2022年06月06日更新
事業展開の方法や考え方・戦略を解説!フレームワークや成功・失敗事例も紹介!
事業展開は企業が成長し生き残るために不可欠な戦略であるため、経営者は事業展開の戦略・考え方について理解を深めておくことが大切です。本記事では、事業展開の考え方や戦略、経営計画の作成方法を解説します。また、M&Aによる事業展開の成功と失敗例も紹介しています。
目次
1. 事業展開とは
事業展開とは、企業が本業以外の新しい分野で事業を立ち上げたり、海外進出したりすることを意味します。
現状が好調な企業でも、その勢いは時代の流れとともに消費者の嗜好(しこう)も変化を遂げ、その事業が未来永劫続くとは言い切れません。
今後は、IT化の浸透により激しい変化にさらされることは間違いありません。生き残るためには、時代にあった事業を立ち上げ育てて行く必要があります。
本記事では、事業展開における考え方について、成功・失敗事例とあわせて解説していきます。
2. 事業展開の方法
事業展開は、本業以外で新しい事業を立ち上げていくことと説明しましたが、事業責任者のみで策定することはできません。信頼のおける従業員や専門家と話し合いながら、戦略や考え方をつめていきましょう。
ここでは、事業展開の考え方を以下4つのステップに分けて解説していきます。
- 事業展開を計画する
- 事業展開のためのチームを作る
- 事業展開の戦略会議
- 経営計画を策定・実行
①事業展開を計画する
最初のステップは、事業展開を計画します。計画をたてるうえで重要なのが「ビジョン」です。事業のはっきりした目的を掲げることで、立案がスムーズにいきます。
今後、事業を進めるうえで計画とおりに事が進まない状況にぶつかることはあるでしょう。そんなときにビジョンが定まっていれば、予期せぬ事態が発生しても現実との差分を検証することで、軌道修正できます。
つまり、戦略(方法)が変わってもビジョン(目的)という指針があれば、迷うことなくたどり着けます。
②事業展開のためのチームを作る
事業展開の立ち上げは、チームを結成して進めていくことになります。メンバーの選定は、仕事ができる優秀な人材を集めただけでも短期的にうまく進むかもしれませんが、どこかで綻びが生じてきます。
立ち上げ時のメンバーには、事業進出を検討している分野に詳しい人材が必要です。また、事業展開の立ち上げ時に一番の障害は失敗への恐怖と悩みでもあるので、客観的な意見を言えるメンバーも加えるとよいでしょう。
可能であれば、社外のコンサルタントとブレストしたり、専門家に意見を求めたりすることも大切です。そして、チームに参加するメンバーの人間性も重要です。
特にチームリーダーになるべき人材は、マイルストーンの設定とスケジュール進捗管理など、俯瞰的に見ることができるリーダー経験者が必要でしょう。
③事業展開の戦略会議
チームが立ち上がったら、次は会議で事業戦略の策定を行います。新事業展開のビジョンとコンセプトなど考え方を再確認しましょう。
将来像を示しながら、大枠の事業戦略に対する考え方をメンバーに浸透させていきます。大枠での合意ができれば、自社が競争優位に立てる事業ドメイン(事業領域)を設定します。
④経営計画を策定・実行
経営計画は、現状の自社問題点を明らかにし、解決策を提示するところから始めます。ビジョンを打ち出し、数値目標に基づいて、達成には何をすべきかという行動計画や与えられた従業員、経営資源の活用方法を策定していきます。
そして、計画が承認されればチームメンバーにも経営計画を共有し、メンバーの専門分野も考慮したうえで役割を決め、タスクとスケジュールを決定し、実行に移していきます。
3. 事業展開を考える理由
事業展開を考えるうえで、その「理由」に立ち返ることが必要です。企業が本業とは異なる、新しいビジネスに乗り出す前に正しい目的を共有したうえでチャレンジしないと、貴重な人材や資金を無駄に消耗するだけで終わってしまう事例もあるからです。
では、事業展開を考える理由にはどのようなものがあるのでしょうか。事業展開を考える理由には、主に以下の5つがあります。
- M&A後の展開として
- 海外進出を行うため
- 既存事業が衰退傾向にあるため
- 既存事業とのシナジー効果があるため
- 企業PRとして
①M&A後の展開として
1つ目の理由には、買収した企業の資産を活用し、事業展開を進めることが挙げられます。買収した企業のベースと自社の経営資源やノウハウを生かし、事業展開のビジョンと融合ができれば、短期間で新規参入を果たせます。
M&Aでの事業展開は、シナジーを目的とした自社にはない人材と技術を確保でき、短期間で新しい市場へ参入できるメリットがあります。
②海外進出を行うため
2つ目の理由は、海外進出で事業展開を考えることが挙げられます。海外展開には、少子高齢化による国内市場低迷による海外マーケットへ参入することや、自社製品の生産を国内から海外生産に移し、コストを削減のために海外進出をすることなどが挙げられます。
自社製品やサービスを現地で徹底的にローカライズすることが、事業展開が成功するために必要な要素でしょう。
③既存事業が衰退傾向にあるため
3つ目の理由は、新しい分野へ事業展開を目的とすることが挙げられます。少子化や個人消費の低迷など既存事業が衰退傾向で、既存の事業では将来的に厳しいと予測されるための事業展開です。
新たなビジネスを成長させて、既存事業の穴埋めや本業に取って変わる事業基盤を醸成(じょうせい)させる考え方といえます。
④既存事業とのシナジー効果があるため
4つ目の理由は、既存事業とのシナジー効果を活用した事業展開が挙げられます。シナジー効果とは、2つ以上の企業や事業が統合し、お互いの事業で相乗効果をもたらすことを意味します。
売上規模拡大や営業拠点の統廃合、研究開発費の強化やノウハウ統合、財務など調達コスト削減などさまざまなメリットをもたらします。
⑤企業PRとして
5つ目の理由は、自社の社風や技術力を広めるために事業展開を行うことが挙げられます。特に中小企業などに多くみられ、自社の認知度を高めるために行います。
4. 事業展開の考え方・戦略
事業展開で重要なことは、まずビジョンを明確にしてコンセプトやゴールなどをしっかり決めることです。
新しい事業を立ち上げる企業には、時流や他社も展開を始めたからといって的確な目的がない場合もありますが、それは目的地を定めずに航海を始めるのと同じです。
ここでは、事業展開における大切な考え方や戦略のポイントを解説していきます。
- 経営ビジョンを明確にする
- 市場調査・分野調査
- 顧客の立場に立った視点
- 需要の喚起・需要への供給
- 時間・タスク管理の徹底
- 信頼できる第三者の確保
- 広告戦略やマーケティングの実施
- 主要商品の生産コストダウン
- 消費者の信頼を得る
- 新しい市場開拓
①経営ビジョンを明確にする
1つ目のポイントは、経営ビジョンを明確にすることです。前述のとおり、ビジョンを明確にすることで事業の全体像を明確にし、具体的な事業に落とし込んだときの道標となるため、判断に迷うことが少なくなります。
また、新しい事業展開を進めるうえで、必ずしも予定どおりにすすむことはありません。そんな場合にビジョンが明確になっていれば、方向性のブレが出たとしても軌道修正できます。
ステークホルダー(利害がからむ関係者)にも明確に打ち出すことで優良なステークスホルダーが集まり、事業成功の確率が高くなります。
②市場調査・分野調査
2つ目のポイントは、参入する市場の調査することです。市場規模の把握はもちろん、新しい分野の場合は類似する複数の分野から、市場規模を推測する必要があります。
どのような価値を提供し、キャッシュを獲得する方法を明確にするため、市場調査・分析は必ずやっておく必要があります。
③顧客の立場に立った視点
3つ目のポイントは、顧客へ価値提供方法をしっかりと検討することです。企業側の都合でニーズを無視し、顧客に売りつけるサービスや製品は決して成功しません。顧客の立場からニーズを探り、価値提供を考えることが成功に導く方法です。
また、サービスや製品を検討する際には上辺だけをとらえるのではなく、製品やサービスに関連するブランドやアフターサービス、情報など全てを総合して検討することも重要です。
④需要の喚起・需要への供給
4つ目のポイントは、前述に説明した顧客目線で考えたサービスや製品の需要喚起となるマーケティング戦略を検討することです。最近は費用をかけずに、ソーシャルメディアを使っての認知方法が多くあります。
また、製品などを流通させるチャネル選定も需要の換気や供給を考えるうえで重要です。特に、新規参入の場合は、既存顧客の共感を獲得したり事業展開の早期のブランド確立が求められるため、ブランドイメージに傷がつかないような展開を検討する必要があります。
⑤時間・タスク管理の徹底
5つ目のポイントは、事業立ち上げ時の時間やタスク管理することです。特に事業展開では、事業計画立案時に定められた期間内で事業を成功させるケースがほとんどです。
新規事業の立ち上げからサービス開始までの期間は戦略や事業内容でまちまちであり、指標がないためスケジュール管理をしっかりと目標をもって行う必要があります。
また、プロジェクトメンバーが大規模になると、徹底したタスク管理しなければ事業計画自体がとん挫する可能性も高くなります。
⑥信頼できる第三者の確保
6つ目のポイントは、信頼できる第三者の確保をすることです。第三者とは、ステークホルダー(この事業に関わる関係者)にあたります。
先述のとおり、事業立ち上げのビジョンをしっかりと認知して共感してもらうことで、資金提供や流通、仕入れ業者、顧客などさまざまな関係者から支援を受けられ、新規事業をスムーズに進められるようになります。
⑦広告戦略やマーケティングの実施
7つ目のポイントは、予算に応じた広告戦略とマーケティング施策を実施することです。
前述の流れから事業展開で立ち上げたサービスや製品をターゲットとなる消費者に、いかに認知させて消費に結びつけられるかという「購入させる仕組み」を広告展開やマーケティング戦略のプロセスに落とし込んで実施することです。
⑧主要商品の生産コストダウン
8つ目のポイントは、事業展開で主要になる商品のコストダウンを行うことです。実際に商品が販売されれば、原材料の高騰など市場環境の変化や他社との差別化のため、価格においても顧客の販売価格引き下げの要望に応えなければなりません。
利益の確保が優先になるため、常にコストダウンを検討する必要があります。そのため、主要商品の製造にかかわるプロセス、原材料や人件費、工場設備について費用の再検討をします。
場合によっては不採算の商品に関しては生産中止などの行い、主要商品に絞ることも視野にいれなければなりません。
⑨消費者の信頼を得る
9つ目のポイントは、自社のサービスや製品に対して消費者の信頼を得ることです。
信頼を得るということは、確固たるコンセプトや開発力、ニーズに合っているかなど前提条件のハードルは高いですが、一度自社製品やブランドに顧客から確固たる信頼を獲得することができれば、価格競争の影響の中でも一定の優位性を発揮できます。
⑩新しい市場開拓
10個目のポイントは、常日頃から新しい市場への参入も検討することです。主力商品やサービスが定着してくれば、他社からの後発商品による追い上げや売り上げが低迷することを見込んで、新しい市場や顧客を開拓しましょう。
新しい市場開拓としては、自社の商品やサービスに信頼が高い顧客向けに新商品やサービスを投入したり、自社のノウハウや技術を新しい市場向けにアレンジして展開することが近道かもしれません。
5. 事業展開のフレームワーク
事業展開を検討するうえでフレームワークを使用すると起案で考えを整理でき、俯瞰的に戦略を練られます。ここでは、事業展開に欠かせないフレームワークをご紹介します。
それぞれのフレームワークで特長があるため、適宜使い分けしながら戦略に生かしていきましょう。
ここでご紹介するフレームワークは以下になります。
- アンゾフの成長マトリクス
- プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)
- PDCAサイクル
- 基本競争戦略
- ビジネスモデルキャンバス
①アンゾフの成長マトリクス
アンゾフの成長マトリックスは、イゴール・アンゾフ氏により提唱された事業展開における事業ドメインを決定するのに活用されるフレームワークです。特長としては、市場と製品の二軸を設け、その二軸に既存と新規に分割し、成長戦略を4つの方法で表しています。
アンゾフの成長マトリックス
市場浸透戦略 | 既存市場に既存製品を投入し、他社との競争に勝ち市場でシェアを高めること |
市場開拓戦略 | 新規市場に既存製品を投入し、事業展開する戦略(海外市場展開はこれにある) |
製品開発戦略 | 既存市場の顧客に向けて、新製品を投入することで事業展開する戦略 |
多角化戦略 | 新規市場にて新製品を投入することで、事業展開する戦略 |
②プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とは、コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループが提唱したフレームワークであり、経営戦資源の分配を検討するマトリックスです。利益と投資の度合いを検討できます。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)では市場の成長率と市場におけるシェアの二軸で構成されており、それぞれ高低で2つに振り分けられています。具体的には以下の4つの象限で表されています。
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)
花形 | 投資を継続、金のなる木を目指す |
問題児 | 市場のシェアを高めて花形を目指す |
負け犬 | 早期に撤退を検討 |
金のなる木 | 稼ぐだけ稼いで利益を他の事業に分配 |
プロダクトポートフォリオマネジメントは、既存の事業に対して経営資源をどのように分散投資するかを決定する際に用いられます。
③PDCAサイクル
PDCAサイクルといえば、ご存知の方も多いでしょう。PDCAサイクルとは、以下の4つのサイクルを繰り返すことで業務の継続的改善を目的としたフレームワークです。
PDCAサイクル
Plan(計画) | 計画を立てる |
Do(実行) | 計画を実行する |
Check(評価) | 行動を評価する |
Action(改善) | 改善して次につなげる |
このPDCAサイクルは目標達成のための計画を立て、実行に移しその結果を振り返って改善を行いながら反省点をフィードバックし、スパイラルアップ(らせん状に向上する)という考え方の元に成り立っています。
④基本競争戦略
基本戦略とは、「競争の戦略」で有名なマイケル・ポーター氏が提唱する3つの基本戦略のフレームワークです。
3つの基本競争戦略
コストリーダーシップ戦略 | 競争相手より製品を低コストで生産することで、優位性を獲得する戦略 |
差別化戦略 | 自社の製品やサービスを他社との差別化を図ることで、優位性を獲得する戦略 |
集中戦略 | 自社の製品やサービスをターゲット層や地域で絞ったりすることで、狭いセグメントの中で優位性に立つ戦略 |
基本競争戦略は、他社と異なった戦略で自社の製品やサービスで優位性を獲得するための戦略を唱えています。非常に有名で基本となるフレームワークなので、ぜひ押さえておきましょう。
⑤ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスは比較的新しいフレームワークで、ビジネスモデルにおける重要な要素がまとめられ、それぞれの関連性を一目で把握できるのが特長です。
基本的な使い方としては、書き入れたポストイットを表に張り、新しい事業展開の発想の整理に使ったり変更や組み換えなどが起こった場合に簡単に変更ができる便利なフレームワークです。
ビジネスモデルキャンバスは、以下の9つから成ります。
顧客 | ターゲットとなる顧客の属性 |
価値提案 | 顧客が商品・サービスを選ぶ理由 |
チャネル | 顧客に価値を提供できる手段(流通や認知、アフターサービス) |
顧客との関係 | 顧客と長さと深さの関係性 |
収益の流れ | 収益化の手段や収益構造を構成する要素 |
キーリソース | 価値を生み出すために必要な経営資源 |
主要活動 | 価値を提供や強化するための主要な活動 |
キーパートナー | 主要となる協業や提携パートナー |
コスト構造 | 事業を運営する中でかかるコスト構造 |
この表に沿って事業全体を把握することができるため、優位性や整合性を確認したうえで課題チェックできるのがメリットです。
6. 事業展開の経営計画策定
これまで解説したとおり、事業展開を立ち上げるうえで重要な指標となる経営計画を立てることは必要です。この事業展開がどのような成り行きで立ち上がったにせよ、しっかりとした計画書を作成しましょう。
急速に変化してく市場に適応し、事業展開が将来進むべき方向性を示すことで、目標に向かってどのような対策でどのような予算編成を行うかなどが明確化されます。
ここでは、経営計画を策定する3つのポイントをご紹介します。
- 環境分析を行う
- 戦略策定を行う
- 行動計画策定を行う
①環境分析を行う
最初に、参入を検討している市場の環境分析を行います。ひとつの指標として、売上規模はどのくらいが目標になるかが決まっていれば、参入する市場が絞れます。売上目標が100億円規模と10億円規模とでは、参入できる市場の数も異なります。
まずは市場規模を検討するところから考え、そのうえで顧客ニーズの調査や自社の知的資産が生かせるかなど、市場と自社の環境分析を行いましょう。
②戦略策定を行う
戦略策定は、経営計画を策定するうえでたいへん重要になる部分です。先述のとおり、フレームワークを使いながら、どのような市場に向けて、商品やサービス、チャネル(販路)、商品やサービスの価格、マネタイズ、集客やプランなど戦略を固めます。
その中でも忘れてはならないのが、顧客のニーズに応えられるサービス・商品であることです。ニーズがあっても、解決できる内容でなければ市場で成功はなしえません。
③行動計画策定を行う
事業戦略ができれば、あとは事業を成功させるために行動スケジュールを作成します。プロジェクトに必要な予算や人数や工数、プロジェクトに必要な人材像も明確にします。
また、プロジェクトを現場に落とし込んだ際も、詳細なスケジュールや役割分担などはもちろん必要です。
7. 事業展開戦略の注意点
事業戦略では、計画を作るさいについ主観的になり、肝心なセオリーを見落としがちです。プロジェクトが進行してからでは、軌道修正はできません。ここでは、戦略を検討する上での注意点を紹介していきます。
ここでは、戦略を検討するうえでの注意点を紹介していきます。
- 既存事業との関連性・シナジー効果があること
- 自社ではない企業との連携ができること
- 自社の経営理念・時流などにマッチしていること
①既存事業との関連性・シナジー効果があること
先述のとおり、既存の事業とシナジー効果があることはとても重要です。ゼロから事業を始めるよりコストやノウハウ醸成に時間もかからず、知的資産を流用することでさらに既存の事業と相乗効果が生み出せます。
ただし、シナジー効果があるからといって、逆にコストや期間がかかりすぎる計画はありえませんので、費用対効果に優れていることも必要な条件です。
②自社ではない企業との連携ができること
IoTが進む中で、これまでの業界の垣根を越えた消費社会へと進んでいきます。いまだにその業界の商流にとらわれ、新しい事業への取り組みに二の足を踏む企業はたくさんあります。
そんな現状を背景に、これからの新規事業の取り組みとして起案する際には、業界を越えた異業種との連携による方法も検討しましょう。
③自社の経営理念・時流などにマッチしていること
新規事業への参入は、既存事業の資産や資源を生かせるのはいうまでもありませんが、その根本には自社の経営理念や時代にあっているかを検討材料にすることも忘れてはいけません。経営理念とは異なる事業で進出したところで、問題は必ず発生します。
また、時代に合っていることも重要です。たとえ成功できたとしても陳腐化しやすく、長期にわたり利益を上げる事業にはならない可能性が高くなります。
8. 事業展開のご相談はM&A総合研究所まで
M&Aの事業展開ではどうしても自社の都合にとらわれ、上記の注意点を見落とし客観的な買収判断ができないことは失敗の要因ともなります。
事業展開を成功させるためには、中立的な立場でM&Aでの事業展開を相談・サポートができるM&A専門家の協力が必要です。
M&A総合研究所では、M&Aや事業展開に精通したM&Aアドバイザーが親身になってフルサポートいたします。
料金体系は完全成功報酬制(譲渡企業様のみ)です。着手金は譲渡企業様・譲受企業様ともに無料となっておりますので、安心してご相談いただけます。
無料相談もお受けしていますので、M&A・事業展開のご相談の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
9. 事業展開の成功・失敗事例
事業展開では、成功より失敗する確率の方が大きいのは実情です。先に挙げたフレームワークや起案する際のポイントや調査分析などを慎重に行ったとしてもなかなか成功することが難しく、参入する企業が多ければ差別化することも容易ではありません。
ここでは、さまざまな事業展開の成功と失敗例を紹介しながら、成功と失敗の要因を探っていきます。
事業展開の成功事例
まずは、事業展開の成功事例を4つ紹介していきます。
- 富士通
- ファミリーマート
- 味の素
- 富士フイルム
①富士通
富士通は誰もが知る国内最大手のエレクトロニクスメーカーであり、ITC(情報通信技術)市場において国内で実績がある会社です。
その富士通が、FITEC(古賀インフォメーション・テクノロジー)の発行株式の51%を取得しました。この会社は、光ファイバーや電子部品で実績がある古賀電工の情報システム部が独立した会社です。
富士通がFITECを買収することで、古賀電工との関係強化とともにITシステムを支え、古賀電工のスキルやノウハウを吸収しながら製造業向けのソリューションの強化を図りました。この事例は、シナジー効果を生かした買収といえるでしょう。
②ファミリーマート
ファミリーマートは、今でこそサークルK・サンクスを運営するユニーグループHDと経営統合し、コンビニエンス事業を「ファミリーマート」に統一して国内でも店舗数はセブンイレブンに次ぐ第二位まで成長しています。
しかし、過去には他社よりいち早く海外進出を行い、国内店舗数より海外店舗数の方が多い時代もありました。
ファミリーマートの海外進出の成功要因は、国内で培った主力製品やサービスを現地の習慣や風土にあわせてアレンジし、消費者の嗜好にあわせてサービスを変化させた店舗展開を行ったことであるといえるでしょう。
③味の素
味の素は日本を代表するグローバル企業で、1920年代から海外展開を行い、売上規模の約5割が海外という比率になっています。
同社は味の素の製造から始まり、食品事業で自社商品を拡充してアミノ酸の製法や利用法の開発で得た技術力と研究開発の実績を生かした動物用栄養、化成品、医療用原薬など、シナジーを活かした事業展開を行い成功を収めています。
④富士フイルム
富士フイルムの本業がカメラの会社だと思われている人もまだ多いかもしれませんが、今では写真関連のイメージソリューションは14%を占めるほどです。売上の大半は、オフィス印刷機器と医療・印刷・液晶ディスプレイ関連事業が占めています。
富士フイルムはカメラ関連事業が売上を支えてきましたが、2000年代以降は急激に売上が落ち込みました。
経営改革は写真部門のリストラに始まり、次々とM&Aを実施。富士ゼロックス子会社を買収して液晶ディスプレイ事業に参入し、2006年から現在の写真なくした富士フイルムに変更して、化粧品や医療分野に参入し成功を収めています。
富士フイルムの事業展開は、自社の知見がある近い業界や技術が応用できる製品開発などシナジーが見込める近隣の市場へ参入したことが成功の秘訣だといえるでしょう。
事業展開の失敗事例
積極的に事業展開したまでは良かったのですが、やはり自社の強みを理解せずに失敗した例や巨額の費用を積んだM&Aでも成果は望めず売却した事例などを紹介します。
- ファーストリテイリング
- 丸紅
- キリンHD
- ソニー
①ファーストリテイリング
ユニクロで有名なファーストリテイリングですが、今やアパレルでも世界規模の会社に成長しています。成功を果たした同社でも、過去に失敗例があります。それは、2002年に野菜の通販事業に参入し失敗を経験しています。
これは、自社の強みを生かすことなく経験のない新しい分野に参入したため失敗したケースです。一方で同社の低価格ブランドのGUを成功に導いたのは、SPA(製造小売)という事業形態であり、同社の強みを生かしての成功でした。
②丸紅
丸紅は2012年に、アメリカの穀物商社であるガビロンを2,700億円で買収し、丸紅穀物部門との統合でシナジーが発揮されるどころか、中国での寡占化を懸念した厳しい処置が課せられたため事業参入が厳しくなり、ガビロンの資産価値が損なわれました。
のれん代の500億の減損計上する大失態となり、グローバル展開が求められる一方で、M&Aでの進出で起こりうる負の代償といえます。
③キリンHD
キリンHDは2011年に海外成長戦略としてブラジルのスキンカリオールを買収しましたが、日本から現地子会社を管理することが困難になり、2015年に営業損失117億円を計上しました。
体制の見直しで売却する見通しになり、約3,000億で買収した会社を損切りでわずか770億で売却しました。前項と同様に、海外の子会社を運営するのが容易ではないことが伺えます。
④ソニー
ソニーが、約30年前に1989年にアメリカのコロンビア・ピクチャーズ・エンターテイメントを約5,000億円で買収しましたが、1995年に営業権の減損損失として2,652億円計上しました。
映画会社の営業権は興行収入の高い作品を生み出せる期待の高さが表れた対価ですが、その見通しが悪いという判断からの損失計上です。
ただし、この買収はその後持ち直し、今ではソニーの収益の柱になっています。
10. まとめ
本記事では、事業展開の方法や考え方・戦略、フレームワークや成功・失敗事例も紹介しました。事業展開を成功させるためには、事業展開の経営計画の策定をしっかりと行い、設定したゴールに向かって行動することが重要です。
【事業展開の方法】
- 事業展開を計画する
- 事業展開のためのチームを作る
- 事業展開の戦略会議
- 経営計画を策定・実行
【事業展開を考える理由】
- M&A後の展開として
- 海外進出を行うため
- 既存事業が衰退傾向にあるため
- 既存事業とのシナジー効果があるため
- 企業PRとして
【事業展開の考え方・戦略】
- 経営ビジョンを明確にする
- 市場調査・分野調査
- 顧客の立場に立った視点
- 需要の喚起・需要への供給
- 時間・タスク管理の徹底
- 信頼できる第三者の確保
- 広告戦略やマーケティングの実施
- 主要商品の生産コストダウン
- 消費者の信頼を得る
- 新しい市場開拓
【事業展開のフレームワーク】
- アンゾフの成長マトリクス
- プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)
- PDCAサイクル
- 基本競争戦略
- ビジネスモデルキャンバス
【事業展開の経営計画策定】
- 環境分析を行う
- 戦略策定を行う
- 行動計画策定を行う
【事業展開戦略の注意点】
- 既存事業との関連性・シナジー効果があること
- 自社ではない企業との連携が出来ること
- 自社の経営理念・時流などにマッチしていること
M&Aを活用すれば経営資源と短期間での新規市場参入が可能になり、市場が激変する中でも変化に対応できます。
しかし、M&Aを成功させるためには専門知識・見解を要するため、実績・信頼のあるM&A仲介会社に相談することがカギといえるでしょう。
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