2022年07月12日更新
株式譲渡した際、登記申請や定款変更は必要?
本記事では、株式譲渡を実施した際の登記申請・定款変更に関する情報を提供しています。株式譲渡時に登記申請・定款変更は必要なのか、登記申請・定款変更手続きの流れのほか、株式譲渡手続きの流れについても紹介しています。
目次
1. 株式譲渡とは
今回は、株式譲渡における「登記申請・定款変更」を取り上げており、具体的には「株式譲渡」を実施した際に、登記申請・定款変更は必要なのか解説します。まずは、「株式譲渡」の概要を解説します。
株式譲渡とは、M&A手法の1つです。M&Aにおける売り手側企業の株主が保有している株式を買い手側企業に譲渡することで、会社の経営権を買い手側に引き継げる手続きをさします。
株式譲渡は複数あるM&A手法の中でも頻繁に活用されており、「手続きが容易」「会社を存続できる」といったメリットがあります。
2. 登記や定款とは
続いて、「登記」や「定款」の概要を説明します。「登記や定款といった言葉自体は聞いたことがあるものの、意味を理解していない」方は、ここで確認しておきましょう。
登記とは
登記とは、会社の設立に際して、会社名や会社の目的など、法律で定められた事項を世間に公表するために、登記簿に記載することです。この登記の手続きを行わなければ、正式に会社を設立できません。
定款とは
定款とは会社の設立に際して必ず作成しなければならない書類の1つで、会社の憲法にあたるものと解されます。定款を作成することで、これから設立する会社の根本規則を決定します。
定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」や、定款に記載しない限りその効力を発揮できない「相対的記載事項」などを盛り込みます。絶対的記載事項は、以下のとおりです。
- 会社の目的
- 会社の称号
- 会社の所在地
- 会社設立に際して出資される最低金額
- 発起人の氏名および住所
- 発行可能株式総数
3. 株式譲渡の際に登記申請や定款変更は必要か?
株式譲渡と登記・定款を理解したところで、本記事のメインテーマである「株式譲渡の際に登記申請や定款変更は必要になるのか」を解説します。
結論からいうと、株式譲渡を実施した際、登記申請・定款変更を行う必要はありません。株式譲渡の手続きは、すべて会社の内部で完結します。
「株式の譲渡」は原則自由
基本的に、「株式の譲渡」は自由に行えます。なぜなら、株式譲渡自由の原則があるためです。株式譲渡自由の原則とは、株式は「いつでも」「誰とでも」自由に売買できる旨の原則です。
株式譲渡が行われる際は株主間で株式の取引が行われ、その時点で株主が変更されます。
登記申請の必要性について
株主の変更は、登記事項に含まれません。たとえ会社の株主に変更が加えられたとしても、法務局へ登記申請する必要はありません。
定款変更の必要性について
たとえ株主が変更されたからとしても、定款変更の事由にはあたりません。株式譲渡が実施されて株主が変わっても、定款変更手続きを行う必要はないでしょう。
株主兼役員の存在には注意が必要
ただし、株主兼役員の存在には注意しておきましょう。株式譲渡が実施されて株主兼役員が株主と同時に役員も辞めてしまう場合、法務局で役員変更登記の手続きが必要となります。
株式譲渡時における手続きの注意点
株主が親族のみの場合、「株主総会は開かずに簡単に書類のみ作成すれば良いのではないか」と考える人もいます。しかし、株式は財産であり相続の対象とされるため、安易に考えると将来的に不仲になったり相続でもめたりした場合にトラブルになるおそれがあります。
株主総会の決議に瑕疵があったり株式譲渡手続きが適法に行われていなかったりする場合は、決議自体が取消されたり無効となったりすることもあります。
株主や取締役などを問わず、誰もが株主総会の決議が存在していないことを訴えられるため、手続きは確実に行うことが大切です。
役所や法務局の確認が入らないからこそ、会社法にのっとった厳格な手続きが必要です。手続きに不安がある場合は、専門家に相談しましょう。
4. 株式譲渡の手続き
ここまで「株式はいつでも・誰とでも売買できる」と説明しましたが、これは上場企業・大企業・公開会社が発行している株式に限定されます。公開会社とは、定款に株式に対する譲渡制限がない会社のことです。
多くの中小企業は、株式の譲渡制限を定款に定めている「非公開会社(株式譲渡制限会社)」です。非公開会社(株式譲渡制限会社)では、株式譲渡に制限が設けられており、自由に株式を売買できません。
非公開会社(株式譲渡制限会社)の株主が株式譲渡によって保有する株式を第三者に譲渡・売却する際、会社法に準拠した手続きを行う必要があります。非公開会社(株式譲渡制限会社)における株式譲渡手続きの流れは、以下のとおりです。
- 株式譲渡人による株式譲渡承認請求
- 取締役会・株主総会による譲渡承認
- 株式譲渡人への株式譲渡の承認通知
- 株式譲渡契約の締結
- 株主名簿書換請求
- 株主名簿記載事項証明書の交付請求
- 株式譲渡の完了
①株式譲渡人による株式譲渡承認請求
多くの中小企業は非公開会社(株式譲渡制限会社)として、株式譲渡に対して制限をかけているケースが多いでしょう。非公開会社(株式譲渡制限会社)が発行する株式を譲渡する際は、株式譲渡人による株式譲渡承認請求と呼ばれるプロセスから始める必要があります。
つまり、株式譲渡を行おうと考えている株主は、保有株式を譲渡する際に、会社から承認をもらわなければなりません。具体的には、「株式譲渡承認請求書」と呼ばれる書類に譲渡する株式の種類・株式数・株式譲渡を行う相手などを記載し、請求する会社に提出します。
②取締役会・株主総会による譲渡承認
株式譲渡承認請求書に必要事項を記載し会社に提出した後は、続いて取締役会・株主総会による譲渡承認が行われます。
株式譲渡人による株式譲渡承認請求を受けた会社側は、臨時の「取締役会」または「株主総会」を開催し、2週間以内に株式譲渡承認を行うかどうか決議します。
会社に取締役会があり、株式譲渡承認機関が取締役会である場合は、取締役会による株式譲渡の決議が行われるでしょう。取締役会が設置されていない会社の場合、臨時の株主総会が開催されて、そこで株式譲渡の決議を行います。
③株式譲渡人への株式譲渡の承認通知
取締役会・株主総会による譲渡承認が決定したら、会社は株式譲渡人への株式譲渡の承認通知を行う必要があります。これは、株式譲渡人が株式譲渡請求を行った2週間以内に通知しなければなりません。
④株式譲渡契約の締結
株式譲渡人への株式譲渡の承認通知が届いたら、株式譲渡人と譲受人の間で株式譲渡契約を締結します。この段階で株式譲渡契約書を作成します。
⑤株主名簿書換請求
株式譲渡契約の締結が完了したら、株式譲渡人・譲受人が会社に対して株主名簿書換請求を行います。特に株式譲渡によって新たに株主となる譲受人は、自身が株主であることを主張するために、株主を譲渡人から譲受人に変更するよう請求する必要があります。
会社側は株式譲渡人・譲受人から株主名簿書換請求を受けたら、株主名簿を必ず書き換えなければなりません。
⑥株主名簿記載事項証明書の交付請求
株式譲渡によって新たな株主となった株式譲受人は、会社側に株主名簿記載事項証明書の交付請求を行います。その後、実際に株主名簿が書き換えられて、自身が株主となっているのか確認します。
⑦株式譲渡の完了
株主名簿記載事項証明書が交付され、自分の名前が新たな株主として掲載されていれば、無事に株式譲渡が完了していると確認できます。
株式譲渡は最も広く活用されているM&Aスキームです。ただ、株式譲渡に詳しい知識がない場合、手続きに戸惑うことも多いです。そのような場合は、株式譲渡を失敗させないためにも、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けることをおすすめします。
M&A総合研究所には、M&Aの実務経験や知識が豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、株式譲渡をフルサポートします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談は電話・Webより随時受け付けていますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
5. 株式譲渡の必要書類
株式譲渡の実施に際して求められる書類・資料は、主に以下のとおりです。
- 株式譲渡契約書(SPA)
- 株主名義書換請求書
- 株主名簿
- 株主名簿記載事項証明書交付請求書
- 株主名簿記載事項証明書
譲渡制限会社(取締役会設置会社の場合)には、以下の書類が求められます。
- 株式譲渡承認請求書
- 取締役会招集通知
- 取締役会議事録
- 株式譲渡承認通知
これに対して、譲渡制限会社(取締役会非設置会社の場合)に求められる書類は、以下のとおりです。
- 株式譲渡承認請求書
- 株主総会招集に関する取締役の決定書
- 株主総会招集通知
- 株主総会議事録
- 株式譲渡承認通知
6. 株式譲渡で登記申請する際の手続き
ここからは、登記申請と定款変更に関する手続きを解説します。まずは登記申請手続きから説明します。「登記申請する場面はいつなのか」「登記申請はどこで行えるのか」に関して理解を深めたい方にとって必見の内容です。
登記申請を行う場面
登記申請を行う場面は、主に不動産登記と法人登記です。建物や土地といった「不動産」や「会社・法人」などの情報に変更があった場合に、登記申請を行って情報の更新を実施します。登記申請の場面としては、具体的に以下のものがあります。
- 不動産を購入した
- 相続によって土地をもらった
- 会社を設立した
- 本社の場所が移転した
代表的な「会社の登記申請」例
ここで代表的な会社・法人の登記申請の例をご紹介します。
- 株式会社設立時の登記申請
- 株式会社の役員変更時の登記申請
- 株式会社の内容変更時(商号変更・吸収合併・資本金額の減少など)の登記申請
- 合併による株式会社設立時の登記申請
- 合併による株式会社解散時の登記申請
- 株式会社本店移転時の登記申請
- 株式会社支店設置時の登記申請
上記の会社・法人の登記申請の例でもわかりますが、M&Aスキームの1つである合併を実施した際は登記申請する必要があります。しかし、すでに説明しているように、株式譲渡を実施した際は特に登記申請をする必要はありません。
登記申請は法務局で行う
登記申請は法務局で行えます。登記申請する流れとしては、以下のとおりです。
【登記申請する流れ】
- 登記申請書を作成・添付書類の用意
- 登記申請書を「法務局」へ提出する
【法務局へ登記申請書を提出する方法】
- 登記申請書を「郵送」で提出する
- 登記申請書を「オンライン」で作成・提出する
- 登記申請書を「法務局の窓口」で提出する
7. 株式譲渡で定款変更する際の手続き
続いて、定款変更を行う際の手続きを解説します。商号や本店住所の変更、出資一口金額の減少などがあった場合は、定款変更を実施する必要があります。
定款の変更は2パターン
定款の変更には、これと同時に登記申請が必要になるケースと、登記申請が不要なケースがあります。それぞれ説明します。
登記申請が必要
定款の変更には、同時に法務局に対する登記申請が必要なケースがあります。定款変更と同時に登記申請を行う必要があるケースは、以下のとおりです。
- 会社の商号変更
- 本社の住所変更
- 事業目的の変更
- 公告方法の変更
- 取締役会の設置・廃止
- 監査役の設置・廃止
- 株式に関する変更
上記のケースにおいて、株主総会の決議後2週間以内に法務局へ登記申請する必要があります。
登記申請が不要
定款変更には、法務局に対する「登記申請」が不要なケースもあります。例えば、会社の決算月の変更です。決算月の変更だけであれば、登記申請は必要ありません。ただし、税務署に対する異動届出書の提出に株主総会の議事録を添える必要があります。
定款の変更には株主総会の特別決議が必要
定款を変更する際は、株主総会による特別決議が必要です。「登記申請が必要なケース・必要ないケース」のどちらも株主総会による特別決議が必要です。
定款変更に関する特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主が保有する議決権のうち3分の2以上の賛成が得られない場合、否決されてしまいます。
定款変更と同時に登記申請が必要なケースでは、株主総会で定款変更に関する決定が下されたことを示す議事録を法務局へ提出する必要があります。
変更に関する受理を法務局から得られたら、変更された定款と株主総会の議事録を保存しておきましょう。
8. 株式譲渡における登記申請・定款変更に関する相談先
ここまで紹介したとおり、株式譲渡における登記申請・定款変更を済ませるにはさまざまな手続きが求められます。中には専門知識が求められる手続きもあることから、スムーズに株式譲渡を済ませたい場合にはM&A仲介会社にサポートを依頼することが望ましいでしょう。
もしもM&A仲介会社選びにお悩みでしたら、M&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所には、経験・実績が豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、これまでに培ってきたノウハウを生かしてM&A手続きをフルサポートします。
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9. 株式譲渡における登記申請・定款変更まとめ
本記事では、株式譲渡における登記申請・定款変更を解説しました。株主譲渡が実施された場合、基本的に登記申請・定款変更は必要ありません。
ただし、株主兼役員が株主・役員のどちらも辞めてしまう場合は、法務局での手続きが必要となる点を覚えておきましょう。
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