2021年09月07日更新
アナジー(Anergy)効果とは?意味やM&Aでの注意点を解説
アナジー効果とは、M&Aによる統合効果がマイナスとなる状態を指します。アナジー効果に対して、M&Aによる統合効果がプラスとなることをシナジー効果と呼びます。本記事では、アナジー効果の意味やM&Aを行う際の注意点などをわかりやすく解説します。
目次
1. アナジー(Anergy)効果とは?
【売上シナジー】
- 商品・サービスの拡充
- 販売チャネルの獲得
- ブランド力・信用力の向上
- 開発力の向上
- 技術・ノウハウの共有
- 仕入れコストの削減
- 販売コストの削減
- 物流コストの削製造コストの削減
- 研究開発の合理化
- 資金調達力アップ
- 資金調達コストが下がる
アナジー効果が生じた場合は、
2. アナジー(Anergy)効果の意味
M&Aによって生じるマイナスのシナジーをアナジー効果といいますが、具体的には、M&A後に以下のような効果が生じる可能性があります。
【M&A後に生じ得るアナジー効果】
- 顧客離れが起きる
- 経営陣・社員が辞める
- 社員のモチベーションが低下する
- システム統合のコストがかかる
- スタンドアローンコストがかかる可能性
M&A後に商品・サービスやブランドイメージが変わることで、顧客離れが起きる可能性があります。また、買い手企業の経営方針や企業文化などに合わなかったり、給与・待遇に不満を持った売り手企業の経営陣・社員が会社を辞めてしまう可能性もあります。
会社を辞めるまでいかなくても、売り手企業の経営陣・社員のモチベーションが低下し、生産性が下がることもあります。
そのほかにも、システムの統合コストが予定以上にかかったり、グループ企業や事業から切り離されることで生じるスタンドアローンコストが生じる可能性もあります。これらのM&A後に生じるマイナス要素がアナジー効果です。
3. アナジー効果が発生する理由
アナジー効果が発生する理由はさまざまですが、主なものとしては以下が挙げられます。
【アナジー効果が発生する理由】
- 方向性が大きく違うため
- 経営理念・企業体質の違い
- 統合した際に大きなコストがかかった
- 統合後の会社にとって重要な人物が抜けた
- M&Aの影響により顧客に嫌われた
- 旧経営陣の意識が低下した
- 統合した会社の意思疎通が出来ない
- 経営に必要な資源分散の弊害が起きる
1.方向性が大きく違うため
アナジー効果は、売り手企業と買い手企業のM&A後のビジョンが違うことで生じる可能性があります。
M&Aによる統合後同じ方向に向けて動かなければ、売り手企業と買い手企業の間で摩擦が生じかねます。その結果、社員が不安になってモチベーションが低下したり、社員が流出することになりかねません。
また、顧客も不信感を生むことになる可能性があります。アナジー効果を生じさせないためには、売り手企業と買い手企業が進むべき方向性を揃える必要があります。M&Aの時点で方向性を確認し、方向性が近い会社とM&Aを行うことが重要です。
2.経営理念・企業体質の違い
アナジー効果は、経営理念・企業体質の違いによっても生じる可能性があります。会社の経営理念・企業体質が経営陣・従業員の行動につながっていくので、急に変えても経営陣・従業員は対応できず、負担を抱えることにもなりかねません。
企業文化は可視化しづらい要素であり、創業時から積み重ねられて作られているので、すぐに変えることが難しいものでもあります。
急に変えようとすると、チームワークが乱れる、意思決定が遅くなる、社員のモチベーション・パフォーマンスが低下するなどのアナジー効果が生じ得ます。
特に、企業文化が個性的な会社であるほど統合が難しくなるため、統合を行う際は、経営理念・企業体質を分解・整理したうえで、変えられるものは変え、尊重すべきものは残すことがポイントです。
3.統合した際に大きなコストがかかった
業務システム・ITの統合コスト、制度の統合、人事総務経理などの管理体制重複によるコストが、当初の予定よりも増大することで、アナジー効果が生じることがあります。
システム・制度関連のアナジー効果は、経営理念・企業文化・人材の統合など無形資産の統合に比べて数字として目に見えやすいので、事前にある程度予測することが可能です。M&Aの前に、専門家の助言をもらいながら数字に落としておくことも大切です。
4.統合後の会社にとって重要な人物が抜けた
さまざまな業界で人材不足が慢性化している近年では、人材の流出はアナジー効果のなかでも大きなダメージとなり得ます。
統合後に人材が流出する主な理由には、給与・待遇の変化、企業文化に馴染めない、勤務地の変更などがあります。
統合後の人材流出を防ぐためには、統合後のプランを明確に説明する、統合前より給与・待遇が下がらないようにする、企業文化を尊重するなどの対応が必要です。また、企業文化を変えていく場合は時間をかけて慎重に行うなどの対応が有効です。
5.M&Aの影響により顧客に嫌われた
自社の商品・サービスのファンである顧客ほど、商品・サービスの変化、ブランドイメージの変化などに敏感です。M&Aによって一般受けを狙った結果、それまでの個性を失ってしまい、コアなファンを逃してしまうケースもあります。
顧客に関するアナジー効果を生じさせないようにするには、顧客情報の管理を徹底する、顧客から支持されていた本当の理由を探る、短期的な集客に集中しないなどの対策方法があります。
6.旧経営陣の意識が低下した
M&Aによって、売り手企業側の経営陣がモチベーションを失うことも、アナジー効果を生じさせる要因となります。
M&Aによって裁量権がなくなったことで挑戦心がなくなったり、会社への不満が溜まっていたりと、適切に対処しないとさまざまな問題が蓄積している可能性もあります。
このようなアナジー効果を生じさせないためには、売り手側の経営陣と密ににコミュニケーションを取る、正当な評価をする、価値観を共有するなどの対応が大切です。
7.統合した会社の意思疎通が出来ない
これまで別々に経営してきた企業同士がM&Aによって親子関係になると、従業員のなかにも上下関係の意識が生まれることがあります。それにより、意思の疎通がうまくいかなくなることも少なくありません。
【意思の疎通不足で生じ得るアナジー効果】
- 親会社と子会社の意識の差
- 過剰な上下関係意識
- 親会社が子会社を細かくコントロールしようとしすぎる
- 子会社を放任しすぎる
- 体制を変えようとする親会社とこれまでの体制を守ろうとする子会社で軋轢
- 数字だけに頼ってしまい現場をみていなかったことでずれが生じた
8.経営に必要な資源分散の弊害が起きる
経営資源に関するアナジー効果が起きるケースには、適切な経営資源の選択と集中ができなくなるケースがあります。
M&Aによる事業の多角化でリスクヘッジができる一方、経営資源の分散というデメリットを負う可能性もあります。
また、資金の分散だけでなく人材の分散も問題です。親会社が子会社に人材を送ることで、人材の偏りが起きる可能性があります。
そのほか、買収した企業が経営不振の場合は立て直しに資金と人材を投入することになり、本業への投資が疎かになる可能性もあります。
経営資源の分散によるアナジー効果を防ぐためには、買収した企業に投資した以上のリターンが得られるかどうか、M&Aの際に適切な分析・判断が必要です。
4. アナジー(Anergy)効果を踏まえたM&Aでの注意点
M&Aを適切に行わなければ、アナジー効果が発生する可能性は高くな
アナジー(Anergy)効果は会社にとって悪影響しかない
M&Aを実行する企業は大企業から中小企業まで増加していますが、思ったようにシナジー効果が得られていないケースも少なくありません。
アナジー効果は、売り手企業にとっても買い手企業にとっても悪影響しかなく、両社が損をすることになります。
特に、業界をまたいだ買収・地域をまたいだ買収・企業規模が大きく違う買収の場合は、アナジー効果が生じてしまうと修復に苦労する傾向にあります。アナジー効果が生じないよう、M&Aの実行前から準備を進めることが重要なポイントです。
アナジー(Anergy)効果を回避するためにPMIを徹底すべき
【PMIを成功させるためのポイント】
- M&
Aの実行前に売り手企業と買い手企業の相性が合うかどうか確認す る - 従業員の意識・行動改革を実行する
- 共通のビジョンを策定する
- コスト感覚を共有する
- 新しい管理システムを導入する
5. PMI以前にできるアナジー(Anergy)効果対策
アナジー効果が生じないようにするためには適切なPMIが重要ですが、それ以外にも以下のような対策方法があります。
【アナジー効果対策】
- トップ同士による経営理念・方向の確認
- 事業領域を意識したM&Aの実行
- デュ-デリジェンスの徹底
- M&A契約書の確認
- M&Aの専門家への相談
1.トップ同士による経営理念・方向の確認
アナジー効果を生じさせないようにするためには、トップ同士の経営に対する価値観や人間的な相性が重要です。
M&Aでは、トップ面談の際にお互いの相性を見極めることが、アナジー効果を生じさせないことにもつながります。
トップ面談の際は率直に意見や疑問を交わし合い、違和感を残さないことが大切です。必要であれば、複数回に渡って話し合いを重ねることもあります。
2.事業領域を意識したM&Aの実行
買い手は事業の多角化を目的としてM&Aを実行するケースもありますが、事業領域に共通部分が少ないほどアナジー効果は生じやすくなるため、M&Aの際には相手企業の業界をよく知っておくことが大切です。
また、相手企業との統合プロセスでどのような障害が起き得るか、綿密にシミュレーションを行っておく必要があります。
3.デュ-デリジェンスの徹底
アナジー効果を生じさせないためには相手企業をよく知ることが大切ですが、M&Aの際に相手企業を見極めるために行われるのがデューデリジェンスです。
デューデリジェンスの分野は多岐に渡り、徹底して行うとなれば費用と時間がかかります。M&Aに多くの費用をかけられない中小企業の場合、アナジー効果を生じさせないために必要となる分野を絞り込んでデューデリジェンスを行うのも方法のひとつです。
4.M&A契約書の確認
アナジー効果を生じさせないためには、シナジー効果に影響が及びそうな点については契約書で明文化しておくことが重要です。
特に、役員・従業員の給与・待遇など売り手企業側が大きな不安を感じる点は、アナジー効果につながることもあるため明確にしておく必要があります。
売り手企業の混乱を招かない内容、モチベーションを下げない内容であるかどうか、専門家の助言も得ながら気を付けて作成しなければなりません。
5.M&Aの専門家への相談
アナジー効果を生じさせず、シナジー効果を最大限に得るためには、M&Aの準備段階から戦略的に取り組んでおくことが大切です。そのためには、M&Aの豊富な支援経験を持つ専門家によるアドバイスが有効です。
M&A総合研究所では、豊富な経験を持ったM&Aアドバイザーが多数在籍しているので、さまざまな業種・規模のM&Aに迅速かつ丁寧に対応することができます。
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6. まとめ
アナジー効果を生じさせず、シナジー効果を最大限にするためには、計画的かつ戦略的なM&A進行が重要であるため、M&A仲介会社など専門家のアドバイスを得ながら進めていくようにしましょう。
【アナジー効果を生じさせる主な理由】
- 方向性が大きく違うため
- 経営理念・企業体質の違い
- 統合した際に大きなコストがかかった
- 統合後の会社にとって重要な人物が抜けた
- M&Aの影響により顧客に嫌われた
- 旧経営陣の意識が低下した
- 統合した会社の意思疎通が出来ない
- 経営に必要な資源分散の弊害が起きる
- トップ同士による経営理念・方向の確認
- 事業領域を意識したM&Aの実行
- デュ-デリジェンスの徹底
- M&A契約書の確認
- M&Aの専門家への相談
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