EBITDAとは?EBITとの違いや計算式、メリットや問題点を解説【事例あり】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aを行う際、売却企業の価値を知る必要があります。EBITDAは企業価値を簡易的に知る指標として、M&Aが行われる初期段階で活用されるものです。本記事では、EBITDAの使い方や計算方法、メリットや問題点などについて解説します。

目次

  1. EBITDAとは
  2. EBITDAとEBITの違い
  3. EBITDAの算出を含めたM&Aの相談承ります!
  4. EBITDAと営業利益の関係性
  5. EBITDAとフリーキャッシュフローの関係
  6. EBITDAのメリット
  7. EBITDAのデメリット
  8. EBITDAが世界で使われている理由
  9. EBITDAの活用ポイント
  10. 企業価値評価の算定はM&A仲介会社にご相談ください!
  11. EBITDAの問題点
  12. EBITDAの正しい計算式
  13. EBITDAに関連する計算式まとめ
  14. EBITDAの事例
  15. まとめ
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1. EBITDAとは

EBITDAとは「償却前営業利益」を表す経済用語です。税・利息・減価償却費を営業利益に加えて算出します。財務を分析する際に活用される概念の1つであり、本来、経営学やMBAといった経営のプロを目指す人々が学ぶ経営指標です。

そのため、以前は、個人投資家や中小企業の経営者は知らなくても、差し支えはありませんでした。しかし昨今、株主総会などで経営陣が株主である投資家に対し、経営状態や決算書の説明をする際に用いることが増えてきています。

また、M&Aを行ううえでEBITDAは役立つ指標であるため、その求め方を知りたいと考える経営者も増えてきました。EBITDAは、対象企業のキャッシュフローを手早く客観的に求められるため、M&Aの際は簡易的に対象企業の企業価値を評価する際に活用されます。

手間なく計算できますが、あくまでも本格交渉前の目安として用いられるため、M&Aの初期段階で使用されることが一般的です。

EBITDAの意味(日本語訳)

EBITDAは「Earnings Before Interest, Tax, Depreciation, and Amortization」の頭文字を1字ずつ取って表記したものです。「イービットディーエー」または「イービットダー」と読みます。

その意味を直訳すると、「利息・税金・減価償却費、および償却費控除前の収益」です。つまり、EBITDAとは税引前・利息払い前・減価償却前の営業利益を表しており、キャッシュベースの利益を求める目的で活用されます。

減価償却とは

減価償却とは、企業会計で用いられる計算方法の1つです。会社内で長期間に渡って使用される、パソコンや自動車などの固定資産を購入した際、該当資産を購入した費用を数年間に渡り償却していく手続きになります。

似たようなものに必要経費と呼ばれるものがありますが、必要経費は単年処理、減価償却は複数年処理です。なお、対象の資産に応じて償却期間が定まっており、減価償却資産の耐用年数が一覧でわかる資料も公開されています。

国税庁が公開している資料は「減価償却資産の償却率表」があり、耐用年数に応じた償却率が確認可能です。

EBITDAに減価償却を加える理由

企業価値評価の観点からすると、減価償却費を考慮しない営業利益だけに着目してしまうと、その企業の本当の業績(利益)状況がつかみにくくなります。

その理由は、企業の設備投資は毎年、平準的に行うものではないため、あまり投資を行わなかった年度は、営業利益だけを見ると業績が上がったように見えるものだからです。

しかし、そこに減価償却費を加えることによって、設備投資費増減の錯覚に惑わされることなく企業の業績を評価できるようになります。

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2. EBITDAとEBITの違い

EBITDAと似たような指標として、EBITがあります。どちらも一般的な指標ではありませんが、M&Aの広まりとともに目にする機会が増えてきた経営指標です。実際、EBITもEBITDAと同様に、M&Aの検討段階で企業価値評価を知るために活用されます。

EBITとは

EBITとは「Earnings Before Interest and Taxes」の頭文字を1字ずつ取って表記されたものです。直訳すると「利息および、税金控除前の収益」となり、EBITDAと意味が異なることがわかります。

EBITは、税引前・支払利息前の営業利益から、受取利息を引いたものです。企業が借り入れを行っている際に発生する支払利息を営業利益から引くと、利益が減少してしまうため、支払利息は差し引きません。

一方、受取利息は営業利益ではないため、差し引くことで純粋な利益を求めることがEBITを用いる目的です。特に起業したばかりのスタートアップ企業の評価を算定する際に活用されます。

EBITDAとEBITの主な違い

EBITDAとEBITの大きな違いは、計算方法の中身です。EBITDAは、支払利息と減価償却費を加えた営業利益を求めます。一方、EBITは支払利息のみを加えて求められます。基本的な計算方法の形はほぼ変わりありませんが、構成する要素が変わるのです。

また、EBITDAとEBITとでは、評価する対象企業が変わります。どちらもM&Aの際に活用されるメリットがあり、計算式を形作る要素の違いにより、評価対象企業をはっきりと区分けできるのです。

EBITDAを用いる評価対象企業

EBITDAで評価される対象企業は、設備投資を数多く行っている企業です。設備投資費は一般的に、価償却費として会計処理が行われます。

そのため、減価償却費の割合が多く、利益率に影響を与えるでしょう。EBITDAを活用して減価償却費を加えた営業利益を求めて、企業比較を行います。

EBITを用いる評価対象企業

EBITで評価される対象企業は、起業したばかりの企業です。起業したばかりであれば、資金調達を数多く行うことにより借入金が増加します。したがって、支払われる利息を加えた営業利益を求めます。

また、EBITは、M&Aを積極的に行う企業の評価を行う際にも活用されるものです。企業買収や事業拡大を行うことを目的として、資金調達が行われます。

当然、借入金には利息がかかるため、M&Aを行う際、対象企業の価値を評価するうえで、利息支払いを加えた営業利益を求めるEBITが用いられるのです。

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3. EBITDAの算出を含めたM&Aの相談承ります!

EBITDAは企業価値評価を簡易的に求める計算方法であり、会計の知識のない一般の方でも気軽に扱えます。しかし、実際のM&A見据えた企業価値評価は専門家に算定を任せた方が、より正しい数値を把握できます。中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所では、企業価値算定の無料サービスを実施しています。

M&Aに豊富な経験と知識を持つアドバイザーが対応いたしますので、自社の企業価値を算定したい場合には、お気軽にご利用ください。

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4. EBITDAと営業利益の関係性

EBITDAと営業利益は、密接に関係する指標です。そこで、営業利益とはどういったものなのか、計算方法も交えて解説します。

営業利益とは

営業利益とは、該当する企業が本業で得た利益のことです。もっとくだけた言葉で表現するなら、「本業のもうけ」を表します。本業以外の事業を含めた利益ではありません。なお、営業利益を求める計算方法は以下のようになります。

  • 営業利益=売上高-売上原価-販売費-一般管理費

営業利益は損益計算書に記載する際、売上高から売上原価・販売費・一般管理費を差し引くことで求められます。なお、売上高から売上原価を差し引いた金額は、売上総利益です。また、営業利益がマイナスとなった場合は営業損失となります。

営業利益は、EBITDAを算出する際に重要な要素の1つですが、経常利益を利用してもEBITDAの算出は可能です。しかし、営業利益と経常利益を使う場面は、それぞれ区分けされています。

営業利益と経常利益の主な違い

営業利益と経常利益の違いは「利益を生む事業はどこか?」ということです。営業利益は、本業で得た利益を表しますが、経常利益は本業とともに、財務活動などで得た利益も含めて表します。

複数の事業を展開する企業の価値をEBITDAにて評価する際は、営業利益を使わずに経常利益を使って計算式を作るのが常です。

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5. EBITDAとフリーキャッシュフローの関係

EBITDAはM&A・買収対象企業のキャッシュフローを簡潔に求める指標ですが、フリーキャッシュフローとは異なります。この章では、EBITDAとフリーキャッシュフローの違いを確認しましょう。

フリーキャッシュフローとは

EBITDAとフリーキャッシュフローの違いを解説するうえで最も重要なのが、フリーキャッシュフローの意味になります。フリーキャッシュフローとは、営業キャッシュフローから投資金を差し引いたもので、経営者の経営判断により自由に使える利益です。

それは全く自由な個人的な使い方ではなく、あくまでも経営する企業の発展につながるような使い方が求められます。たとえば、フリーキャッシュフローを元手にして、戦略的な買収や事業展開などを行う場合や有利子負債の返済に充てる場合などです。

また、フリーキャッシュフローが生まれることで、金融機関では融資が断られるような経営戦略を自社資金のみで行えます。

EBITDAとフリーキャッシュフローの違い

EBITDAは償却前営業利益になります。投資金なども含めて、どれくらいのキャッシュがあるか表す指標です。一方、フリーキャッシュフローは自由に使える自社資金を表すため、近しい存在ではありますが大きく異なります

EBITDAとフリーキャッシュフローの関係

フリーキャッシュフローは、EBITDAの中に内包されているものです。たとえるなら、親子関係のような状態にあります。なお、フリーキャッシュフローがどれだけあるかを求める計算式は複数あり、EBITDAを元にして算出することも可能です。

フリーキャッシュフローの計算方法

フリーキャッシュフローは、以下の計算式で算出できます。

  • フリーキャッシュフロー=EBITDA-設備投資費-運転資本増加額

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6. EBITDAのメリット

ここでは、簡易的に企業価値評価ができる、EBITDAのメリットを見てみましょう。国をまたいだクロスボーダーM&Aや海外に子会社を多く持つ企業などは、特にEBITDAのメリットを多く受けられます。そして、その主要なメリットは、以下2点です。

  1. 会計基準の異なる国でも比較できる
  2. 減価償却費などの影響を排除できる

①会計基準の異なる国でも比較できる

EBITDAは、会計基準の異なる国でも同じ計算式で活用できます。もともと、世界基準の会計手法・経営指標として広まり、日本でも活用されるようになったことでも、汎用性の高さを理解できるというものです。

なお、金利や税率など国家間で違う数値を用いる場合は、差異が出現する部分を除き、共通する形にて計算式に当てはめていきます。こうした使い方ができるのが、EBITDAのメリットの1つです。

その理由として考えられるのは、計算式を構成する要素が比較的簡単な点にあります。計算式に当てはめる段階で難しい値を求めるようなことはせず、公開中やあらかじめまとめられた情報を使用できるのです。

つまり、会計基準が異なる国で使えるメリットは、計算式を構成する要素がシンプルであるがゆえといえます。

②減価償却費などの影響を排除できる

EBITDAの最も大きいメリットは、減価償却費などの影響を受けにくい点です。EBITDAを求める計算式では、減価償却費を引くことなく営業利益に加えて算出します。このようにEBITDAが減価償却費を扱うのは、理由があるからです。

EBITDAは、「キャッシュフローベースの営業利益を算出する指標」になります。最終利益として計上された利益は、本業で得た利益とは別に生まれた利息の支払い・税金を足し戻して計算します。

減価償却費は現金を支払わない経費であるため、EBITDAでは足し戻しするのです。なお、減価償却費は、企業が決算後1〜2カ月経過した際に公開される決算短信などに含まれる損益計算書に記載されています。

また、営業利益も記載されているため、EBITDAの計算式を活用すれば、誰でも簡単にその企業の価値・キャッシュフローが確認できます。

EBITDAは、個人投資家が投資対象の企業を選定する際にも活用できるため、簡単さは大きなメリットといえます。実際に株式投資を行っている方は、ぜひ個人でEBITDA算出をお試しください。

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7. EBITDAのデメリット

便利なEBITDAにもデメリットがあります。EBITDAは、減価償却費や金利、税金の負担を排除し、それらを控除するまえの金額を算出するものです。したがって、特に設備投資額の影響を受けずに、該当企業のキャッシュベースの収益力を見極められます。

しかしながら、このことを逆の観点から見ると、仮に該当企業が設備投資のために経営が圧迫されているような状況であったとしても、EBITDAでは、それに気づけません。気づけないどころか、安定成長しているように見えることさえあります。

過去には、EBITDAのこのような性質を悪用して、アメリカの企業が粉飾決算を行い、最終的に経営破綻した例もありました。

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8. EBITDAが世界で使われている理由

EBITDAは世界基準の指標であり、日本でも諸外国にならって使い始めています。なぜEBITDAは、海外で好んで使われているのでしょうか。ここでは、EBITDAが世界で使われている理由、日本でEBITDAが使われるようになった背景を説明します。

EBITDAが世界で信頼される理由

EBITDAは、国が変わっても同じ計算式で企業価値を求められます。たとえば、国により金利水準や税率が違いますが、EBITDAは自国とは違う差異を取り除き、対象企業の価値を評価できるのです。 

営業利益や経常利益などが記載されている損益計算書も、企業価値を評価する際に用いられますが、営業利益だけでも経常利益だけでも、企業価値を評価するうえで足りない要素があります。

また、営業利益や経常利益は、減価償却の方法による違いや金利や有価証券売却益などの影響を受ける場合があるのが現実です。こうした要素を排除できるのが、EBITDAにおけるメリットといえます。

税率・金利・会計基準などの各国間におけるさまざまな違いも、EBITDAは最小限に抑えられるのです。

自国基準でわかりやすく企業を評価できるため、特にグローバル展開を行っている海外企業がクロスボーダーM&Aをする際、海外にある同業他社の状況を確認する際などに活用されています。

EBITDAが日本で信頼される理由

日本ではM&Aの数が増え始めたことで、EBITDAによる企業価値評価が広まり始めたといえます。なお、日本の会計基準では「償却前営業利益」がEBITDAに該当するため、名前が活用されるようになったと解釈してもいいでしょう。

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9. EBITDAの活用ポイント

EBITDAを活用する際、把握しておきたいポイントを3点、紹介します。通常、EBITDAを活用したいと考えるのは、M&Aを行う準備段階です。この点を念頭に置いて読み進めてください。

  1. 銀行の融資決定において参考になる
  2. 企業価値評価としても使われる
  3. 個人投資家が投資先を選定する

なお、EBITDAと同様に、EBITも同じようなケースで活用されます。この点も踏まえてお読みいただくと、より深く理解できるはずです。

① 銀行の融資決定において参考になる

EBITDAは銀行の融資決定の際、簡潔に融資対象となるのかを評価するために活用されます。税引前・利息支払い前・減価償却費と営業利益は、基本的に公開されているため、時間をかけず簡単に融資対象の有無を評価可能です。

なお、融資の本決定やM&A本契約の前には、EBITDAやEBITより精度や信頼性の高い指標が用いられます。

② 企業価値評価としても使われる

M&Aが広く一般的になるとともに、実施はしないまでもM&Aを検討する企業も多くなりました。自社の売却や同業他社の買収など、さまざまな検討をする際、企業価値を簡潔に求める手段としてEBITDAが活用されています。

特にM&Aの初期段階で実施される企業価値評価の際、マルチプル法の流れでEBITDAやEBITが活用されます。以下の動画でM&A総合研究所のM&Aアドバイザーが、計算例を用いてマルチプル法を解説しておりますので、ぜひご覧ください。

③ 個人投資家が投資先を選定する

EBITDAを個人で活用する場合、企業のキャッシュフローを簡単に求められるため、投資先の選定を行う際にも活用できます。

EBITDAは、もともと経営指標の1つであり、M&Aの際に企業評価を客観的に見るために使われる指標です。会計の初心者でも簡単に求められるので、投資先を探る際にご活用ください。

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10. 企業価値評価の算定はM&A仲介会社にご相談ください!

M&A総合研究所

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出典:https://masouken.com/

中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所では、企業価値算定のご相談への対応から始まり、実際にM&Aを目指していく際には、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが専任となり、クロージングまでフルサポートをいたします。

これまでに培った幅広い情報を駆使することによって、通常は10カ月~1年以上かかるとされるM&Aを、最短3カ月で成約した実績を有するなど機動力もM&A総合研究所の大きな特徴です。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談を受け付けておりますので、企業価値算定・M&Aを検討される際には、お気軽にお問い合わせください。

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11. EBITDAの問題点

簡単な計算式により、該当する企業の価値・キャッシュフローを算出できるEBITDAですが、簡易的なために問題点もあります。ここでは、EBITDAを活用するうえで注意しておきたい2つの問題点を確認しましょう。

  1. 投資に対する効果の側面しか見えてこない
  2. 支払利息や税金を控除していない

① 投資に対する効果の側面しか見えてこない

EBITDAは計算方法を構成する要素上、投資に対する効果の側面しか見えません。つまり、その効果を得るために必要になる設備への投資額が反映されていません。そのため、該当企業の正確な価値・キャッシュフローを知ることは困難です。

なお、このとき、EBITDAで算出できるキャッシュフローは、営業キャッシュフローと呼ばれます。また、EBITDAでは見えてこない投資額は、投資キャッシュフローと呼ばれるものです。

基本的に、投資キャッシュフローはマイナスとなるため、EBITDAから算出された営業キャッシュフローから差し引かれ、フリーキャッシュフローが導き出されます。

その投資が数年後、価値の上がる投資であれば評価するのですが、そうとは限らない点がEBITDAの問題点です。したがって、毎年、何かしらの設備投資を行う企業であれば、EBITDAのみで企業評価を導くのは危険であるといえます。

② 支払利息や税金を控除していない

EBITDAで算出された企業価値・キャッシュフローには、支払利息や税金の控除が行われていません。この点も、EBITDAが簡単な計算式で算出されることによる問題点といえます。

したがってEBITDAのみで、該当する企業の価値やキャッシュフローを調べ、判断してしまうことは控えた方がよいでしょう。

ちなみに、EBITDAは投資対象の企業を決める際にも用いられていますが、「EBITDAのみの判断では投資企業を選ぶべきではない」と、投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットは苦言を呈しています。

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12. EBITDAの正しい計算式

ここでは、EBITDAの正しい計算式を紹介します。企業が決算書で公開している数字さえあれば、算数を覚えたばかりの小学生でも算出できるのが、EBITDAの良さであり活用するためのメリットです。

EBITDAの計算方法

  • EBITDA=税引前当期営業利益+減価償却費

上記のような簡単な計算式で、EBITDAは求められます。計算式に必要な数値さえわかれば、簡単な足し算でEBITDAが算出できるのは、非常に大きなメリットです。

経常利益を用いてEBITDAを導く計算方法

EBITDAは、経常利益を用いても求められます。厳密にいえば、正式のEBITDAとは別のものとなりますが、税引前当期営業利益がわからない場合の手段として、覚えておくとよいでしょう。

  • EBITDA=経常利益+支払利息+減価償却費

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13. EBITDAに関連する計算式まとめ

ここでは、EBITDAに関連したさまざまな計算式をまとめて解説します。EBITDAは簡易的な企業価値を算出する方法ですが、それを応用することにより、ほかにもさまざまな指標を計算することが可能です。

  1. EBITDAと企業価値を使って簡易買収倍率を求める計算
  2. 時価総額がEBITDAの何倍あるかを求める計算
  3. 利益率をEBITDAを使って求める計算
  4. 何年で有利子負債を返済できるかについてEBITDAを使って求める計算

①EBITDAと企業価値を使って簡易買収倍率を求める計算

EBITDAと企業価値を活用することにより、EV/EBITDA倍率(簡易買収倍率)を求められます。EV(Enterprise Value)は企業価値の意味で、EV/EBITDA倍率とは、負債などのマイナス要因も含めて、買収コストを何年で回収できるのかを予測する指標です。

なお、EV/EBITDA倍率(簡易買収倍率)は、外国人投資家が活用することが多いといわれています。その理由は、純粋な数値だけで投資金の回収年数が判明し、合理的な判断ができると考えられているからです。

計算方法

EV/EBITDA倍率は、以下の計算式によって導きます。

  • EV=時価総額+有利子負債額-現金
  • EV/EBITDA倍率=EV÷EBITDA

数値の見方

EV/EBITDA倍率を求める際は、まず、EVを求めることが必要です。EVは、企業の時価総額と有利子負債を合計したのち、現金をマイナスすることで求められます。なお、EV/EBITDA倍率には目安があり、6倍から7倍程度が定説です。

7倍を超える企業は割高、6倍以下の場合は割安の企業ということになります。また、有利子負債とは利子が発生する負債を意味し、借入金・社債などのことです。企業価値を求める際は、有利子負債の存在も重要な要素となります。

簡易買収倍率は企業価値評価を知る方法の1つです。しかし、M&Aを行う際には、ほかにもさまざまな企業価値評価方法を用いて、総合的に判断していきます。

②時価総額がEBITDAの何倍あるかを求める計算

企業の時価総額がEBITDAの何倍になるかを求めることで、何年分のキャッシュフローで企業の買収金額の回収を行えるかを予測できます。

計算方法

こちらの計算式は、以下のとおりです。

  • EBITDA倍率=時価総額÷EBITDA

数値の見方

「対象企業を時価総額で買収した際、当期純利益の何年分で買収額を回収できるのか?」この問いに答えるうえで活用される指標は、PER(Price Earnings Ratio=株価収益率)と呼ばれるものです。このPERの利益を示す部分をEBITDAに変えて計算したものが、EBITDA倍率となります。

なお、PERとは、「その株が割安なのか?割高なのか?」を知るために、投資家が活用することの多い数値です。株式投資は安く良いものを買うことで大幅な利益を生むため、PERを活用して端的な数値を求めます。

③利益率をEBITDAを使って求める計算

EBITDAを用いることで、利益率(EBITDAマージン)を求めることが可能です。EBITDAマージンとは、営業利益率の営業利益部分をEBITDAに代替したものとなります。

利益率とは、事業の収益性や競争力を数値で見る指標です。ここには、企業や事業の規模や成長率は考慮されておらず、効率性を純粋に求めています。

計算方法

利益率(EBITDAマージン)を算出する計算式は、以下のようになります。

  • 利益率(EBITDAマージン)=EBITDA÷売上高

数値の見方

EBITDAを売上高で割ることで、利益率を求めます。利益率がわかることで、買収対象企業の効率の良さを知ることも可能です。

④何年で有利子負債を返済できるかについてEBITDAを使って求める計算

EBITDAを使うことで、対象企業が抱える有利子負債を何年分のEBITDAで返済できるのかを求められます。買収しようとしている企業には、有利子負債があることがわかっている際、紹介する計算式で簡易的な購入の判断が可能です。

なお、有利子負債倍率(EBITDA有利子負債倍率)とは、経営が安全に保たれているかを判断する数値でもあります。また、計算で得られる情報・数値は、キャッシュフローに対する借入金の割合を知ることも可能となるのです。

計算方法

EBITDA有利子負債倍率の計算式は、以下の内容となっています。

  • EBITDA有利子負債倍率=有利子負債÷EBITDA

数値の見方

今現在ある有利子負債、つまりは借入金などが償却前営業利益(EBITDA)の何倍あるのかを求めることで、返済予測年度がわかります。

有利子負債倍率は、M&Aを頻繁に行う企業が、投資家向けのプレゼンテーションを行う際にも公開するものです。それにより、返済に対する計画性を発信します。

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14. EBITDAの事例

ここでは、EBITDAの事例として、実際に公開されている企業の連結キャッシュフロー計算書が見られるURLを紹介します。公開されている資料では、細かな数値が記載されており、その企業のEBITDAを知ることが可能です。

  1. 三菱重工
  2. バンドー化学
  3. INPEX
  4. ダイセル
  5. 凸版印刷

①三菱重工

以下のURLにて、三菱重工の2017(平成29)年度、2018(平成30)年度、2019(令和元)年度の連結キャッシュフロー計算書が見られます。
https://www.mhi.com/jp/finance/finance/cf/

②バンドー化学

以下のURLの情報で、内容はシンプルですが、2018年度、2019年度のバンドー化学のEBITDAを知ることが可能です。
https://www.bandogrp.com/ir/financial/cashflow.html

③INPEX

以下のURLにて、INPEXの2016(平成28)年3月期から2019年12月期(決算期の変更が行われています)の連結キャッシュフロー計算書が見られます。
https://www.inpex.co.jp/ir/financial/cashflow.html

④ダイセル

以下のURL先にて、ダイセルの2016年3月期から2020(令和2)年3月期までの連結キャッシュフロー決算書が確認できます。わかりやすいEBITDAを知ることが可能です。
https://www.daicel.com/ir/cashflow.html

⑤凸版印刷

以下のURLに記載されているリンク先にて、印刷会社最大手の1社である凸版印刷の連結キャッシュフロー計算書の各年度CSVデータがダウンロードできます。
https://www.toppan.co.jp/ir/financial/statements/index3.html

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15. まとめ

EBITDAはあくまでも簡易的な営業利益を求める指標です。そのため実際にM&Aを行う際には、前段階でEBITDAを活用することをおすすめします。その後、交渉やデューデリジェンスなどを行ううえで、より詳細に営業利益を算出してください。

【EBITDAの算出方法およびEBITDAを活用した計算式】
・EV(企業価値)=時価総額+有利子負債-現金
・EV/EBITDA倍率=EV(企業価値)÷EBITDA
・EBITDA倍率=時価総額÷EBITDA
・利益率(EBITDAマージン)=EBITDA÷売上高
・有利子負債倍率(EBITDA有利子負債倍率)=有利子負債÷EBITDA

なお、EBITDAの算出・買収企業の選定・M&A戦略の策定・実際の交渉やデューデリジェンスなど、M&Aに関する全ての業務は、経営者単独で行うのは非常に難しいものです。

したがって、M&Aを検討する際は、専門家であるM&A仲介会社への相談をおすすめします。また、事業譲渡事業承継といった売り手側のM&Aも、仲介会社を利用するとスムーズに行うことが可能です。

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