2021年03月31日更新
EC・ネット通販の売却・M&A事例30選!計算方法や相場は?高値で売る方法を解説

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
ネット通販市場が拡大していることでEC売却やネット通販売却などの案件も増えており、各社ともにEC事業の拡大や事業基盤の強化を目的としたM&Aを行っています。本記事では、EC売却やネット通販売却で高値で売る方法や売却価格の算定方法など事例を交えて解説します。
目次
1. EC・ネット通販事業とは
EC(electronic commerce)は電子商取引と訳され、一般的にインターネットを利用した商品の売買など使われています。
ECは時間と場所を選ばずに買い物ができる利便性があるため、急速に普及してきました。また、サービス側も手軽にECサイトを立ち上げてビジネスができるため、参入する事業者数も急増しました。
しかしながらECビジネスは参入障壁が低いため、競争も激化しており生き残るための差別化を図ることが重要になっています。
近年では、ECサイトの買収や業務提携など業界内で再編が多くみられ、EC・ネット通販事業各社の拡大や小売店舗とECの融合などさまざまな販売戦略を打ち出しています。
EC・ネット通販事業の売却・M&Aの仕組み
EC・ネット通販事業の売却・M&Aは、譲渡側(売却側)がEC事業からの撤退したり、資金繰りや後継者問題を解決したりするなどの理由から行われています。
売却側は、EC・ネット通販事業の売却・M&Aを行うことにより、自社の抱える問題が解決できたり、得た資金によってコア事業に集中したりできます。
後述するEC・ネット通販サイトの売却・M&Aに比べると、当然のことながらEC・ネット通販事業の売却・M&Aのほうが取引額は高くなります。
EC・ネット通販サイトの売却・M&Aの仕組み
EC・通販サイト売却・M&Aが行われる理由や仕組みはEC・ネット通販事業とほとんど同じですが、売買額は当然安くなります。
そのため、M&A仲介会社などに依頼せずマッチングサイトで売却先を探すケースが多く見受けられます。
マッチングサイトでは手軽に案件を探せますが、商品の仕入れ先・顧客管理・物流など関連取引先を自身で確認して契約を締結しなければなりません。また、個人情報漏洩のリスクがあることも念頭に置く必要があります。
2. EC・ネット通販業界の動き
ECネット通販業界は、インターネットの普及やその利便性の高さから市場が拡大してきました。近年では、Amazonに代表される巨大ECサイトのAIやIoTの進化により、さらに早いスピードで市場動向が変化しています。
また、これまで店舗とインターネットは区別されてきましたが、近年ではECや実店舗と区別をせず、大きな視点で顧客との接点を生かしたオムニチャネル戦略を展開する企業が増えています。
EC・ネット通販業界の市場規模
2020年7月に経済産業省が公表した「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2019年の個人消費者向けEC(BtoC-EC)の市場規模は、前年比7.65%増の19兆3,609億円となっています。
内訳は、物販系分野が10兆515億円(前年比8.09%増)、サービス系分野7兆1,672億円(前年比7.82%増)、デジタル系分野2兆1,422億円(前年比5.11%増)です。
特に成長が著しいのがフリマアプリで、要因にはスマートフォンの普及によるECの需要が増加したことが挙げられます。
今後は、スマートフォンの利用動向を汲み取りながら、顧客のニーズを獲得するのが重要といえるでしょう。
EC・ネット通販業界の現状
ECネット通販業界は約7%の拡大を続けており、将来性も高い業界とされています。
近年では、PCよりスマートフォンの利用状況が逆転したというデータもあり、スマートフォンの利用者を意識した対応が必須になっています。
また、FacebookやInstagramなどSNSを使ったマーケティングなども不可欠とされ、広告費用が高騰していることを考慮すると、ますますマーケティング手法やサイト自体の差別化などが求められるといえるでしょう。
EC・ネット通販業界の動向予想
今後のEC・ネット通販業界では、通販サイト側がショールームを出店したり、ユニクロやセブン&アイ・ホールディングスのように、小売業界も自社の店舗を生かしつつオムニチャネル化を進めたりする小売企業も増えていくでしょう。
近年では、若者を中心に爆発的に利用者を増やしたInstagramでショッピング機能が拡張され、囲い込んだ顧客にダイレクトに販売できるため注目が集まっています。
また、IoTの普及によりAmazon echoに代表される音声で商品を注文する「ボイスコマース」など、スマートフォンには音声アシスタントが実装されてきており、近い将来普及が進むといわれています。
3. EC・ネット通販事業の売却・M&A事例30選
ここでは、EC・ネット通販事業の売却事例を30選ご紹介します。売却事例の多くは、新規買収ではなく自社ECの事業拡大を目的としたEC・ネット通販事業の売却であることが特徴です。
①ナガホリによるジェイウェルのM&A
2019年6月にナガホリは、宝飾品 EC サイトの企画・運営を行うジェイウェルと資本業務提携および一部株式を譲受けにより取得しました。
ナガホリは販売チャネルの拡大を目指しており、ECサイトでノウハウのあるジェイウェルと共同で商品企画や人材交流を行ってEC市場での商品企画力と販売力の強化を図るとしています。
②ロコンドによる千趣会の運営の「モバコレ」のM&A
2019年3月に靴とファッション ECサイト「LOCONDO.jp」を運営するロコンドは、千趣会より取得価額4億4800万円でモバコレの全株式を取得し、完全子会社化しました。
モバコレは20代女性向けのファッションを主力商品としており、ロコンドが訴求できていなかった層を取り込み効率的な運営を行うためM&Aを実施しました。
③ナックによるインフィニティービューティーのM&A
2018年12月にナックは、子会社のJIMOSを通じてインフィニティビューティーの株式を譲受し、子会社化しました。
ナックは、インフィニティービューティーが運営しているEC事業のノウハウの取得およびJIMOS社から販売しているオリジナルブランドの化粧品の販路拡大、インフィニティービューティーの商品ラインナップ拡充や販売力強化を目的とて当M&Aを実施しました。
④エイジアによるハモンズ(ベビー服EC事業)のM&A
2018年9月にエイジアは、ハモンズからベビー服ECサイト事業譲受を行いました。
エイジアは、ハモンズのベビー服EC運営ノウハウを収集・活用することで、主力製品の「WEBCAS」シリーズの強化改善や自社マーケティングコンサルティングサービスのノウハウ確立を目指すとしています。
⑤BEENOSによる帝国酒販のM&A
2018年3月に「Buyee」「セカイモン」などグローバルなEコマースを展開するBEENOSは、帝国酒販の全株式を取得し完全子会社化しました。
帝国酒販のもつ酒類販売店や自社ECサイト「銘酒専門店 帝国酒販」や国内大手ECモールなど、仕入れ・販売網と自社の持つクロスボーダー部門のノウハウなどを合わせることで相乗効果を得ることを目的としています。
⑥TGビジネスサービスによるアウトレットプラザのM&A
2018年2月にトランスジェニックの子会社であるTGビジネスサービスは、アウトレットプラザの全株式を取得し完全子会社化しました。
トランスジェニックグループは、アウトレットプラザの販売システムやノウハウを生かすことで新規ビジネスモデルに向けた事業展開や各種検査サービスの販売力強化を目的としています。
⑦アエリアによる株式交換によりECサイト「Hybrid Mind Market」キャラクターコンテンツ企画・販売のGG7のM&A
2017年10月、ITサービス事業を主軸にコンテンツ開発配信を行っているアエリアは、GG7を株式交換により完全子会社化をしました。
アエリアは、GG7のアニメやゲーム関連の商品開発やECサイト「Hybrid Mind Market」の商品企画力や販売ノウハウを活用することでグループの事業基盤強化と企業価値向上を図るとしています。
⑧スクロールによる資生堂子会社のEC自然派スキンケア化粧品サイト運営を行うキナリのM&A
2017年7月に通販事業のスクロールは、資生堂の100%子会社でキナリの株式を取得し、子会社化しました。
スクロールはアパレル・雑貨・化粧品の会員向け通販事業を行っており、自然派化粧品ブランド「草花木果」のインターネット通販のコンセプトを生かしながら自社のノウハウや販売網を合わせることでさらなる成長を目指すとしています。
⑨アライドアーキテクツによる「GreenSnap」運営事業の大都とM&A
2017年5月にアライドアーキテクツは、植物特化型のSNSプラットフォーム「GreenSnap(グリーンスナップ)」の運営事業の会社分割により、新会社を設立したGreenSnap社を割り当て交付による子会社化し、大都を株式交換による親会社としました。
「GreenSnap」はガーデニングの愛好家向けのコミュニティで写真投稿SNSプラットフォームであり、大都はDIYに特化したEC事業やメディア事業で国内実績があります。
当事例は、両社のノウハウやネットワークを合わせることで事業の拡大を見込んだM&Aです。
⑩オールアバウトの子会社による通販サイト運営のミューズコーのM&A
2017年5月にオールアバウトの連結子会社であるオールアバウトライフマーケティングは、ミューズコーの全株式を取得して子会社化しました。
ミューズコーはファッション通販サイト「MUSE&Co.」、オールアバウトライフマーケティングは「サンプル百貨店」を、両社それぞれの強みを生かしてEC事業の活性化を目的としています。
⑪オイシックスによる大地を守る会との合併によるM&A
2017年3月に有機野菜宅配業界の2位とオイシックスと3位の大地を守る会が、株式交換による経営統合を行いました。
オイシックスはEC市場において食品にこだわる主婦層に付加価値の高い食品サービスを展開し、大地を守る会も「大地宅配」ブランドで有機・無農薬食材にこだわった会員制宅配事業を展開しています。
当事例は、両社がこれまで培ったノウハウや配送網、生産者ネットワークなどを両社で活用したシナジー効果を目的として行われました。
⑫楽天による住友商事よりECサービス会社爽快ドラッグのM&A
2016年12月に楽天は、住友商事が持つ爽快ドラッグの全株式を取得し、子会社化しました。爽快ドラッグは、生活用品や日用品を中心に幅広い商品を取り扱うEC事業会社です。
楽天は爽快ドラッグを子会社化することで、楽天市場の商品拡充および顧客満足度の向上、物流の効率化などを図るとしています。
⑬楽天によるフリマアプリ「フリル」運営のFablicのM&A
2016年9月に楽天は、フリーマーケットアプリ「フリル」を運営するFablicの発行済み全株式を取得し、完全子会社化しました。
Fablicの「フリルリル」は10~20代女性をメインターゲットとしており、楽天の運営するフリマアプリ「ラクマ」との統合することで両社のサービスにおける客層やサービス拡大を目指します。
⑭メタップスによるビカムの検索サイト「Become.co.jp」のM&A
2016年6月にオンライン決済プラットフォーム「SPIKE」を運営するメタップスは、ビカムの全株式を取得し、完全子会社化しました。
ビカムは、検索サイト「Become.co.jp」の運営や自社商品のデータを広告配信先の仕様に最適化できる技術も保有しており、メタップスはビカムのデータフィードマネジメント技術の対応業種拡張とメタップス本体事業とのシナジー獲得を目的としています。
⑮オイシックスによる移動スーパーマーケット「とくし丸」のM&A
2016年6月にオイシックス(現:オイシックス・ラ・大地)は、軽トラックで移動型スーパーを全国展開するとくし丸を株式取得により連結子会社化しました。
オイシックスは、インターネットを利用する顧客30~40代女性がメイン顧客ですが、買い物に不便な地域のインターネット利用が浸透していないシニア層の顧客獲得を目的として当M&Aを実施しました。
⑯ディノス・セシールによるイード「保険ゲート」のM&A
2016年5月にイードは、フジ・メディア・ホールディングスの子会社のディノス・セシールとの業務提携および保険見直し・相談サイト「保険ゲート」の事業譲渡を行いました。
Webメディアを運営しているディノス・セシールは、イードが持つWebメディア事業による既存ビジネスの活性化と新しいEC事業展開を推し進めるとしています。
⑰健康コーポレーションによる三鈴のM&A
2016年4月に健康コーポレーション(現:RIZAPグループ)は、2016年に4℃ホールディングスからヤングエレガンスを主力とする三鈴の全株式を取得し完全子会社化しました。
健康コーポレーションは今回の買収により10~20代女性向けの取り込みを行い、すでに買収した馬里邑・アンティローザ・夢展望などと連携し、アパレル事業を強化することを目的として当M&Aを行いました。
⑱ASJによるNTT・アイテックスのM&A
2016年2月にASJは、エヌ・ティ・ティ・データより85.7%の株式譲受により、NTTデータ・アイテックスを子会社化しました。
ASJはNTT・アイテックスを買収することにより、自社の持つ人事管理システム連携クラウドサービスの業務拡大を目的としています。
⑲トランスコスモスによる富士通HRプロフェショナルズのM&A
2016年2月にトランスコスモスは、富士通からの譲渡により株式会社富士通HRプロフェショナルズの株式49%を取得しました。
富士通とトランスコスモスは、共同で経営することによりBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を主力とするトランス・コスモスのノウハウを生かし、人事関連の受託業務のさらなる効率化を目指すとしています。
⑳レントラックスによるベーシック(広告ネットワーク事業【ゲームフィート】)のM&A
2016年2月にレントラックスは、ベーシックからスマートフォンアプリ向けアフィリエイト広告ネットワーク事業「GAMEFEAT(ゲームフィート)」の事業を譲受しました。
レントラックスは、最大級のスマートフォンアプリの広告ネットワークをもつ「GAMEFEAT」保有することで、拡大するスマートフォン向け広告市場でのアフィリエイトサービス事業の強化を図るとしています。
㉑ブックオフコーポレーションによるブックレビューコミュニティサイト「ブクログ」のM&A
2016年1月にブックオフコーポレーションは、ブクログの全株式をGMOペパボより取得し、同社を完全子会社化しました。
ブクログは、ブックレビューコミュニティサイト「ブクログ」や電子書籍作成・販売プラットフォームを運営しており、当M&Aによりブックオフコーポレーションが運営する「BOOKOFF Online」サイトでのレビュー活用や相互層客による事業の活性化を図るとしています。
㉒トランスコスモスによるcaramoのM&A
2015年10月にトランスコスモスは、ザッパラスから藤巻百貨店を運営するcaramoの全株式を譲受し、完全子会社化しました。
コールセンターやデジタルマーケティングサービスを展開するトランスコスモスは、ザッパラスよりECサイト「藤巻百貨店」取得することでアジアに向けてグローバルEリテール事業展開の事業展開を目的としています。
㉓楽天による旅行アクティビティー予約サービスのVoyagin Pte.LtdのM&A
2015年7月に楽天は、現地ツアー予約サイト「Voyagin(ボヤジン)」を運営するVoyagin Pte. Ltd.(シンガポール)の株式の過半数を取得しました。
「Voyagin」は英語・日本語・中国語に対応してアジアを中心に50以上の国や地域で展開されており、楽天は旅行予約サイト「楽天トラベル」と連動し訪日観光客向けの事業強化を図るとしています。
㉔GMOペパボによるOCアイランドをM&A
2015年6月にGMOペパボは、ハンドメイドマーケット「tetote」を運営するOCアイランドの株式をクロバーおよびオープンクローズより株式を取得し子会社化しました。
GMOペポバは、「minne」の強化のためにOCアイランドが運営する「tetote」のノウハウや事業資産を活用することでCtoCのハンドメイドマーケットの強化を図るとしています。
㉕VOYAGE GROUPによるKauliのM&A
2015年4月にVOYAGE GROUPは、SSPサイトを運営するKauliの全株式を取得し、完全子会社化しました。
VOYAGE GROUPは、アドテクノロジー事業と「ECナビ」「PeX」などポイントを活用したメディア事業を主力としており、ノウハウとサービスを合わせることで広告販売や広告収益支援ツールのSSP市場シェア拡大を図るとしています。
㉖リブセンスによるECサイト運営のwajaのM&A
2015年4月にリブセンスは、ファッションECサイトを運営するwajaを約4億円で子会社化しました。
求人情報サイトを運営しているリブセンスは、wajaのEC事業とWebマーケティングに関するノウハウ獲得、インターネットサービス開発力向上を目的として当事例を行いました。
㉗楽天によるEbatesのM&A
2014年10月に楽天は、約1,050億円の現金で米国最大級の会員制オンライン・キャッシュバック・サイトを展開するEbatesの全株式を取得し完全子会社化しました。
楽天は、会員制サイトを運営しているEbatesとの事業資産やテクノロジーの統合することで世界に名立たるプラットフォームへと成長することを目指すとしています。
㉘クックパッドによるセレクチュアーのM&A
2014年8月にクックパッドは、オンラインショップ「アンジェ」を運営するセレクチュアーの株式を取得し子会社化しました。
セレクチュアーが運営する雑貨オンラインショップ「アンジェ」のノウハウとクックパッドの取扱商品の拡充と運営ノウハウを合わせることでEC事業の強化を図るとしています。
㉙フューチャーアーキテクトによるeSPORTSのM&A
2013年6月にフューチャーアーキテクトは、子会社のフューチャーインベストメントが保有するIRパートナーズを通じて、スポーツ用品とアウトドア用品の販売を手掛けるeSPORTSを完全子会社化しました。
ヒューチャーアーキテクトは、eSPORTSのECビジネスのノウハウを吸収することで自社が行うEC領域のビジネス拡大を図るとしています。
㉚ソフィアホールディングスによるサルースのM&A
2012年9月にソフィアホールディングスは、サルースが発行する転換社債型新株予約権付社債の株式転換を行使し、サルースを連結子会社化しました。
サルースはECサイト「salus」事業でヤングレディース向けのアパレル企画製造販売を展開しており、ソフィアホールディングスは資金面のサポートやノウハウ提供により企業価値の向上を目指すとしています。
4. EC・ネット通販事業の売却・M&Aの相場
EC・ネット通販事業の売却額・M&Aの相場は、一般的に純資産の額に2~3年分の営業利益または経常利益の5年分といわれており、事業売却と会社売却では当然のことながら会社売却の方が相場は高くなります。
しかし、これはあくまでも簡易的な目安を知るものであり、将来の予測する期待値も含まれるため、正しいとは言い切れません。
5. EC・ネット通販事業のM&A・売却価格の計算方法
EC・ネット通販事業のM&A・売却価格は、企業価値を元に算出しますが、その算出方法には以下の3種類があります。
- コストアプローチ(静態的評価方式)
- インカムアプローチ(動態的評価方式)
- マーケットアプローチ(比準方式)
売り手や買い手がM&Aの対象となる事業や株式の成長性に期待する場合はインカムアプローチのDCF法が採用され、譲渡価額と時価純資産の差額は将来の超過収益力に基づいたのれん代として認識されます。
また、企業価値が上場企業並みに大きい場合は上場企業の株価を参考にできるマーケットアプローチを採用することが多いです。
①コストアプローチ(静態的評価方式)
事業などの一定時点の財産に着目して、その評価を算定する方式です。代表的な方法として、事業などの資産から負債を差し引いて計算される純資産額を事業の価値として計算する「純資産方式」があります。
貸借対照表を前提として評価するため客観性が高いといえますが、過去の価値評価を行えるものの将来の収益価値を反映できないデメリットがあります。
②インカムアプローチ(動態的評価方式)
事業などの収益力を資本力で割り引くことで、事業の価値を算定する方法です。代表的な「DCF法」や「収益還元法」があります。
収益の将来獲得能力をその利益実現に向けてリスクを考慮した割引率で評価結果に反映させられるメリットはあるものの、事業計画などの将来的な情報については恣意的(しいてき)に排除することが困難なため、客観性に欠けている点がデメリットです。
③マーケットアプローチ(比準方式)
マーケットアプローチは、評価対象会社と似ている上場企業の財務状況や類似の買収事例などを参考に企業価値の評価を行う方法です。
客観性や取引市場環境の反映の点では優れていますが、他企業とは事業コンセプトやビジネスモデルの相違や成長ステージが異なる場合や類似の企業がない場合は、会社固有の性質を反映させられないのがデメリットです。
6. EC・ネット通販事業の売却・M&Aの際に高値で売る方法
自社の通販事業を少しでも高値で売却したいと思うのは、売り手としては当然のことでしょう。では、EC・ネット通販事業の売却・M&Aの際に高値で売るためには、どのようにすればよいのでしょうか。
この章では、EC・ネット通販事業の売却・M&Aの際に高値で売るための5つのポイントについて解説します。
- 競合と比較して自社の強みを明確にする
- 収益性と予測値を明確に提示できる
- 運営に必要なデータ・資料などを用意する
- 業界の動向を把握する
- M&Aの専門家に相談する
①競合と比較して自社の強みを明確にする
まず1つ目は、自社のECサイトをより高く売却するために同業他社と比較してどこに強みがあるかを明確にすることです。
M&Aでは買い手にいかに評価してもらえるかが重要で、「もう二度と出会えない好案件である」と思わせるような材料が必要です。
改めて自社の分析を行い、他社にはない技術や特許・ブランド・ノウハウなどを洗い出してみましょう。そして、将来的に生み出す利益や事業戦略などを相手にしっかり伝えることも、自社を高値で売るためには重要だといえるでしょう。
②収益性と予測値を明確に提示できる
自社を買収した場合、相手企業にはどのようなシナジーが見込めるのかといった提示ができると効果的です。
具体的には、将来の収益性と予測値を明確することが重要です。サイト収支構造に必要な数値には、売上・原価・販売管理費・営業利益の4つがあります。
例えば、今後3年間の収益予測をリスクケースやアップサイドケースに分けて提示するなど、買い手が判断がしやすいものを提示するとよいでしょう。
③運営に必要なデータ・資料などを用意する
売却後の引き継ぎ運営に必要となるデータや資料を用意しておくことも重要です。必要となるのは、主に以下4つの業務に関するものになるので、事前に自社のデータや資料の整理・確認をしておきましょう。
①商品管理 | 商品仕入れ、在庫管理などの商品に関連する一連の業務 |
②販促・集客 | 集客方法やアクセス解析、季節にあわせた販促企画 |
③サポート業務 | 顧客管理や問い合わせ対応業務 |
④売上管理 | ECサイト売上管理(入金確認・売掛金回収など) |
④業界の動向を把握する
少しでも高額でECサイト売却を考えるなら、業界の動向を把握しておくことも重要です。最新の動向を加味し、タイミングを逃さず売却できるよう進めるようにしましょう。
また、今後のEC・通販業界の動向を把握しておけば、これから売却する自社ECサイトの集客や売上計画をより将来性の高い事業計画に反映させられます。
⑤M&Aの専門家に相談する
EC・ネット通販事業の売却・M&Aの際に高値で売るためには、ここまで述べたポイントを意識して行う必要がありますが、それ以外にM&A・事業承継に関する専門知識や交渉力も必要になります。
また、買い手が行うデューデリジェンスに対して提出する資料の精査や自社の企業価値を上げるために必要な事項の把握などにも専門家のサポートは不可欠といえるでしょう。
そのため、EC・ネット通販事業の売却・M&Aの際はM&A仲介会社などの専門家に相談しながら行うことが高値での売却・M&Aを成功させるカギとなります。
M&A総合研究所では、EC・ネット通販事業のM&Aに精通したM&Aアドバイザーがフルサポートいたします。
料金体系は、完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)となっており、着手金は完全無料です。
無料相談を随時お受けしていますので、EC・ネット通販事業の売却・M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
7. 買い手にとって人気のEC・ネット通販サイトの条件
買い手にとって人気のEC・ネット通販サイトとは、どのようなものなのでしょうか。ここでは、人気のEC・ネット通販サイトの条件を3つ取り上げ解説します。
- 評判がよく安定的な利用者がいる
- 取り扱いしやすい作りになっている
- 取扱商品に今後も需要がある
①評判がよく安定的な利用者がいる
評判が良く安定的な利用者がいるEC・通販サイトといえば、Amazonや楽天、yahooショッピングなど大手巨大モール系ECサイトがありますが、大手だから安定的な利用者がいるというわけではありません。
サイトの使い勝手はさることながら、即日配送・決済方法・ポイント付与など全てにおいて利便性が非常に高く、ユーザーにとっても多くのメリットがあります。
これに対抗したサービスを急に始めるというのは非常に難しいですが、利用者の側に立って満足度の向上のため常にサイトの改善を行うことが重要だといえるでしょう。
②取り扱いしやすい作りになっている
ECサイトは、利用者の使い勝手が良い作りになっていることも重要です。購入へのアクションまでの遷移がわかりづらいサイトデザインや、表示に時間がかかるなど使いにくい要素があれば利用者はすぐにサイトを離脱し、再び訪問する可能性は低くなります。
訪問者が購入してくれる最低の条件としてECサイトのユーザビリティーが高いことが挙げられるため、自社のサイトの作りを確認してみるとよいでしょう。
③取扱商品に今後も需要がある
取り扱い商品には、今後も需要がある商品構成であることが求められています。そもそもEC市場も参入障壁が低いためコモディティ化しており、他サイトと同じ品揃えや商品ラインナップでは生き残るのも厳しい現状です。
そのため、自社ECサイトの顧客満足度が高い商品構成にすることが重要です。Amazonのロングテールを狙った商品ラインナップは有名ですが、ある特定のカテゴリーに絞り込んで一定の顧客層に需要がある商品ラインナップにするのも一つの方法といえるでしょう。
8. EC・ネット通販事業の売却・M&Aの相談先
EC・ネット通販事業の売却・M&Aを行う際、どこに相談すべきかと悩むことも多いでしょう。M&Aの相談先には、M&Aアドバイザリー・M&A仲介会社・マッチングサイトがあります。ここでは、これら3つの特徴とメリット・デメリットについて解説していきます。
M&Aアドバイザリー
M&AアドバイザリーはM&Aについて専門的な知識を持ち、買収側・売却側のいずれかの側に立って助言・戦略策定・交渉を行い、依頼主の利益が最大になるよう業務を行います。
M&Aアドバイザリーは、M&Aコンサルタントやファイナンシャルアドバイザーと呼ばれることもあります。
M&Aアドバイザリーの業務範囲は、財務会計や税務・法律関連、M&A戦略策定・デューデリジェンス・バリュエーション・PMI(PMM)などの業務に加え、代理人としての交渉を行うなど多岐に渡ります。
料金は依頼するM&Aアドバイザリー会社によって異なりますが、大手アドバイザリー会社に依頼した場合は成功報酬以外に着手金や各種手数料などがかかることも多く、費用は数百万~数千万になることもあります。
したがって、依頼する場合は費用に見合った規模であるかを検討したうえで行うほうがよいでしょう。
マッチングサイト
マッチングサイトでは、買い手と売り手それぞれが募集をかけ、自身で相手先を探せます。
手軽に利用できて相手先と直接交渉を行えるため費用を抑えることができる点がメリットですが、情報漏洩のリスクや交渉が難航する可能性があるなどデメリットも存在します。
特に交渉においては、M&Aに関する専門的な知識が必要となるため、経験や知識が乏しければ成功させるのは非常に難しいといえるでしょう。
マッチングサイトのなかには、交渉したい相手先がみつかったら仲介サポートに切り替えできるサービスを行っているところもあるので、心配な場合はこのようなマッチングサイトを活用するほうがよいでしょう。
M&A仲介会社
M&Aアドバイザリーは、買い手売り手どちらかの利益が最大限になるよう業務を遂行しますが、M&A仲介会社は両社の間に立って双方にメリットがあるよう中立的な仲介を行います。
両社のマッチングを行い、最終条件の落しどころを探るよう交渉を進めていくため、仲介会社に依頼するのが最も成約しやすいといわれています。
また、M&A仲介会社の中には中小規模案件のサポートに特化しているところも多く、料金面でもアドバイザリーに比べると安く設定されていることが多いです。
無料相談を行っている会社も多いので、どのような案件実績があるか、サポート体制はどのようになっているのかなど、まずは相談してみることをおすすめします。
9. EC・ネット通販事業の売却・M&A時の費用
ネット通販事業の売却・M&A行う際は、どのくらいの費用が必要なのでしょうか。成約したときに発生する成功報酬以外に、相談料・着手金・中間金・デューデリジェンス費用などの手数料があり、どの費用がかかるかは依頼する業者によって異なります。
一般的にかかる費用には以下のようなものがありますが、どの費用がかかるのか、手数料率の割合はどの程度かといった点は業者により異なるため、事前に確認しておくことが必要です。
- 相談料:最初の依頼についての相談する料金
- 着手金:M&Aを仲介会社に依頼する際に発生する支度金
- 中間金:売却先と基本合意書を締結した状態
- リティナーフィー(月額報酬):M&Aが終了するまで毎月払う報酬
- デューデリジェンス費用:M&Aの買収先の調査費用
- 成功報酬:M&Aが契約成立し最終契約書を結んだときに支払う手数料
- 実務実行費用:業務を行う上でかかる経費
10. EC・ネット通販事業の売却・M&Aの募集案件紹介
ここでは、M&A仲介会社であるM&A総合研究所のマッチングプラットフォームに現在登録されている案件をご紹介します。案件詳細は、マッチングプラットフォームで閲覧できますが、M&A総合研究所の無料相談からでもお問い合わせいただけます。
①インスタグラムフォロワー1.6万人のECアパレルサイト
個人で運営しているECアパレルサイトの売却案件です。リスクが低い無在庫で仕入れるドレスショップで、無料ショッピングカート「BASE」で運営されています。従業員はおらず、個人経営のため雇用面の引継ぎはありません。
商品は中国からの仕入れる商品の原価率が約50%ですが、Instagramでの集客がメインのため広告費はほとんどかからず、広告費が高いといわれるアパレル業では小さい事業ながらも利益率が高い収益構造となっています。
若者向けがメインの商材であり、客層の拡充を目的とした買収やECサイトでは必須であるSEO施策を行っていないため、まだまだ売上も伸びる可能性はあります。さらに、囲い込んでいるフォロワーに向けての商品拡充にも力を入れれば、売上も拡大するでしょう。
サービス | 中国から無在庫で仕入れるドレスショップをBASEで運営 |
売上 | 1,000~5,000万円 |
対象資産に従事じている人数 | なし |
譲渡理由 | 資金調達 |
譲渡希望価額 | ~1,000万円 |
②【日本向け商品】ネット通販会社の譲渡
日本向け商品をネット販売している企業の売却案件です。後継者不足のために譲渡を希望しています。
特定ジャンルに特化した商品を扱っており、豊富な品揃えと他サイトよりもリーズナブルな価格が強みです。また、大手卸業者との取引もあります。
サービス | ある特定の領域に特化した商品の販売 |
売上 | 1,000~5,000万円 |
対象資産に従事じている人数 | 5人 |
譲渡理由 | 事業承継 |
譲渡希望価額 | 5,000万円~1億円 |
11. EC・ネット通販事業の売却・M&Aにおすすめの仲介会社
EC・ネット通販事業の売却・M&Aを成功させるためには、M&Aに関する幅広い知識に加え、高い交渉力も必要となるため、M&A仲介会社など専門家のサポートが不可欠です。
M&A総合研究所では、案件ごとに知識と経験が豊富なM&Aアドバイザーが専任で就き、戦略策定・交渉・クロージングまでフルサポートいたします。
当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、EC・ネット通販事業の売却・M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
12. まとめ
この記事では、EC・ネット通販事業の売却方法や成功事例などを紹介しました。ECネット通販業界は拡大を続けており、将来性も高い業界だけに業界再編のM&Aも活発化しているのが現状です。
EC・ネット通販事業はITとの融合でビジネストレンドの流れが速いため、売却する事業の評価が下がる前に売却したいという人もいるでしょう。その際は、成功させるポイントを意識して売却を行うことが重要です。
【EC・ネット通販事業の売却・M&Aの際に高値で売る方法】
- 競合と比較して自社の強みを明確にする
- 収益性と予測値を明確に提示できる
- 運営に必要なデータ・資料などを用意する
- 業界の動向を把握する
- M&Aの専門家に相談する
- 評判がよく安定的な利用者がいる
- 取り扱いしやすい作りになっている
- 取扱商品に今後も需要がある
- M&Aアドバイザリー
- マッチングサイト
- M&A仲介会社
EC・ネット通販事業の売却・M&Aを行う際は、自社に合った戦略策定や相手先との交渉など、専門的な知識や経験が必要となるため、専門家のサポートを受けながら行うようにしましょう。
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
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