株式譲渡した際の確定申告!必要性や方法、かかる税金や必要書類の書き方を解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

株式譲渡による個人の所得は総合課税ではないため、例外を除き確定申告が必要です。本記事では、株式譲渡所得への税金額、確定申告時の添付資料などの必要書類、確定申告書の書き方などと合わせて住民税にも言及し、株式譲渡所得の確定申告に関して徹底解説します。

目次

  1. 株式譲渡による確定申告とは
  2. 株式譲渡した際に確定申告をする必要がある人
  3. 株式譲渡でかかる税金と計算方法
  4. 株式譲渡した際に確定申告をしなくてもよい場合
  5. 確定申告をした方がお得な3つのケース
  6. 株式譲渡時の確定申告における必要書類
  7. 株式譲渡した際の確定申告書の書き方
  8. 株式譲渡した際の確定申告方法
  9. 株式譲渡した際の確定申告の期日
  10. 株式譲渡した際の確定申告まとめ
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1. 株式譲渡による確定申告とは

本記事では、株式譲渡を実施した際にかかる確定申告を解説します。この章では、まず、確定申告とは何であるかを確認しましょう。

確定申告とは

日本の税制では、個人・法人を問わず、1年間の収入・経費と、そこから計算される所得を報告(申告)し、その所得に課せられる税金(所得税)を納付します。このうちの報告(申告)する手続きが、確定申告です。

ただし、会社勤めをしている個人の場合は、毎月の給与額から所得税分が控除され、会社が代わりに納付をしているので、基本的に確定申告をする必要はありません。

確定申告の対象者

個人の場合の確定申告は、前年の1月1日~12月31日までの1年間に獲得した所得にかかる税金(所得税)を計算します。税金の申告・納付期限は、原則として当年2月16日~3月15日です。

法人の場合は、各社ごとに定めている事業年度終了後、その2カ月以内に申告・納税することになっています。そして、個人の場合、基本的に会社勤めをしていれば確定申告は不要ですが、以下のケースでは、確定申告が必要です。

  • 配当所得があった人
  • 事業所得があった個人事業主
  • 不動産所得があった人
  • 譲渡所得があった人
  • 退職所得があった人
  • 一時所得があった人
  • 雑所得があった人
  • 山林所得があった人

上記に当てはまる人は、指定された期間内に確定申告をしなければいけません。そして、株式譲渡による所得は譲渡所得に該当するため、例外のケースを除いて確定申告が必要です。

年末調整と確定申告の違い

確定申告と関連する制度として年末調整があります。年末調整は、会社勤めの個人が対象となる措置です。本来、所得税は年間の所得額で計算するものですから、会社で毎月、給与額から控除される所得税は暫定額になります。

したがって、年末の12月分給与において、1年分の所得額から正式な税金額を計算し、その過不足分を調整するのが年末調整です。ほとんどの場合、税額過多となるため、還付を受けます。

この年末調整があることによって、一般的な会社勤めの個人の場合、確定申告をする必要がないでしょう。ただし、会社の給与以外に収入がある場合には、確定申告をしなければなりません。

株式譲渡と確定申告の関係性

株式譲渡による所得があれば確定申告が必要ですが、これには例外があります。まず、株式市場で取引される株式の売買を行うには、証券会社に口座を持つことが必須です。そして、証券会社に口座を開設する際には、口座の種類を以下の3択から選びます。

  • 一般口座
  • 特別口座・源泉徴収なし
  • 特別口座・源泉徴収あり

上記のうち、「特別口座・源泉徴収あり」の場合は、株式譲渡で得た利益に応じて口座内で源泉徴収がなされるので、確定申告を行う必要がありません。逆に、それ以外の種類の口座では、各個人の確定申告を行い、所得税を納付する必要があります。

【関連】株式譲渡の際の源泉徴収や税金は?気を付けるポイントなどまとめ| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

2. 株式譲渡した際に確定申告をする必要がある人

この章では、前述した株式譲渡と確定申告の関係性について、より具体的に細かく解説します。株式譲渡を実施した結果、確定申告を行わなければならないのは、以下のケースです。

  • 源泉徴収口座以外で株式譲渡による利益を得た人
  • 源泉徴収口座の譲渡損失を他の譲渡益から差し引く人
  • 譲渡損失を譲渡益から差し引く人
  • 過去3年間の譲渡損失を本年の譲渡益から差し引く人
  • 本年+過去2年の譲渡損失を翌年に繰り越す人
  • 一般企業の株式譲渡を実施した人

源泉徴収口座以外で株式譲渡による利益を得た人

株式市場の株取引について源泉徴収口座以外の口座を用いて株式譲渡を行い、譲渡所得を獲得した人は、確定申告を行う必要があります。

源泉徴収口座の譲渡損失を他の譲渡益から差し引く人

源泉徴収口座を利用していて、その口座から発生した株式譲渡損失を他の譲渡益(上場株式の配当など)から差し引いた結果、課税所得が発生している場合には確定申告が必要です。

譲渡損失を譲渡益から差し引く人

1年間で獲得した上場株式の配当所得などの金額から、1年間の株式譲渡から発生した譲渡損失の金額を差し引いた結果、課税所得が発生している人は確定申告が必要になります。

過去3年間の譲渡損失を本年の譲渡益から差し引く人

当年に獲得した株式譲渡による譲渡所得金額や配当金額から、過去3年間に渡って発生した株式譲渡損失の総額を差し引いた結果、課税所得が発生している人は、確定申告を行わなければいけません。

本年+過去2年の譲渡損失を翌年に繰り越す人

株式譲渡によって発生した譲渡損失のうち、当年の譲渡益から控除しきれない損失金額がある場合には、確定申告を実施することで、最大3年間損失を繰り越せます。繰り越した損失額は、翌年以降の株式譲渡所得から控除でき、そのぶん税金を抑えることが可能です。

一般企業の株式譲渡を実施した人

上記までは全て株式市場における上場企業の株取引に関する株式譲渡所得に関するものでした。税法上、株式譲渡の譲渡所得としては、一般企業(非上場企業)の株取引の場合も申告分離課税の対象です。

つまり、M&Aで自社株式を譲渡して利益(譲渡所得)がある場合、確定申告を行わなければなりません。同じ株式譲渡ではありますが、上場企業の株式譲渡における損益と一般企業(非上場企業)の株式譲渡の損益は通算できません

したがって、両方の株式譲渡を行った場合には、それぞれ区分けして確定申告を行うことになります。

源泉徴収口座とは

源泉徴収口座とは、源泉徴収口座内で発生した株式譲渡所得に対して源泉徴収(所得税・住民税)を実施し、確定申告を不要にできる特定口座です。源泉徴収口座は、配当の受け入れも可能でしょう。

したがって、源泉徴収口座内に株式譲渡損失が発生した場合には、配当所得金額から、その損失額を控除して源泉徴収税額が計算されます。なお、源泉徴収口座において発生する所得税額や住民税額の計算は、全て証券会社などの金融商品取引業者が行います。

源泉徴収口座は、1つの金融機関・証券会社に対して1口座しか作れません。

源泉徴収なし口座は確定申告が必要

源泉徴収口座とは反対に源泉徴収なし口座もあります。源泉徴収なし口座は簡易申告口座とも呼ばれるもので、特定口座の1つです。文字からもわかるように、源泉徴収が行われないため、自分で確定申告をする必要があります。

ただし、源泉徴収なし口座(簡易申告口座)は、口座を開設した金融機関・証券会社から送られてくる特定口座年間取引報告書を利用することで、簡易的に確定申告を行うことが可能です。

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3. 株式譲渡でかかる税金と計算方法

この章では、株式譲渡でかかる税金と、その税金の計算方法を解説します。

株式譲渡でかかる税金

株式譲渡を行った結果、利益が生まれた場合には、課税所得とみなされて税金が発生します。株式譲渡でかかる税金は、個人の場合は所得税+復興特別所得税(2037⦅令和19⦆年までの時限税)と住民税、法人の場合は法人税です。

個人の株式譲渡の税金の税率は、2022(令和4)年7月現在、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%、合計20.315%となっています。一方、法人は法人税とひと言でくくられていますが、実際には、法人税、法人住民税、法人事業税、地方法人税の4種です。

これら4種の法人税をまとめて勘案した税率は、法人税の実効税率と呼ばれています。この実効税率は、法人の所在地、規模(資本金額)、利益額によって変動するため定率にはなりません。2022年7月現在の法人税の実効税率は約30~32%です。

【株式譲渡所得に対する税率】

株式の区分 税率(個人) 税率(法人)
上場株式などにかかる譲渡所得など 20.315% 30~32%
一般株式などにかかる譲渡所得など

株式譲渡所得への課税の仕組み

株式譲渡所得が発生した際の税金の額は、基本的に、株式譲渡価額から株式取得額や委託手数料などを差し引いて課税所得を算出し、その金額にそれぞれの税率を掛け合わせることで計算できます。

個人の場合

個人が株式譲渡を実施して獲得した譲渡所得は、申告分離課税です。同じ株式譲渡でも、上場企業の株式譲渡所得と、一般企業(非上場企業)の株式譲渡所得も分離して確定申告します。上場企業の株式譲渡所得の計算式は以下のとおりです。

  • 株式譲渡所得=株式譲渡額-(株式取得額+株式取得のために借入した負債の利子金額+株式譲渡のために支払った委託手数料+その他経費+管理費+手数料などにかかる消費税など)

一般企業の株式譲渡所得は以下のように計算します。
  • 株式譲渡所得=株式譲渡額-(株式取得額+仲介会社への手数料など)

一般企業の株式譲渡所得の計算における株式取得額とは、会社の資本金額が該当します。このようにして求めた譲渡所得額に上述した税率を掛け合わせることで、税金額が導き出せるでしょう。

法人の場合

法人が株式譲渡で利益を得たとしても、その株式譲渡益(税法上、個人は「譲渡所得」、法人は「譲渡益」という)に対し分離して課税は受けません。法人のその他の益金、損金全てと通算した数値が法人税の対象です。

したがって、株式譲渡益やその他の益金を上回る損金があった場合、その法人の決算は赤字となり課税されません。なお、法人の株式譲渡益を求める計算式は、基本的に個人の場合と同様です。

申告分離課税と総合課税の違い

日本では、個人の所得税について、申告分離課税として扱われる所得と総合課税となる所得に分類されています。この申告分離課税と総合課税の内容を確認しておきましょう。

申告分離課税

申告分離課税とは、指定する所得を総合課税から分離して課税する方式です。総合課税の場合、税率は累進課税となっており、最高税率は45%で、これに住民税10%が加わります。つまり、株式譲渡所得は分離課税となっていることで、税金が高額化することを免れています。

総合課税

前述のとおり、総合課税とは累進課税ですから、所得額が低い段階(所得額195万円未満)の税率は5%です。そこから、所得額に応じて段階的に税率が上がっていく仕組みになっています。

個人の株式取引であれば、税率を左右するような高額所得にならない可能性もありますが、高額所得を得る人も少なくありません。M&Aで自社株式を売却したような場合には、相当の譲渡所得額になることがほとんどです。

その場合、もし総合課税だったとすると、高額な税金となってしまいますから、株式譲渡所得が分離課税であるのは適した税制といえるでしょう。

なお、株式の配当金は、総合課税と申告分離課税の選択ができます。総合課税を選んだ場合、配当控除を受けられることがメリットです。ただし、その場合は上場株式の譲渡損失との損益通算はできなくなります。

税金の計算方法

個人が上場株式の取引により譲渡所得を得た場合の税金額の計算例を掲示します。前提条件は以下のとおりです。

  • 1株1,000円の株式を1,000株取得(取得費100万円)
  • この株式を300万円で株式譲渡
  • 委託手数料や経費などは合計50万円

まず、課税所得を計算します。
  • 株式譲渡価額300万円-(取得費100万円+経費・手数料など50万円)=150万円

課税所得150万円に対して2022年7月時点の分離課税の3種の税率を掛け合わせてそれぞれの税金額を算出します。
  • 所得税額:150万円×15%=225,000円
  • 復興特別所得税額:150万円×0.315%=4,725円
  • 住民税額:150万円×5%=75,000円

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4. 株式譲渡した際に確定申告をしなくてもよい場合

ここまで解説してきたように、株式譲渡によって譲渡所得が発生した場合には、基本的に確定申告が必要です。しかし、ある一定の条件が満たされているケースでは、確定申告をしなくてもよい場合があります。

  1. 譲渡損が発生している場合
  2. 源泉徴収ありの特定口座の場合
  3. 所得控除額よりも低い場合
  4. NISAでの運用の場合
  5. その他

①譲渡損が発生している場合

株式譲渡によって譲渡損が発生している場合には、確定申告は必要ありません。複数口座を所有していて、全ての口座で損失が発生している際には、確定申告はしなくてもよいでしょう。ただし、過去3年以内の譲渡損失の繰り越し控除を希望する場合には、確定申告が必要となります。

②源泉徴収ありの特定口座の場合

源泉徴収ありの特定口座を利用している場合は、確定申告する必要がありません。源泉徴収ありの特定口座を利用すれば、金融機関・証券会社が源泉徴収してくれます。

③所得控除額よりも低い場合

株式譲渡によって獲得した譲渡所得が所得控除額よりも低い場合には、確定申告をする必要はありません。株式譲渡の確定申告は、総合課税ではなく申告分離課税であるため、株式譲渡の譲渡所得が20万円以下であれば、税金がかかりません。したがって、確定申告する必要がなくなります。

④NISAでの運用の場合

NISA、つみたてNISAで運用している株式譲渡の譲渡所得は、確定申告の必要はありません。両者は制度として、非課税投資枠が設けられているからです。NISAは年間120万円までの投資枠で5年間、つみたてNISAは年間40万円までの投資枠で20年間、無税になります。

⑤その他

年末調整で所得税の納税を終えた給与所得者で、給与・退職所得以外の所得が一般口座や源泉徴収なしの特定口座の譲渡益を合わせて20万円以下であれば、確定申告は必要ありません。ただし、住民税の申告は必要です。

公的年金などによる年間収入が400万円以下の年金受給者で、年金以外の所得が一般口座や源泉徴収なしの特定口座の譲渡益を合わせて20万円以下のときも、確定申告は必要ありません。ただし、この場合も住民税の申告は必要です。

5. 確定申告をした方がお得な3つのケース

会社勤めの個人の場合、ほとんどは確定申告する必要はありません。しかし、確定申告をした方が節税につながるケースがあるのでここに紹介します。

上場株式などで譲渡損が出たケース

譲渡所得に該当するのは、上場株式の取引だけではありません。たとえばFXなど金融商品取引業者などを通じて行った取引は、全て譲渡所得の対象です。つまり、それらの取引は、まとめて損益通算ができます。

上場株式の売買、FX取引、投資信託などで譲渡損が出た場合には、配当金や他の譲渡所得と合わせて確定申告することによって、損益通算がなされたうえでの課税となるため、節税につながります。

当年の譲渡取引が通算して赤字だった場合、譲渡損は確定申告することにより3年間、繰り越し可能です。翌年以降、3年の間に譲渡所得が生まれたとき、損益通算ができて、その分、節税となります。

複数の特定口座(源泉徴収あり)で利益と損失があるケース

上場株式の売買取引を、複数の特定口座(源泉徴収あり)で行っている場合、それぞれの口座ごとに源泉徴収が行われます。したがって、どれかの口座で譲渡損が出ていても、損益通算は行われません。

この場合、源泉徴収ありの特定口座であったとしても、確定申告することで損益通算が行われ、還付を受けられます。

配当控除を受けるケース

上場株式を所有していて配当金を受け取った場合、基本的に源泉徴収された金額を受け取るので確定申告の必要はありません。しかし、総合課税として確定申告を行うことで、配当控除を受けられるため、その分、節税につながります。

配当金は、総合課税と分離課税の選択ができるため、上場株式などの取引が損失の場合に分離課税として確定申告をすると、損益通算が可能です。ただし、この場合、配当控除は受けられません。

6. 株式譲渡時の確定申告における必要書類

ここからは、株式譲渡時の確定申告における必要書類の説明です。株式譲渡によって譲渡所得を得た場合には、以下の必要書類を用意して確定申告をする必要があります。

  1. 確定申告書B
  2. 分離課税用の申告書(第三表)
  3. 株式などに係る譲渡所得などの金額の計算明細書
  4. 年間取引報告書
  5. 特定口座以外で取引した株式譲渡収入や取得費などの計算資料
  6. その他

①確定申告書B

まず、用意すべき必要書類は確定申告書Bです。確定申告書には、確定申告書Aと確定申告書Bの2種類があります。株式譲渡における譲渡所得の申告に用いるのは、確定申告書Bです。

確定申告書AとBの違い

確定申告書Aは、1年間で得た所得の種類が「給与所得、公的年金など、その他の雑所得、配当所得、一時所得」のうちのどれかであり、予定納税がない人に限ります。

予定納税とは、前払いの税金のことです。当年の5月15日時点で決定している予定納税基準額が15万円以上であった場合に、一部を前もって納付する制度になります。税務署から連絡を受けた人は、所得税の予定納税を行わなければいけません。

会社員が、医療費控除や住宅ローン控除を受ける目的で確定申告を行う際は、基本的に確定申告書Aを利用します。一方、確定申告書Bは、不動産所得や事業所得などの所得の種類にかかわらず、誰でも利用できる確定申告書です。

株式譲渡による譲渡所得が発生した場合には、この確定申告書Bを使用して確定申告を行います。

②分離課税用の申告書(第三表)

株式譲渡所得の確定申告では、分離課税用の申告書(申告書第三表)も必要です。個人が株式譲渡所得を得た場合、または上場株式の配当に関して申告分離課税を選択した場合は、確定申告書Bのほかに分離課税用の申告書(申告書第三表)も記載しなければなりません。

③株式などに係る譲渡所得などの金額の計算明細書

株式譲渡における確定申告では、「株式などに係る譲渡所得などの金額の計算明細書」という必要書類も準備しなければいけません。これには、株式譲渡による収入金額や株式の取得価額、委託手数料などを記載します。

④年間取引報告書

年間取引報告書も、株式譲渡の確定申告時に必要な書類です。この年間取引報告書は、特定口座である源泉徴収なし口座を使って取引している場合に、利用している金融機関・証券会社から郵送されます。

⑤特定口座以外で取引した株式譲渡収入や取得費などの計算資料

特定口座以外で取引した株式譲渡収入や取得費などの計算資料も、確定申告時に用意すべき必要書類の1つです。

⑥その他

上記で挙げた5種類の必要書類のほかに、税金の還付がある場合は、還付先となる金融機関の口座番号や認印なども事前に準備しておく必要があります。

【関連】株式譲渡の必要書類とは?手続きに沿って注意点も徹底解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

7. 株式譲渡した際の確定申告書の書き方

この章では、確定申告における必要書類の書き方を解説します。基本的には、各種必要書類(株式などに係る譲渡所得などの金額の計算明細書など)に記載した内容を、確定申告書Bに転載していく流れです。

現在は確定申告専用のウェブサイト「e-Tax」が開設しており、これを利用して順次、入力を進めると確定申告書が完成し、電子申告・納税ができるようになっています。計算は自動で便利ですので、作成できる環境がある場合は、そちらを参照ください。

以下では、確定申告書の内容を理解する意味も含め、手書き入力を前提とした確定申告書の書き方を掲示します。

確定申告書B 第一表の書き方①:収入金額を記載

まずは、確定申告書の「収入金額」の部分に、株式譲渡による収入額を記載します。上場株式と一般株式は、それぞれ分けて収入額を記載しなければなりません。ここで記載する収入額は、「株式などに係る譲渡所得などの金額の計算明細書」から転記します。

確定申告書B 第一表の書き方②:所得金額を記載

続いて、確定申告書Bの「所得金額」の部分に所得金額を記載します。これも、「株式などに係る譲渡所得などの金額の計算明細書」からの転記です。「分離課税」の「株式などの譲渡」欄に、上場株式と一般株式の所得金額を、それぞれ分けて記入します。

確定申告書B 第一表の書き方③:所得から差し引かれる金額を記載

所得金額の記入を終えたら、「所得から差し引かれる金額」欄を記載します。所得金額から控除されるものがある場合に、その金額を記載するものです。所得金額から控除されるものとは、医療費控除や配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除などが当てはまります。

確定申告書B 第一表の書き方④:税金の計算を記載

続いて、「税金の計算」欄を記載します。「税金の計算」欄に「総合課税の合計額」という部分がありますが、株式譲渡所得の税金計算は、この「総合課税の合計額」は関係ありません。所得金額欄に記載した「株式などの譲渡」の所得金額に税率を掛けて税金額を決定します。

確定申告書B 第一表の書き方⑤:その他を記載

確定申告書にある「その他」の部分には、「専従者給与(控除)の合計額」や「青色申告特別控除額」、「未納付の所得税」、「復興特別所得税の源泉徴収税額」などを記載します。

確定申告書B 第二表の書き方①:所得の内訳欄を記載

次に、「確定申告書B 第二表」の書き方を説明します。まずは、「所得の内訳」欄です。「所得の種類(給与、配当など)」や「所得の支払者の氏名・名称」、「収入金額」、「所得税および復興特別所得税の源泉徴収税額」を記載します。

確定申告書B 第二表の書き方②:所得から差し引かれる金額に関する事項を記載

「所得から差し引かれる金額に関する事項」の部分には、控除の対象となるもの(国民健康保険や国民年金など)で、実際に支払った金額を記載します。源泉徴収によってすでに控除されている場合は、「源泉徴収票のとおり」と記載しましょう。

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8. 株式譲渡した際の確定申告方法

株式譲渡所得の確定申告方法としては、以下の3種類があります。

  1. 税務署の窓口まで直接書類を届ける
  2. 税務署へ郵送する
  3. e-Taxで電子申告する

①税務署の窓口まで直接書類を届ける

確定申告方法の1つが、税務署の窓口まで直接書類を届ける方法です。あらかじめ作成しておいた確定申告書を税務署へ持参し提出することで、確定申告が完了となります。税務署の窓口に確定申告書類を提出する場合には、以下の書類の持参が必要です。

  • 確定申告書B
  • 決算書(白色申告の場合「収支内訳書」・青色申告の場合「青色申告決算書」)
  • 添付資料(添付資料台紙に添付資料をのりづけした状態)

添付資料とは、下記のような控除となるものの証明書やマイナンバーに関する証明書などが該当します。添付資料を提出する際には、添付資料台紙に添付資料をそれぞれのりづけして提出しましょう。
  • 源泉徴収票
  • マイナンバー確認の書類
  • 社会保険料控除に関する書類
  • 支払調書
  • 生命保険料控除に関する書類
  • 寄付金控除に関する書類
  • 地震保険料控除に関する書類
  • 小規模企業共済など掛金控除に関する書類

添付資料台紙は、国税庁のホームページからダウンロード・印刷が可能です。

②税務署へ郵送する

2番目の方法として、確定申告書類を作成した後、税務署へ郵送する方法もあります。郵送であれば、わざわざ税務署まで足を運ぶ必要がありません。税務署へ確定申告書類を郵送する場合には、以下の書類が必要です。

  • 確定申告書B
  • 決算書(白色申告の場合「終始内訳書」・青色申告の場合「青色申告決算書」)
  • 添付資料(添付資料台紙に添付資料をのりづけした状態)
  • 決算書と申告書それぞれの控え、および返送用封筒(受付印が押された書類の控えが必要な場合)

税務署へ郵送する際にも、決算書や申告書と一緒に添付資料も提出する必要があります。受付印が押された各書類の控えがほしい場合は、決算書と申告書の控えと、必要額の切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。

③e-Taxで電子申告する

近年、新たに加わった確定申告手段として、e-Taxがあります。専用サイトにパソコン、またはスマートフォンからアクセスすると、確定申告書を作成できます。指示に沿って各入力を順番に行っていくことで、自動計算され確定申告書ができあがります。

できあがった確定申告書を印刷し郵送、または直接提出もできますが、e-Taxではマイナンバーカードを用いることで電子申告が可能です。電子申告であれば、入力の過程で生成された必要資料も自動で選択され同時に送信されるので、添付資料を個別に準備するような手間がありません。

マイナンバーカードの機能を活用するマイナポータル連携も行うと、控除証明書などのデータが自動取得され、入力する手間を大きく省けます。ただし、確定申告の内容いかんでは、例外的にe-Taxが使用できない場合があるので、事前確認が必要です。

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9. 株式譲渡した際の確定申告の期日

確定申告の期日は、原則として2月16日~3月15日です。この期間に必要書類を作成のうえ、上述した方法のいずれかで提出しなければなりません。なお、郵送の場合は、3月15日の通信日付印が押されていれば、有効です。

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10. 株式譲渡した際の確定申告まとめ

株式譲渡で得た所得の確定申告について、慣れないうちは戸惑いもあるかもしれません。その意味でも、順番に入力する数値を指示してくれるe-Taxは便利で有用ですので、必要環境が準備できる場合は活用を検討してください。本記事の概要は、以下のとおりです。

・株式譲渡した際に確定申告をする必要がある人
 →源泉徴収口座以外で株式譲渡による利益を得た人
 →源泉徴収口座の譲渡損失を他の譲渡益から差し引く人
 →譲渡損失を譲渡益から差し引く人
 →過去3年間の譲渡損失を本年の譲渡益から差し引く人
 →本年+過去2年の譲渡損失を翌年に繰り越す人

・株式譲渡の譲渡所得・譲渡益に対する税率(2022年7月現在)
 →個人の場合:20.315%
 →法人の場合:約30~32%

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