2020年10月29日更新
株主割当増資とは?メリット・デメリットや方法をわかりやすく解説

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
企業が新規事業などを始める際の資金調達方法として新規株式発行がありますが、その具体的な手法の1つが株主割当増資です。株主割当増資はどのような増資方法なのか、類似する手法との比較やメリット・デメリット、手順などを解説します。
1. 株主割当増資とは
新規株式を発行する方法として、株主割当増資があります。本記事では、株主割当増資はどのような増資方法なのか、また、メリットやデメリットについても解説しますが、まずこの項では、株主割当増資の概要や目的、株主割当増資と第三者割当増資の違いについて確認しましょう。
株主割当増資の特徴
株主割当増資には、主に以下2つの特徴があります。
- 既存の株主に割り当てること
- 株式の持ち分に応じて割り当てること
①既存の株主に割り当てること
株主割当増資の1つ目の特徴は、株主割当増資では増資分株式を既存の株主に割り当てることです。新規株式を発行する場合、株式を割り当てる相手には大きく既存株主と新規株主とに分けられます。
株主割当増資では、既存株主に新規株式を割り当てますが、新規株式を引き受けるか否かは株主の判断です。
既存株主に割り当てると買い取ってもらえる可能性が高くなる(=資金調達がしやすい)ため、不特定多数の株主に株式が分散しないというメリットがあります。なお、株主割当増資では、自社への割り当てはできません。
②株式の持ち分に応じて割り当てること
株主割当増資の2つ目の特徴は、株式の持ち分に応じて割り当てることです。新規株式を発行の際に重要なことは、誰にどれだけ割り当てるかということになります。
一定のルールに従って割り当てないと株主が不満に感じたり、新規発行のたびに株主総会可決が必要になってしまうからです。
それで、株主に不満がなく、かつ簡便な手続きで新規株式が発行できるように、株式の持ち分に応じて割り当てることが決められています。
株主割当増資の目的
株主割当増資の目的は、事業運営の資金調達のためです。一般的な資金調達の方法には、金融機関からの融資と自己資本があります。
融資の場合、金融機関が得られるリターンは少ないですが、借主は元本と利息を全て返済することが義務です。したがって、新規事業などリスクに対する融資は行われないケースも多々あります。
一方で自己資本の場合、自身の資産であるため返済の必要はありません。株式も自己資本の1つにあたるため、返済の必要がない資金です。
新規事業について株主も魅力的であると感じる場合、返済のリスクがなく資金調達しやすいのが株式ということになります。
株主割当増資と第三者割当増資の違い
株主割当増資と第三者割当増資の大きな違いは、割り当てられる対象です。第三者割当増資とは、自社や株主ではない第三者に新株を割り当てることをいい、関係を強化したい取引先や資本提携を行う企業など将来的なビジネスパートナーに割り当てます。
資本業務提携とは、互いの新規発行株式を相手の企業に買い取ってもらうことです。
同時に、お互いが大株主になり、経営権をある程度、掌握することになるため、協力関係は強化されます。
したがって、第三者割当増資では、その主目的は資金調達ではなく、企業間の関係強化の場合が多いのが実態です。
株主割当増資と公募増資の違い
公募増資とは、新規株式の割当先を決めず、自社株式を購入したい人に新規株式を割り当てる増資方法です。
株主割当増資に比べて割当先候補が増えるため、広範囲での資金調達が可能になり、新株発行に否定的な既存の株主が多い場合などに資金調達しやすい方法といえるでしょう。
ただし、株主が増えることにより、株主構成比率が変化するというデメリットがあります。大株主の株式保有比率が低下するため、公募増資は株主総会で特別決議を得なければなりません。
公募増資を行う際は、既存株主に与える影響についても考慮する必要があるでしょう。
2. 株主割当増資のメリット・デメリット
株主割当増資を行う場合、メリットだけでなくデメリットについても正しく理解しておくことが大切です。この項では、株式割当増資を行うメリットとデメリットについて解説します。
株主割当増資のメリット
株主割当増資によるメリットには、主に以下の3つがあります。
- 自己資本の比率が拡大すること
- 株主構成の比率が変わらないこと
- 時価と比べて低価格で行えること
①自己資本の比率の拡大
株主割当増資の1つ目のメリットは、自己資本比率の拡大です。会社の財務の安全性を示す指標に自己資本比率(総資産(自己資本+負債)と自己資本との比率)があり、この値が高いほど安全性が高いと判断されます。
安全性が高くなると、金融機関からの融資が受けやすくなったり、株主からの資金調達がより容易になったりするのです。
②株主構成の比率が変わらない
株主割当増資の2つ目のメリットは、株主構成の比率が変わらないことです。公募増資のように広範囲から資金調達すると株主数が増加し、割り当てる株式数も任意であるため、株主構成比率が大きく変化する可能性があります。
株主構成比率が変わると、議決権数が減る・配当金が減少するなど、既存株主は不利益を被る可能性があるのです。
しかし、株主割当増資の場合、割当先は既存の株主で、割り当てる数も持分に応じたものなので株主構成の比率が変わることはありません。
③時価と比べて低価格で行える
株主割当増資の3つ目のメリットは、時価と比べて低価格で行えることです。これにより、株主はリスクを取りやすくなり、資金調達がしやすくなります。
一般に、企業から株式を購入するときは自身が損をしないよう、会社の財務状況・収益力・将来性などを調査して、問題がなければ株式を購入するのが常です。
それは、株主割当増資も同様であり、新規事業にリスクが大きいと判断されると資金調達ができなくなりますが、リスク分だけ低価格で販売することで資金調達がしやすくなります。
株主割当増資のデメリット
株主割当増資によるデメリットには、主に以下の2つがあります。
- 全ての株主が同じ割合で増資できるわけではないこと
- 大きな資金調達はできないこと
①全ての株主が同じ割合で増資できるわけではない
株主割当増資の1つ目のデメリットは、全ての株主が同じ割合で増資できるわけではないことです。株主割当増資は、既存株主の持分に応じて割り当てます。
しかし、割り当てられた株主は、全ての新規株式を購入しなければならないわけではありません。
株主が何らかの理由により購入しないという選択をすることもあるため、株主構成比率は大きく変化しなくても株主に対して均等には割り当てられないため、有利不利が出る場合があります。
②大きな資金調達はできない
株主割当増資の2つ目のデメリットは、大きな資金調達ができないことです。株主割当増資は、時価よりも安価で株式を譲渡できます。
しかし、その差額は発行する会社が負担するわけです。つまり、新規発行株式数が増えると多額の資金調達は可能になりますが、その分だけ費用が掛かるため、株主割当増資では大きな額の資金調達はできません。
3. 各増資方法のメリット・デメリット比較
ここでは、株主割当増資・第三者割当増資・公募増資のメリット・デメリットを比較してみましょう。下表は、それぞれのメリット・デメリットをまとめたものです。
メリット | デメリット | |
株主割当増資 | ・株主構成比率は変化しない ・時価よりも安価に新規株式を譲渡できる |
・増資により株主に有利不利が出る ・大きな資金調達はできない |
第三者割当増資 | ・取引先など関係企業との関係が強化できる ・多額の資金調達が可能 |
・株主構成比率が大きく変化する ・割り当てられないと既存株主は新規株式を購入できない |
公募増資 | ・広範囲から資金調達が可能 ・既存株主も購入可能 |
・株主が増加し、株主構成比率が変化する ・株主総会で特別議決が得られないと増資できない |
新規事業をある程度、自己資本から増資したい場合は、株主割当増資を選ぶことがおすすめです。
また、多額の資金調達が必要な場合や対象企業との関係を強化したい場合は、第三者割当増資を選択するのがよいでしょう。新規事業の賛同者から資金調達したい場合は、公募増資をおすすめします。
増資する場合は、それぞれの手法のメリット・デメリットを理解しておき、どの方法が最も適しているを判断することが大切です。
4. 株主割当増資を行う方法・流れ
続いては、株主割当増資を行う方法・流れについてみていきしょう。株主割当増資を行う際は、主に以下のような流れで進みます。
- 取締役会の決議
- 株主総会の招集
- 新株募集事項の公示
- 募集株式・引受の申込み
- 株式割当の決定
- 出資金の支払い
- 株式の発行・登記の変更
①取締役会の決議
まずは、取締役会で株主割当増資について決議をします。それと同時に、新規株式に関する募集事項の決定も必要です。
公開会社の場合、取締役会の決議で株主割当増資を行え、非公開会社の場合でも定款に別段の定めがある場合は、取締役会の決議で株主割当増資が行えます。
②株主総会の招集
公開会社・非公開会社のいずれでも、定款に定めがある場合は株主総会で決議を得る必要はありません。
しかし、取締役会非設置会社や定款に別段の定めのない会社の場合は、株主総会を招集する必要があり、株主割当増資をする場合、株主総会の特別決議を得て募集事項を決定します。
③新株募集事項の公示
取締役会・株主総会で決議した後は、新株募集事項の公示を行います。既存株主に対して新株募集事項の通知は、引受申込みの2週間前までに行わなければなりません。
なお、株主へ通知する内容は、募集事項・当該株主が割当てを受ける募集株式の数・引受けの申込みの期日の3点になります。
④募集株式・引受の申込み
新株募集事項の公示・既存株主への通知後は、募集株式・引受の申込みの開始です。
引受申込みをする際、株主は自身の氏名または名称および住所・引き受けようとする募集株式の数を記載した書面を株式会社へ提出します。
⑤株式割当の決定
株式会社は、引受申込みを受けて株式割当の決定です。決定後は、株式割当通知や出資金の振込用紙を、当該株主に送付します。
⑥出資金の支払い
株主は、通知を受けて払込期限までに出資金を支払います。なお、金銭出資の場合、期日までに発行会社の金融機関の口座に振り込まれていなければなりません。
したがって、実質のタイムリミットは金融機関の窓口が閉まる15時までとなるため、払い込みを行う株主は注意が必要です。
⑦株式の発行・登記の変更
株式を発行することで、資本金の額や発行済株式数が増加するため、登記変更を行います。
登記変更は、効力が発生してから2週間以内に行うことが義務づけられているため、新株発行後はできるだけ速やかに登記変更を行いましょう。
5. 株主割当増資を行う際の注意点
この項では、株主割当増資を行う際の注意点として、以下2点をお伝えします。
- 株価に影響を与える可能性があること
- 発行可能株式総数を確認すること
①株価に影響を与える可能性がある
株主割当増資の1つ目の注意点は、株価に影響を与える可能性があることです。通常、株価は株式の需給関係によって決まります。
つまり、会社の業績を見て株式が欲しいという人が増えると株価は上がり、逆に売却したい株主が増えると株価は下がるわけです。
新株を発行すれば、発行される株式数が増加するため供給量が増え、一時的に株価が下がります。
そのあと新規事業に成功したり、業績が上がったりすれば再び株価は上昇しますが、一時的な株価下落の可能性があることは覚えておくとよいでしょう。
②発行可能株式総数を確認する
株主割当増資の2つ目の注意点は、発行可能株式総数を確認することです。会社法により、定款で発行可能株式総数を記載することが義務づけられており、発行可能株式総数を超えると会社法違反になります。
発行可能株式総数が定められている理由は、新株発行は取締役会の決議だけで行えるため、取締役が職権を乱用して株式を大量に発行する恐れがあるからです。
上記のような理由で大量に株式が発行されてしまえば、株価の大幅な下落や議決権割合の低下など、より株主に大きな影響をおよぼし得るため、発行可能株式総数を決めることにより防止をしています。
したがって、新株を発行するときには発行可能数の上限に注意することが必要です。また、上限数よりも多く株式を発行したい場合は、株主総会で特別決議を得なければなりません。
6. 株主割当増資のおすすめの相談先
株主割当増資を行うためには、専門的な知識が必要になるため、会社法や金融商品取引法など会社経営に関する法律に精通しているM&A仲介会社などの専門家によるサポートは不可欠ともいえるでしょう。
M&A総合研究所では、豊富な知識と実績を持っているM&Aアドバイザーによるフルサポートを行っています。
また、料金システムは、着手金・中間手数料などが無料の完全成功報酬制を採用しているため、初期費用を抑えることが可能です。
相談は24時間年中無休でお受けしていますので、M&Aだけでなく株主割当増資についても相談したい方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
7. まとめ
株主割当増資は比較的手続きが簡便な増資方法ですが、株主に影響をおよぼすため、メリット・デメリットを理解したうえで株主割当増資を行うようにしましょう。
本記事の概要は、以下のとおりです。
【株主割当増資のメリット】
- 自己資本の比率が拡大すること
- 株主構成の比率が変わらないこと
- 時価と比べて低価格で行えること
【株主割当増資のデメリット】
- 全ての株主が同じ割合で増資できるわけではないこと
- 大きな資金調達はできないこと
【株主割当増資を行う方法・流れ】
- 取締役会の決議
- 株主総会の招集
- 新株募集事項の公示
- 募集株式・引受の申込み
- 株式割当の決定
- 出資金の支払い
- 株式の発行・登記の変更
株主割当増資を行う際は、専門的な知識や経験を持っている専門家に相談しながら進めていく必要があります。
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