2023年04月05日更新
M&Aにおける交渉の内容とポイント!成功例や失敗例もご紹介
M&Aでは売り手と買い手の経営者同士がトップ面談を行い、相手の経営理念の理解や売却価額などさまざまな事柄について交渉します。本記事では、M&Aにおける交渉についてその内容や成功のポイントを解説するとともに、具体的な成功例と失敗例も紹介します。
1. M&Aにおける交渉の内容
M&Aは仲介会社などのサポートを受けて進めていきますが、実際に交渉を行うのは経営者自身なので、交渉の内容について理解しておくことが重要です。まずこの章では、M&Aの交渉の内容について買い手・売り手の視点から解説していきます。
M&Aの価格や条件は交渉で決まる
会社や事業は商品のように価格が決まっているものではないので、M&Aの価格や条件は最終的には交渉で決まることになります。
ただし、交渉だけで決めると完全な言い値になってしまうので、さまざまな企業価値評価(バリュエーション)によって妥当な価格帯を見積もるのが一般的です。
しかし、これはあくまで目安であり、交渉次第で企業価値評価とかなり違う価格でM&Aが成立することも少なくありません。
具体的な交渉の内容
M&Aにおける具体的な交渉の内容は、買い手側と売り手側双方の視点でみていく必要があります。
M&Aでは、買い手はできるだけ安く買いたい、売り手はできるだけ高く売りたいという相反する希望を交渉によってすり合わせなければなりません。
よって、自分は売り手だから買い手側の視点は知らなくてもいいというのではなく、双方の立場での交渉内容を把握しておくことが大切です。
①売り手側
M&Aの売り手側は、売却益を得る、従業員の雇用を守る、廃業を回避するなどの目的を持って交渉に臨みます。
M&A交渉に臨む売り手は、これらのうちどの目的でM&Aを行うかを明確にしておくことが大切です。
高い売却益も得たいし従業員の雇用を守って廃業も避けたい、といったポイントのない漠然とした目的では条件に合う買い手もみつかりにくく、交渉もまとまらない可能性が高くなります。
②買い手側
M&Aの買い手側は、売り手企業との協働によるシナジー効果の獲得、または新規事業や新規エリアへの進出などを目的とすることが多いです。
交渉においては、売り手が持っている技術・ブランド・販路などの経営資源について、できるだけ正確な情報を引き出す必要があります。
また、経営資源だけでなく、売り手企業の社風や経営者の経営理念など、精神的な部分を見極めるのも交渉の大事なポイントです。
2. M&Aの適正価格の決め方
M&Aの売却価額は、企業価値評価で大まかな見積もりを出し、トップ面談による交渉で詳細を詰めていきます。
よって、M&Aでは交渉術に加えて、企業価値評価がどのように行われるのかを把握しておくことが重要です。
スムーズな相手先探しのためには適正価格が重要
M&Aは交渉ではさまざまな点について話し合いますが、やはり一番重要になるのは売却価額といえるでしょう。
会社は商品のように決まった価格があるわけではないので、その中で買い手・売り手双方が納得できる適正価格を求めることが、スムーズな相手探しのために重要です。
一般にM&Aでは交渉に入る前の段階で、企業価値評価によって売り手企業の適正価格を算出します。
適正価格となる企業価値評価の求め方
M&Aで使われる企業価値評価は、コストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチの3つに分類されますが、3つそれぞれにいくつかの手法があるので、トータルではかなり多くの評価手法があることになります。
企業価値評価の手法が多数あるのは、会社の完全な適正価格を求めるというのは不可能で、どの手法も一長一短あるからです。
実際に企業価値評価を行うのはM&Aの専門家ですが、納得いく価格でM&Aを成約させるためには、経営者自身も手法の概要は把握しておく必要があるでしょう。
【適正価格となる企業価値評価の求め方】
- コストアプローチ
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
①コストアプローチ
コストアプローチは、売り手企業の資産と負債の額をもとに企業価値を求める手法で、中小企業のM&Aでよく使われます。
コストアプローチの最も単純な手法は、貸借対照表の資産と負債の簿価の差額をとる簿価純資産法です。もし簿価と時価に大きな乖離がある場合は、一部の資産を時価評価して算定する時価純資産法を用います。
コストアプローチは売り手企業の将来性や無形資産の価値を考慮できないので、適宜「のれん」という名目でこれらの価値を加味するのが一般的です。
②インカムアプローチ
インカムアプローチとは、事業計画などをもとに売り手企業が将来もたらすであろう利益を見積もり、それをもとに企業価値を評価する手法です。
将来の利益は完全には分からないので、不確定さが大きい場合は価値を割り引くなどして調整します。代表的な手法は「DCF法」と「配当還元法」です。
インカムアプローチはコストアプローチと違い将来性を加味できるのが利点ですが、将来性の評価にはどうしても恣意性が入るのが欠点といえます。
インカムアプローチは主に大企業M&Aで用いられる手法で、コストや手間もかかるので中小企業M&Aではあまり用いられません。
③マーケットアプローチ
マーケットアプローチとは、売り手企業と事業内容や事業規模などが似ている上場企業を探し、その上場企業の経営指標を参考に企業価値を見積もる手法です。
例えば、似た上場企業の税引前利益に支払利息と減価償却費を足したもの(EBITDA)と、事業価値(EV)の比をとった「EV/EBITDA」を求め、それに売り手企業のEBITDAを掛けるなどの手法があります。
マーケットアプローチは客観的な指標を使えるのが利点ですが、比較対象として適切な企業が存在するとは限らない点はデメリットです。
3. M&A交渉のポイントと心構え
売り手と買い手の経営者によるM&Aの交渉は「トップ面談」と呼ばれ、両者がじっくりと話し合う唯一の機会になることも少なくありません。
よって、M&A交渉を成功させるには、ポイントや心構えを踏まえて準備万端で臨む必要があります。
主なポイントとして、誠実な態度で臨む、大まかな条件は基本合意で決めておくなど、以下の4点を押さえておきましょう。
【M&A交渉のポイントと心構え】
- トップ面談は誠実な姿勢で臨む
- 大まかな条件は基本合意時点で決めておく
- デューデリジェンスでは正確な情報を開示する
- 後出しでの条件追加や価格交渉は避ける
1.トップ面談は誠実な姿勢で臨む
トップ面談は、資料だけでは分からない経営理念や人間性なども見る場なので、誠実な態度で臨む必要があります。
売り手側は質問には正直に答え、嘘や誇張した情報を買い手に与えないことが大切です。また、買い手側経営者のなかあには、自分が売り手より上の立場だと思って高圧的な態度になり、売り手に悪い印象を与えてしまうケースがあります。
買い手側は、謙虚な姿勢で売り手と対等な立場で交渉することが大切です。
2.大まかな条件は基本合意時点で決めておく
トップ面談では相手の人間性や経営理念、お互いの情報提供などをメインに交渉し、売却価額などの具体的な条件交渉はあまりしないのが一般的です。
しかし、デューデリジェンスを行うにあたって条件が全く未定では困るので、基本合意書の締結により大まかな条件を決めます。
条件交渉は主に買い手による意向表明書の提出や、M&Aアドバイザーを介した価格交渉などによって行います。
基本合意書は初めてM&Aを行う方にとって意義が分かりにくいですが、現時点での買収条件について認識をすり合わせるなど重要な意味合いがあるので、できるだけ締結するほうが望ましいでしょう。
3.デューデリジェンスでは正確な情報を開示する
デューデリジェンスは売り手企業にとってプレッシャーがかかるものですが、買い手がM&Aをスムーズに決断できるように正確な情報を開示しなければなりません。
というのは、もしデューデリジェンスで虚偽の情報があると、M&A締結後に訴訟などのトラブルになることもあるためです。
情報の正確性については、経営者自身が正確な情報を把握していない場合もあります。例えば、サービス残業などのコンプライアンス違反や簿外債務の存在などは、経営者自身が自覚していないケースもあるので注意しましょう。
4.後出しでの条件追加や価格交渉は避ける
デューデリジェンス終了後は、その結果を踏まえて最終交渉を行います。もしデューデリジェンスで何か問題が発覚した場合は、それを加味して買収価額を調整したり、契約内容の変更や追加したりするケースもあるでしょう。
しかし、トップ面談で交渉していなかった条件をこの段階で新たに提示したり、デューデリジェンスで問題がなかったのに価格交渉を新たに持ちかけたりといった行為は、M&Aの失敗につながる可能性が高くなります。M&Aの交渉では、後出しでの条件追加や価格交渉は避けるのが賢明です。
4. M&A交渉の成功例・失敗例
M&A交渉の成功を目指すにあたり、典型的な成功例と失敗例を知っておくことは有益です。ここでは、M&A交渉でよくあるタイプの成功例と失敗例をいくつか紹介します。
M&A交渉の成功例①
レジャー業を営む売上高50億円の企業が、売上高3,500万円の懐石料理店を買収した事例です。
売り手の懐石料理店は家族経営の小規模な会社で、手塩にかけて育てた事業を他社に買収されることに抵抗がありました。
しかし、買い手が粘り強く交渉して信頼関係を築き、最終的に業務提携という形でM&Aの成約に至りました。
M&A交渉の成功例②
売上高10億円の溶接加工業者が、売上高2億円のメッキ加工業者を買収した事例です。
売り手のメッキ加工業者は経営者が高齢で、後継者候補もいないためM&Aによる事業承継を検討していました。
熟練の技術を持つ従業員がいる売り手に複数の買い手が興味を示しましたが、買い手の溶接加工業者は両社の協働によって得られるシナジー効果を具体的に説明することで、売り手の信頼を得て成約となりました。
M&A交渉の失敗例
売上高10億円の運送業者A社のM&A失敗事例です。A社は地域密着型の運送業者で、経営者が高齢のためM&Aによる事業承継を検討しました。
買い手候補も見つかり基本合意も締結しましたが、デューデリジェンス後にやっぱり会社を手放すのが惜しくなり、後出しで買い手に条件変更を持ちかけます。これが買い手の信頼を失う結果となり、M&Aは不成立に終わりました。
5. M&Aの交渉を成功させるポイント
M&Aの交渉を成功させるポイントとして、以下の3点を押さえておきましょう。
【M&Aの交渉を成功させるポイント】
- 譲れない条件を決めておく
- 相手企業の本音を見極める
- 専門家に相談する
1.譲れない条件を決めておく
M&Aの交渉は買い手と売り手の希望をすり合わせる必要があるので、こちらの希望条件が全て受け入れられることは多くありません。
そのため、譲れない条件と譲歩してもよい条件をあらかじめ決めておき、場合によっては譲歩することが成功のポイントになります。
2.相手企業の本音を見極める
M&A交渉ではお互いのM&Aの目的を理解することが大切ですが、相手企業が本音を隠すことも少なからずあるでしょう。
例えば、自社が大幅な赤字で買い手の傘下に入って倒産を回避したい時に、経営が苦しいことを言いづらいために、表向きは事業拡大やシナジー効果などを挙げて交渉を進めるケースなどです。このようなケースでは、交渉で相手の本音をきちんと見極めることがポイントとなります。
3.専門家に相談する
M&Aはマッチングサイトなどを利用して経営者が自分で手続きを進めることもできますが、専門性が高く精神的負担も大きいM&Aの手続きを自分だけで進めるのはおすすめできません。
M&Aを行う際は、M&A仲介会社など専門家のアドバイスを受けることが不可欠といえるでしょう。
6. M&Aのご相談はM&A総合研究所へ
M&Aをご検討中の方は、ぜひM&A総合研究所へお問い合わせください。当社は売上規模一億円から数十億円程度の中堅・中小企業M&Aを手がけており、経験豊富なアドバイザーがクロージングまでトータルにサポートいたします。
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M&Aや交渉に関して、無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
7. まとめ
M&Aの交渉は売却価額の決定だけでなく、相手の経営者の理念や人間性など、さまざまな要素を見極める重要な機会になります。
交渉は複数回行うこともありますが一度きりのことも少なくないので、成功のポイントをしっかり押さえて臨むことが大切です。
【適正価格となる企業価値評価の求め方】
- コストアプローチ
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
【M&A交渉のポイントと心構え】
- トップ面談は誠実な姿勢で臨む
- 大まかな条件は基本合意時点で決めておく
- デューデリジェンスでは正確な情報を開示する
- 後出しでの条件追加や価格交渉は避ける
【M&Aの交渉を成功させるポイント】
- 譲れない条件を決めておく
- 相手企業の本音を見極める
- 専門家に相談する
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