ソフトウェア受託開発業界のM&A動向!売却・買収事例5選と成功のポイントを解説!【2023年最新】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

企業から依頼を受けて情報システムを開発する、ソフトウェア受託開発業界のM&Aは、慢性的な後継者不足などの問題を背景に増加しています。今回は、ソフトウェア受託開発業界のM&A動向をはじめ、売却・買収事例、成功のポイントなどを解説します。

目次

  1. ソフトウェア受託開発業界の概要と動向
  2. ソフトウェア受託開発会社をM&Aするメリット
  3. ソフトウェア受託開発会社のM&A・買収・売却事例5選
  4. ソフトウェア受託開発業界のM&Aの成功のポイント
  5. ソフトウェア受託開発業界のM&A・事業譲渡まとめ
  6. システム開発業界の成約事例一覧
  7. システム開発業界のM&A案件一覧
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1. ソフトウェア受託開発業界の概要と動向

まずは、ソフトウェア受託開発業界の業務内容などの概要と現在の状況および今後の動向について解説します。

ソフトウェア受託開発業界とは

ソフトウェア受託開発業界とは、企業などから依頼を受け、その企業が求めるシステム、アプリケーションの条件やスペックをまとめ、開発を行う会社です。中には自社内で完結するケースもありますが、多くは外部に依頼する方式です。

受託開発では、企業などから仕事を依頼される「元請け」と元請けから仕事を依頼される「下請け」が重要な関係者となります。

受託開発はクライアントが希望するシステムのスペックを元請けに依頼することから始まります。依頼を受けた元請けは、依頼されたシステムのスペックや条件を元に外注に合った開発会社を選ぶのです。そのため、受託開発の業務を主な収益源とする中小規模のシステム開発会社は多くなっています。

ソフトウェア受託開発業界の市場規模と動向

ソフトウェア業の市場規模から見ていきましょう。経済産業省が行う「特定産業実態調査」によると、ここ数年ソフトウェア業の売上高は右肩上がりが続いています。2018年度の売上高は、約14兆円で巨大な市場規模です。

2007年から2009年にかけて市場規模が拡大しましたが、リーマンショックの影響を受けてその後2015年までは市場規模の縮小が続きました。しかし、2017年以降は市場規模の拡大が続いています。

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2. ソフトウェア受託開発会社をM&Aするメリット

ここからは、ソフトウェア受託開発会社を売却すると、得られるメリットについて解説します。

売却側のメリット

まずは、売却側の立場のメリットから解説します。

後継者不足の解消

現代の日本では多くの中小企業が後継者不足に悩まされています。東京商工リサーチの後継者不在率調査によると、2022年の時点で情報通信業の後継者不在率は76.93%です。

ほかの業界と比較して、代表者の年齢が若いということを考慮しても、後継者の不在を理由に事業承継を行えないソフトウェア受託開発会社は決して少なくないでしょう。また、帝国データバンクの調査によると、休廃業や解散している企業のうち、56.2%は当期純利益が黒字でした。

このように、経営状態は悪くないのに、後継者がいないために廃業するしかないソフトウェア受託開発会社は少なくないと考えられます。
後継者不足を理由にした廃業を防ぐ手段として考えられるのが会社・事業の売却です。

ソフトウェア受託開発会社の株式を譲渡をすることで、会社の経営権を買い手企業に引き継がせることが可能です。つまり、後継者が不在のソフトウェア受託開発会社でも、同業他社や経営者として優秀な人にも事業承継できるのです。

近年はM&Aという手段が社会的に認知されつつあるので、M&Aの仲介サービスも数多く生まれています。

新事業の開始や事業の成長の加速化

受託開発を専門にしてきた企業には、M&Aを行うことで自社開発に進出するチャンスが生まれます。新事業を始められるのもソフトウェア受託開発会社を売却するメリットの1つです。

M&Aによってソフトウェア受託開発会社を売却すれば、それまで事業に費やしていた分のリソースが空きます。
そのため新事業に注力可能です。

特にM&Aをすることでまとまった資金を手にできます。
譲渡後は多額の資金を手にできるので、他の事業をスピード感を持って取り組めたり、自己資金のみではできなかった事業に着手できたりします。

エンジニアの育成や待遇の改善

IT業界では多重下請けで仕事が進むことが多々あります。実際、小規模な企業は、高単価での受注がしにくい現状があります。

しかし、大手IT企業の傘下に入ると、給与体系や労務管理は買収した企業の待遇が適用されるため、エンジニアの待遇が改善されるでしょう。また、売却した企業から新しい技術を習得できたり、エンジニア同士で人材交流を図ったりして、エンジニアの育成が加速する効果も期待できます。

また、待遇がよくなったり、自社の知名度が上がったりすることで、優秀なエンジニアを採用しやすくなり、離職率の低下も望めます。

売却益の獲得

IT業界に限らず、どの業界にも当てはまりますが、売却側の大きなメリットは譲渡後売却益を手にできる点です。廃業とは異なり、M&Aでは保有するすべての資産が資産価値の一つとなります。

さらに、買収側が必要な人材、技術、ノウハウなどを持っている場合は、高額でのM&Aの実現も期待できます。

そのため、既出のように自社サービスの開発や新規事業に資金を投入できるようになります。または、会社経営をリタイアして自由な生活を謳歌することも可能です。

買収側のメリット

続いて買い手側のメリットについて解説します。

シナジー効果と事業拡大のスピードアップ

M&Aを行うことでシナジー効果が生み出されることが期待できます。しかし、実際にどのようなシナジー効果がどれだけ生まれるかを事前に予測することを簡単ではありません。

ソフトウェア受託開発企業の場合、企業の強みや得意とする分野は取引先業やプロジェクト実績などの情報が有効的です。

さらに募集時の要項などから得意な分野や今後力を入れようとしている領域もわかります。そのため、外部に委託せざるを得なかった新たなアプリケーションやサービスの開発が可能になります。

人材の確保

昨今では受託開発企業に限らず、業界全体でIT技術の活用は必須となっています。一方で、エンジニアが不足しており社会問題になっています。実際に募集をかけても簡単には不足分が埋まらないのが現状です。

M&Aによってソフトウェア受託開発会社を買収することで、エンジニアをまとめて確保できるので、人手不足の解消が期待できるというメリットがあります。

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3. ソフトウェア受託開発会社のM&A・買収・売却事例5選

ここからは、ソフトウェア受託開発会社がどのようなM&Aを行っているのか見ていきましょう。
ここでは、5つの事例を解説します。

クレスコが日本ソフトウェアデザインをM&Aした事例

クレスコは2023年2月1日付で、日本ソフトウェアデザインを子会社化しました。

クレスコグループは、株式会社クレスコを親会社として、子会社11社、持ち分適用会社2社の体制の複合IT企業です。各社の密接な連携により、企業のIT戦略立案をはじめ開発・運用・保守と幅広いニーズに答えています。

一方の、日本ソフトウェアデザインは大阪、東京、名古屋の大都市に拠点があります。大阪と東京では幅広い領域の業務システム開発およびシステム運用管理、名古屋では自動車メーカー向けの組込みソフトウェア開発を請負と委託契約で手がけています。

今回の株式取得で、アプリケーション分野における連携や本社が大阪の株式会社メグセスとの関西での提携、名古屋事業所との協業関係の実現が見込めます。

参考:日本ソフトウェアデザイン株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ 

SYSホールディングスがつくばソフトウェアエンジニアリングをM&Aした事例

2022年10月21日、株式会社SYSホールディングスは、つくばソフトウェアエンジニアリングの全株式を取得し子会社化しました。

つくばソフトウェアエンジニアリングの業務内容は、映像編集を柱にしたソフトウェアの受託開発などを行っています。
タイに子会社を持ち、現地の日系優良企業と取引を行っています。

一方のSYSホールディングスは、ソフトウェア関係の情報サービスを扱う総合システム会社です。
このM&Aでタイに会社を持つグループ顧客への営業連携や、採用する際のコツなどを共有しグループの事業拡大を図っていく考えです。
参考:つくばソフトウェアエンジニアリング株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
 

ヴィッツがスクデット・ソフトウェアをM&Aした事例

2022年2月22日、ヴィッツがスクデット・ソフトウェアのすべての株式を取得し、子会社化しました。

ヴィッツはソフトウェア開発事業を中心に据え、新事業の創出に取り組んでいます。そのためには、基本事業の強化が欠かせないとの考えから、ソフトウェア開発体制や人材の強化や拡大に努めています。

一方のスクデット・ソフトウェアは北海道の札幌周辺でソフトウェアの技術向上とソフトウェア産業の発展に向けて研鑽してきました。
今回のM&Aで財務基盤が安定し人員の増員が容易に可能となり、また両社の技術交流や協業でさらなる技術向上を狙っています。

参考:子会社等の異動を伴う株式取得に関するお知らせ 

アイホンがソフトウェア札幌をM&Aした事例

2021年11月17日、アイホン株式会社が、ソフトウェア札幌の全株式を取得し子会社化しました。

アイホンは、セキュリティ事業およびケア事業を展開し、通信機器や音響機器、各種電気機器の製造・販売を行っています。一方のソフトウェア札幌は、システム開発、システム運用管理を展開しています。

この株式取得によりアイホンは、ソフトウェア開発を強化し、多様化している国内外のニーズに応えるべく、さらなる事業拡大を目指す方針です。

参考:株式会社ソフトウェア札幌を子会社化 
 

システムリサーチがゼネラルソフトウェアをM&Aした事例

2021年10月28日、システムリサーチは、ゼネラルソフトウェアの全株式を取得し子会社化しました。

ゼネラルソフトウェアは、関東および関西を中心にソフトの設計や開発サーバー構築、システムの運用・保守などソフトウェア関連の業務全般を手がけてきました。

一方のシステムリサーチは、本社を名古屋市に置き、東海地区を商圏としています。
SIサービスやプロダクト・サービス、アウトソーシング業務をはじめ多種多様な事業を展開しています。

今回のM&Aにより、関東および関西での取引拡大や関東での組込み業務への足がかりなど新事業へのスピード感を加速させグループのさらなる発展を図ります。

参考:ゼネラルソフトウェア株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

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4. ソフトウェア受託開発業界のM&Aの成功のポイント

ソフトウェア受託開発業界でM&Aを行う際には、成功のポイントがいくつかあります。ここからは、代表的なポイントを解説します。

シナジー効果が生まれる相手か確認する

既出の通り、M&Aでどれだけのシナジー効果を生み出せるのかを事前に予測するのは難しいです。

しかし、M&Aを行う上で、売り手、買い手双方とも、シナジー効果が成功へのいちばん大事な要素です。受注実績や得意とする技術などを精査し統合の結果、シナジー効果が生まれる相手であるのかを精査しなければなりません。

情報セキュリティ管理や労務管理が行われているか確認する

M&Aを行う際には、相手側企業において情報セキュリティ管理が適切に行われているかの確認が大切です。IT業界では、システムやアプリケーションで個人情報を扱うケースが多々あり、情報セキュリティが適切に行われていないと死活問題です。

特に近年は企業内システムへの不正アクセスなどの被害も度々報道されており、社会の関心が高まっています。また、さまざまな企業で働き方改革が行われており、労務管理に対する世間の関心も高まっています。

中小企業では、社内の労務管理が不十分なために、未払い残業代や長時間労働の問題が解決されていないケースがあります。

労務管理がきちんとされていないと、企業としての魅力も失われるでしょう。売り手側の企業が過去に労務問題を起こしていないか、管理体制がきちんと機能しているのかを確認しなければなりません。

自社の強みの把握と的確なアピール

ソフトウェア受託開発会社の売却では、買い手側の企業との交渉によって売却価格が決まります。売り手側が自社の強みを把握していなければ、交渉の際に強みをアピールできないので、最終的に安価でM&Aが成立してしまう可能性があります。

適正価格での売却のためには、買い手側企業のニーズや競合他社を分析し、自社の強みを見つけることが大切です。

自社の強みがはっきりしたら、わかりやすい資料や客観的なデータなどを用意して、的確にアピールし、買い手側企業に自社の魅力を認識してもらうのです。その結果、満足できる金額で売却できる可能性が高まります。

専門家に相談する

M&Aを検討しているのであれば、まずは税理士など日頃付き合いのある方に相談するのもよいと思います。

ただ本格的にM&Aを考えているのであれば、M&Aの成約実績が多い専門の会社に相談するのがよいでしょう。
M&Aを進める上では、M&Aアドバイザーとの相性も非常に大切です。

会計上の数字はもちろん、ビジネスの内容を理解して会社の価値を理解できる会社を選択しましょう。

M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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5. ソフトウェア受託開発業界のM&A・事業譲渡まとめ

近年システム開発業界全体は右肩上がりで成長しており、人材の確保や事業規模の拡大は欠かせず、その手段として事業売却は手段の一つになります。

ソフトウェア受託開発はIT業界の中でも代表的な業態に数えられ、クライアントからの発注に則って、オーダーメイドでシステム開発を進めます。
ソフトウェア受託開発は安定した売上が見込める一方で納期が厳しくなりがちです。

近年はこのソフトウェア受託開発企業に対するM&Aも活発に行われており、買い手、売りてともにさまざまなメリットがあります。
ただし、M&Aを検討する際には、セキュリティや労務管理体制について確認することが重要です。

今回お伝えしたソフトウェア受託開発会社のM&A・事業譲渡について市場規模やメリット・デメリットなどを参考に、M&Aの実施を検討していただければ幸いです。

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6. システム開発業界の成約事例一覧

7. システム開発業界のM&A案件一覧

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