株式譲渡・取得の仕訳(会計処理)に関して

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

M&Aや事業譲渡等の手段として幅広く利用されている株式譲渡ですが、取引があった際の仕訳等、会計処理はどのように対応すれば良いのでしょうか。株式譲渡があった際の税務上の取り扱いも含めて、会計処理として必要な仕訳など、概要を解説します。


目次

  1. 株式譲渡・取得の仕訳・会計処理
  2. 株式譲渡・取得の税務処理
  3. 株式譲渡・取得の仕訳(会計処理)まとめ
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1. 株式譲渡・取得の仕訳・会計処理

株式譲渡・取得の仕訳・会計処理

出典: https://pixabay.com/

M&Aや事業の売却の手段として比較的多く使用される株式譲渡ですが、株式譲渡をした場合に、会計上の仕訳はどのように行うのが適切なのでしょうか。会計処理の概要と、仕訳の具体例について、譲受企業、譲渡企業のそれぞれに分けて解説します。
 
なお、株式譲渡の手続きや税金等については、下記まとめを参照下さい。

【関連】株式譲渡とは?手続きからメリット・デメリット、税金に関して解説【成功事例あり】

譲受企業の仕訳・会計処理

株式譲渡により、相手方企業の株式を譲り受けた譲受企業の会計処理は、支配権を取得した場合、支配権はないが影響力は大きい場合(関連会社株式)、また支配権・影響力がない場合のそれぞれで会計処理が異なります。それぞれについて解説します。

①支配権を取得した場合

株式譲渡により、譲受企業がその会社の支配権を取得した場合、取得した株式を「子会社株式」という勘定科目に仕訳します。
 
なお、株式譲渡により支配権を取得したかどうかを判断するためには、「企業会計基準適用指針第22号 連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」にその基準が定められています。
 
判断基準の概要を述べると、株式譲渡により過半数の株式を取得した場合、また、株式譲渡により過半数の株式を取得していない場合でも、他の大株主と株主間協定を締結することにより、実質的に過半数の議決権を行使できる状態にある、等が判断基準となります。
 
また、株式譲渡により譲り受ける資産および負債を時価で再計算し、譲渡対価がその時価純資産価額を上回った場合、その超過額を「のれん」として仕訳し、買収した企業のバランスシート(貸借対照表)上に計上します。

②支配権なしで影響力は大きい場合

過半数の議決権を取得するには至らなかったが、重要な影響力を取得した場合、取得した株式は「関連会社株式」という勘定科目に計上します。
 
重要な影響力を行使できる場合の判断基準は、支配権の判断同様に、「企業会計基準適用指針第22号 連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」にその基準が定められています。
 
概要を述べると、株式譲渡により20%以上50%以下の議決権を保有することになる場合、関連会社株式と取り扱われます。

③支配権なし影響力なしの場合

①にも②にも該当せず、株式を取得した会社に対して支配権も影響力もないと考えられる場合、株式譲渡により取得した株式を「投資有価証券」という勘定科目に計上します。
 
株式譲渡により受領した株式数では支配権を持たないと考えられる場合は、①や②の条件に該当しない場合であることから、当該企業の議決権のうち20%未満の保有にとどまる場合を指します。

譲渡企業の会計処理

譲渡企業側の会計処理としては、売却した事業に関連して計上していた勘定科目から取得原価を控除し、売却対価との差額を売買損益に仕訳し、譲渡企業の損益計算書上に計上します。
 
また、事業譲渡に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として一括で仕訳し、損益計算書に計上します。

譲渡企業株主の会計処理

株式を保有していたのが企業や個人等のその他の株主である場合、譲渡企業株主の会計処理としては、支配権・影響力の度合いに応じて計上していた「子会社株式」や「関連会社株式」「投資有価証券」等の勘定科目から取得原価を控除し、売却対価との差額を売買損益に計上します。

株式譲渡の会計の留意点

株式譲渡の会計では、その支配権があるかどうかにより、取得後の会計上の取り扱いが異なるため、子会社として買うのか、関連会社として買うのか、といった判断が重要です。

子会社である場合、関連会社である場合のそれぞれの会計上の留意点について、概要を解説します。

関連会社株式として保有する場合

関連会社株式としての保有となる場合については、その後持分法により会計処理が行われ、原則として連結財務諸表を作成する必要がなく、個別財務諸表をそれぞれ作成することとなります

持分法では、当期に稼いだ関連会社の損益に保有割合を乗じた金額を、投資有価証券の評価増減として記録することで、その損益を反映させます。連結会計とは異なり、1行でその損益を反映させることから、「1行連結」とも呼ばれます。

子会社株式として保有する場合

子会社株式としての保有となる場合については、連結財務諸表を作成する必要があります。その段階で、引き受けた資産と負債を再度時価評価し、その時価純資産価額と取得価額の差額をのれんとして計上します。こののれんについては、いったん資産計上し、一定期間で費用として償却する必要があります。
 
また、事業環境の変化等により、子会社の事業から発生するキャッシュフローが当初の見積もりから大幅に減少する等で株式の時価が取得価額より50%以上下落している場合は、子会社株式の減損処理を行う必要があります。また、その後時価が回復したとしても、戻し入れることはできません。ただし、5年以内に時価が取得原価まで回復する可能性がある場合で、それを事業計画等で証明できる場合には、即時に減損処理を行う必要はありません。
 
株式と同様に、のれんも減損処理が要求される場合があります。仮に事業環境の変化等により、当初計画時に期待されたキャッシュフローが創出できなくなった場合には、減損の兆候をテストし、減損損失の認識の判定を行い、減損損失を計上します。
 
この減損の兆候の把握については、事業の割引前キャッシュフローと帳簿上ののれんの金額を比較し、割引前キャッシュフローがのれんの金額を下回った場合、減損の兆候があると判定します。その後、回収可能価額を計算し、回収可能価額とのれんの帳簿価額の差を減損損失として認識します。
 
子会社株式の場合は、のれんの償却や減損等、思わぬ費用や損失が発生する可能性もあることから、事前のデューディリジェンスや事業の見極めが非常に重要です。また、日本基準の会計方針をとるか、IFRSやUSGAAP等他の会計基準をとるかどうかにもよって大きくのれんの扱いは変化するため、事前によく確認する必要があります。

2. 株式譲渡・取得の税務処理

株式譲渡・取得の税務処理

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株式譲渡・取得に伴い、どのような税金が発生するのでしょうか。譲受企業・譲渡企業のそれぞれについて概要を解説します。

譲受企業の税務処理

譲受企業が株式を相手方企業に株式譲渡した場合、税務処理としては、特に課税される税金はありません。ただし、株式を取得した際に「負ののれん」が発生した場合については、その金額を一括して収益として算入する必要があり、その他の所得と通算して法人税の課税対象となることがあります。
 
また、逆にのれんが発生している場合、その償却費用を収益に算入し、その他の所得と通算して法人税の課税対象となります。

譲渡企業の税務処理

逆に譲渡企業の税務処理はどのようになるのでしょうか。株式譲渡における譲渡人が法人化個人かにもより、取り扱いが異なります。それぞれについて概要を解説します。

①個人株主の場合

個人の株主が企業に対して株式譲渡を行った場合、取得価額と売却価額の差額が譲渡所得として所得税15%、住民税5%の合計20%の課税対象となります(なお、2037年12月31日まではこれに加えて復興特別所得税が課され、合計20.315%の税率が課されます)。
 
なお、譲渡金額が著しく時価を下回る場合、時価と譲渡価額との差額が贈与としてみなされ、贈与税が課せられる場合があります。具体的には、譲渡価額が時価を20%以上下回る場合に、みなし贈与と捉えられる場合があるため、この価格を下回らないように譲渡価額を設定することが重要です。

②法人株主の場合

法人株主の場合、譲渡価額と譲渡対象となる資産および負債との差額が譲渡益として、課税対象となります。これはその他の事業所得と通算の上、法人税の課税対象となります。
 
また、譲渡する資産のうちに、課税する対象となる資産がもしあれば、消費税の課税対象ともなります。
 
加えて、譲渡する資産のうちに不動産がある場合には、不動産の所有権移転登記をする必要があり、その際に登録免許税が課税されます。登録免許税の金額は、固定資産課税台帳に記載の価格の2%となります。
 
合わせて、譲渡する資産のうちに不動産がある場合には、不動産取得税が同時に課されます。不動産取得税は、固定資産課税台帳に記載の科学の4%となります。

株式譲渡の税務処理の留意点

株式譲渡の際に課される税金は上記の通りですが、いくつか税務処理で留意すべき点があります。主な観点として、恣意性の排除、買収対象企業の欠損金、資産の含み損、みなし配当について解説します。

株式譲渡における恣意性の排除

株式譲渡における譲渡価額について、恣意性を可能な限り排除した「時価」を採用する必要があります。租税回避などに株式譲渡が利用されることのないように、税法上適切な「時価」が計算される必要があるということです。
 
特に、グループ会社間での株式売買や事業譲渡は、第三者取引とは異なり、恣意性が入りやすいため、第三者のコンサルティングなどを介在し、適切な時価で取引を行うことが重要です。
 
仮に恣意性のある価格での株式譲渡となった場合は、税務調査等でその不備を指摘される恐れがあり、追徴課税等が課される可能性があるため、事前によく確認するようにしましょう。

買収対象企業の欠損金

買収対象会社に繰越欠損金がある場合については、その後の事業損益に与える影響が異なってくるため、税務上の利益の計算に留意が必要です。
 
原則として、過年度の繰越欠損金があった場合には、当期以降の利益と相殺することができますが、法人税法では、赤字会社を買収し、黒字会社と合併することで租税回避をする可能性があるため、それを防止するため、繰越欠損金を一部使えないように制限する規定が定められています。
 
具体的には、買収対象企業と合併する場合に、合併までに50%超の資本関係が生じてから、5年を経過していない会社と合併した場合、繰越欠損金の引継ぎが制限されます。つまり、資本関係等で深い関係にある場合でなければ、すべての繰越欠損金を引き継ぐことはできません。
 
この深い関係にあるかどうか、という観点については、先述の50%超の資本関係が5年以上継続している、という条件以外に、みなし共同事業要件により認められる場合があります。具体的には、事業に深い関連がある場合、事業規模で互いにシナジーを生む関係性にある場合、事業規模の継続に対し互いにシナジーを生む関係性にある場合、特定役員が引き継いでいるなどの関係性にある場合、が挙げられます。つまり、似たような規模の会社同士で、事業拡大に向けたシナジー効果が得られるような合併をする場合には、繰越欠損金を引き継ぐことが可能です。

資産の含み損の利用制限

上記に加え、繰越欠損金がない場合であっても、買収対象企業に含み損のある資産がある場合、将来的に譲渡することで損失が発生することを見込み、詳細の租税回避目的で合併が行われることを阻止するために、同様の制限が課されます。
 
つまり、資本関係が50%超の期間が5年以上継続していない会社との間で組織再編等を行い、含み損のある資産を処分した場合には、損金算入ができません。

自己株式取得時のみなし配当

非上場の会社が自己株式を取得した場合、「みなし配当」が発生する場合があります。
 
税務上の譲渡価額と簿価との差額の取り扱いとしては、配当部分と配当を除いた譲渡価額に分けられます。自己株式取得により支払った現金を、利益の分配と、資本金の払い戻しの2つにわけ、利益の分配部分とみなされる部分を「みなし配当」とされます。この「みなし配当」金額は、ここまで積み立ててきた利益の分配であるため、法人側で積み立てている利益積立金額と一致することとなります。
 
この自己株式を売却した株主側では、「みなし配当」とみなされた金額を差し引いた部分が譲渡益として所得税の課税対象となります。なお、このみなし配当による受取配当金と、株式譲渡によって得られた譲渡益は通算することができません。それぞれ別の金額で課税の対象となります。

3. 株式譲渡・取得の仕訳(会計処理)まとめ

株式譲渡・取得の仕訳(会計処理)まとめ

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株式譲渡・取得により事業を譲渡したり、M&Aを行うことは、手続きが簡便であることから、非常に一般的な方法ではありますが、議決権の保有割合により、会計処理が異なったり、税金についても特殊な取り扱いをする項目があるなど、会計・税務の両面から専門家のサポートが必要となります。
 
M&A総合研究所では、会計士や税理士等の専門家とのコネクションがあることから、株式譲渡によるM&Aや事業譲渡に際し、様々な側面から適切なアドバイスを行うことが可能です。事業譲渡やM&Aの手段として株式譲渡を検討しているものの、手続き等で不明な点がある場合は、ぜひ一度無料相談をご利用ください。

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