経営資源集約化税制とは?中小企業がM&Aで活用するメリットを解説

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取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

経営資源集約化税制は中小企業のM&Aで活用することができ、M&Aのリスク軽減や生産性向上など、さまざまなメリットがあります。 この記事では、経営資源集約化税制の内容や目的、中小企業がM&Aで制度を活用するメリットなどを解説します。

目次

  1. 経営資源集約化税制とは
  2. 経営資源集約化税制が必要な理由・背景
  3. 経営資源集約化税制を中小企業がM&Aで活用するメリット
  4. 経営資源集約化税制を活用する際の注意点
  5. まとめ
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1. 経営資源集約化税制とは

2019年12月から、新型コロナウイルス感染症が世界各国に猛威を振るっています。国は、コロナ禍でも事業承継・M&Aを円滑に行えるようさまざまな支援制度を設けており、「経営資源集約化税制」もその1つです。

経営資源集約化税制は、中小企業が活用することによってM&A実施後の経営を安定しやすくするのが目的であり、中小企業等経営強化法に基づく支援措置として2020年12月に制定されました。

経営資源集約化税制のポイント

経営資源集約化税制のポイントとして押さえておきたいのは、株式取得価格と準備金の扱い、対象となる買い手要件の3つです。ここでは各ポイントをそれぞれみていきます。

準備金の積み立てによって株式取得価格の一部を損金算入できる

M&Aを実施する際は株式の取得を伴うことが多いですが、今まで株式取得の費用を必要経費(損金)として計上することは認められていませんでした。

経営資源集約化税制では、株式取得のために積み立てを行うことで、取得価格の一部を必要経費(損金)として計上することができます。

株式取得に充てる予定であった資金をM&A実施後の運転資金などに回すことができるため、M&A実施後のリスクを最小限に抑えることが可能です。

株式取得のための準備金は、投資金額の7割以下の金額を5年間据置期間付きで積み立てた場合に適用されます。

M&Aに関するリスクを考えて慎重に行動する中小企業の人がほとんどなので、積極的に活用したい制度といえるでしょう。

準備金の取崩しは益金算入できる

M&Aにおいて株式取得が必要な場合、準備金の積み立てを行う中小企業も多いです。このようなケースでは、株式を保有しなくなった場合あるいは株式の帳簿価額を減額した場合は、準備金の取崩しを益金算入できます。

益金算入とは、企業会計上の収益と計上されないものの、法人税法上益金と計上するものです。積み立てから5年間が経過すると、準備金は5年間で均等に益金算入できます。

準備金の一部取崩しを行っている場合でも積み立てた準備金が残っているのであれば、5年間で均等になるように益金算入することが可能です。

買い手の対象要件

経営資源集約化税制では、買い手にも要件があります。対象となるのは「青色申告を行っている中小企業者」であり、かつ「経営力向上計画」を作成して国の認定を受けた中小企業・資本金の額が1億円以下の法人(発行済み株式が大規模法人に2分の1以上所有されていない)です。

【買い手となる中小企業の要件】

  • 年間平均取得金額が15億円以内である
  • 出資金や資本金が1億円以内である
  • 大規模法人に属さない青色申告を行っている法人

中小企業等経営強化法の改正実施が前提

経営資源集約化税制の適用時期は、中小企業等経営強化法の改正実施が前提になります。

というのは、経営資源集約化税制の目的は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、衰退しつつある日本の中小企業のM&Aや経営安定を支援することが目的だからです。

しかし、経済産業省は従来通りではなく大きな変革が必要と考え、中小企業がM&Aや事業承継の実施が行いやすい、または生産性の向上が図りやすいような改正が考えられています。

改正の実施に関する詳細は未定となっていますが、令和6年(2024年)3月31日までが対象となると考えられるので、それまでに経営力向上計画の認定を受けた株式等の取得を行っておくのが好ましいでしょう。

経営資源集約化税制は改正の実施が重要なポイントになるので、HPなどから経済産業省のお知らせを随時確認することをおすすめします。

【関連】自己株式の取得の際の仕訳・会計処理まとめ!会計と税務の違いも解説

2. 経営資源集約化税制が必要な理由・背景

経営資源集約化税制が必要な理由・背景にはどのようなものがあるのでしょうか。この章では、主な3つの理由・背景についてみていきます。

  1. 損金算入でM&Aによるリスクを軽減
  2. M&Aは中小企業の生産性アップに有効なツール
  3. 新型コロナウイルス拡大による影響

1.損金算入でM&Aによるリスクを軽減

経営資源集約化税制が中小企業経営に必要であるとされる理由は、M&Aによるリスクを軽減できるということです。

というのも、M&Aは買い手・売り手共にリスクが存在し、売り手の場合はデューデリジェンス調査費や買い手を探すためのサービス利用費・仲介手数料などが必要です。

M&Aで必要なデューデリジェンス調査とは、出資を行うにあたって投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査することを指しますが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり将来の投資価値がみえにくくなっているため、M&Aに踏み切る人が少なくなっています。

経営資源集約化税制を利用すれば株式取得のための一部を経費計上できるため、M&Aを実施して大きく損をするという状況を抑えることが可能です。

経営資源集約化税制は、このようなリスクを軽減させることによって、さらにM&Aを実施しやすくなることを目的としています。

2.M&Aは中小企業の生産性アップに有効なツール

M&Aや事業承継は必ずしも成功するものではないため、失敗してしまうことを恐れてなかなか踏み出せないという中小企業も多いです。

経営資源集約化税制を活用すれば、設備投資や雇用を積極的に行うことが可能になるので、生産性を向上させることも期待できます。

M&Aを活用することによって、今までできなかった事業展開や新しい技術・考え方の取り込みも可能になるので、M&A後の新規事業が軌道に乗って成功をしている中小企業も少なくありません。

実際に経済産業省が公表しているデータでは、2010年にM&Aを実施した企業と実施しなかった企業を比較したところ、5年後になる2015年にはM&Aを実施した企業の生産性が実施しなかった企業と比べて生産性が向上していたという結果もでています

3.新型コロナウイルス拡大による影響

経営資源集約化税制が必要とされる背景には、新型コロナウイルス感染症の影響と2025年問題が大きく関係しています。

新型コロナウイルス感染症は、日本だけでなく世界各国で猛威を振るっています。日本は海外ほど拘束が厳しくないものの、経済面で大きな負担がかかっている状態です。

中小企業においても経済面の打撃が大きく、雇用や運営の継続が難しくなって会社をたたむ経営者も少なくありません。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響とともにM&A・事業承継が失速しつつある要因として「2025年問題」があります。

日本は少子高齢化といわれていますが、2025年には団塊の世代の経営者が70歳を迎えるタイミングになるため、多くの中小企業の経営者が事業承継・M&Aを考えるまたは実施することを視野に入れています。

【中小企業・小規模事業者の経営者の2025年における年齢】

70歳未満 約136万人
70歳以上 約245万人

※参照元:平成28年度総務省「個人企業経済調査」

上の表からもわかるように、70歳以上になる人数は70歳未満の約2倍ほどです。しかし、2025年に70歳以上になる中小企業の経営者245万人中127万人が後継者未定であり、さらに127万人中約半数近くが黒字であるのにも関わらず廃業を考えている状態です。

黒字であるのにも関わらず廃業を考えている経営者が減らせるように、M&Aが行いやすい経営資源集約化税制などの制度が設けられています。

3. 経営資源集約化税制を中小企業がM&Aで活用するメリット

中小企業の事業承継・M&Aはリスクなどを考えるとなかなか踏み出せないという経営者は多いですが、税制を活用することで多くのメリットが得られますので、該当する中小企業者は確認をしておきましょう。

【中小企業が経営資源集約化税制を活用するメリット】

  • 設備投資の税控除が受けられる
  • 従業員給与の増額で税控除が受けられる
  • キャッシュフローの改善に期待できる

1.設備投資の税控除が受けられる

2年延長されましたが、経営資源集約化税制は2023年(令和3年)3月31日までの間であればM&Aに関する設備投資の税控除を受けることができます。

設備投資の税控除対象となるのは、即時償却又は取得価額の10%(資本金3000万円~1億円の法人は7%)です。

ただし、税控除を受ける条件では、中小企業等経営強化法の認定を受け、経営力向上計画に基づいて一定の設備を新規取得することが条件です。

以前までは2021年まででしたが、新型コロナウイルス感染症の影響がまだ続く可能性もあるため、期限はさらに伸びる可能性も考えられます。
 

2.従業員給与の増額で税控除が受けられる

従業員の給与を増額させると会社の利益は当然減ることになるので、ためらってしまう経営者も多いのではないでしょうか。

中小企業等経営強化法では、経営資源集約化税制とともに所得拡大促進税制があり、従業員に対する支給額の増加額があった場合、増額分の一部を税額控除すことができます

適用されるには、前年度の雇用者給与等支給額に対して、適用する年度の従業員に支給する額が101.5%である必要がありますが、改正前の段階では継続している従業員を対象としていたものを、改により従業員全体が対象となったため、より活用しやすくなっています。

大企業だけでなく中小企業も活用しやすいように改正されているため、多くの経営者にメリットがあります。

3.キャッシュフローの改善に期待できる

そのほか、早期に損金計算を行うことにより経営状況の判断がスムーズにできるようになるので、キャッシュフローの改善も期待できます

M&Aを実施する際には判断材料があると失敗しにくく、M&A実施後の経営安定化も図りやすくなります。また、キャッシュフローの改善はM&A実施時だけでなく、社内の透明化を行う際にも役立ちます。

M&Aを視野に入れている場合は、経営資源集約化税制を活用してキャッシュフローの改善も促してみるとよいでしょう。

【関連】M&Aのメリット・デメリットを徹底解説!【大企業/中小企業事例あり】

4. 経営資源集約化税制を活用する際の注意点

前述のように、経営資源集約化税制をM&Aで活用することによって、さまざまなメリットを得ることができます。しかし、活用する際に注意点も存在するので、事前にしっかり把握しておくことが大切です。

【経営資源集約化税制の注意点】

  1. 経営力向上計画を作成して認定を受ける必要がある
  2. 複雑な手続き・事務処理が増える
  3. 適用される期間に制限が設けられている

1.経営力向上計画を作成して認定を受ける必要がある

経営資源集約化税制では、設備投資や従業員の給与の増額で税控除を受けられるメリットがありますが、活用するためには「経営力向上計画」の作成が必須です。

手順としては、事業所管大臣に申請して認定を受けると、主務大臣から計画認定書と計画申請書の写しが交付されます。

認定を受けるまでの目安は申請日から30日以内となっていますが、申請書に不備または不⾜書類があるとさらに期間が延びる場合があるため、余裕を持って申請書を提出するのが好ましいでしょう。

中小企業庁のホームページでは経営力向上計画の作成に関する手引き・申請方法や認定後に活用できる制度などが掲載されているので、経営資源集約化税制の活用を検討している場合はチェックしておきましょう。

2.複雑な手続き・事務処理が増える

経営資源集約化税制を受けるためには、事業所管大臣から認定を受けるための経営力向上計画の作成が必要ですが、難しい内容になるため専門家とともに作成を行う経営者がほとんどです。

そうなれば、当然書類作成や専門家との連絡・事務処理などの複雑な手続き・処理が増えることになり、場合によっては一時的に生産性が低下する可能性もあるため、余裕を持って挑むのがおすすめです。

3.適用される期間に制限が設けられている

最も気を付けなければならないのは、適用される期間が制限されているという点です。経営資源集約化税制は2年間の延長がありましたが、令和6年の3月31日までの認定を受けた株式取得が対象となっており、期限が過ぎてしまうと適用されません。

しかし、中小企業等経営強化法の改正が前提になるため、変更がある場合も考えられます。期限をしっかりと確認しておくとともに、中小企業等経営強化法の改正状況についてもチェックしておくことが好ましいでしょう。

【関連】株式取得時にかかる税金一覧まとめ!計算方法も解説!

M&Aに関するご相談はM&A総合研究所へ

経営資源集約化税制を活用してM&Aを実施したいとお考えの場合や、後継者問題でお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。

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5. まとめ

経営資源集約化税制は、適用される期間が決まっており計画書の作成などが必要になるので、活用を考えている場合は事前によく確認しておくことが大切です。

しかし、キャッシュフローの改善や設備投資・給与増額に関する税控除、M&Aに関するリスク軽減など多くのメリットがあるので、積極的に活用したい制度です。

経営資源集約化税制の適用時期などは未定なので、経済産業省HPのお知らせなどを定期的にチェックしておくとよいでしょう。

【経営資源集約化税制のポイント】

  • 準備金の積み立てによって株式取得価格の一部を損金算入できる
  • 準備金の取崩しは益金参入できる
  • 買い手となる中小企業の要件・・年間平均取得金額が15億円内、出資金や資本金が1億円以内、大規模法人に属さない青色申告を行っている法人

【中小企業が経営資源集約化税制を活用するメリット】
  1. 設備投資の税控除が受けられる
  2. 従業員給与の増額で税控除が受けられる
  3. キャッシュフローの改善に期待できる

【経営資源集約化税制を活用する際の注意点】
  1. 経営力向上計画を作成して認定を受ける必要がある
  2. 複雑な手続き・事務処理が増える
  3. 適用される期間に制限が設けられている

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