2022年12月12日更新
株式譲渡のコンサルの内容やメリット・デメリットを解説
株式譲渡を行う際はコンサルティング会社に相談する選択肢がありますが、専門家のサポートを受けることで成功率は上がるのでしょうか。本記事では、株式譲渡におけるコンサルの内容や、メリット・デメリットなどを紹介します。
1. 株式譲渡のコンサル
多くのM&A手法の中で、株式譲渡を選択するケースが増えています。主な理由は、他のM&A手法と比較して手続き・取引がシンプルであることが考えられます。この章では、株式譲渡とそのコンサルの概要を解説しましょう。
株式譲渡とは
株式譲渡とは、株式の売買をもって会社の経営権を移転する手法です。M&A手法の1つであり、主に中小企業のM&Aの際に利用されることが多いです。
株式譲渡は会社・機関の構成を変更するものではないため、法務局などの役所への届け出は不要である点に特徴があります。
株式譲渡を行うメリット
株式譲渡を行うメリットは多数あります。主なメリットは、株式譲渡を行えば会社を清算しなくて済むので、企業の存続と再発展が可能になり従業員の雇用が守られ、後継者問題も解決できることです。
経営者は会社の借入金の個人保証から解放され、創業者利益を得られる点もメリットです。
株式譲渡のコンサルとは
株式譲渡のコンサルとは、株式譲渡の際に必要となる手続きの代行・アドバイスを助ける業務のことです。株式譲渡は役所への届け出が不要であるため、他のM&A手法と比較すると手続きはシンプルな傾向にあります。
しかし、会社内部の処理に必要となる手続きは多岐にわたり、そのいずれにも厳格な規定が設けられています。これらの手続きを正しく行うための手助けとなるのが、株式譲渡のコンサルです。株式譲渡のコンサルティング専門家のサポートを受けることで、株式譲渡を不備なく円滑に進められます。
2. 株式譲渡のコンサルの内容
株式譲渡に必要な手続きは多岐にわたり、その中には、複雑なものや専門家の力がなければ難しいものもあります。株式譲渡のコンサルで具体的に受けられるサービスには、主に以下の5つです。
- M&A戦略の策定
- 譲渡先の選定
- 譲渡先との交渉
- 譲渡先との契約
- PMIアドバイス
①M&A戦略の策定
株式譲渡のコンサルの内容1つ目は、M&A戦略の策定です。まずは、M&Aを実施する目的を明確にします。何のためにM&Aをするのか、その目的がはっきりしていなければ着地点を定められず、M&A戦略を立てられません。
株式譲渡の目的・条件を明確化させて、コンサルティング会社の担当者との共有が済んだら、本格的にM&A戦略の策定に入ります。
M&A戦略の策定では、主に以下の項目を検討します。
- M&Aの目的・条件の明確化
- 自社分析
- 業界動向調査
- PMI(統合プロセス)検討
②譲渡先の選定
株式譲渡のコンサルの内容2つ目は、譲渡先の選定です。M&A戦略の策定が終わったら譲渡先の選定に入ります。譲渡先を見つけるためには、まず自社に株式譲渡の意向があることをノンネームシートによってアピールしなければなりません。
ノンネームシートでは、会社名は伏せたまま、業種・地域・売上高・従業員数など特定されない範囲で自社の情報を提供します。株式譲渡を検討していることが外部に漏えいしないよう、最大限の注意を払いながら譲渡先を探します。
③譲渡先との交渉
株式譲渡のコンサルの内容3つ目は、譲渡先との交渉です。ノンネームシートを閲覧した企業がコンタクトを取ってきたら、いよいよ交渉に入ります。
お互いの資料提供をとおして交渉を進めて、精査が終了したらトップ面談へと移行する流れです。ここまではコンサルティング会社を介してやり取りが行われていましたが、トップ面談は譲渡企業と譲受企業のトップが顔合わせをして交渉をする場でもあり、信頼関係を構築する場でもあります。
④譲渡先との契約
株式譲渡のコンサルの内容4つ目は、譲渡先との契約です。基本合意書の締結・デューデリジェンスの実施を経て、双方の合意が得られたら最終契約へと移行します。最終契約は、司法書士やコンサルタントの立ち会いのもとで締結されます。
⑤PMIアドバイス
株式譲渡のコンサルの内容5つ目は、PMIアドバイスです。PMIとは、M&A・株式譲渡後の経営安定化を図るための統合プロセスです。
セミリタイアのようにその後の経営に関わらないのであれば関係ありません。しかし、株式譲渡後も子会社の社長として現場に残り続けるケースもあります。
具体的には、統合によって得られるシナジー効果を最大限に働かせるためのPMIアドバイスをコンサルタントによって受けることが可能です。
3. 株式譲渡コンサルを受けるメリット
株式譲渡の手続きのすべてを自社で進めるとなれば、大変な時間と労力を費やしてしまいます。この章では、株式譲渡コンサルを受けるメリットを解説します。
- 豊富な経験と知識によるアドバイス
- 幅広いネットワークによる譲渡先の選定
- 通常業務を続けながら交渉が可能
- 難しい各種契約書を準備・作成
- 希望する譲渡内容の最大化を目指す
①豊富な経験と知識によるアドバイス
株式譲渡コンサルを受けるメリット1つ目は、豊富な経験と知識によるアドバイスが受けられることです。株式譲渡に必要となる手続きには単純な事務手続きもありますが、M&A・株式譲渡の専門的な知識を必要とする手続きも存在します。
譲渡先の交渉などを不備なく進めるには、M&A・株式譲渡のコンサルに長く携わっている者のアドバイスがなければ難しいでしょう。
②幅広いネットワークによる譲渡先の選定
株式譲渡コンサルを受けるメリット2つ目は、幅広いネットワークによる譲渡先の選定です。譲渡先の選定は、情報漏えいに注意しつつ広くアピールしなければならない非常に難しい工程です。
コンサルティング会社であれば、コンサル・相談から培われたネットワークを活用することで広範囲にアピールできます。株式譲渡を内密に進める点でも、コンサルティング会社のサポートは必要不可欠です。
③通常業務を続けながら交渉が可能
株式譲渡コンサルを受けるメリット3つ目は、通常業務を続けながら交渉が可能であることです。株式譲渡に必要となる手続きは多岐にわたるため、すべてを当事者間で進めようとすると相当のリソースを割いてしまい、通常業務に支障が出る可能性もあります。
株式譲渡コンサルを受ければ、数々の手続きの代行や適切なアドバイスによって、株式譲渡を円滑に進めることが可能です。
④難しい各種契約書を準備・作成
株式譲渡コンサルを受けるメリット4つ目は、難しい各種契約書の準備・作成を依頼できることです。株式譲渡を進めていくうえでは、以下のように複数の契約書の準備・作成が求められます。
- ノンネームシート
- 秘密保持契約書
- 意向表明書(譲受側)
- 基本合意書
- 最終契約書
ノンネームシート
ノンネームシートとは、社名を伏せた状態で自社の情報を提供する資料です。契約書ではありませんが、M&A・株式譲渡を進めるうえで作成します。
株式譲渡を検討していることが外部に漏えいしてしまうと、株価の影響・従業員の動揺などによって企業価値が変動してしまうおそれがあります。こういったリスクを防ぎつつ譲渡先にアピールするためにも、ノンネームシートの作成は必須です。
秘密保持契約書
秘密保持契約書とは、開示された情報を目的外で利用しないことを受領者側に約束させる契約書です。譲渡側にとっては、株式譲渡の検討自体が秘密情報です。秘密情報の扱いに関して初期段階で締結しておくと、不安要素を取り除けて安心して交渉できます。
意向表明書(譲受側)
意向表明書とは、譲渡先が譲り受けの意向を示すための書類です。トップ面談を経て本格的な交渉に移る際に書面として提出することでM&A・株式譲渡をより円滑にする働きがあります。
意向表明書は、譲受側から譲渡側に向けて提出されるものなので、譲渡側は特別資料を作成・提出する必要はありません。意向表明書に記載される項目には、取引金額・取引形態・スケジュール・デューデリジェンスなどがあります。
基本合意書
基本合意書とは、最終契約に先立って締結する契約書です。現時点での交渉内容に双方が納得していることを確認するために取り交わされます。
記載される内容はより具体的になりますが、デューデリジェンス(投資対象の価値・リスクの調査)実施前であるため秘密保持契約など一部を除き、法的拘束力は持たない特徴があります。
最終契約書
最終契約書とは、M&Aの最終的な契約書です。双方が最終的に合意に至ったことを示すもので、最終契約書の締結はM&A・株式譲渡の取引が正式に決定したことを意味します。
本契約書の締結以降は正当な理由なしに破棄した場合、破棄された側は相手企業に対して賠償請求を行う権利が与えられます。
⑤希望する譲渡内容の最大化を目指す
株式譲渡コンサルを受けるメリット5つ目は、希望する譲渡内容の最大化を目指せることです。株式譲渡を実施するうえで、売却側には明確な目的と条件があります。初期に掲げた目的と条件を最後までとおすのは簡単な道のりではありません。
株式譲渡コンサルの専門家であれば、経験や知識を活用して、目的を達成するために必要なプロセスの策定や譲渡先との交渉への希望条件の盛り込みを行えます。
4. 株式譲渡コンサルを受けるデメリット
株式譲渡コンサルを受けるメリットは多数ありますが、無視できないデメリットもいくつか存在しています。この章では、株式譲渡コンサルを受けるデメリットを解説します。
- 株式譲渡コンサル費用がかかる
- 担当するコンサルタントとの関係構築
①株式譲渡コンサル費用がかかる
株式譲渡コンサルを受けるデメリット1つ目は、株式譲渡コンサル費用がかかることです。株式譲渡を進めるためには、企業価値評価・取引先の選定・交渉・各契約書の締結など、さまざまな工程が必要です。
その中には専門家の派遣を必要とするものも少なくないため、株式譲渡にかかるコンサル費用は決して安いものではありません。
株式譲渡のコンサル費用は主に以下のとおりです。
- 相談料
- 着手金
- 中間金
- 成功報酬
- リテイナーフィー
- デューデリジェンス費用
- 業務実行にかかる実費
コンサルティング会社によって料金体系は異なる部分もあるので、利用する前にどのような手数料がかかるのかを十分にチェックしましょう。
②担当するコンサルタントとの関係構築
株式譲渡コンサルを受けるデメリット2つ目は、担当するコンサルタントとの関係構築です。コンサルティング会社に株式譲渡コンサルを依頼すると、担当のコンサルタントがつきます。コンサルタントは株式譲渡の全体的な進行を任せることになるとても大事な役回りです。
基本的にコンサルタントを介するので、コンサルタントとの関係構築は必須です。相性が悪いと正しく意図をくみ取ってもらえなかったり、コンサルタントを信用できないことから本音をいえなかったりするなど、さまざまな不都合が生じるおそれがあります。
5. 株式譲渡コンサル選びのポイントを解説
株式譲渡コンサル会社を探す際は、いくつかのポイントに注目するとより良い会社が見つかる可能性が高くなります。ここでは、株式譲渡コンサル選びのポイントを解説します。
- 過去に自社と同業種・同規模の株式譲渡を経験
- 株式譲渡の専門的な知識
- クライアントの利益を考えてくれる
- 手数料など費用が明確にわかる
- 担当者との相性
①過去に自社と同業種・同規模の株式譲渡を経験
株式譲渡コンサル選びのポイント1つ目は、過去に自社と同業種・同規模の株式譲渡を経験していることです。株式譲渡は業種によって特有の事情が関わるため、該当業種に精通していることが前提です。コンサル会社によって得意とする規模も変わります。
これらの判断方法には、公式サイトに公開されている実績の閲覧と、問い合わせで直接尋ねる方法があります。公式サイトに公開されているものは相談者の声なども載せられていることもあるので、確認しましょう。
②株式譲渡の専門的な知識
株式譲渡コンサル選びのポイント2つ目は、株式譲渡の専門的な知識です。株式譲渡のコンサルを請け負っている会社・機関は多数ありますが、そのすべてが専門的に株式譲渡コンサルを請け負っているわけではありません。
株式譲渡コンサルに関する知識の欠如や経験不足によって、一貫したサポートを受けられないことがあります。株式譲渡コンサル選びの際は、相談先がM&A・株式譲渡コンサルを専門的に請け負っているかどうかを確認しましょう。
③クライアントの利益を考えてくれる
株式譲渡コンサル選びのポイント3つ目は、クライアントの利益を考えてくれることです。株式譲渡コンサル会社は大きく分けて「仲介型」と「アドバイザリー型」があります。仲介型は、中立の立場から譲渡側・譲受側双方をサポートします。
一方のアドバイザリー型は、クライアント(相談者)の利益を第一に考えて交渉を行う点が特徴的です。両方のタイプに対応するコンサル会社もありますが、仲介型を専門的に行っているコンサル会社も存在しています。
④手数料など費用が明確にわかる
株式譲渡コンサル選びのポイント4つ目は、手数料など費用が明確化されていることです。株式譲渡コンサルにかかる費用は決して安いとはいえません。きちんと把握していない状態で依頼してしまうと、成約後の高額請求により、その後の資金運用に支障が及ぶことも考えられます。
基本的に公式サイトに明記されているので、相談する際は手数料・報酬体系が明記されているかを確認しましょう。
⑤担当者との相性
株式譲渡コンサル選びのポイント5つ目は、担当者との相性です。株式譲渡のコンサルティング会社に相談すると、株式譲渡の進行を全面的にサポートする担当者がつきます。以降の手続きを進める際は、担当者をとおすことになるので、相性は重要な要素です。
相性が悪いと感じたら、担当者の変更を申し出ることもご検討ください。不当な理由でもなければ快諾してくれるコンサル会社がほとんどです。それでも改善が見られなければ、コンサル会社の変更もやむを得ません。
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6. 株式譲渡のコンサルまとめ
この記事では、株式譲渡のコンサルに関する情報をまとめました。株式譲渡の手続きは比較的シンプルといわれているものの、複雑な手続きや契約書の締結など、専門的な知識が求められます。これらを不備なく進めるためには、専門家のサポートが必要不可欠です。
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