2019年02月08日公開
2019年02月08日更新
電気通信工事・管工事業界のM&A・買収・売却!業界動向・相場・ポイントを解説【成功事例あり】

電気通信工事・管工事業界のM&A動向や、買収・売却・事業譲渡時の相場価格は、どのようになっているのでしょうか?当記事では、電気通信工事・管工事業界のM&A・買収・売却について、業界動向・相場・ポイントを成功事例も紹介しながら解説していきます。
目次
1. 電気通信工事・管工事業界とは
当記事では、電気通信工事・管工事業界に焦点を当てて、この業界のM&A・買収・売却・事業譲渡の動向や成功事例について詳しく見ていきます。まずは、電気通信工事・管工事業界がどのような業界なのか、詳しく解説していきます。
電気通信工事とは
「電気通信工事」とは、「情報通信設備に関する工事」のことで、電話・テレビ・インターネットなどを、建物内や施設内でしっかりと利用できるように整備する工事のことです。
具体的な電気通信工事の例としては、「電気通信線路設備工事」や「電気通信機械設置工事」「空中線設備工事」「放送機械設置工事」「情報制御設備工事」「データ通信設備工事」「TV電波障害防除設備工事」などがあります。
このように、電気通信工事業者は、情報を伝達するために「電気を使用する設備」の設置や整備を専門的に行います。電話やテレビの他にも、防犯カメラや火災報知器なども取り扱っています。
管工事とは
「管工事」とは、空気調和・給排水・冷暖房・冷凍冷蔵・衛生に関する設備などを設置したり、水・ガス・水蒸気等を配送するための「管」を設置する工事のことを指します。
具体的な例としては、「冷暖房設備工事」や「空気調和設備工事」「給排水・給湯設備工事」「衛生設備工事」「浄化槽工事」「ガス管配管工事」「ダクト工事」などがあります。
電気通信工事・管工事業界の現状・動向
電気通信工事・管工事業界は、基本的に「公共工事」と「民間の設備工事」が収益源となっており、景気の影響を受けやすい業界と言えます。
2011年の東日本大震災の復興に向けた需要の高まりや、2020年の東京オリンピックに向けた設備投資の高まりによって、電気通信工事・管工事業界は拡大傾向にあります。
ただし、「長時間労働」や「休日の少なさ」「作業がきつくて危険」といった雇用環境の悪いイメージが影響して、人材の確保が難しくなっているという動向があります。
その結果、業界全体の高齢化も進んでいます。人材を確保することが難しくなっている動向を受けて、ICT(情報通信技術)やロボットを導入して、作業効率を上げ、人材不足問題を解消しようという動きも見られます。
また、M&Aによる同業他社の買収なども活発化しており、業界を再編しようという動向も見ることができます。
2. 電気通信工事・管工事業界の特性
電気通信工事・管工事業界の特性について解説します。この業界では、「元請け・下請け形式」・「自己建設形式」といった特性があります。
①元請け・下請け形式
電気通信工事・管工事業界の特性の一つが「元請け形式」であることです。業界全体のうち、半数以上がこの元請け形式が採用しています。「元請け」であるゼネコンが工事依頼者から発注を受け、その工事を「下請け」のサブコンが請け負う形になっています。
②自己建設形式
電気通信工事・管工事業界の中には、「自己建設形式」を採用している会社もあります。「自己建設形式」とは、設備設置工事の計画立案から工程管理、品質管理や現場の安全管理などを、すべて自分たちの会社で請け負う形式です。
3. 電気通信工事の種類
電気通信工事と一括りにいっても、様々な種類の工事があります。この章では、電気通信工事の種類をご紹介していきます。
【電気通信工事の種類】
- 発電設備工事
- 送電線工事
- 変電設備工事
- 配電線路工事
- 鉄道用工事
- 産業用工事
- 一般施設用工事
①発電設備工事
「発電設備工事」とは、建物や施設内の「発電設備(非常用発電設備)」の設置場所を選定し、設置する工事のことです。設備の設置はもちろん、電源系統の検討や騒音の計算、運転時間の計算、燃料タンクの選定なども行います。
②送電線工事
「送電線」とは、発電所から変電所まで電力を送るための「電線」のことで、この送電線を設置する工事が「送電線工事」になります。
送電線を設置するために、高さのある鉄塔をいくつも建設したり、送電線が正しく作動するようにメンテナンスを行ったりします。
③変電設備工事
変電設備とは、建物や施設内で安全に電気を利用できるように、電力会社から供給されてくる高圧の電力を、高圧なものから低圧なものにする(変電)設備のことです。この変電設備を設置したり、機器の増設や交換を行ったりする工事が「変電設備工事」です。
④配電線路工事
配電線路とは、配電用変電所から各家庭や施設までの電力線のことです。昼夜問わず各家庭に電気を安定供給するために、配電線路を新設工事したり、維持工事したりすることを「配電線路工事」といいます。
⑤鉄道用工事
電車に送るための電気設備や安全システム、踏切、駅構内の照明の設置・メンテナンスなどを行うのが「鉄道用工事」です。
⑥産業用工事
産業用工事の具体例として、「産業用太陽光発電システムの導入」があります。空き地や工場の屋上など、太陽光発電システムを設置できる場所を選定し、整地工事・パネル設置工事・電気工事を行います。
⑦一般施設用工事
病院や飲食店、スーパーなどの一般施設の電気設備を設置・メンテナンスする工事のことを「一般施設用工事」といいます。
4. 電気通信工事・管工事業界のM&A動向
ここからは、電気通信工事・管工事業界のM&A動向について解説していきます。M&Aを実施する際は、対象業界のM&A動向をしっかり理解することが大切です。
なぜなら、市況があまり良くないのにM&Aを実施しても、本来の相場価格よりも低い価格で売却・事業譲渡せざるを得なくなったり、そもそも買い手が見つからなかったりする可能性があるからです。
電気通信工事・管工事業界のM&A動向としては、以下の4点が挙げられます。
- 関連する隣接業界によるM&Aがある
- 異業種・他業種へのM&Aも増加傾向
- 国内需要低下に備えた海外M&A
- 後継者・跡継ぎ問題を踏まえた事業譲渡
動向①:関連する隣接業界によるM&Aがある
電気通信工事・管工事業界のM&A動向の一つが「関連する隣接業界によるM&Aが活発化している」というものです。
例えば、「株式会社中電工」が「杉山観光設備株式会社」をM&Aによって子会社化した事例では、電気工事会社が管工事会社をを子会社かすることで、首都圏における営業基盤強化を図っています。
このように、「設備工事」として関連のある企業同士のM&Aによって、影響力を強めようとする動向が見られます。
動向②:異業種・他業種へのM&Aも増加傾向
電気通信工事・管工事業界のM&A動向に、「異業種・他業種へのM&Aの増加」というものがあります。
例えば、2020年の東京オリンピック終了後の市場縮小を予期し、業界最大手の「きんでん」は、「白馬ウインドファーム」・「白滝山ウインドファーム」に出資をすることで、「風力発電事業」に参入しています。
動向③:国内需要低下に備えた海外M&A
電気通信工事・管工事業界は、2020年の東京オリンピックが終了した後、国内需要が低下していくと考えられています。
そのため、国内需要低下に備えて「海外市場」に商機を見出そうとしている企業も増えてきています。海外の企業をM&Aによって買収することで、海外市場での収益源の確保を目指す動向が見られます。
動向④:後継者・跡継ぎ問題を踏まえた事業譲渡
先述している通り、電気通信工事・管工事業界は、人材不足に悩まされています。新しく業界に入ってくる若い人材が少なく、業界全体が高齢化しているため、「後継者問題・跡継ぎ問題」が生じています。
この「後継者問題・跡継ぎ問題」を解消するために、M&Aによる事業承継を実施しようという動きが増えてきています。
5. 電気通信工事・管工事業界のM&A・買収・売却のメリット
ここからは、電気通信工事・管工事業界の企業がM&A・買収・売却・事業譲渡したときのメリットについて解説していきます。
M&Aでは、「会社売却・事業譲渡側」と「会社買収・事業譲受側」の2つが存在するので、両者のメリットを分けて説明していきます。
会社売却・事業譲渡側
まずは、会社売却・事業譲渡側のメリットについて解説していきます。M&Aによって得られるメリットとしては、以下の6点を挙げることができます。
【会社売却・事業譲渡側のメリット】
- 従業員の雇用を安定させる
- 後継者問題を解決させる
- 売却・譲渡により創業者利益の獲得
- 債務や個人保証などの解消
- 隣接業界への事業譲渡でサービスの充実
- 廃業コストを削減
①従業員の雇用を安定させる
M&Aを実施して会社売却・事業譲渡する側には、「従業員の雇用を安定させることができる」というメリットがあります。電気通信工事・管工事業界では、若い人材が不足していることと、経営者の高齢化が進んでいることが影響し、「後継者問題」が深刻化しています。
うまく事業承継が進まず、結果的に「廃業」に追い込まれてしまう企業も見られます。また、市況が不安定になってくると、経営状態が傾いてしまい、会社を閉じなければいけなくなるかもしれません。
会社が廃業になってしまうと、そこで働く従業員は職を失うことになってしまいます。M&Aを実施して、会社売却や事業譲渡をすることができれば、会社を廃業せずに済み、従業員の雇用を確保することができます。
②後継者問題を解決させる
会社売却・事業譲渡側には、「後継者問題を解決できる」というメリットがあります。先述のとおり、電気通信工事・管工事業界では、「人材不足」が深刻化しています。
雇用環境に対する負のイメージが先行して、若い人材を確保することが難しくなっているのが現状です。この「若い人材の減少」は「後継者問題」を助長しています。
そのため経営者が高齢になっても、後継者を見つけることができないために、長い間経営を続けたり、最終的に廃業に追い込まれたりするケースが多くみられます。
しかし、M&Aによって会社売却・事業譲渡等を成功させることができれば、会社を適切な後継者に承継することができ、後継者問題を解消することが可能です。
③売却・譲渡により創業者利益の獲得
M&Aを実施して会社売却・事業譲渡をすることで、多額の売却金額を手にすることができます。特に、会社創業者はこのタイミングでまとまった金額(創業者利益)を獲得することができます。
④債務や個人保証などの解消
M&Aによって会社売却・事業譲渡をすることで、「債務」や「個人保証」などを買収側企業に引き継がせることができます。
つまり、M&Aを実施することで、債務や個人保証などから解消される、M&Aをきっかけに経営から退き、安定した生活を送ることも可能となります。
⑤隣接業界への事業譲渡でサービスの充実
M&Aを実施して隣接業界へ事業譲渡することで、自社の顧客に対してより充実したサービスを提供することができます。
サービスを充実させることができれば、自社の経営状況の改善も期待できます。
⑥廃業コストを削減
人材不足・後継者問題が影響して、電気通信工事・管工事業界の中小企業では、廃業せざるを得ない状況になる会社も多くあります。
この「廃業」ですが、実施するためには「廃業手続き」が必要になります。廃業手続きは、非常に手間がかかってしまいます。
M&Aを実施して、会社売却・事業譲渡をすることができれば、廃業にかかる手間・コストを省くことができます。
会社買収・事業譲受側
続いて、M&Aによる「会社買収・事業譲受側」のメリットを説明します。買収側が得られるメリットとしては、以下の6点が挙げられます。
【会社買収・事業譲受側のメリット】
- 事業エリアを拡大する事ができる
- 低コストで新規事業への参入ができる
- 新規の顧客・取引先を獲得できる
- 隣接業界への参入ができる
- 有資格者や若い従業員の確保
- ノウハウや新商材の拡充
①事業エリアを拡大する事ができる
電気通信工事・管工事業界の会社がM&Aによって会社買収・事業譲受を実施することで、「事業エリアの拡大」をすることができます。
都市圏を中心に営業をしている電気通信工事・管工事会社が、地方の会社を買収することで、その地方の地盤を獲得でき、事業エリアの拡大につながります。
②低コストで新規事業への参入ができる
電気通信工事・管工事業界の会社がM&Aによって「異業種・他業種」の会社を買収することで、「新規事業に参入するコストを抑えることができる」というメリットがあります。
新規事業に参入しようとする場合、最初のころはその事業に関するノウハウや経験などを持っていないため、事業成長にかかる人件費等の「資金」や「時間」をたくさん費やす必要があります。
しかし、その市場においてすでに影響力があり、経験やノウハウも豊富な会社を買収することで、「新規事業参入時にかかる費用や時間などのコスト」を抑えることができます。
③新規の顧客・取引先を獲得できる
M&Aによって他の電気通信工事・管工事業界の会社を買収することで、「新規の顧客や新しい取引先を獲得することができる」というメリットがあります。
新規の顧客・取引先を獲得することができれば、自社の利益を高めることができます。
また、獲得した新規顧客・取引先と自社の経営資源を組み合わせることで「シナジー効果」によって、さらなる事業成長を期待することができます。
④隣接業界への参入ができる
M&Aを実施して、隣接業界の企業を買収したり、事業を譲受したりすることで、「隣接業界への参入」が可能となります。
「②低コストで新規事業への参入ができる」でも説明した通り、新規事業・新規市場に参入する際には、基本的に多くのコストがかかってしまいます。
しかし、M&Aによって参入を検討している市場で活動している会社を買収することで、より低コスト・スピーディーに新規市場へ参入することができます。
⑤有資格者や若い従業員の確保
先述しているように、電気通信工事・管工事業界では、「人材不足」が深刻化しています。特に若い人材の確保が難しくなってしまい、それが要因となって廃業に追い込まれてしまう会社も多くなっています。
M&Aによって、他の電気通信工事・管工事会社を買収することで、買収した企業に在籍する従業員・人材を確保することができます。
また、電気通信工事・管工事業界には「工事担任者」や「電気通信主任技術者」「電気通信工事施工管理技士」など様々な資格があります。M&Aで会社を買収することで、有資格者を獲得できるチャンスも増えます。
⑥ノウハウや新商材の拡充
会社買収・事業譲受側には、M&Aによって会社を買収することで、買収した企業が持つ「ノウハウや新商材を獲得できる」というメリットがあります。
買収した企業のノウハウや新商材と、自社が持つ経営資源が組み合わさることで、シナジー効果も期待できます。
6. 電気通信工事・管工事業界のM&A・買収・売却の相場
ここでは、電気通信工事・管工事業界のM&A・買収・売却の「相場価格」について解説していきます。実際のところ、M&Aの売却価格・譲渡価格というものは、M&A対象企業の「規模」や「資産価値」などによって異なってきます。
そのため、一概に「相場価格はいくら」と言うことはできません。「電気通信工事・管工事業界のM&A・買収・売却の成功事例」の章では、そのM&A事例における売買価格を紹介(価格が公開されている場合)しています。
電気通信工事・管工事業界でM&Aを実施した際に、どのくらいの規模の会社が売却・譲渡される時に、どのくらいの売買価格になるのかをチェックしてみてください。
7. 電気通信工事・管工事業界のM&A・買収・売却のポイント
ここからは、電気通信工事・管工事業界のM&A・買収・売却の「ポイント」について解説していきます。電気通信工事・管工事業界でのM&Aをしっかり成功させるために、以下で解説するポイントを理解することが大切です。
M&Aのポイントとして、「電気通信工事・管工事業界全体のポイント」・「売却側のポイント」・「買収側のポイント」の3点を分けて説明していきます。
業界全体のポイント
まずは、電気通信工事・管工事業界全体で見た「M&Aのポイント」を解説します。意識すべきポイントは、以下の5点です。
【電気通信工事・管工事業界全体で見たポイント】
- 建設事業と関連性が高い
- 特に中小企業は人手不足が問題化
- 業界全体で高年齢化が進んでいる
- 古くなったビルのリニューアルで需要拡大
- 機械化・AI化など技術革新も進む
①建設事業と関連性が高い
電気通信工事・管工事業界の会社がM&Aを実施する際に意識すべきポイントの一つが、「建設事業と関連性が高い」ということです。
電気通信工事・管工事業界の仕事は、建設事業との関連性が非常に高いため、建設事業を展開する企業と組み合わさることで、大きなシナジー効果が期待できます。シナジー効果を目的としてM&Aを実施することで、事業拡大・収益拡大を実現できます。
また、建設事業を行う企業を買収候補先とすることで、自社の売却・譲渡の実現可能性をより高めることも可能です。
②特に中小企業は人手不足が問題化
先述しているとおり、電気通信工事・管工事業界では「人材不足」が深刻化しています。特に中小企業では、この人手不足が顕著に表れており、廃業に迫られてしまう企業も多いです。この業界動向を意識したM&Aを実施することで、成功確率を高めることができます。
人手不足による後継者問題に悩まされている地方の中小企業を買収することで、その地方の地盤を固めることもできます。もちろん、売却側は後継者問題に悩まされているため、その後継者問題を解消させることもできます。
③業界全体で高年齢化が進んでいる
人材不足と並んで、電気通信工事・管工事業界は「高年齢化問題」にも直面しています。特に地方の中小企業では、経営者をはじめ多くの従業員が高年齢となっており、できるだけスムーズに事業承継を進めなければいけない状態になっています。
今後ますます、電気通信工事・管工事業界では「事業承継」が積極的に進められていくと考えられます。
④古くなったビルのリニューアルで需要拡大
最近の電気通信工事・管工事業界では、「災害の復興に向けた設備投資」や「2020年のオリンピックに向けた設備投資」が盛んになっています。
その他に、「古くなったビルのリニューアル」の需要が増えていることで、電気通信工事・管工事業界の需要も高まっています。このように、業界全体の市況が良い状態になっているタイミングでM&Aを実施することは、M&Aを成功させるためのポイントと言えます。
⑤機械化・AI化など技術革新も進む
電気通信工事・管工事業界では、「機械化・AI化」などの技術革新も進んでいます。これは、将来確実に深刻化していくと考えられている「人手不足」に備える策の一つです。この業界背景からも、技術革新を進めるための企業買収も盛んになっていくと考えられます。
売却側のポイント
次に、会社売却・事業譲渡する側のポイントについて解説していきます。売却側が意識すべきポイントは、以下の3点です。
【会社売却・事業譲渡する側のポイント】
- 過去の実績・受注記録などの確認
- 明確な企業価値評価の確認
- 従業員の引継ぎ準備
①過去の実績・受注記録などの確認
M&Aによって会社売却や事業譲渡をする前に、売却側は「過去の実績・受注記録などの確認」を行いましょう。買収側からすると、できるだけ過去の工事実績や受注記録が豊富な会社を買収したいと考えるからです。
これまでの自社の実績・受注記録を確認し、買収側に対して自社の実績をしっかりアピールできる体制を整えることが、M&A成功のためのポイントの一つです。
②明確な企業価値評価の確認
売却側は、M&Aが失敗となってしまわないように、「明確な企業価値評価の確認」を必ず行う必要があります。
自社の企業価値がどのような算出方法で決定されているのか、自社の価値がどのくらいと評価されているのかをチェックすることは、M&Aを失敗させないために非常に重要です。
この確認を行わないままM&A手続きを進めてしまうと、自社の本来の企業価値よりも低い評価が下されてしまい、過小評価された価格でM&Aが実施される可能性があります。
③従業員の引継ぎ準備
売却側は、買収側企業に会社や事業を受け渡す前に、「従業員の引継ぎ準備」をしっかり行うようにしましょう。
「従業員の引継ぎ準備」がきちんと行われない状態で会社売却・事業譲渡が実施されてしまうと、後に雇用に関する問題が生じてしまい、多くの従業員が退職する事態に陥るケースが良くあります。M&Aを実施する際には、「従業員のケア」にも重きを置く必要があります。
買収側のポイント
続いて、会社買収・事業譲受側が意識すべきポイントについて説明します。買収側が意識すべきポイントは、以下の3分野に分けることができます。
【会社買収・事業譲受側が意識すべきポイント】
- 仕事の内容
- 財務の内容
- 人材の内容
①仕事の内容
買収側が意識すべきポイントの一つが「対象企業の仕事の内容」です。特に、以下の4点は必ずチェックするようにしましょう。
(1)過去の実績・受注記録などの割合を調査
M&Aの対象となる企業の「過去の実績」や「受注記録」を調べて、買収することで自社にメリットが生じるか、自社の事業拡大につながる企業かをチェックする必要があります。
(2)難しい工事実績がある
買収対象企業に「難しい工事実績があるか」を確認することも、買収側企業が意識すべきポイントと言えます。難しい工事実績が豊富にある企業であれば、ノウハウや経験を持つ人材・有資格者の獲得も期待できます。
(3)得意先の有無
買収対象企業が複数の「得意先」を確保しているかどうかをチェックすることも、M&Aを成功させるために重要なポイントと言えます。M&Aによって得意先を複数抱えている企業を買収することができれば、自社の顧客増加につながり、事業規模の拡大が期待できます。
(4)事業エリアの調査
買収対象企業の「事業エリア」がどこになるのかを確認することも重要なポイントです。自社の地盤となっているエリアを補完できるか、自社が未開拓のエリアを確保できるかは、M&Aを実施する目的の一つとも言えます。
対象企業の事業エリアをしっかりと調査することが、M&Aを成功させるための要素の一つとなっています。
②財務の内容
買収側は、M&A対象企業の「財務内容」もしっかりと調査する必要があります。特に、以下の5つのポイントは必ず調査するようにしましょう。
(1)デューデリジェンスの徹底
買収側は「デューデリジェンス」の徹底が必要です。買収側が「デューデリジェンス」を実施することで、「簿外債務の引継ぎ防止」や「粉飾決算等の不正の見極め」が可能です。
(2)元請け率や赤字受注比率の調査
M&Aで電気通信工事・管工事業界の会社を買収する場合、対象会社の「元請け率」や「赤字受注比率」の調査が必要です。この調査を行うことで、M&Aを実施した後も、スムーズに事業運営を行うことができます。
(3)工事ごとの原価管理
買収側企業は、M&A対象企業が「工事ごとの原価管理を適切に行えているか」をチェックする必要があります、これも、M&Aを成功させるための大切なポイントです。
(4)長期・短期の借入状況
M&A対象企業の「長期・短期の借入状況」がどのようになっているのかを調査しておきましょう。そうすることで、M&A後に必要以上の負債を引き継ぐリスクを防ぐことができます。
(5)重機・設備の保有
M&Aを実施する前に、対象企業が保有している「重機や設備」をチェックしておきましょう。その理由は、対象企業が利用している重機や設備などが「リース」である可能性が考えられるためです。
③人材の内容
買収側は、対象企業が抱えている「人材の内容」もチェックする必要があります。チェックすべき人材の内容は、以下の5点です。
(1)有資格者の人数
売却・譲渡側企業に在籍している人材の中で、有資格者が何人いるのかチェックしましょう。有資格者をたくさん獲得できれば、サービスの充実・事業拡大が期待できます。
(2)労務問題や雇用形態
M&Aを実施後、従業員が会社を退職してしまうケースがしばしば見られます。これは、新しい職場環境や雇用形態に不満を感じてしまうことが原因の一つです。
M&Aを実施する際は、対象企業の労務問題や雇用形態をしっかりチェックし、M&A後の人材流出を防ぐことができるように対策を講じる必要があります。
(3)優秀な技術者
買収側は、M&A対象企業の中に「優秀な技術者がいるか」どうかを失火ると確認することも重要です。優秀な人材を獲得できれば、自社の事業成長・充実したサービス提供が期待できます。
(4)従業員の年齢層
M&A対象企業に在籍している「従業員の年齢層」もチェックすべきポイントの一つです。若い人材が多くいる会社は、電気通信工事・管工事業界のM&Aにおいて魅力的な会社の特徴と言えます。
(5)現場作業員の稼働率
電気通信工事・管工事会社のM&Aでは、「現場作業員の稼働率」もチェックすべきポイントと言えます。現場作業員の稼働率が高い会社の方が、M&A後の自社の生産性の向上につながります。
8. 電気通信工事・管工事業界のM&A・買収・売却の成功事例
ここからは、電気通信工事・管工事業界のM&A・買収・売却の「成功事例」10選について紹介していきます。各事例の「M&A手法」と「M&Aの目的」についても解説しています。
事例①:コムシスホールディングスによるNDS株式会社のM&A
NTTグループ向けの通信インフラネットワーク構築事業や電線類の構築事業等を展開している「コムシスホールディングス株式会社」は、東海・北陸地方でのNTTグループ向けサービスや電気通信工事等を展開している「NDS株式会社」を完全子会社化しました。
M&Aの手法
コムシスホールディングス株式会社は、「株式交換」を実施することで、NDS株式会社を完全子会社化しました。
M&Aの目的
コムシスホールディングス株式会社はは、電気通信工事業においてNDS株式会社と連携することで、対応エリアの拡大・事業分野の拡大を図っています。
事例②:ミライト・テクノロジーズによる西日本電工株式会社のM&A
NTTグループ向けの通信インフラネットワーク構築等の事業を展開している「株式会社ミライト・テクノロジーズ」は、「西日本電工株式会社」を子会社化しました。
M&Aの手法
株式会社ミライト・テクノロジーズは、「株式取得」を実施して、西日本電工株式会社を子会社化しました。
M&Aの目的
ミライトテクノロジーズは、電気通信工事や空調設備工事、太陽光発電設備工事といった新規事業の展開を目的に、西日本電工を子会社化しました。
事例③:エア・ウォーターによる丸電三浦電機のM&A
エア・ウォーターグループの「北海道エア・ウォーター」は、札幌を中心に電気通信工事等を展開する「丸電三浦電機」をM&Aによって子会社化しました。
M&Aの手法
北海道エア・ウォーターは、丸電三浦電機が発行する全株式を「株式取得」することで、M&Aを実施しました。
M&Aの目的
北海道エア・ウォーターは、病院設備の総合監視業務や、広範囲な各種設備工事の受注が見込まれると考え、丸電三浦電機をM&Aによって子会社化しました。
事例④:TTKによる塚田電気工事のM&A
情報通信設備工事を中心事業とする「TKK」は、宮城県を中心とした東北6県や東京都の近郊で電気通信工事等の事業を展開する「塚田電気工事」を完全子会社化しました。
M&Aの手法
TKKは、M&A手法の一つである「株式交換」を実施することによって、塚田電気工事を完全子会社化しました。
M&Aの目的
TTKは、電気工事事業の拡大・展開を目指しており、塚田電気工事を完全子会社化することによって、シナジー効果創出や事業領域の拡大を目的に、このM&Aを実施しました。
事例⑤:関電工による佐藤建設工業のM&A
電気設備工事をはじめとした設備工事行を行う「株式会社関電工」は、送電線工事を中心に行う「佐藤建設工業株式会社」をM&Aによって完全子会社化しました。
M&Aの手法
株式会社関電工は佐藤建設工業株式会社が発行する全株式を「株式取得」することで、このM&Aを行っています。
M&Aの目的
関電工では人材不足が深刻化しており、特に「送電線工事に従事する作業員」が減少していました。この課題を解決するために、同領域で強みを発揮している佐藤建設工業を子会社化することで、技術と優秀な人材の獲得を目的にM&Aを実施しました。
事例⑥:中電工による杉山管工設備のM&A
中国地方で事業を展開している「株式会社中電工」は、関東圏を中心に工事事業を展開している「杉山管工設備株式会社」をM&Aによって子会社化しました。
M&Aの手法
株式会社中電工は、杉山管工設備株式会社と株式譲渡契約を締結し、全株式を「株式取得」することで、M&Aを実施しました。
M&Aの目的
中電工は、杉山管工設備株式会社を子会社かすることで、関東圏における電気工事や管工事事業の拡大を図っています。
事例⑦:四電工によるアイ電気通信株式会社のM&A
電力通信工事や建設設備工事事業を展開する「株式会社四電工」は、大阪に本社を置く電気通信工事業者「アイ電気通信株式会社」を子会社化しました。
M&Aの手法
株式会社四電工は「株式取得」によって、アイ電気通信株式会社が発行する全株式を取得することで、M&Aを実施しました。
M&Aの目的
四電工は、電気通信工事分野で高い技術力や安定した収益基盤を保有しているアイ電気通信を子会社化することで、グループ全体の技術力や施工力の向上、より付加価値の高いサービスの提供を目的にM&Aを実施しました。
事例⑧:九電工によるエルゴテック株式会社のM&A
福岡に本社を持ち、九州地方を中心に総合設備業を展開している「株式会社九電工」は、電気通信工事や空調設備工事などの総合設備業を行う「エルゴテック株式会社」をM&Aによって子会社化しました。
M&Aの手法
株式会社九電工は、エルゴテック株式会社が発行する株式を「株式取得」することで、M&Aを実施しました。この株式取得によって、九電工はエルゴテックが発行する株式の「約76%」を保有することになりました。
M&Aの目的
九電工は、エルゴテックが持つ全国各地での工事実績に魅力を感じ、営業範囲の拡大や、実績のある人材の獲得を目的としてM&Aを実施しました。
事例⑨:きんでんによるアンテレック社のM&A
「株式会社きんでん」は、インドで電気通信工事を提供する「アンテレック社」をM&Aによって子会社化しました。
M&Aの手法
株式会社きんでんは、アンテレック社が発行する株式の51%を「株式取得」することでMA&を実施しました。
M&Aの目的
きんでんは、アンテレック社傘下にあるインド国内の企業や国外の企業が所有する顧客網を獲得して、海外における事業体制を構築することを目的にM&Aを実施しました。
事例⑩:協和エクシオによるレング エイクエンジニアリンググループのM&A
「株式会社協和エクシオ」は、シンガポールで電気・総合設備工事を展開している「レング エイクエンジニアリンググループ」を完全子会社しました。
M&Aの手法
株式会社協和エクシオは、レング エイクエンジニアリンググループが発行している全株式を「株式取得」することでM&Aを実施しました。
M&Aの目的
協和エクシオは、シンガポール市場へ参入し、既に参入していたフィリピン・タイとともに、アジアでの都市インフラ事業やシステムソリューション事業の拡大を目的に、当M&Aを実施しました。
9. 電気通信工事・管工事業界のM&A相談先
ここまで、電気通信工事・管工事業界でM&Aを進めていく上で、意識すべきポイントについて解説してきました。
特に買収側企業は、M&Aを失敗させないためにも「デューデリジェンス」の徹底が必要不可欠です。また、売却側も、スムーズに買い手を見つけるためには、M&A専門家のサポートが必要です。
このようなことからも、M&Aを実施する際は、M&A仲介会社やM&AアドバイザリーといったM&A専門家に仲介を依頼することをおススメします。
M&A総合研究所は、M&A仲介実績が豊富で、「国内最安値水準の仲介手数料」を誇るM&A仲介会社です。仲介業務のほかにも、無料の「企業価値算定サービス」も提供しています。
M&A総合研究所では、M&A・事業承継の経験・ノウハウ・専門的知識が豊富なスタッフが、M&A手続きを一から専任サポートしてくれます。
M&A総合研究所への相談は無料となっているので、電気通信工事・管工事業界のM&A実施を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。
10. まとめ
今回は、電気通信工事・管工事業界でのM&A・買収・売却について詳しく解説してきました。電気通信工事・管工事業界でのM&Aを検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
【電気通信工事・管工事業界のM&A動向】
- 関連する隣接業界によるM&Aがある
- 異業種・他業種へのM&Aも増加傾向
- 国内需要低下に備えた海外M&A
- 後継者・跡継ぎ問題を踏まえた事業譲渡
【電気通信工事・管工事業界のM&Aのメリット:売却側】
- 従業員の雇用を安定させる
- 後継者問題を解決させる
- 売却・譲渡により創業者利益の獲得
- 債務や個人保証などの解消
- 隣接業界への事業譲渡でサービスの充実
- 廃業コストを削減
【電気通信工事・管工事業界のM&Aのメリット:買収側】
- 事業エリアを拡大する事ができる
- 低コストで新規事業への参入ができる
- 新規の顧客・取引先を獲得できる
- 隣接業界への参入ができる
- 有資格者や若い従業員の確保
- ノウハウや新商材の拡充
【M&A実施のポイント:売却側】
- 過去の実績・受注記録などの確認
- 明確な企業価値評価の確認
- 従業員の引継ぎ準備
【M&A実施のポイント:買収側】
- 仕事の内容
- 財務の内容
- 人材の内容
電気通信工事・管工事業界でのM&Aを検討されている方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
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