2022年09月05日更新
M&Aの必要書類まとめ!契約書などいつまでに準備が必要か解説!
M&Aの必要書類は、情報提供を目的とした資料や進捗に合わせて取り交わす契約書などがあります。さまざまな種類がありますが、いずれもM&Aを進めるために必要不可欠な書類です。本記事では、M&Aの必要書類や必要となるタイミングについて詳しく解説します。
1. M&Aの必要書類・契約書とタイミング
M&Aで必要となる契約書をはじめとする各書類について以下の3つの段階に分けて説明します。
- マッチング段階までに必要な書類
- M&Aの交渉段階で必要な書類
- M&Aの最終段階で必要な書類
マッチング段階までに必要な書類
M&Aの初期段階である交渉相手を決めるまでのマッチング段階で必要となる書類には、以下のものがあります。
- 秘密保持契約書
- アドバイザリー契約書、仲介契約書
- ショートリスト、ロングリスト
- ノンネームシート
秘密保持契約書
秘密保持契約書とは、M&A取引で開示される情報を第三者に漏えいしたり、目的外使用したりすることを禁止する契約書です。秘密保持契約書を締結するタイミングは2回あります。1つはM&A仲介会社などに正式な業務依頼をする以前の相談時です。
M&A仲介会社などへの相談でより具体的な話をする場合は、自社の経営情報の一部を開示して相談するので、その秘密情報の漏えいを防ぐため、M&A仲介会社との間で秘密保持契約書を締結します。
2つめのタイミングは、M&Aの交渉相手が定まったときです。交渉を開始するにあたっては、売り手・買い手ともに自社の情報開示が必要になります。その秘密情報の漏えいを防ぐため、売り手・買い手間で秘密保持契約書の締結は必須です。
秘密保持義務と開示が許される範囲【参考】
秘密保持契約書では、秘密情報の定義が重要なポイントになります。その理由として、開示側は開示情報の漏えいや目的外使用を防止するために、受領側は義務を負う範囲を明確にしておくためです。
開示が許される範囲に関しては、依頼先や調査に係る専門家が含まれることが一般的となっています。M&Aの円滑な進行のために一定の情報を共有する必要があるので、秘密保持契約書にその旨が記載されることが多いです。
アドバイザリー契約書、仲介契約書
アドバイザリー契約書・仲介契約書は、M&Aの専門家に正式にサポート依頼するための契約書です。詳細な報酬内容やアドバイザリーのサポート範囲などが記載されますが、アドバイザリー契約書と仲介契約書は、契約形態において以下の違いがあります。
- アドバイザリー契約:M&A仲介会社は売り手・買い手のどちらかとのみ契約し顧客の最大限の利益獲得を目指す
- 仲介契約:M&A仲介会社は売り手・買い手の双方と契約し両者の間を取り持ってM&A成約を目指す
ショートリスト、ロングリスト
ロングリストとは、十数社以上の買い手企業の候補をまとめたリストです。売り手が希望する一定の条件に沿って広範囲から選定を行い、M&A仲介会社が作成します。ショートリストとは、ロングリストからさらに数社程度まで絞り込んだリストです。
アドバイザリー契約書締結後にロングリスト、ショートリストが作られます。ロングリストとショートリストに分けることで、売り手の拘束時間を最小限にとどめることが可能です。
ノンネームシート
ノンネームシートは、売り手企業名を匿名にした企業概要書です。売り手企業の特定を防ぐことが目的なので、記載情報は業種・地域・売上高などの必要最小限にとどめます。ノンネームシートの必要性は、情報漏えいリスクを軽減することです。
M&A検討段階で情報が漏れると取引先や従業員が混乱する恐れがあるため、初期段階では匿名で買い手企業を探します。ノンネームシートを受け取った買い手は、業種や地域などから自社とのシナジー効果を予測しての検討です。ノンネームシートは、M&A仲介会社が作成します。
M&Aの交渉段階で必要な書類
M&Aの交渉相手が定まり交渉開始となった段階で必要となる書類は、以下のとおりです。
- 企業概要書
- 意向表明書
- 基本合意書
- デューデリジェンスに関する書類
企業概要書
企業概要書は、売り手・買い手の詳細な情報を記載した書類です。売り手・買い手間の秘密保持契約の締結後、開示資料の1つとして提出されます。売り手の場合は、買い手がM&Aの条件を検討するために必要な財務諸表などの経営情報資料の提示も必須です。
意向表明書
意向表明書は、買い手がM&Aの意向(希望する条件など)を記載した書類です。売り手が提出した企業概要書や経営資料などを基に検討した以下のような希望条件が記してあります。
- M&Aスキーム(手法)
- 譲受対象
- 対価
- 大まかな今後のスケジュール
- その他の付随する条件
意向表明書は、契約書ではありません。M&Aの交渉を進めやすくするために買い手が提示する書類です。したがって、意向表明書の提示は必須プロセスではなく、提示が行われないケースも多々あります。
基本合意書
M&A交渉が大筋で合意した際に締結するのが基本合意書です。M&Aの条件や今後のスケジュールなどが記載されます。ただし、基本合意書は、一部を除いて法的拘束力がありません。現時点での合意内容確認書という位置付けです。法的拘束力を持つ条項は以下のようなものになります。
- 買い手の独占交渉権(売り手は一定期間、他社とM&A交渉ができません)
- デューデリジェンスへの売り手側の協力義務
- 秘密保持
デューデリジェンスに関する書類
デューデリジェンスとは、売り手企業に対する精密調査のことです。財務・税務・法務・労務・IT・ビジネスなどの分野ごとに、士業などの専門家が起用され実施されます。デューデリジェンスの目的は以下の3点です。
- 最終的な買収価額決定のために行う企業価値評価に必要な情報の収集と内容確認
- 簿外債務や訴訟リスクなど経営ダメージを受けるようなリスクの有無の確認
- M&A後に実施するPMI(Post Merger Integration=経営統合)計画策定に必要な情報の収集
上記の調査のために必要な書類・資料は膨大な種類があり、以下に一例を掲示します。
- 決算書(3期分)
- 確定申告書(3期分)
- 月次試算表
- 経営計画書
- 固定資産台帳
- 固定資産税納税通知
- 登記簿謄本
- 許認可に関する書類
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録
- 定款
- 株主名簿
- 組織図
- 従業員名簿
- 雇用契約書
- 就業規則
- 退職金規定
- その他の規定類
- 各種契約書一式
- 不動産登記簿謄本
デューデリジェンスの終了後、各担当者から買い手に向けて提出されるのが、デューデリジェンス報告書です。その報告書を受けて、買い手は最終交渉で提示する条件を決定しますが、報告書の内容が悪い場合には破談の決断もあり得ます。
M&Aの最終段階で必要な書類
M&Aの最終段階で必要な書類は以下のとおりです。
- 最終契約書
最終契約書
デューデリジェンスの内容を踏まえて最終交渉が行われます。最終交渉で条件が合意されれば、最終契約書の締結です。正式な契約書として法的拘束力を発揮させて、M&A取引を履行させることが目的となっています。
基本合意書とは異なり、全ての条項において法的拘束力が伴うので、締結前に各条項をチェックして不備がないことを必ず確認しましょう。最終契約書の締結後、クロージング(契約内容の履行)へと移りM&Aは完了します。
最終契約書の名称はM&A手法によって変わる
最終契約書は便宜上の呼称で、実際にはM&Aスキーム名がついた契約書になります。一例としては以下のとおりです。
- 株式譲渡契約書
- 事業譲渡契約書
- 吸収合併契約書
株式譲渡は、株式の売買をもって経営権を移転させる手法です。株式の取引価額や最終契約書の締結日からクロージングまでの株価変動の対処法などについて記載します。
事業譲渡は、事業の一部あるいは全部を譲渡する手法です。引き渡し対象の事業・資産を事細かに記載して、関連する権利義務の引き継ぎに関しても明記します。
吸収合併は、2つ以上の会社を1社に統合する手法です。対価として金銭あるいは株式の交付や存続会社の組織・体制などを記載します。
2. 最終契約書に盛り込まれる重要な条項
最終契約書は、M&A成約に向けて当事会社間で締結する契約書です。記載条項は幅広くなっており、M&Aスキームによって記載すべき内容が変わります。各条項は当事会社の双方が遵守すべきものです。
ここでは、使用率の高い株式譲渡契約書を前提として、最終契約書の中で特に重要な以下3つの条項を解説します。
- アーンアウト条項
- エスクロー条項
- 表明保証
アーンアウト条項
アーンアウト条項とは、買い手側の追加代金の支払い義務を定める条項です。買い手は売り手に対し、クロージング後から一定期間内の対象会社の業績・目標達成度合いに応じて追加報酬を支払います。
アーンアウト条項を盛り込むメリットは、売り手側はM&A後も経営に携わることにより、結果を出せればさらに高額のキャッシュを手にできることです。
買い手側は、手堅い範囲の出費で対象会社を手に入れられます。買収後に成果が出てから追加支払いとなるので、インセンティブやボーナスを付与するというイメージに近いものです。
事業計画の見通しなどを巡って、売り手と買い手の間で見解の相違がある場合に盛り込まれることが多く、双方が希望する取引価額が乖離し過ぎた場合にアーンアウト条項を定めておきます。
エスクロー条項
エスクロー条項とは、売り手側に補償責任が生じた場合に備えて、第三者に譲渡代金の保管を依頼することを定める条項です。代金決済の安全性を担保するため、M&A取引でも条項として盛り込まれることがあります。
仮に、M&A後に売り手に補償責任があることが発覚して損害賠償が発生したとしても、必ずしも売り手が損害賠償額の支払いを行うとは限りません。
そのような買い手側の不安要素を排除するために、あらかじめ中立的な第三者に損害賠償の相当額を預けておくのです。一定期間が過ぎて補償責任が生じなければ、預けられていた資金は売り手側へ返金されます。
表明保証
表明保証とは、売り手が買い手に対して、最終契約書に記載される財務・法務などの一定の事項が正確な内容であることを表明かつ保証するものです。
最終契約書の締結前にデューデリジェンスによる調査が行われますが、数週間から一カ月前後の短期間で売り手企業の状態を全て把握することは困難でしょう。
したがって、デューデリジェンスの調査範囲は重要な箇所に絞り込み、範囲外の情報に関しては売り手から提供される資料を信用することが前提となります。
ここに虚偽の内容が含まれていると適正なM&A取引ではなくなるため、表明保証を記載して売り手は真実かつ正確な内容であることを保証するのです。
3. M&Aの必要書類・契約書一覧
M&Aは、M&Aの正当性の検討や相手との交渉で、どうしても時間がかかってしまう取り引きです。こうした状況のなかでも時間短縮するためには、必要書類の準備などの事務作業を不備なく進めておくことが大切になります。
下表は、M&Aの必要書類の目的やタイミングを一覧にまとめた表です。必要なタイミングを把握して事前に必要書類の準備をしておくと、M&Aを円滑に進めやすくなります。
必要書類 | 目的・用途 | タイミング |
秘密保持契約書 | 情報漏えい防止 | 専門家への相談時、売り手・買い手の交渉開始時 |
アドバイザリー契約書 仲介契約書 |
サポート依頼するため サポート範囲の確認 |
M&Aの専門家にサポートを依頼するとき |
ショートリスト ロングリスト |
買い手企業の選定 | アドバイザリー契約書の締結直後 |
ノンネームシート | 情報保護 | アドバイザリー契約書の締結直後 |
企業概要書 | 交渉相手の情報開示 | 秘密保持契約の締結後 |
意向表明書 | 買い手企業の譲受意向の明示 | トップ面談の後 |
基本合意書 | 双方の意向確認 | 大筋で交渉が合意したとき |
最終契約書 | 双方の最終的な合意 | 最終交渉で合意したとき |
4. M&Aの必要書類の準備では専門家のサポートが必要不可欠
M&Aでは、進捗に応じてさまざまな書類・契約書が必要になります。必要になったタイミングで準備に取り掛かっていると、全体の進行に遅れが生じやすいため、事前に準備を進めておくことが重要です。
M&Aの全体の流れを把握しつつ、必要書類・契約書を不備なく用意するためには、M&A仲介会社など専門家のサポートが欠かせません。安心してサポートを依頼できるM&Aの専門家をお探しでしたら、M&A総合研究所にご連絡ください。
M&A総合研究所は、中堅・中小規模の案件を得意とするM&A仲介会社です。幅広い業種における知識・ノウハウを培っており、豊富な実績があります。M&A経験豊富なアドバイザーが案件ごとに専任となり、ご相談時からクロージングまでを一貫サポートする体制です。
M&Aの流れを総合的に熟知しているので、必要書類・契約書の準備も怠りなく進められます。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
随時、M&Aに関して無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
5. M&Aの必要書類まとめ
M&Aの必要書類・契約書はM&A手法や目的によって変わることがあります。特に最終契約書においては法的拘束力もあるため、不備がないように作成・締結に努めることが肝要です。
必要書類・契約書に関して不安がある場合は、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。専門的知見によるアドバイス・サポートを受けることで、円滑にM&Aを進められるからです。本記事の概要は以下のようになります。
・M&Aの必要書類・契約書
→秘密保持契約書
→アドバイザリー契約書、仲介契約書
→ショートリスト、ロングリスト
→ノンネームシート
→企業概要書
→意向表明書
→基本合意書
→デューデリジェンスに関する書類
→最終契約書
・最終契約書に盛り込まれる重要な条項
→アーンアウト条項、エスクロー条項、表明保証
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