2024年06月26日更新
廃業とM&Aを徹底比較!メリット・デメリットや税金面の違いを徹底解説!
事業再編を考えている企業の中で、廃業とM&Aのどちらを選ぶべきか迷っているところも多いです。今回は事業再編を検討している企業に向けて、廃業とM&Aの違いやメリット・デメリット、倒産との違いなどについて解説します。
目次
1. 廃業とM&Aを徹底比較
中小企業などを中心に事業の継続が難しく、廃業を選択する企業が多いです。
しかし、廃業以外にもM&Aを選択する方法もあります。
実際のところ、廃業とM&Aのどちらを選択すべきか悩んでいる企業も少なくありません。
そういった方に向けて、廃業とM&Aについて解説します。
廃業とは
廃業は事業を撤退させる場合に行う手続きです。
ギリギリまで運営すると債務超過になり、破産に追い込まれます。
破産になる前に見切りをつけ、事業から撤退する場合に行われるのが廃業です。
また、廃業は経済的な理由以外で事業撤退する場合にも選択されます。
特に中小企業・小規模事業者だと後継者不在問題を抱えている企業が多く、現経営者が後継者を見つけられなかった場合に廃業を選択することも多いです。
廃業の現状
東京商工リサーチの調査によると、2023年の「休廃業・解散」企業は、4万9,788件(前年比0.3%増)でした。2年連続の増加傾向であり、2000年の調査以来最多だった2020年の4万9,698件を上回る結果です。さらに休廃業・解散・倒産をすべて合算した「退出企業」は5万8,478件であり、前年よりも4.3%増加しました。
現状として廃業件数は年々増加傾向にあり、今後も加速していくことが予想されます。事業再構築や生産性向上、利益率の改善などが見通せない限りは、継続して増加していく可能性が高いです。
廃業する企業が増加している理由
主に中小企業を中心として、廃業する企業が増加しています。
廃業する企業が増加している理由を知り、業界の動向などを踏まえてどのような判断でM&Aを採用すべきか考えることが大事です。
廃業する企業が増加している理由として以下のものがあげられます。
- 経営者の高齢化
- 後継者問題と不況
以下で詳細を解説します。
経営者の高齢化
廃業する企業が増加している理由として、経営者の高齢化があげられます。
経営者が60歳に差し掛かってもやむを得ない事情で辞められず、ギリギリまで経営を続けてしまいます。
その結果、体調を崩してしまったり、経営が行き届かなくなってしまったりして廃業するケースが多いです。
後継者探しを放置せずに事業を運営し続けることは難しいため、専門家などに支援してある程度負担を肩代わりしてもらうことが大事です。
後継者問題と不況
経営者の高齢化の裏にある原因の多くは、後継者不在問題や社会の不況などが関わっています。
問題なく経営を進められる後継者が見つからず、後継者不在問題が後回しとなって経営を続ける経営者が多いです。
また、後継者はすぐに見つかっていても、財務状況の悪さから廃業を選択せざるを得ないケースも見られています。
上記の問題に対処するため、無理やり経営を続けている経営者の事業承継を支援してくれる専門機関が各都道府県にいくつも設置されています。
事業承継の流れはもちろん、相手企業とのマッチングからサポートしてくれる専門機関も少なくありません。
廃業を選択すると何も残らなくなってしまうため、M&Aなどで新しい経営者に事業を引き継いでもらいましょう。
M&Aとは
M&Aは企業の吸収合併・株式譲渡などの形で第三者に向けて事業を承継する手続きです。
第三者の企業に自社の事業を譲渡し、その会社の経営者に経営を担ってもらうことで経営を続ける必要はなくなります。
廃業だとそれまで積み上げてきたノウハウや既存顧客などをすべて失うことになります。
しかし、M&Aなら他の経営者が引き継ぐ形で事業経営を続けられるため、事業の目的を受け継いでほしいと考えている場合はM&Aを選んでください。
ちなみに、社内承継だと相続争いなどの問題も絡んで事業承継が複雑化してしまうケースも見られています。
しかし、M&Aなら専門家にサポートしてもらいつつ着実に手続きが進めやすいため、失敗せずに取引が進めやすいです。
税負担と企業評価の違い
廃業とM&Aには税負担と企業評価の違いなども見られています。
廃業とM&Aの違いを以下の表にまとめました。
廃業 | M&A | |
---|---|---|
税負担 | 累進課税で最大49.44% | 20.315%(個人株式の譲渡の場合) |
企業評価 | 資産と処分価格で処分して債務を精算する | 純資産にのれんを加えて算出するなどの決められたスキームで計算する |
税負担については、廃業が累進課税で最大49.44%となっています。
残されている財産の金額に応じて適用されるため、いかに経費をかけるかが重要になってきます。
一方で、M&Aだと20.315%で固定です。
税率が固定化されているため、譲渡する事業の純資産が高くてもそこまで大きな税金負担にはなりません。
企業価値評価については、廃業の場合は資産と処分価格で処分して債務を精算します。
この方法だと手元に残る財産は少ないと考えておいてよいです。
M&Aの場合は純資産にブランド力の高さにあたるのれんを加えて企業価値を算出します。
この方法はあくまでも1つの計算スキームで、他にも市場価格や将来のキャッシュフローを参考にして企業価値を計算するスキームもあります。
M&Aなら計算した金額を基に相手企業と交渉し、最終的な取引価格が決まることを押さえておきましょう。
2. 廃業とM&Aのメリット・デメリット
廃業とM&Aそれぞれのメリット・デメリットを把握し、今後の経営のためにどのような対策を講じるべきか判断してください。
ここでは廃業とM&Aそれぞれのメリット・デメリットを解説します。
廃業のメリット
廃業のメリットとして社会的不名誉を被ることはない点があげられます。
廃業は自主的な判断で事業の撤退を選択する行為です。
債務超過まで陥って強制的に倒産させられるよりも健全な手続きと見られ、ステークホルダーにかける迷惑も最低限に抑えられます。
また、会社の資産の一部が残る場合がある点も廃業のメリットとしてあげられます。
債務超過が原因の倒産が進められると、会社に残る資産は差し押さえられる場合が多いです。
廃業だと強制力のある差し押さえは起きないため、会社の資産が残せるケースも出てきます。
廃業のデメリット
廃業のデメリットとしてさまざまなコネクションが失われてしまう点があげられます。
廃業を選択すると多くのものが失われてしまうため、基本的に手元に残るものは少ないと考えた上で廃業を選択してください。
取引相手や従業員に対しては、早いうちに廃業を選択することを伝え、できる限り迷惑をかけないように気を付けましょう。
また、資産の売却価格を安く見積もられる可能性がある点にも注意が必要です。
廃業は必要な清算をすべて行った上で残った金額が株主に配当されます。
実際は株主に配当される金額もほとんど残らない場合もある点に注意してください。
M&Aのメリット
M&Aのメリットとして楽な手続きで事業が継続できる点があげられます。
スキームによって若干異なりますが、廃業と比べて複雑な手続きを行うことなく事業継続できる傾向が見られています。
業界の動向や成功事例などの専門的な知識があるM&Aの専門家にも支援してもらいやすいため、より円滑に手続きを進めることが可能です。
また、利益が獲得できる点もM&Aのメリットとしてあげられます。
廃業だと自分で返済義務を果たす必要がありますが、M&Aなら相手企業に引き継いでもらえます。
加えて、業界の動向や過去の事例などを踏まえ、相手企業との合意で取引価格が決まる点でも利益が高くなりやすいです。
M&Aのデメリット
M&Aのデメリットとして一定の期間が必要になってしまう点があげられます。
M&Aだと後継者を探す手間が必要になるため、手続きそのものはスムーズに進んでも後継者探しに時間がかかるケースがある点に注意が必要です。
また、仲介会社に対して手数料が別途かかってしまう点もM&Aのデメリットとしてあげられます。
M&Aを円滑に進めるために仲介会社を頼る必要があり、手続きが問題なく進められると仲介手数料が発生します。
ただ、M&Aで獲得できる利益が多くなるため、手数料が多少高くなっても収支はプラスに転じやすいです。
3. 廃業よりM&Aを選択するべき理由
近年は廃業せずにM&Aを行うケースも増えてきました。廃業ではなくM&Aを選択することで、多くの恩恵が得られます。廃業よりM&Aを選択すべき理由は次の3つです。
- 従業員の雇用を継続できる
- 売却益を得られる
- 廃業より手続きが簡単
以下で詳細を解説します。
従業員の雇用を継続できる
廃業した場合、従業員の雇用を継続できず、従業員は職を失います。一時的にでも生活の基盤をなくすことになるため、迷惑がかかることは避けられません。しかしM&Aを選択すれば、従業員の雇用を守ることが可能です。
M&Aによる事業承継では、買い手企業に売り手企業の雇用条件を引き継ぐことも可能です。交渉次第で従業員の雇用条件をそのまま引き継ぐことができるため、従業員は新しい環境でも安心して働き続けられるでしょう。
廃業せずにM&Aを通じて事業を承継することは、従業員の雇用を継続するための有効な手段と言えます。
売却益を得られる
M&Aを選択することにより、企業は廃業よりも高い売却益を得ることができます。
廃業では資産を処分価格で現金化するため、企業の価値は十分に評価されません。一方、M&Aでは土地や建物などの有形資産だけでなく、人材、取引先、技術力、ノウハウといった無形資産も含めて評価されます。
売却益は経営者の退職金や次のビジネスへの投資資金として活用できるでしょう。
廃業より手続きが簡単
M&Aによって事業承継すれば、廃業するよりも手続きが簡単になります。
会社を廃業する際には、一般的に次のような手続きが必要です。
- 従業員や取引先など関係者に会社廃業のお知らせを送る
- 株主総会で解散決議をとり清算人を選定する
- 解散登記・清算人選任登記をする
- 税務署やハローワーク、年金事務所などに解散届出を提出する
- 官報で解散公告をする(債権者保護手続き)
- 決算書類を作成する
- 財産や債務の整理を行う
- 解散確定申告と清算結了を行う
- 清算結了届を提出する
株式譲渡などによるM&Aの場合は、手続きが簡便に済む上、M&A仲介会社がサポートしてくれます。専門家が必要な情報を集めてアドバイスしてくれるため、廃業よりもスムーズに手続きが進みます。ただし、事業譲渡や会社分割の場合は複雑になる可能性があるため注意が必要です。
4. 廃業と倒産・休業・解散・閉店の違い
どうしてもM&Aが選択できない事情がある場合でも、なるべく倒産は避けるべきです。
その理由がわかるように、廃業と倒産の違いについて解説します。
廃業と倒産の違いは以下の通りです。
- 廃業は自主的に経営を中止すること
- 倒産は経営が継続不可能になったため中止すること
- M&Aは廃業・倒産を回避する手段
- 休業は事業を一時的に停止すること
- 解散は法人格の喪失させること
- 閉店は店舗や営業所が営業を終了すること
以下で詳細を解説します。
廃業は自主的に経営を中止すること
廃業は自主的に経営を中止することです。
状況を判断し、自分の意思で事業からの撤退が選択できるため、必要な準備も自分のペースで進められます。
廃業を選択する場合、前もって会社を解散させる手続きと財産の精算手続きの2つがスムーズに進められるように準備しておきましょう。
倒産は経営が継続不可能になったため中止すること
倒産は経営が継続不可能になったため中止することです。
経済活動が継続できなくなった場合、経営を止めるしか選択肢がなくなります。
廃業は経済面での問題以外の理由で会社から撤退する場合にも使えます。
しかし、倒産は廃業では債務完済ができない場合に選択される手続き方法です。
債務完済ができるうちに経営を止めれば倒産を選ばずに済むため、早いうちに会社の撤退を選ぶべきです。
M&Aは廃業・倒産を回避する手段
M&Aは廃業・倒産を回避するための手段です。
廃業と倒産のどちらを選択しても、これまで積み上げてきたノウハウやブランド力、従業員の雇用などは失われてしまいます。
しかし、M&Aを選択すればそれらのものは引き継がれるため、過去の事業運営を無駄にせずに済みます。
廃業・倒産よりも得られるメリットが大きいため、可能であればM&Aを選択するのが理想的です。
休業は事業を一時的に停止すること
休業とは、事業を一時的に停止することであり、「休眠」とも呼ばれます。休業では会社活動が一時的に止まるものの、会社自体は存続します。廃業が会社の消滅を意味するのに対し、休業は再開の可能性を残している状態と言えるでしょう。
例えば、市場の変動により一時的に事業を続けることが難しい場合には、休業を選択するのが有効的です。従業員の解雇や設備の売却を行わず、経営資源を保持したまま状況の改善を待つことができるでしょう。
休業は事業活動を一時的に停止しながらも、将来的な再開を視野に入れた選択肢です。廃業とは異なり会社が保たれるため、状況が改善した際には事業を再開できます。
解散は法人格の喪失させること
解散は法人格を喪失させる手続きです。株主総会の決議や破産手続きの開始決定などによって発生します。
例えば、後継者不足で事業継続が困難になった場合、株主総会で解散を決議し、その後に清算手続きを行います。この手続きにより、法人は正式に消滅することになるでしょう。
解散は事業活動の停止だけでなく、法的な法人格の消滅を意味するため、廃業とは根本的に異なります。
閉店は店舗や営業所が営業を終了すること
閉店は、事業の一部である店舗や営業所の営業を終了することを意味しており、事業全体の終了を意味するものではありません。
たとえば、全国にチェーン展開する飲食店は、利益が上がらない地域の店舗のみを閉める場合があり、これが「閉店」です。一方で、事業全体を終了し、従業員との雇用契約もすべて終了させる場合が「廃業」です。
閉店は部分的な営業終了を意味し、廃業とは範囲や意味合いが異なるので注意しましょう。
5. 廃業かM&Aか悩む場合
廃業かM&Aか悩む場合には、いくつかの項目を基にどちらを選ぶべきか判断する必要があります。
廃業かM&Aか悩む場合は以下の項目をチェックしておきましょう。
- 経営が悪化していてもM&Aできる場合もある
- 廃業とM&Aの知識が豊富な事例に詳しい専門家に相談
以下で詳細を解説します。
経営が悪化していてもM&Aできる場合もある
経営が悪化していてもM&Aができる場合もある点を押さえておきましょう。
中小企業・小規模事業者の中には、事業基盤が悪くても優れたノウハウなどを持っている企業も多いです。
大手企業から見て事業成長に必要なノウハウを持っていれば、多少経営状況が悪くてもM&Aで事業を引き継いでもらえます。
相手企業から見て自社の持つノウハウのニーズの大きさがどの程度か冷静に分析した上でM&Aの判断を行ってください。
その際に業界の動向なども分析していると、相手企業の潜在的なニーズも提示できます。
廃業とM&Aの知識が豊富な事例に詳しい専門家に相談
廃業かM&Aか悩む場合、廃業とM&Aの知識が豊富な事例に詳しい専門家に相談してみてください。
専門家に相談すれば、初めて事業撤退をする場合でも手続きに困ることはなくなります。
直接的な手続きのサポートだけでなく、財務状況などを踏まえて廃業とM&Aのどちらが適切かアドバイスしてもらえます。
廃業・M&Aにおいて何かしら悩みを抱えている場合は、専門家に相談しましょう。
6. 廃業かM&Aか決めかねる場合は専門家に相談しよう
廃業かM&Aか決めかねる場合に専門家に相談すれば、明確な理由をもって廃業かM&Aか選択しやすくなります。
廃業・M&Aの相談に乗ってくれる専門家には以下のものがあります。
- 商工会・商工会議所
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- よろず支援拠点
- 信用保証協会
商工会・商工会議所や事業承継・引継ぎ支援センター、よろず支援拠点なら、事業再生・負担の少ない事業撤退を支えてくれます。
各地域に設置されており、地域性も踏まえた支援が受けられます。
また、信用保証協会は事業再生・事業撤退を進めるための資金調達ができる専門機関です。
資金不足でM&Aが選択できない中小企業・小規模事業者でも、信用保証協会が保証代理となることで多くの金額が資金調達できます。
それぞれが抱えている悩みや目的に合わせて、どの専門機関を利用するか判断してください。
7. まとめ
事業の継続が難しくなった場合、M&A・廃業・倒産のいずれかを進めることになります。
経済的な問題が大きくなり、債務超過を起こしていると倒産を選択せざるを得なくなります。
経済的な問題はあっても債務超過は起きていないのであれば廃業が選択でき、従業員や取引相手への負担を減らした事業撤退が可能です。
一方で、M&Aなら事業基盤がしっかりしている企業などに事業を譲渡し、代わりに経営を引き継いでもらえます。
M&Aを実施すればそれまで積み上げてきたものを失わずに済むため、早い段階でM&Aの準備を進めることをおすすめします。
M&Aなどの手続きに不安を感じている企業も多いため、専門家に相談して必要な手続きを支援してもらってください。
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