M&Aの手法とは?分類一覧、メリット・デメリットなど基礎知識も詳しく解説

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取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aの手法は大きく分けて9つあり、それぞれの手法に特徴があります。M&Aの手法は、M&Aを進めるやり方にも大きく関わります。この記事では、M&Aの手法とその特徴、M&Aのやり方、そしてメリット・デメリットについて詳細に解説します。

目次

  1. M&Aとは
  2. M&Aの手法一覧(大枠9分類)
  3. M&Aの手法の特徴(合併・買収の詳細)
  4. M&Aの手法を用いるメリット
  5. M&Aの手法を用いるデメリット
  6. M&Aの手法を用いる際の注意ポイント
  7. M&Aの手法を用いる際の流れ(11ステップ)
  8. M&Aの手法別に課される税金
  9. M&Aの手法を用いる際にかかる経費
  10. M&Aの手法を用いた成功事例
  11. M&Aの手法を用いた失敗事例
  12. M&Aの手法を用いる事例が増加している理由
  13. M&Aの手法まとめ
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1. M&Aとは

M&Aとは

M&Aとは、「Mergers(合併)」と「Acquisition(買収)」の略で、企業による一つもしくは複数企業の合併や買収による統合をさします。しかし、M&Aのスキーム(手法)は、合併と買収だけではありません。

M&Aのスキームには非常に多くの手法があり、それぞれの手法を企業の経営戦略や、対象企業の状況に応じて選ぶことが大切です。まずは、M&Aの目的・メリット・デメリット・市場動向について詳細に解説します。

M&Aの手法を用いる目的

M&Aにおける最大の目的は、自社・対象企業の良い点を生かし、シナジー効果を最大限に引き出すことです。シナジー効果とは、日本語で相乗効果です。

お互いの企業における良い点を引き出し、悪い点をカバーし合うことで、より経済的効果を得られます。M&Aの細かい目的は、以下です。
 

  • 事業の拡大
  • 新規事業への参入
  • 優秀な人材の獲得
  • 事業承継問題の解決

M&Aによって2つ以上の企業が統合すると、企業の規模や事業が拡大します。同じ業界における事業の規模が拡大するだけでなく、企業が属する市場の周辺市場まで、事業を拡大できます。

自社の事業が属する市場以外の市場を持つ企業と合併や買収によるM&Aを行うと、新規事業への参入が可能です。M&Aで、高い技術力や統率力を持つ優秀な人材を獲得することもM&Aにおける目的の一つです。

M&Aで売り手側の目的となるのが、事業承継問題の解決です。現在日本では高齢化が進んでおり、団塊世代が引退の時期であることも含め、後継者不足に悩む中小企業は多いです。事業承継問題を解決するために、M&Aは有効な手段です。

【関連】M&Aによる買収の目的は?目的別にメリット・課題を分類!

2. M&Aの手法一覧(大枠9分類)

M&Aの分類

M&Aの手法として、大きく9つに分けて解説します。大枠9分類は以下です。
 

  1. 合併
  2. 買収
  3. 合弁会社設立
  4. 資本参加
  5. 生産提携
  6. 販売提携
  7. 技術提携
  8. 新設分割
  9. 吸収分割

これらのM&A手法はどのようなものか、そしてそれぞれのメリット・デメリットを詳細に解説します。

資本提携

M&A手法のうち、「合併」「買収」「合弁会社設立」「資本参加」は、資本提携によるM&Aの手法です。資本提携とは、企業が対象企業の株式を取得することです。お互いの企業が、株式の取得をし合う場合も、資本提携に含まれます。

①合併

合併とは、2つ以上の会社を1つに統合することです。合併は「吸収合併」と「新設合併」に分けられます。これら2つの特徴は、後述します。合併を行うメリットは、以下の3つです。

1つ目は、買収とは異なり、合併する際に特別に資金を準備する必要がないことです。

2つ目は、企業の規模が拡大することで、経済的効果を得られることが挙げられます。

3つ目は、契約などの関係を、そのまま存続する会社に引き継げることです。

合併によるM&Aのデメリットは、契約などの関係もそのまま引き継がれるため、帳簿に記載されていない債務などがあっても引き継がなければならない点です。

また、2つ以上の会社における株主が一緒になるため、経営戦略の差異が生まれる点なども挙げられます。

②買収

買収とは、1つの会社が、1つまたは複数の会社を買収する形で統合することです。買収は「株式譲渡」「株式交換」「第三者割当増資」「事業譲渡」「会社分割」「TOB」「MBO」などに細かく分類できます。それぞれの特徴は後述します。

買収によるM&Aを行うメリットは、以下の3つです。

1つ目は、買収の対象となる企業が持つ技術や人材、資源などを開発する手間をかけずに入手できる点です。M&Aは時間の買収ともいわれる理由がここにあります。

2つ目は、新規事業や市場への参入が容易なことです。自社の事業が所属する市場以外の市場を持つ企業を買収することで、自社で開発・販売するよりはるかに容易に新規事業への参入が可能です。

3つ目は、買収によるM&Aの売り手側には、事業承継問題の解決になる点です。後継者がいないために廃業しなければならない企業にとって、M&Aは非常に有効な手段です。企業を売却することで、企業が培ってきた技術やノウハウを承継できます。

また、廃業するにはお金がかかりますが、企業を売却すれば手元にお金が残ります。

買収によるM&Aのデメリットは、買収後に帳簿に記載されていない隠れた債務が見つかるリスクがある点です。また、M&A最終契約書締結後に行われるPMIの実施が思ったようにいかず、うまく企業の統合ができないリスクがあります。

売り手側は、想定していたよりも算定した企業の買収金額が低くなる点が挙げられます。

③合弁会社設立

合弁会社設立とは、日本国内の資本と海外の資本が協力して出資をし、会社を設立することです。ジョイントベンチャーともいいます。自社の事業を海外展開したいときに必要な手法です。合弁会社設立のメリットとして、以下の3つが挙げられます。

1つ目に、合弁を行う会社と協力して出資を行うため、出資のリスクを抑えられる点が挙げられます。

2つ目は、合弁を行う企業が持つ設備や人材などを活用できることです。海外展開したいときに、海外にある企業から設備や人材を活用できるのは大きなメリットです。

3つ目に、合弁を行う企業と協力して会社を立ち上げるため、現地の人による反発が少ない点が挙げられます。現地に詳しい企業とともに立ち上げることで、反発による訴訟などのリスクを避けられます。

④資本参加

資本参加とは、関係を強化したい企業の株式を取得することにより、協力関係を結ぶことです。資本参加の場合は、合併や買収のように会社そのものの形が変わるわけではありません。

株式を取得する際も、相手企業の経営に関する支配権を持てるほどの株の取得は行いません。資本参加によるM&Aのメリットとして、以下の3つが挙げられます。

1つ目に、資本参加を行った対象企業とともに、新規事業の立ち上げを実施できる点が挙げられます。

2つ目に、相手企業に株式を取得してもらうことで、株式が向上する可能性があります。

3つ目に、お互いが経営の一部に参加できるので、契約が行える企業や販売するためのルートが広がる可能性が挙げられます。

資本参加によるM&Aのデメリットは、資本参加は買収や合併と違い永続的なものではない点、相手の企業との関わり方には今後も注意しなければいけない点です。

業務提携

M&A手法のうち「生産提携」「販売提携」「技術提携」は、業務提携によるM&Aの手法です。業務提携とは、資本の提供はせず、業務提供の対象企業と協力して事業を行うことです。業務提携を行う分野によって、生産・販売・技術に分けられます。

⑤生産提携

生産提携とは、業務提携のうち、生産に関する分野における提携のことです。「需要が高い商品やサービスだが、生産が間に合わない」というときに利用されます。委託とは違い、生産提携の場合は生産に関してお互いに協力します。

生産提携によるM&Aのメリットは、その商品に関する技術的なノウハウを教えるわけではないので技術面における情報の流出が防げること、お互いに協力し合うことにより生産量が格段に上がることなどです。

生産提携によるM&Aのデメリットは、生産量に対する利益の分配について食い違いが生じる可能性が挙げられます。

⑥販売提携

販売提携とは、業務提携のうち、販売に関する分野での提携のことです。

開発した商品を販売する際に、自社がもつ販売ルートや販売店舗だけでなく、販売提携を行う企業が持つ販売ルートや販売店舗も活用したほうが、お互いに経済的利益が上がると考えられる場合に提携を結びます。

販売提携によるM&Aのメリットは、お互いが持つ販売ルートを最大限に活用できる点です。

販売提携によるM&Aのデメリットは、生産提携と同じように、相手企業の販売ルートから得た収益はどのように分配するのかなど、収益の分配における検討が必要な点です。

⑦技術提携

技術提携とは、業務提携のうち、技術に関する分野での提携のことです。商品やサービスの開発をする際に、自社の技術だけではなく業務提携を行う対象企業の技術も取り入れることで、より良い商品やサービスを開発するために提携を結びます。

技術提携によるM&Aのメリットは、技術提携により幅広い知識や技術を持って商品やサービスを開発できるため、以前にはなかった良い商品を開発できる点が挙げられます。

技術提携によるM&Aのデメリットは、提携を行う対象企業と共同で開発を実施するため、自社の技術が流出する危険性があることです。

分割

M&A手法のうち、「新設分割」と「吸収分割」は、会社の分割によるM&Aのことをいいます。分割とは、自社における事業の一つもしくはいくつかを新設あるいは吸収する形で分割するM&Aの手法です。

⑧新設分割

新設分割とは、自社がもつ事業のうち分割する事業を新しく会社を分割して設立する形で事業の分割を行うことです。

新設分割によるM&Aのメリットは、新設分割の際に対価として支払うのは現金ではなく株式でも可能なため、資金の準備が必要ないこと、分割する事業を選べることなどが挙げられます。

新設分割によるM&Aのデメリットは、分割された事業を受け継ぐ際に、債権も一緒に受け継ぐリスクがあること、手続きが複雑なためコストや時間がかかることです。

⑨吸収分割

吸収分割とは、自社がもつ事業のうち、分割する事業がすでに事業を展開している企業に吸収される形で事業の分割を行うことです。

吸収分割によるM&Aのメリットは、新設分割と同じく、分割の際の支払いは現金だけではなく株式でも可能なため資金の準備が必要ないこと、そして分割する事業を選べることが挙げられます。

吸収分割によるM&Aのデメリットは、不要な債権なども引き継ぐリスクがあることです。

3. M&Aの手法の特徴(合併・買収の詳細)

M&Aの手法の特徴(合併・買収の詳細)

M&Aの手法とその特徴について、ここでは合併と買収に絞って詳細に解説します。合併には「吸収合併」と「新設合併」があります。また、買収は買収方法により「株式譲渡」「株式交換」「第三者割当増資」「事業譲渡」「会社分割」「TOB」「MBO」に分けられます。

それぞれの特徴を詳しく解説します。

合併

1つの企業が、1つもしくは複数の企業を吸収する形で統合を行うものを吸収合併といい、2つ以上の会社が、新しい会社をつくり、そこに統合する形で行うものが新設合併です。このとき、吸収されてなくなる会社を消滅会社といい、残る会社を存続会社といいます。

吸収合併

吸収合併を行う企業をA社とし、吸収される企業をB社とします。吸収合併の場合、A社が存続会社、B社が消滅会社です。A社はB社の株主に吸収合併をする際、株式などを対価として支払います。

そして、B社が吸収されA社に統合となると、B社の株主はA社の株主になります。A社は、B社が持っていた権利などを取得します。B社は合併後消滅し、A社は存続します。

吸収合併によるM&Aの特徴とメリットは、会社ごとまとめて統合するので、従業員や権利など事業ごとに細かく分ける手間がないことです。また、対価は株式で払えばよいので特別に資金を用意する必要がありません。

大規模な会社による小規模な会社の吸収合併では、取締役会決議のみで吸収合併を決定できる簡易合併という制度があり、簡単に実施できます。

新設合併

新設合併とは、合併する会社をA社・B社とすると、A社とB社が持つ事業でC社を新設し、C社に統合する方法です。この場合、A・B社は消滅会社となり、C社が存続会社です。

A・B社の株式を保有する株主は、新設合併後はC社の株式を保有します。新設合併は手続きが複雑なため、合併の場合は、吸収合併が選ばれることがほとんどです。

【関連】合併(吸収合併)と買収の違いは?M&A手法を徹底解説!

買収

買収は、買収の手法によって7つの手法に細かく分けられます。それぞれの手法にメリット・デメリットがあり、特徴が異なります。企業を買収する側を買い手、企業を売却する側を売り手として解説します。

株式譲渡

株式譲渡では、売り手側が保有する株式を買い手側に譲渡する代わりに、現金を受け取ります。その後、買い手側は、売り手側の経営権利を取得します。株式譲渡によるM&Aは、たびたび民事再生の手法としても用いられます。

株式譲渡によるM&Aのメリットと特徴は、M&Aの手続き自体が容易であるためM&Aを早く行えること、売り手が所有する資産などをそのまま引き受けられることなどです。

株式譲渡によるM&Aのデメリットは、売り手が所有する資産などをそのまま引き受けるので、負債なども引き受けてしまうリスクがあることです。また、買収の際は資金の準備が必要なことなども挙げられます。

株式移転

株式移転とは、新しく親会社をつくり、その新会社の株と自社株式を交換する手法のことです。既存の会社は、新しくつくった親会社の100%子会社になり存続します。

株式移転のメリットは、買収するときに株式を交付できるので、買収資金が要らない点です。また、統合される各社の中身は同じであるため、内部統合が容易なこともメリットです。

デメリットは、事務的な手続きに手間がかかる点です。また、企業数が増えるため管理費用が増え、株価が下落する可能性があることもデメリットといえます。

株式交換

株式交換は、買い手側が新株式または自社の株式を交付する代わりに、売り手側は自社の株式を譲渡します。これにより、買い手側が売り手側を買収する形になり、売り手側の株主は、買い手側の株主となります。買い手側の株主は、変わらず買い手側の株主のままです。

株式交換によるM&Aのメリットと特徴は、株式の交換による買収のため、資金を準備する必要がないこと、株主全員の賛成を得られなくてもスクイーズアウトにより子会社にできることなどです。

株式交換によるM&Aのデメリットは、株式譲渡と比較すると手続きが複雑なこと、子会社となる売り手側の企業が持つ債権も引き受けなければならない点などが挙げられます。

第三者割当増資

第三者割当増資では、売り手側の企業が、新株式を買い手側に発行するか、売り手側の株式を買い手側に交付することで、買い手側より代金をもらいます。売り手側は経営資金を手にでき、売り手側の株主はそのまま売り手側の株主として存続します。

株式の取得割合にもよりますが、買い手側は売り手側の株主とともに、売り手側企業の経営権をもらいます。

第三者割当増資によるM&Aのメリットと特徴は、手続きが容易なため早くM&Aを進められること、再売却を行う際も手続きが簡単であることなどです。

第三者割当増資によるM&Aのデメリットは、株式を買収するための資金が必要であること、売り手側の持つ負債も買い手側が引き受けなければならないことなどです。

事業譲渡

事業譲渡とは、売り手側が持つ事業のいくつかを買い手側に売却することです。買い手側は、売り手側の事業を買収する際に、代金を支払います。

事業譲渡によるM&Aのメリットと特徴は、一部の事業を選んで買収できるため、売り手側が抱える負債などは引き受ける必要がないことが挙げられます。

事業譲渡によるM&Aのデメリットは、譲渡する事業ごとに手続きをしなければならないため手続きが複雑であること、事業を譲渡することで得た利益は法人税が課されることなどです。

会社分割

会社分割は、会社を分割する際に、新しい会社を設立し新しい会社に分割する事業のみを譲渡する新設分割と、すでに事業を持つ企業に分割する事業を売却する吸収分割があります。

会社分割によるM&Aのメリットと特徴は、会社の部門や事業など分割したいもののみ選べること、特別に資金の準備が必要ないことなどが挙げられます。

会社分割によるM&Aのデメリットは、事業ごとに分割を行うためその事業が負債を抱えていた場合は、その負債も引き受けなければならないことです。また、特許などの手続きによっては、許可がおりない場合があります。

TOB

TOBとは、株式公開買付のことです。株式公開買付とは、いくらの株をどれくらいの数、いつまでに買収すると宣言し、株式の買付をすることです。

TOBによるM&Aのメリットは、大量の株式を買収できることや、買収価格を宣言して行うため予算がたてやすいことです。また、TOBはキャンセルできるため、予定している数の株式を買収できなければ取引のキャンセルができます。

TOBによるM&Aのデメリットは、TOBを実施する側とTOBをされる側に敵対する意思があった場合、TOBを行う側が損をしてしまう可能性があることです。

MBO

MBOとは、マネジメントバイアウトの略で、自社が発行している株式を購入することで、自社事業の一部などを買収し経営権を取得する方法です。MBOは、敵対的TOBから自社を守ったり、事業承継問題を解決したりするために利用される手法です。

MBOによるM&Aのメリットと特徴は、株式の買収によって経営権を強化するなど、中期的な成長戦略として有効な点などです。MBOによるM&Aのデメリットは、自社が発行している株式を株主から買収するのは難しい点が挙げられます。

4. M&Aの手法を用いるメリット

M&Aの手法を用いるメリット

M&Aは、以前まで大企業が行うイメージでしたが、近年では、中小企業でもたくさんのM&Aが行われています。

M&Aのメリットにはどのようなものがあるのか、買収する企業のメリットと売却する企業のメリットに分けて解説します。

買収のメリット

M&Aにおける買収する企業のメリットとして、まず事業の拡大と新規事業への参入が挙げられます。

事業の拡大や新規事業への参入を自社のみで行うと、事業拡大のための費用、人材の確保、新規参入のための商品やサービスを開発する費用など、膨大な予算がかかります。

また、人材の確保や商品・サービスの開発には、時間がかかることがほとんどです。

M&Aを行うことで、事業の拡大や新規参入をスピーディーに行えます。また、優秀な人材を獲得することも可能です。優秀な人材を確保できれば、自社の経済成長のスピードが上がることが予想されます。

売却のメリット

M&Aによる会社を売却する側のメリットとして一番に挙げられるのが、事業承継問題の解決です。前述のとおり、日本では後継者不足に悩む中小企業が非常に多いです。

そして、日本の風潮として取引先や従業員、経営理念を守る考えがあり、「会社を存続させたい」と思う会社が多いのも事実です。事業承継問題に悩む企業にとって、M&Aは有効的な手段です。

一般的に、後継者の育成には5年から10年かかります。その人材を今から探し、育成するのは困難を極めるでしょう。M&Aによって取引先とのやりとりを続けられ、従業員の勤労も守られます。そして、会社を存続させることも可能です。

5. M&Aの手法を用いるデメリット

M&Aの手法を用いるデメリット

M&Aにはデメリットも存在します。M&Aを行うにあたり考えられるデメリットを、買収する側の企業と売却する側の企業に分けて解説します。

買収のデメリット

買収によるM&Aを行う側には、M&Aの最終契約書締結が終わって実際に企業の統合を行う際に、企業の風習や文化が合わず、思ったように統合を行えないデメリットがあります。企業によって社内の雰囲気はさまざまなので、文化が合わないこともあります。

また、買収を実施した後に、隠れた債務が見つかるリスクがあります。M&A対象会社の帳簿に記載されていない債務があったり、買収したことにより訴訟が起きたりして、債務が発生するリスクも考えられるのです。

これらのデメリットを予防するためには、対象企業に対して行うデューデリジェンス(買収監査)をしっかり行い、最終契約書締結後のPMI実施を実施することが大切です。

売却のデメリット

M&Aによって会社を売却する側のデメリットとしては、自社が想定していた価格で会社を買収してもらえず、想定していた価格よりも安い価格で買収されるリスクがあります。

企業に関する詳細な調査をもとに買収額が決まりますが、予想していたよりも安い価格で算定されることがデメリットとして挙げられます。

また、買収の方法によっては、自社従業員の雇用条件が悪くなったり、従業員の理解を得られず会社から離れてしまったりするリスクもあるでしょう。雇用条件があまり悪化しないように、従業員のこともしっかり考えてM&A契約書の締結を行いましょう。

6. M&Aの手法を用いる際の注意ポイント

M&Aの手法を用いる際の注意ポイント

M&Aを成功させるには、入念な準備が必要です。この章では、M&Aの手法を用いる際の注意ポイントを解説するので、ポイントを押さえたください。

シナジー効果・メリットの獲得が期待できるか

シナジー効果・メリットの獲得は、企業価値向上や事業の発展につながるといえます。そのため、シナジー効果が期待できる相手を探すのはとても重要です。

このような相手を探すには、信頼できるM&Aアドバイザーを選ぶことが大切です。ネットワークが十分にあり、信頼できるアドバイザーを選んでください。

買収側は、買収条件をしっかり設定しましょう。シナジー効果が期待できても、条件によって目的が果たせないこともあります。

取引価格は適切か

M&Aの手法を用いる際は、取引価格が適切かどうか注意しましょう。売却する側の企業評価をしっかりと行い、買収価格が適切かどうか判断するのです。

デューデリジェンスは、専門家に依頼することをおすすめします。そして、財務面はもちろんのこと、法務・人事・ITもデューデリジェンスを行ってください。

潜在的な債務などのリスクも把握して、許容できる範囲を考慮し価格設定を行います。

実施タイミングは適切か

M&Aは、株式取得や事業譲渡の手法が多いです。そのため、上場企業のTOBは、金融商品取引場の価格より高価格で株式を取得します。

会社を売却する側は「高く株式を売りたい」と考えますが、買収する側は「できるだけ安価に買いたい」と考えます。そのため、両社が納得する価格で売買が成立する適切なタイミングをはかりましょう。

取引後の経営統合プロセスは万全か

M&Aの手法を用いる際は、M&Aの統合後における適切なプロセス(PMI)に注意しましょう。PMIは、M&A後の事業運営や新しい組織体制を構築するために必須です。

会社を買収する側と売却する側の企業文化は異なります。システムの運用や意思決定など、さまざまな点で違うのです。

それぞれの担当が、相違点や対応する点をリストにして、一つずつ統合しましょう。かなりの労力と時間を必要としますが、経営者はきちんとしたPMIが行われるよう配慮してください。

7. M&Aの手法を用いる際の流れ(11ステップ)

M&Aの手法を用いる際の流れ(11ステップ)

M&Aを実施する方法は、11のステップに分けられます。11のステップは、以下のとおりです。
 

  1. 事前準備
  2. アドバイザー選定
  3. アプローチ
  4. 秘密保持契約
  5. IM提示
  6. トップ面談
  7. 基本合意書締結
  8. デューデリジェンス
  9. 条件交渉
  10. 最終契約とクロージング
  11. PMI

以上のプロセスを、重要な点を押さえて進めることで、M&Aを成功に導けます。ここでは、M&Aにおける11のステップを詳細に解説します。

①事前準備

M&Aを行うための事前準備として重要なのが、目的の明確化です。M&Aにおける最大の目的は、対象企業と協力して、シナジー効果を最大限に引き出すことです。そのためには、自社はどのような企業を目指しているのか、そのためにM&Aは有効なのかを検討することが大切です。

目的の明確化は、最終契約書締結後のPMI実施を想定して検討することで、より具体的な目的を取り決められます。M&Aの目的を決めたら、その目的をM&Aを行うチーム全体で共有することも重要です。

②アドバイザー選定

事前準備として、目的の明確化を終えたら、M&Aのアドバイザーを選定します。M&Aのアドバイザーは、M&A仲介会社から選定するのが一般的です。M&Aアドバイザーの選定を終えたら、FA契約を締結します。

FA締結とは、ファイナンシャルアドバイザリー契約のことで、この契約を結ぶことにより正式に企業のM&Aアドバイザーとして就任します。

アドバイザーが決まったら、買収の候補となる企業をいくつか選定します。M&A仲介会社を利用することで、M&Aにおける目的のもと、適切な候補先を選定できます。

​​​​​​M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所には専門知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、培ったノウハウを生かしてM&Aをサポートいたします。

また、料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を行っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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③アプローチ

M&A仲介会社からの提供で候補先が決定したら、アプローチを実施します。ここでのアプローチとは、会社を売却する側の企業にM&Aを実施する意思があるのか問うものです。

このプロセスでは、具体的な会社名などは明かさず、アプローチを実施することがほとんどです。この際に提示される資料には、会社名が明記されていないためノンネームシートと呼びます。

④秘密保持契約

対象会社へのアプローチを終え、M&Aを行う意思があることが確認できたら、秘密保持契約を締結します。NDA契約ともいいます。M&Aは企業で働く従業員にとって非常にデリケートな問題なので、必要以上に情報がもれないように細心の注意を払って締結します。

秘密保持契約は、売り手側が自社の機密情報を守るため、そして買い手側も自社の情報を守るために締結します。

⑤IM提示

秘密保持契約を締結したら、IMの提示です。IMとは、インフォメーション・メモランダムの略で、企業に関する詳細な情報が記載された資料をさします。IMは、基本的には、売り手側のM&A担当者やアドバイザーが作成します。

どの程度まで情報を公開するかは売り手側が決定します。しかし、基本的にはM&Aの実施にあたりメリットとなる内容が多く記載されることがほとんどです。

⑥トップ面談

IMの内容をもとに、M&Aの条件を社内で検討をしたら、いよいよトップ面談です。お互いにM&Aの条件を話し合い、M&Aを実施する意思が固まったタイミングで行われます。

大企業のM&Aにおけるトップ面談であれば、ニュースなどで話題になることもあります。中小企業のM&Aにおけるトップ面談では、お互いの意思を再確認する重要な機会です。

⑦基本合意書締結

トップ面談を終え、M&Aの内容について基本的な同意が得られたら、基本合意書を締結します。基本合意書には、M&Aのスキームや買収価格など、さまざまな基本的な内容が記載されます。

M&Aを実施する企業における同意のもと、押印を行います。この時点で締結する基本合意書には、法的拘束力がないことが多いです。しかし、基本合意書の締結を結ぶことで、簡単にM&Aをキャンセルされるリスクを避けられます

⑧デューデリジェンス

基本合意書の締結を行ったら、デューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、買収監査のことで、企業を買収するにあたり大きなリスクはないか、買収価格は適正かなどを調査します。買い手側が売り手側に行うのが一般的です。

デューデリジェンスは、人事・財務・技術などさまざまな視点から売り手側企業を調査し、隠れた債務がないか、どのような技術を持っているのかなど、面談やIMでは不足していた情報を補います。

【関連】M&AにおけるDD(デューデリジェンス)項目別の目的・業務フローを徹底解説!

⑨条件交渉

デューデリジェンスで得られた情報をもとに、条件の交渉をします。デューデリジェンスは、買収価格が適正であるのかも検討することが大切です。

デューデリジェンスで発覚したリスクや技術の情報をもとに、買収価格や権利の譲渡など、M&Aに関する細かい条件の交渉を行います。

売り手側は「高く買収してもらいたい」、買い手側は「安価で入手したい」と考えるのが一般的なため、お互いの意見を尊重しつつ条件の交渉を行うことが重要です。

⑩最終契約とクロージング

条件交渉により、M&Aの条件が決定したら、最終譲渡契約書を締結します。最終譲渡契約書の締結により、法的拘束力をもってM&Aを締結します。最終契約書の締結でM&Aの契約に関する面はクロージングです。

M&Aのクロージングは、今後の経営戦略におけるスタートラインです。ここからどのように成長していけるかが、M&Aを成功に導くポイントです。

⑪PMI

最終譲渡契約書を締結したら、PMIの実施です。PMIの実施とは、実際に企業と企業が行う統合作業です。主に人事面での調整を行い、より良い職場環境をつくるよう努力します。

M&Aの失敗要因として、PMIをしっかり行わなかった例が多くあります。M&Aのステップで最初に行う目的の明確化でも解説したとおり、PMIの実施はM&Aで非常に重要なポイントです。適切なPMI実施を行うことで、より多くのシナジー効果を引き出せます。

8. M&Aの手法別に課される税金

M&Aの手法別に課される税金

この章では、M&Aでよく利用される「株式譲渡」「事業譲渡」「組織再編行為」に課される税金について解説します。

株式譲渡

株式譲渡では、M&Aで会社を売る側の株主が、会社を買う側に株式を売却して売却代金を取得します。そのため、課税の対象は売却代金を受け取った会社を売る側の株主です。

株主が個人の場合は、受け取った利益である株式譲渡所得に所得税が課されます。そして、売却した翌年の確定申告で申告・納税する必要があります。

税率は所得税・住民税を合わせ、20.315%です。給与・事業収入などの所得が高い場合でも、納税額を抑えることが可能です。

事業譲渡

事業譲渡では、M&Aで会社を売る側が会社を買う側に事業に関わる資産を売り、売却代金は売る側が受け取ります。この利益は、法人税(約30%)の課税対象です。株主は、税の負担がありません。

事業譲渡で得た資金を社長が個人で受け取りたい場合は、会社からの配当金や役員給与(退職金)の方法があります。しかし、別途課税されることもあります。

組織再編行為

合併、会社分割、株式交換のM&A手法もあります。組織再編では手法にもよりますが、ほとんどのケースでは会社を売る側が受け取る対価は、会社を買う側の株式です。

その組織再編行為が税制適格要件に該当するかどうかにより、課税は異なります。

【関連】会社売却、M&Aの税金まとめ!節税対策はできる?

9. M&Aの手法を用いる際にかかる経費

M&Aの手法を用いる際にかかる経費

M&Aの実施にかかる経費には、多くのものがあります。最初にかかるのが、M&A仲介会社やアドバイザーに払う料金です。

主な料金は、業務委託契約を締結するときに払う着手金、リテイナーフィー(月額報酬)、買収企業との基本合意時に払う中間報酬、契約が成立したときに払う成功報酬などです。

成功報酬は、決まった料率から算出するレーマン方式を用いるM&A仲介会社が多いです。一般的に最低報酬が設定してあります。

公認会計士や弁護士に支払う料金には、デューデリジェンス実施に関する料金があります。デューデリジェンスは、企業の規模が大きければ大きいほど、調査の内容は複雑になり、時間がかかります。

デューデリジェンスを依頼する専門家の1時間あたりの依頼料2万円〜5万円×実施に関わる時間で計算するのが一般的です。株式譲渡によって得た金額は「譲渡所得」に計上され、所得には税金がかかります。

10. M&Aの手法を用いた成功事例

M&Aの手法を用いた成功事例

M&Aの手法を用いた成功事例として、アクシスとヒューマンソフトの2021年4月に行われたM&Aの事例を紹介します。

アクシスは、ソフトウエア開発を行うヒューマンソフトの全株式を取得し子会社化しました。株式譲渡のスキームが用いられています。取得価額は、4億5,300万円です。

アクシスは、システムインテグレーション事業などを手掛けるシステム開発会社です。人員を強化するために、このM&Aを行いました。

そして、ヒューマンソフトはアクシスの傘下に入り、経営基盤強化や取引先拡大などにより利益率向上と事業がより成長することを狙っています。

11. M&Aの手法を用いた失敗事例

M&Aの手法を用いた失敗事例

M&Aには成功事例だけでなく、かなりの損失を出した失敗事例も見られます。この章では、M&Aでよくある失敗事例を紹介します。

M&Aでよくあるのが、デューデリジェンスで企業の風土や事業における親和性の高さをしっかり評価できずに失敗するケースです。デューデリジェンスは、財務面・ビジネス・法務・人事・技術などあらゆる分野で、各専門家が行うことが欠かせません。

デューデリジェンスを軽視して各専門家が行わなかった場合は、事業の親和性が見極められず、M&Aに失敗しやすくなります。

デューデリジェンスはM&Aを成功に導くために非常に重要です。そのため、手法・プロセスが確立した専門会社に依頼してください。

12. M&Aの手法を用いる事例が増加している理由

M&Aの手法を用いる事例が増加している理由

現在、M&Aの市場動向は、事業承継問題解決のために中小企業によるM&Aが増加していることが特徴です。高齢化が進んでいること、M&Aがより後継者問題解決の手法として定着してきたことから、事業承継問題解決のためのM&Aは増加傾向にあるのです。

また、日本国内の企業による海外企業の買収が増加していることも特徴の一つです。国内の企業と海外の企業によるM&Aのことを、クロスボーダーM&Aといいます。国内企業による海外企業の買収を、IN-OUTといいます。

IN-OUTが増加している理由には、日本国内の経済市場が停滞・縮小傾向であることが挙げられます。

ファンドによるM&Aが、市場に浸透し始めたこともM&Aが増えた一因です。ファンドへの苦手意識や敵対心を持つ経営者・株主が減少しているのです。国内ファンドも増え、存在感を増しています。

ベンチャー企業のM&Aも増えています。ベンチャー企業の事業計画では金融機関からの借入金で事業資金をまかなうのは困難で、エクイティで資金調達するのがよく見られます。大手企業がベンチャー企業のM&Aを買収するケースも少なくありません。

中小企業のM&Aで最も用いられている手法

中小企業のM&Aで最も用いられる手法は、株式譲渡です。中小企業は経営者が全株式を持つ、もしくは経営者と一族か幹部社員などが持つ(経営者が過半数を持ちます)場合が多いです。

また、中小企業のM&Aでは、ほとんどのケースで全株式の譲渡による対価の取得を希望します。対象企業は、ほぼ非上場会社です。

以上のことから、中小企業のM&Aでは譲受側と株主が交渉し、株式譲渡で株主保有の株式と引き換えに対価を得る手法がよく使われます。

13. M&Aの手法まとめ

M&Aの手法まとめ

M&Aにおける最大の目的は、お互いの協力によってシナジー効果を最大限に引き出すことです。M&Aの手法には大きく分けて9種類ありますが、それぞれのメリット・デメリットを把握し、自社の行うM&Aには何が適切なのか選択することが大切です。

また、M&Aのやり方には11のステップがあり、それぞれのステップで重要な点があります。重要な点を見逃さずリスクを回避することで、M&Aの成功率を上げることにもつながります。

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