のれんの減損とは?償却との違いや株価への影響、税務を解説【事例あり】

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企業情報第三部 部長
鎌田 実築

三菱UFJ銀行にて中堅中小企業法人担当として、企業再生支援、事業承継支援、資産活用コンサルティング等幅広く活動。その後M&Aアドバイザーとして複数の業種で成約実績を積み、規模・エリアも問わず幅広い相談に対応。

のれんの減損とは、簡単にいうと「のれんの価値を正しく書き直すこと」です。何かしらの事由で貸借対照表に記載する価値がなくなったのれんを削除することで、正しい価値へと修正を行います。本記事では、のれんの減損と償却の違いや株価への影響、税務を解説します。

目次

  1. のれんの減損とは
  2. のれんの減損と償却との違い
  3. のれんの減損による株価への影響
  4. のれんを減損した際の税務
  5. のれんの減損事例
  6. まとめ
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1. のれんの減損とは

のれんの減損とは

のれんの減損とは

近年では、経営戦略の一環として、M&Aが使用されることが多くなっています。M&A関連の話題が上がることが増えており、のれんの減損という言葉を耳にする機会も増えました。

ニュアンス的にマイナス効果を含むものであることは分かりますが、具体的にはどのようなものを意味するのでしょうか。この章では、のれんやのれんの減損の基本的な意味を解説します。

のれんとは

のれんとは、目に見えない資産価値のことを指します。M&Aで買収された企業の時価純資産評価額と実際の買収価額の差額がのれんとして計上されます。

時価純資産評価額と実際の買収価額に差異が生まれる理由は、企業にはブランドや技術力、人的資源などの目にすることができない資産があるからです。

目にすることができない資産は無形資産に分類されており、M&Aの際は上乗せされて評価がされます。従業員なども人的資源として含まれるため、事業活動を行っている会社であれば必ず無形資産を保有しています。

なお、時価純資産評価額より実際の買収価額が下回ることもあります。これは負ののれんと呼ばれており、買収される企業が致命的なリスクを抱えているなどの原因により、マイナス評価がされるために発生しています。

【関連】M&Aにおける「のれん代」をわかりやすく解説!償却期間や会計処理はどうなるの?

のれんの価値を正しく書き直すこと

のれんの減損とは、M&Aの際に計上したのれんの価値を正しく書き直すことです。のれんは実在する資産ではないため、何かしらの原因で価値がなくなった場合は、正しい価値に修正をしなくてはなりません。

のれんの減損が起きる理由は、本来の価値より高い価額で買収したためです。高いシナジー効果を期待できる買収のため、高額資金を投じすぎて高値掴みとなってしまったケースです。

また、M&A後の引継ぎに失敗したことで想定した事業利益を生み出せないパターンもあります。M&A後に行われる統合プロセス(PMI)に失敗すると、シナジー効果を活かせずにM&Aが失敗してしまうことも珍しくありません。

このように期待してきたのれんの価値が失われてしまった時に、のれんの減損処理を行って適正な価値へと修正します。

2. のれんの減損と償却との違い

のれんの減損と償却との違い

のれんの減損と償却との違い

のれんとして計上されている無形資産は、将来に渡って収益力を発揮し続けるわけではありません。のれんの価値は年数が経つごとに失われていくため、一定期間にわたって減価償却することで適正な価値を反映するように努める必要があります。

減損と償却はどちらも企業の資産価値を下げる処理ですが、損金計上の可否という点で大きな違いがあります。

のれんの減損は会計上の損金として計上しますが、税務上は損金として認められません。一方、のれんの償却は、損金として企業の年間経費に計上することができます。

のれんの償却は、のれんの減価償却費分を利益から差し引くことができるので、法人税の負担を抑えることができます。

【関連】事業買収における仕訳(会計処理)とのれん代の償却に関して解説!

3. のれんの減損による株価への影響

のれんの減損による株価への影響

のれんの減損による株価への影響

のれんの減損処理を行うと、企業の資産価値を大きく引き下げることになるため、株価や株主に対する影響が懸念されます。

過去ののれんの減損事例をみると必ずしも反映されるというわけではありませんが、十分に注意しておく必要があります。

のれんの減損は株価に影響を与える

企業がのれんの減損処理を行うと、貸借対照表に記載されているのれんの価額が引き下げられ、特別損失に計上されます。

特別損失に計上された分だけ当期の純利益が目減りすることになるので、株価への影響が危惧されます。

株価は、PER(株価収益率)という指標が目安に用いられています。「株価=純利益÷発行済株式数×PER」という式が使われており、純利益が下がるほど株価にも反映されることが分かります。

なお、PERはあくまでも目安であるため、必ずしも株価が変動するとは限りません。実際に、パーソルホールディングスのオーストラリア子会社ののれん減損事例では、一時的に株価が急落したものの、数日後には元の水準にまで回復しています。

のれんの減損は株主にも影響を与える

のれんの減損による株主への影響は、配当金の減少です。のれんの減損処理は、のれんの減損額と同じ分を資本から減らすことで対応するため、資本から切り崩して行われている株主への配当金も減少することを意味しています。

のれんの減損が巨額になる場合は、当期の配当金はゼロという対応を取ることも珍しくありません。株価減少による資産価値の減少という影響も合わせて、株主への影響は大きいといえます。

4. のれんを減損した際の税務

のれんを減損した際の税務

のれんを減損した際の税務

のれんの減損は、会計上と税務上で扱いが異なります。会計上では費用として処理されて損金に計上されますが、税務上では損金として認められないケースが多いです。

のれんの減損が認められた段階で、経費にできない特別損失の計上が確定するため、事業の採算が取れていない企業にとっては頭を抱える問題になっています。

過去の減損事例のなかには、のれんの減損処理をきっかけに巨額な特別損失を計上し、経営状態が一転した企業も数多く見受けられます。

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5. のれんの減損事例

のれんの減損事例

のれんの減損事例

のれんの減損処理が行われたM&Aは、結果的に失敗したことを意味します。この章では、のれんの減損処理が行われた事例をピックアップして紹介します。

【のれんの減損事例】

  1. キリンによるブラジルのビール事業の買収
  2. LIXILによるドイツの水栓金具会社の買収
  3. NTTグループによる南アフリカのIT会社の買収

1.キリンによるブラジルのビール事業の買収

1.キリンによるブラジルのビール事業の買収

1.キリンによるブラジルのビール事業の買収

出典:https://www.kirin.co.jp/

2011年、キリンはブラジルのビール会社「スキンカリオール」を買収しました。ビール市場で中国・米国に次ぐ第3位であるブラジルへの本格進出を目的として、買収費用に約3000億円を投じた一大事業でした。

当時のスキンカリオールはブラジル国内シェア2位の大手ビール事業者です。ブラジル進出の足掛かりとして期待されましたが、ブラジル国内の景気減速や競合他社との競争激化により業績は低迷します。

キリンが描いた成長とは反する結果となり、15年12月期に約1100億円の減損損失を計上して、上場以来初の最終赤字となりました。

2.LIXILによるドイツの水栓金具会社の買収

2.LIXILによるドイツの水栓金具会社の買収

2.LIXILによるドイツの水栓金具会社の買収

出典:https://www.lixil.co.jp/

2014年、LIXILはドイツ水栓金具大手「グローエグループ」を約4100億円で買収しました。1月に87.5%、12月に12.5%の株式を取得して関連子会社化しています。

巨額を投じたM&Aで今後の発展が期待されていましたが、2015年4月にグローエグループの中国子会社ジョウユウでの不正会計の発覚により事態は急変します。

グローエグループは2009年からジョウユウに出資していましたが、主要な財務情報にアクセスできていないことをLIXILに報告していませんでした。

調査が行われると、ジョウユウは深刻な債務超過に陥っており、関係会社投資の減損損失や債務保証関連損として総額608億円の特別損失を計上しました。

3.NTTグループによる南アフリカのIT会社の買収

3.NTTグループによる南アフリカのIT会社の買収

3.NTTグループによる南アフリカのIT会社の買収

出典:https://www.ntt.co.jp/

2010年10月、NTTグループは南アフリカのIT会社「ディメンションデータ」を約2860億円で買収しました。

ディメンションデータは、ネットワーク機器やサーバなどの構築・運用を中核事業としているIT大手会社です。アジア・欧米・アフリカなどで事業展開しており、6000社を超える法人顧客を保有しています。

買収の決め手は、NTTの事業領域と補完関係にあることとしています。しかし、不採算事業の改善などの課題も多かったため、16年4-12月期において488億円の減損損失を計上しています。

6. まとめ

まとめ

まとめ

のれんは将来的な収益価値を見込んで計上されるものですが、判断を誤ると減損処理による特別損失で経営状態が悪化することもあります。

のれんの減損を避けるためには、M&Aの段階で売却企業の価値を正しく見極めることが大切です。計画性が求められますので、専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。

【のれんの減損まとめ】

  • のれんとは目に見えない資産価値のこと
  • のれんの減損とはのれんの価値を正しく書き直すこと

【のれんの減損による株価・株主への影響】
  • 当期純利益減少による株価低下リスクがある
  • 資本金減少による配当金減少

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