と特殊な関係にある個人・法人が議決権の50%超を保有している会社を言います。
具体的には、親族や、事実上の婚姻関係にあるもの、使用人等、株主と関係のある人々により、その会社が発行した株式総数の半分超が保有されていたり、出資金の合計が会社の出資金総額の半分超に相当している場合、同族会社と判断されます。
2. 同族会社間の非上場株式譲渡にかかる税金一覧
特殊な関係にある同族会社ですが、同族会社間で非上場株式を譲渡する場合、所得税や法人税、贈与税等、どのような税金が課せられるのでしょうか。概要について紹介します。
①株式譲渡所得課税(所得税+消費税)
個人が非上場株式を譲渡した場合、株式譲渡に対して所得税と消費税が課せられます。譲渡対価を総収入金額として、譲渡所得の金額を計算し、この金額に対して所得税・消費税が計算されます。
②法人税
法人が非上場株式を譲渡する場合には、法人税が課されます。基本は個人が譲渡する場合と算定方法は同じですが、それをやや修正したルールにより課税金額が算定されます。
法人の場合、非上場株式を発行する会社が譲渡する法人にとって同族会社と判断される場合には、「子会社」に相当するものとして扱うとされており、株式の譲渡が行われた後の関係で同族会社か否かを判断します。
③所得税
譲渡人が個人の場合、株式譲渡により得られる利益のうち、時価と取得価額の差を譲渡所得と認識し、所得税が課税されます。
④贈与税
著しく低い価額で譲渡した場合等、特定の場合においては、時価と譲渡価額の差異については、売り主が買い主から贈与を受けたものとして、贈与税が課税されます。
⑤寄付金
売り主が個人で、買い主が法人である場合で、時価よりも高い価額で非上場株式を譲渡した場合、買い主である法人にとって、譲渡価額と時価の差額は寄付金とみなされ、寄付金課税の適用を受けることとなります。
⑥損金不算入
売り主が個人で、買い主である法人の役員である場合には、譲渡価額と時価の差額は役員賞与とみなされ、損金不算入の取り扱いを受けます。
⑦みなし贈与課税
個人同士で非上場株式を譲渡する場合で、時価より著しく定額で取引される場合には、実際の取引価額と時価の差額が贈与とみなされ、みなし贈与課税の適用となる場合があります。
この場合の「時価」は、買い主である個人が株式取得後に同族株主かどうかにより大きく異なり、一般的に同族株主の場合の時価は同族会社でない場合より大きく計算される場合が多いため、取引価額については取引前に注意深く確認することが重要です。
3. パターン別同族会社が非上場株式を譲渡する際の税金
それでは、具体的にどのようなパターンでどのように課税が行われるのでしょうか。個人間の譲渡や法人間の譲渡等、それぞれのパターンを例にとって解説します。
なお、通常の株式譲渡にかかる税金については、下記リンクも参考ください。
同族会社間の個人から個人への譲渡の場合
同族会社間の個人から個人へ譲渡を行う場合について、譲渡金額が適正価格の場合、時価を下回る場合、時価を上回る場合の税金を解説します。
①適正価格で譲渡した時の税金
個人から個人への譲渡の場合で、譲渡金額が適正価格であった場合については、基本通り、譲渡益(譲渡価格と取得原価との差額)に対して所得税が課税されます。
②時価よりも低額で譲渡した時の税金
個人から個人への譲渡の場合で、時価よりも低額で譲渡を行った場合は、取引価額と時価の差額は売り主から買い主への贈与とみなされ、「みなし贈与」として贈与税が課されます。
③時価よりも高額で譲渡した時の税金
逆に、個人から個人への譲渡の場合で、時価よりも高額で譲渡を行った場合には、時価と取得価額の差が譲渡所得とみなされる一方、時価を超えて譲渡した金額は譲渡としての性格を持たないため、「贈与」とみなされ、贈与税の対象となります。
同族会社間の個人から法人への譲渡の場合
同族会社間の株式譲渡で、個人から法人へ譲渡が行われる場合は、どのような課税が行われるのでしょうか。適正価格で譲渡した場合、時価を下回る金額で譲渡した場合、時価を上回る金額で譲渡した場合に分けて解説します。
①適正価格で譲渡した時の税金
個人から法人へ株式を譲渡した場合で、適正価格で譲渡した場合、所得税の計算上、譲渡対価を総収入金額として譲渡所得を計算し、所得税が課されます。
②時価よりも低額で譲渡した時の税金
個人から法人へ株式を譲渡した場合で、時価よりも低額で譲渡した場合、特に時価の2分の1以下の価格で譲渡したり、その譲渡が同族会社に対するもので、かつその取引により、関係者の所得税の負担を不当に減少させる結果となる場合には、時価に相当する金額を総収入金額としてして譲渡所得を計算される場合があります。
③時価よりも高額で譲渡した時の税金
個人から法人へ株式を譲渡した場合で、時価よりも高額で譲渡した場合には、原則通り、譲渡対価を総収入金額として、譲渡所得の金額を計算し、所得税が課されます。
同族会社間の法人から個人への譲渡の場合
逆に、法人から個人へ譲渡する場合には、どのような課税が行われるのでしょうか。こちらも適正価格で譲渡した場合、時価を下回る金額で譲渡した場合、時価を上回る金額で譲渡した場合に分けて解説します。
①適正価格で譲渡した時の税金
法人から個人へ株式を譲渡した場合で、適正価格で譲渡した場合については、譲渡価格と取得価額の差が譲渡益として法人税の課税対象となります。
②時価よりも低額で譲渡した時の税金
法人から個人へ株式を譲渡される場合で、時価よりも低額で譲渡が行われた場合には、法人と個人の関係により、課税方法が異なります。
個人が法人の従業員や役員である場合には、時価と譲渡価額との差、つまり割安で買うことができた分は、役員や従業員への無償の経済的利益の供与とみなされ、給与と同等の取り扱いになります。つまり、買い手である個人は差額を給与所得として所得税を課税される一方、法人は損金算入が可能です。
個人が法人の役員・従業員でない場合は、この経済的利益の供与は寄付金とみなされ、個人は一時所得として所得税を課される一方、法人は損金算入が可能ですが、一定の制限があります。
③時価よりも高額で譲渡した時の税金
法人から個人へ株式を譲渡される場合で、時価よりも高額で譲渡が行われた場合には、売り手側の法人に対しては、取得価額と時価との差額について法人税が課税されます。また、これに加え、譲渡価格と時価の差額(受贈益)について、さらに法人税が課税されます。
同族会社間の法人から法人への譲渡の場合
法人間での譲渡の場合は、どのような課税が行われるのでしょうか。適正価格で譲渡した場合、時価を下回る金額で譲渡した場合、時価を上回る金額で譲渡した場合に分けて解説します。
①適正価格で譲渡した時の税金
法人から法人へ株式を譲渡した場合で、適正価格で譲渡した場合については、譲渡価格と取得価額の差が譲渡益として法人税の課税対象となります。
②時価よりも低額で譲渡した時の税金
法人から法人へ株式を譲渡した場合で、時価よりも低額で譲渡した場合については、売り手側の法人は時価で譲渡を行ったものとして、譲渡益が計算されます。
一方、買い手側の法人は時価と譲渡価額との差額は売り手側の法人から寄付を受けたものと取り扱われ、受贈益が法人税の課税対象となります。
③時価よりも高額で譲渡した時の税金
法人から法人へ株式を譲渡した場合で、時価よりも高額で譲渡を行った場合については、売り手側の法人では時価により譲渡を行ったとみなされ、譲渡益が法人税の課税対象となることに加え、時価と譲渡価額との差については、買い手側の法人から寄付を受けたものとして、受贈益が法人税の課税対象となります。
一方、買い手側の法人は、時価と譲渡価額との差を売り主への寄付金として扱います。
相続として譲渡された場合
最後に、相続として譲渡が行われた場合には、被相続人及び相続人に対してどのような課税が行われるのか、概要を解説します。
①被相続人への税金
被相続人が亡くなった年に株式配当等による所得がある場合には、準確定申告を行い、その結果所得税等の課税が課される可能性があります。
②相続人への税金
非上場株式を相続した場合、会社の純資産相当額を時価として、対応する株式数に相当する金額を相続したとして、相続税が課税されます。
ただし、例外として、後継者がその後経営を行っていく場合には、課税価額の80%に対応する相続税の納税を猶予する制度が経営承継円滑化法にて規定されています。この制度を利用するためには、都道府県知事の認定等、要件を満たす必要があります。詳しくは下記リンクも参考ください。
みなし贈与課税とみなされる条件
みなし贈与とみなされる条件としては、他人が保険料を支払った保険の保険金の受領、時価の80%未満での株式譲渡、借金などの大幅な棒引き等が挙げられます。それぞれの事例について、概要を解説します。
①他人が保険料を支払った保険の保険金を受け取った場合
みなし贈与とみなされるケースの1つは、他人が自分を受取人として保険に加入し、保険料を支払っていた場合で、他人が生きているうちに自分が保険金を受け取った場合です。
なお、他人の死亡により保険金を受け取った場合には、みなし相続財産として、相続税の問題となります。
②時価の80%未満の価格で株式譲渡が行われた場合
また、時価の80%未満の価格で株式譲渡が行われた場合もみなし贈与とされる場合があります。これは、無料で相手に譲渡すると、贈与として課税されるため、課税回避のために極端に安い価格を付けたと考えられるためです。
この「極端に安い価格」の基準として、裁判所は明確な基準を設けていませんが、土地の判例で80%を下回った場合、と言及しており、他の資産についても適用されうると言えます。
そのため、時価の80%未満で株式譲渡が行われる場合には、みなし贈与とされる可能性があるため、留意が必要です。
③時価の80%未満の価格で株式譲渡された場合
時価の80%未満で譲渡がされていなくても、そうみなされる場合もあります。特に、同族会社間の株式譲渡では注意が必要です。
例えば、会社が財産を低額で譲り受けることにより、会社の資産が増加し、受贈者である会社の株式価値が上がった場合には、その株式価値が上がった分だけ、贈与を受けたとみなされる場合があります。
また、個人から安い価格で法人が買い取った場合についても、差額がみなし贈与とされ、時価で株式を譲渡したとして譲渡益に対し所得税が課税されてしまう場合があります。
④借金などを大幅に棒引きした場合
さらに、借金等を大幅に減額する場合にもみなし贈与とみなされる可能性があります。これは借金の減額により実質的な財産が増えることが要因です。
みなし贈与課税に適用される場合の時価
みなし贈与課税に適用される場合の時価は、通常市場で取引されている時価や、非上場株式であれば、純資産相当額が使用されますが、同族会社間の株式譲渡では、受け渡し後の株式価値をベースに算出されるため、通常の時価より高く計算されるケースが多くあります。そのため、時価の判定は注意深く行うことが重要です。
4. 同族会社間の非上場株式譲渡に迷ったら
同族会社間の非上場株式譲渡は、同族会社の判定や、時価の算定、および複雑な課税関係等、様々な要素が関係するため、どのような価格で譲渡すべきか、また、誰に譲渡すべきか迷うことが多いと考えられます。判断には専門的な知識が必要とされるため、外部の専門家に相談することが重要です。
5. まとめ
同族会社間の株式譲渡では、譲渡価額と時価との差によって、課税金額が大きく変化する可能性があるなど、専門知識をベースとしたうえでの判断が必要です。これにより税金が大きく変化する可能性もあるため、専門家への相談の上、適正な価格で譲渡できるよう、対策をするようにしましょう。
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