2022年06月13日更新
税理士法人のM&A・会社売却まとめ!売却・譲渡案件一覧あり
税理士の高齢化による事業承継需要や厳しい経営環境により、税理士法人のM&A・会社売却の件数は増えています。環境の変化が続く税理士の世界について解説しながら、M&Aによる会社売却(株式譲渡)や事業譲渡の現状について事例を交えながらご紹介します。
目次
1. 税理士法人とは?
税理士の業務は、長い間、個人事業として行われてきました。しかし、業務内容が年々複雑化し、さらに高度化する時代の流れの中で、従来の業務を行っているだけではついていけない税理士事務所が増えるようになりました。
そのような時勢の中、納税者の抱える問題を解決し税理士の信頼性を維持するため、2001(平成13)年に税理士法改正が実施され税理士法人が設立できるようになりました。
税理士法人では、税務代理や税務書類の作成、税務相談などの税理士業務や、それ以外の会計業務を行います。
また、それ以外に、需要が増加しているM&Aや事業承継、相続に関する業務も取り扱う税理士法人が増えているのが現況です。
税理士法人の業界定義
会計事務所や税理士事務所はいくつかの種類に分けられます。個人事務所系は、小規模な事務所で、クライアントは中小企業や個人事業主がほとんどです。
監査法人系は、5人以上の公認会計士によって運営され、大企業やグローバル企業などをクライアントに持ちます。税理士法人系は2人以上の税理士で運営されるのが常です。
法人として複数の税理士と組むことで、複雑化し多様化する業務に対応できるようになります。税理士法人の数は個人事業の税理士事務所の割合と比べるとまだ少数ですが、近年は着実に増加中です。
税理士登録者・税理士法人届出数:2018(平成30)年3月末日現在
税理士会 | 登録者数 | 税理士法人 本店 |
税理士法人 支店 |
東京 | 22,698 | 1,159 | 400 |
東京地方 | 4,898 | 201 | 127 |
千葉県 | 2,490 | 93 | 68 |
関東信越 | 7,341 | 376 | 200 |
近畿 | 14,719 | 622 | 277 |
北海道 | 1,854 | 141 | 82 |
東北 | 2,475 | 123 | 93 |
名古屋 | 4,609 | 267 | 139 |
東海 | 4,372 | 201 | 118 |
北陸 | 1,415 | 90 | 42 |
中国 | 3,097 | 126 | 80 |
四国 | 1,604 | 73 | 45 |
九州北部 | 3,218 | 139 | 106 |
南九州 | 2,122 | 92 | 49 |
沖縄 | 415 | 24 | 23 |
計 | 77,327 | 3,727 | 1,849 |
税理士法人の業界分析
1990年代後半から続いた一連の会計制度の変化や企業のグローバル化、IT化により、税理士の業務にも大きな変化がありました。
高度で複雑化する業務にしっかりと対応することで業績を伸ばしてきた大手や中規模の税理士法人がある一方で、従来の税理士業務を続けたままでスキルアップできずにいる個人事業の税理士や小規模の税理士法人との差が大きく開く結果となっています。
さらに地方では、税理士の高齢化が進行中です。クライアントの企業も後継者不足で事業承継問題が深刻となり、廃業するか事業譲渡する件数が増えています。
その結果、税理士事務所も事業を続けることが難しくなり、廃業に追い込まれる事務所が増加傾向です。このように、税理士法人は二極化が進んでいます。
税理士法人業界の主要15社
数ある税理士法人の中でも、業界で有名な税理士法人をご紹介します。
有限責任監査法人トーマツ
トーマツは、4大監査法人といわれる大手会計事務所の1つになります。世界4大会計事務所であるデロイト・トウシュ・トーマツと提携関係にあり、日本全国にネットワークを持っているだけでなく、世界中にネットワークを持っている監査法人です。
トーマツはビッグデータを活用するなど最先端の技術で差別化を図り、監査報酬を伸ばしています。また、働き方改革にも積極的に取り組むなど、対外評価獲得にも余念がありません。
有限責任あずさ監査法人
あずさ監査法人は世界4大会計事務所であるKPMGと提携関係にある、日本の4大監査法人の1つです。働き方改革で1年間新規の監査業務の受注を停止していました。EY新日本とトーマツが首位争いをする中、あずさも順調に伸びて追いつこうとしています。
EY新日本有限責任監査法人
EY新日本有限責任監査法人は、海外Big4の1つであるアーンスト・アンド・ヤングと提携関係にあります。
EY新日本は2018年のコンサルタントが働きやすい企業で1位に選ばれるなど、業務収入でも会社評価でもトップを走ってきました。しかし、最近は監査法人の顧客奪い合いが激化し、厳しい戦いを強いられています。
PwCあらた有限責任監査法人
PwCあらた有限責任監査法人は、日本の監査法人Big4の1つで、世界4大会計事務所の1つであるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)と業務提携を結んでいます。
PwCあらたは他の3大法人からは大きく引き離されているものの、5位以下とは大きな差があり、Big4の座はまだまだ安泰の状態といえるでしょう。
辻・本郷税理士法人
辻・本郷税理士法人は日本全国に支部を持っている大手です。世界の大手会計事務所であるBDOインターナショナルと業務提携し、国際業務を積極的に進めています。
また、20代の税理士の成長環境として、高評価を得ているのも特徴です。仕事はかなりハードですが、その分、実力がつくと若手税理士から注目されています。
税理士法人山田&パートナーズ
税理士法人山田&パートナーズは、幅広いコンサルティングに対応している総合型の税理士法人です。会計が複雑化・高度化する中、山田&パートナーズでは高い専門性を追求する方針を進めながら、さまざまな業務も経験することで他法人との差別化を図っています。
太陽グラントソントン税理士法人
太陽グラントソントン税理士法人は、世界有数の会計事務所であるグラントソントン・インターナショナルと提携関係にあります。日本では4大監査法人に次ぐ規模です。日本企業の海外進出や、海外企業の日本進出をサポートする業務に強みを持っています。
クリフィックス税理士法人
クリフィックス税理士法人は、中規模の会計事務所でありながらクライアントのほとんどが有名な上場企業やそのグループ会社で、大手企業から高い信頼を得ている事務所です。税務と会計両面に対応できるスタッフの多さを強みとして、近年急激に伸びています。
税理士法人高野総合会計事務所
税理士法人高野総合会計事務所は、クライアントの業種や企業の特徴、要望などに合わせて、最も強みを発揮できるメンバーを選出します。上場企業から個人まで、幅広いクライアントから高評価を得ている事務所です。国際業務にも強く、日本企業の海外展開をサポートしています。
TOMAコンサルタンツグループ
TOMAコンサルタンツグループは、明治時代に司法書士事務所として開業され、100年以上続く老舗事務所となりました。医療やITコンサルに強みを持ち、専門性の高いスタッフがさまざまな業種のクライアントに対応します。働きやすい環境があることでも評判の事務所です。
AGSコンサルティング会計
AGSコンサルティング会計は、経営のコンサルティングに強みを持つ事務所です。また、金融機関のクライアントが多いこともあって、セキュリティの強化を進めています。金融機関などからの高い評価を得て、順調に規模を拡大している事務所です。
みらいコンサルティング
みらいコンサルティングは、中小企業のクライアントを多く担当しています。クライアントごとに合わせたサービスを提供し、チームコンサルティングが特徴の事務所です。チームでクライアントに最適な方法を選ぶので、クライアントの満足度が高いことで評判となっています。
朝日税理士法人
朝日税理士法人は、現在需要の高いM&Aや事業承継、相続対策に力を入れています。幅広いニーズに対応できるように、数多くのサービスメニューを用意している点が強みです。さらに、多くのニーズに対応できるように人材の採用や教育に力を入れ、事業規模の拡大を進めています。
税理士法人令和会計社
税理士法人令和会計社は、税務や会計、FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)などの、幅広い業務に対応できるゼネラリストが多数揃っています。さまざまな業務を理解しているスタッフがチームで対応することで評判の良い事務所です。社内の雰囲気が良く、自由な社風も話題となっています。
青山綜合会計事務所
青山綜合会計事務所は、資金調達のための証券化や、ファンドビジネスなどの金融分野に特化して急成長してきた会計事務所です。アジアを中心に海外ネットワークも持っています。新しいビジネススタイルを追求し続ける、ベンチャー精神を持った成長中の事務所です。
2. 税理士法人のM&A・会社売却の動向
税理士法人のM&Aを利用した事業譲渡は増加しています。今後も、M&Aによる買収や会社売却は増えていくことでしょう。事業承継に悩んでいる地方の税理士は、M&Aによって会社売却を考えています。
それに対して、全国にネットワークを広げたい大手税理士法人がM&Aによって、会社売却を検討している税理士事務所を買収する動きが顕著です。また、大手税理士法人に会社売却することを嫌がる税理士が、知り合いの税理士事務所などに事業譲渡するという流れも出てきています。
税理士法人のM&A・会社売却のご相談伺います!
M&A総合研究所は、中小企業のM&Aに携わっているM&A仲介会社です。M&A・会社売却に精通したM&Aアドバイザーが親身になってフルサポートをいたします。
当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっており、着手金は完全無料です。ご相談は無料で随時お受けしております。
税理士法人のM&A・会社売却をご検討の際は、お電話・Webよりお気軽にお問い合わせください。
3. 税理士法人のM&A・会社売却のメリット
税理士法人をM&Aによって会社売却するメリットは以下のような点があります。
会社売却側のメリット
- M&A・会社売却のメリット①クライアントの税理士業務を継続できる
- M&A・会社売却のメリット②従業員の雇用を継続できる
- M&A・会社売却のメリット③サービスを充実させることができる
- M&A・会社売却のメリット④事業承継問題が解決できる
このように、事業譲渡することでクライアントや従業員、事業が継続されることがメリットとなります。
買収側のメリット
- M&A・会社売却のメリット①ネットワークを拡大できる
- M&A・会社売却のメリット②収入増加
- M&A・会社売却のメリット③人材の確保
- M&A・会社売却のメリット④クライアントの増加
このように、買収側にとっては事業範囲や収益を拡大できることがメリットとなります。
4. 税理士法人のM&A・会社売却のスキーム
税理士法人がM&Aによって会社売却する際の方法をご紹介します。
持分譲渡
税理士法人がM&Aによって会社売却する場合は、株式会社のように株式譲渡はできません。会社売却する側の税理士が買収する側の税理士に持分譲渡することで、M&Aが成立します。
しかし、株式譲渡は基本的に誰でも売買できますが、持分譲渡は税理士個人同士でしか譲渡できません。M&Aで買収する側の税理士に、かなりの資金力がなければM&Aができないという問題があります。
合併
持分譲渡は現実的ではないため、税理士法人のM&Aによる会社売却では合併という形をとります。税理士法人では株式譲渡によるM&Aができないので、合併によるM&Aでは主に現金交付という形で会社売却が行われるのが常です。つまり、税理士法人同士のM&Aでの会社売却は、合併という形式で行うのが主流といえます。
事業譲渡
スキームとしての事業譲渡は、税理士法人の会社売却ではあまり使われませんが、事業譲渡によるM&Aも可能です。株式会社のM&Aによる会社売却では会社分割、株式譲渡、事業譲渡のうちどれかの方法がとられます。
中小企業のM&Aでは株式譲渡が手続きも簡単なのでよく使われますが、税理士法人の場合は株式譲渡ができません。しかし、事業譲渡という形で営業権を譲渡することは可能です。
ちなみに、税理士が顧問先企業から株式譲渡を受けることはできます。株式譲渡によって顧問税理士が株主になる事例も少なくありません。ただし、株式譲渡によるインサイダー取引の問題や、株式譲渡を利用した同族企業に関する問題、株式譲渡で生じる株主配当の問題など、顧問先企業から税理士への株式譲渡はさまざまな問題が生じます。
5. 税理士法人のM&A・会社売却の案件一覧
税理士法人のM&A・会社売却の案件を一覧で確認すると、譲渡案件の傾向が見えてきます。
売上 | 職員数 | 都道府県 | 承継期間 | 希望 |
3,000万円 | 2名 | 秋田県 | 2年 | 税理士法人化 |
8,000万円 | 9名 | 神奈川県 | 1年 | 税理士法人化 |
5,000万円 | 5名 | 愛知県 | 1年 | 税理士法人化 |
1億円 | 11名 | 東京都 | 1年 | 合併 |
5,000万円 | 6名 | 宮城県 | 3年 | 税理士法人化 |
3,000万円 | 3名 | 滋賀県 | 2年 | 継続雇用希望 |
6,000万円 | 5名 | 埼玉県 | 1年 | 合併 |
税理士法人の会社売却で多いのは、規模が数千万から1億円程度の案件です。また、承継期間はほとんどの事務所が1年から3年程度を希望しています。
税理士事務所の廃業をご検討中ならM&Aがおすすめ!
個人経営の税理士事務所ですと、後継者が見つからない時点で廃業を選択することになります。そのような折りには、廃業を実施する前に一度、M&Aや会社売却の検討をおすすめします。
M&A総合研究所では、会社売却に精通したM&Aアドバイザーが担当につき、M&Aをフルサポートいたします。
完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっており、着手金は完全無料です。M&Aご検討中の税理士事務所の経営者様は、どうぞお気軽に無料相談をご利用ください。
6. 税理士法人のM&A・会社売却の成功事例
続いては、小規模事務所税理士法人のM&A・会社売却の成功事例をご紹介します。なお、個人名、事務所名などについては匿名での表記です。
事務所の事業承継を決意し短期間で税理士法人設立
もうすぐ還暦を迎える税理士Mさんは、事業承継について考えるようになりました。有資格者は所長のMさん本人だけです。万が一、何かあったら従業員や顧問先の迷惑になると考え、事業承継の対策を始めました。そして、今後のことも考えて法人化することに決め、遠い親戚の税理士Kさんに声をかけたのです。
Kさんは事務所を開業して3年目で、まだ顧問先は少ない状況でした。Kさんに声をかけてから税理士法人設立まで、2ヶ月という短期間で完了しています。顧問先の決算期が分散していたことや、Kさんが主導して進めてくれたおかげで短期間で終えることができたのです。
法人化によってMさんは業務が増加したり所得が下がったりしたものの、従業員が安心して働いてくれることを優先しました。
親戚関係の税理士に事業承継
A事務所は地元では老舗の税理士事務所で、税理士はAさんだけという個人税理士事務所です。親戚筋のH氏は税理士を目指してA事務所に就職、約10年勤務していました。その後一般企業に就職し、その間に税理士登録資格を得ています。そのまま一般企業で8年間経理として働いていましたが、Aさんから事務所に戻るよう話を受けました。
Hさんの入所は従業員や顧問先にも自然と受け入れられ、顧問先からの報酬をHさんに切り替えていき、事務所を賃貸する契約に切り替えるなど事業譲渡の準備を進めています。実務も従来どおりで、大きな変化もなくスムーズに体制移行ができていました。
その後、Aさんが亡くなり正式に事業承継が行われます。この事業承継では、仲介者も契約書もない状態でもしたが、AさんとHさんの信頼関係でたまたまスムーズに事業承継できました。しかし、本来は仲介会社を使いトラブルが発生しないよう万全を期すべきだったとHさんは語っています。
7. 税理士法人のM&A・会社売却 まとめ
税理士業界について、M&Aによる事業承継や事業譲渡についての動向をご紹介しました。税理士業界は、これからも大きな変化が続いていくと予想されます。
税理士法人のM&A・事業承継をお考えの際は、専門家に相談しながら進めていくと、良い結果を得られやすくなります。
8. 税理士事務所・会計事務所業界の成約事例一覧
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