事業承継とは?事業承継の方法・流れやポイントを徹底解説!

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企業情報第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

会社が存続していくためには事業承継が欠かせません。しかし、その方法や手続き、流れやポイントなどは意外と知られていないものです。そこで、事業承継の方法・手順の流れや手続き、成功のポイント、M&Aでの事業承継などについて解説します。

目次

  1. 事業承継とは
  2. 中小企業における事業承継の動向・課題
  3. 中小企業経営者が事業承継を行う理由
  4. 事業承継を誰に行うのか?3つの方法を紹介
  5. 事業承継を実行するための6つの流れ
  6. 事業承継で課される税金
  7. 事業承継の失敗要因とリスク
  8. 事業承継を成功させる5つのポイント
  9. 事業承継に関する相談先
  10. 事業承継のまとめ
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1. 事業承継とは

事業承継とは、事業を次の経営者(後継者)に引き継ぐことです。

事業承継をすることで、次世代へと会社が受け継がれていきます。もし、事業承継をしなければ経営者が引退するタイミングで会社を廃業しなければなりません。

せっかく築いてきた会社を廃業したいと考える経営者は少ないでしょう。経営者の引退後も会社を継続させていきたいのであれば、いつかは事業承継をしなければなりません

まずは、事業承継の定義を確認していきましょう。

事業承継の定義

「事業承継」を定義すると、会社の経営権や経営理念、資産・負債など会社に関する全てのものを引き継ぐことです。詳細は後述しますが、誰を後継者にするかによって、事業承継は3種類に大別されます。

しかし、どの後継者の場合においても明確なのは、単に会社の経営権を握るだけが事業承継の全てではなく、上述したように、それに付随して理念や負債も背負う覚悟がなければ、新たな経営者となることは難しいでしょう。

社長交代ではなく、事業承継である理由

事業承継は単なる社長の交代ではありません。

事業承継は、基本的に中小企業を想定した言葉です。中小企業では、大企業と違って、会社で一つの事業だけを展開していますし、会社の所有と経営が分離していません。したがって、社長が交代するということは、同時に、事業が承継されることを意味しているのです。

だから、中小企業にとって、社長が交代することは、すなわち、事業を継承するということになります。

事業承継の構成要素

この項では、事業承継の原点に立ち返って、「事業承継で具体的に承継するモノ」について考えてみましょう。事業承継では、以下の3つのモノを承継することになります。

  1. 経営権
  2. 事業資産
  3. 知的資産

これら全てのものを引き継いでこそ、事業承継の成功といえます。順番に確認しましょう。

人(経営権)

会社の経営権とは、言い換えれば支配権です。どのような規模の中小企業であれ、株式会社の最高意思決定機関は株主総会であり、そこで、半数を超える議決権を所有していれば、経営権を有していることになります。

ただし、議決権の所有比率(=所有株式数)によって、経営権の大きさも異なるので注意が必要です。

まず、株主総会において、議決権の半数超で決議できるのは普通決議に分類される議題になります。より重要な決定を行う特別決議を議決するためには、3分の2以上の議決権が必要です。

また、議決権の3分の1超を持つ株主は、特別決議で拒否権を持ちます。

中小企業では経営者が100%の株式を持っていることが多いですが、親族内事業承継で後継者が相続で株式を引き継ごうとする場合には、注意が必要です。

それは、法定相続人が複数いる場合、一般的な遺産分与だと株式が分散してしまうリスクがあります。そうなると後継者の経営基盤が揺らいでしまうので対策が必要です。

ここは、やはり現経営者が生前のうちに、後継者に全ての株式が渡るよう遺言などを手配しておくことが必須でしょう。

さらに、経営者が100%の株式を所有しておらず、親族や役員なども会社の株式を持っているようなケースの場合も、後継者が苦労をしないように、その株式の取り扱いについて現経営者が何らかの策を施しておく必要があるでしょう。

資産

中小企業の場合、事業に必要な資産が会社名義ではなく、経営者の個人名義であることも多々あります。この場合、それらの資産も後継者に譲渡することが必要です。

しかし、それら資産をこれまで同様に後継者個人に引き渡すよりも、会社が買い取るなどの手続きを行う方がよいかもしれません。

たとえば、親族内事業承継では、法定相続人が複数いる場合、株式だけでなく資産まで後継者が集中して相続するとなると、遺産相続争いに発展する可能性もあります。

社内事業承継の場合でも、後継者が資産を買い取る資金まで用意するのは困難かもしれませんし、贈与を受けた場合には贈与税の納付義務が生じてしまいます。

以上を鑑みると、親族内事業承継や社内事業承継の場合、経営者個人名義の事業資産は、会社として買い取る手続きを踏むのが得策といえるでしょう。

知的資産

事業承継を行うなら、知的資産も引き継がなければなりません。知的資産とは、現経営者の経営ノウハウや経営理念などの目に見えない資産のことです。

経営権(株式)と事業資産を引き継いだだけでは、事業承継を成功させられません。なぜなら、現経営者の知的資産があってこその会社経営だったはずだからです。

したがって、後継者となる人には、知的資産もしっかりと承継してもらいましょう。知的資産を引き継ぐには時間が必要なので、早い段階から事業承継について考えておきましょう。

事業承継とは、目に見える資産だけではなく、知的資産を引き継ぐことも非常に重要です。

事業譲渡・事業継承との違い

字面が類似しているせいか、事業承継と事業譲渡、事業継承が混同されることがあります。

まず、事業譲渡とは、M&Aの手法の一つです。会社を丸ごと買い手に引き渡す株式譲渡と違って、会社組織は手元に残し、事業や資産を部分的に買い手に売却します(場合によっては全ての事業を売却することもある)。

事業譲渡の手法を用いて、特定の事業を買い手に承継してもらうことが可能ですが、事業譲渡はあくまでも手法の呼称であって、事業承継そのものとは全く異なる言葉です。

次に、事業継承ですが、こちらは詳細レベルでは事業承継とは違う点があるものの、広義ではほぼ同じ意味を有すると考えても、差し支えはないでしょう。

なお、事業承継と事業継承の違いに関しては、以下の記事で内容が解説されています。ご参照ください。

【関連】事業承継と事業継承の違いを解説!正しいのはどっち?読み方は?

中小企業庁は「事業承継」表記を採用

事業を引き継ぐという意味の言葉としては、事業継承と事業承継という2つの言葉があります。この2つの言葉について、明確な区別はないものの、中小企業庁が日本の中小企業の動向についてまとめた「中小企業白書」では、事業承継という言葉が用いられています。

2. 中小企業における事業承継の動向・課題

中小企業の多くは、後継者不足に悩まされています。

2020(令和2)年1月に日本政策金融公庫総合研究所が発表した「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)」によると、廃業予定企業は52.6%にも上るのが現実です。

日本における企業数の比率は、中小企業が約99%を占めていますから、これは由々しき問題といえるでしょう。
 

中小企業にとって事業承継は喫緊の課題

廃業予定企業の主たるその理由は、「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」が43.2%、「後継者難」が29.0%、「事業に将来性がない」が24.4%でした。

後継者難を明確に理由とする企業は全体の約3割で2番目ですが、1番目の理由を挙げている企業の中には、身近に適切な後継者がいないがゆえに、「誰かに継いでもらいたいと思っていない」という心情になっているという意見もあります。

実際、廃業予定企業の経営者年齢の内訳は、60歳代が32.7%、70歳以上が36.6%となっており、合計すると全体の69.3%です。

高齢で引退間近で身近に後継者候補がいなければ、「廃業するしかない」と腹をくくらざるを得ないのかもしれません。

しかし、本当にこの比率・ペースで中小企業の廃業が進行してしまうと、地域経済、そして日本経済全体も大きな打撃を受けるのは必至です。

これを問題視した国および各自治体では、近年、中小企業の事業承継促進のために、事業引継ぎ支援センターなどの公的支援機関を設置したり、法改正し事業承継税制を敷いたりするなど、支援事業に力を入れています。

したがって、中小企業経営者自身においても、事業承継をあきらめて廃業を選択する前に、M&Aを含めた事業承継について、よく検討することが望ましいでしょう。

中小企業を取り巻く現状

中小企業において、なぜ事業承継という問題が生じているのでしょうか。それは、中小企業を取り巻く環境に要因があります。以下では、中小企業を取り巻く環境について説明をしていきます。

企業数の現状・推移

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/chusho/b1_3_1.html

上の図表は、企業数の推移を示したものです。

図表を確認してみると、企業の規模を問わず、年々減少傾向にあり、直近の2016年では359万社となっていることが確認できます。

このうち、中小企業は358万社であり、その内訳は小規模企業が305万社、中規模企業は53万社です。

中小企業が年々減少している理由の一つに、後継者不足による解散・廃業を挙げられます。しかも、新型コロナウイルス感染症により、中小企業の解散・廃業はますます加速していると考えられます。

経営者の高齢化

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/chusho/b1_3_2.html

上の図表は、社長の年齢分布を示したものです。

図表を確認すると、70代以上の占める割合が年々増加していることが分かります。40代・50代の経営者の構成比はここ6年でほとんど変わっていませんから、恐らくこの年代の経営者が今後増えるというのは考えにくいでしょう。

一方、2018年では40代以下の構成比が減少傾向にあることが示されています。この図表をみると、総じて、経営者の高齢化が年々進んでいっていることがわかります。

このまま経営者の高齢化が進んでいけば、年齢を理由として引退を考える経営者が増えると考えられます。

経営者が引退する際、そのまま事業を継続するか、会社を清算したり、廃業するかという選択を必ず迫られます。

日本経済にとって、中小企業がこれまで培ってきた事業や貴重な経営資源を後継者へ引き継いでいく(承継する)ことは極めて重要な課題です。

しかし、社長の年齢別に、後継者がいるのかどうかを確認してみると、60代では約50%、70代は約40%、80代は約30%で後継者が不在となっていることが示されています。つまり、2社に1社程度は後継者がいないのが実状なのです。

経営者の年齢が高い企業においても、後継者が不在である企業が多く存在している現状があります。

中小企業における事業承継方法の傾向

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei5.pdf

この図表は、経営者の在任期間別の現経営者と先代経営者との関係を示したものです。

この図表を確認すると、直近10年では法人経営者の親族内承継の割合が急減していることがわかります。つまり、ほとんどの企業において新社長に親族が就任することは減少傾向にあることがわかるのです。その反面、従業員や社外の第三者といった親族外承継が6割超に達しています。

中小企業を悩ませる事業承継問題

ここまで見てきたように、中小企業にとって、事業承継という問題は極めて深刻なものです。

経営者の高齢化が進むなかで、なかなか後継者候補が見つからず、解散・廃業に追い込まれる企業も少なくありません。

事業承継の便利な相談先

後継者がいないために事業承継できない場合は、M&Aを活用する方法が効果的です。M&Aによる事業承継をご検討の際は、M&A総合研究所へご相談ください。

豊富な経験と知識を持つM&Aアドバイザーが専任となり、親身になって一貫サポートいたします。当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。

無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

3. 中小企業経営者が事業承継を行う理由

中小企業経営者は、なぜ事業を継承しようとするのでしょうか?ここでは、その理由について考察していきましょう。

①後継者不在状態からの脱却

出典:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20191107_01.html

東京商工リサーチの調べによれば、中小企業で後継者が決まっていない後継者不在率は55.6%と、半数以上の企業に及ぶことが示されています。

これをみれば、中小企業にとって後継者問題がいかに重要な問題であるかがわかるはずです。

年齢別では、60代が40.9%、70代が29.3%、80代が23.8%で、代表者の高齢化が後継者難に拍車をかけている状況も同時に示されています。

事業の円滑な承継には数年の準備が必要となるのが一般的ですが、経営者不在という問題を抱えている中小企業では、事前に後継者を調整することもままなりません。

事業承継問題の解決には時間がかかりますから、この問題がすぐに解決することはありません。

当面、経営者の高齢化や生産年齢人口の減少に歯止めがかからないだけに、持続的な経済成長の維持には事業譲渡やM&Aを含む事業承継の促進が一段と求められます。
 

②人材不足の解消

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap1_web.pdf

次に、中小企業における人材不足の状況について確認していきましょう。

この図表が示しているのは、運輸業の81.9%、建設業の71.4%を始めとして、各業種において労働人材不足の傾向が強まっているということです。

労働人材の不足に加えて、中核人材についても、「その他」を除く各業種において、おおむね半数以上の企業が不足感を感じいることが示されています。

③自社株問題の解決

中小企業の多くは、会社のオーナーである社長が株式のほとんどを保有しています。つまり、会社の所有と経営が分離しておらず、一致しているのです。

その場合、会社経営者と所有者が同じですから、経営者がいなくなってしまえば、所有者もいなくなることになります。つまり、会社が存続できないというわけです。

だからこそ、中小企業の経営者は、自社の株式を後継者に承継したいと考えます。それは、会社を継続することに直結するからです。

4. 事業承継を誰に行うのか?3つの方法を紹介

図解:事業承継

図解:事業承継

事業承継をするためには、主として以下の3つの方法に大別されます。

  1. 親族内事業承継
  2. 社内事業承継
  3. M&Aによる事業承継

それぞれの事業承継方法の違いは、呼称でもわかりますが、誰が後継者であるかという点です。

従来、日本の中小企業においては、親族内事業承継が多数を占めてきましたが、昨今は、少子化という社会構造の問題と、仕事に対する価値観の多様化という社会思想の変化などが主原因となって、親の後を継ぐ子どもが著しく減りました

また、次善の策として、社内事業承継も有力な方法ですが、後継者側の資金面の問題などもあって、どの会社でも使える方法ではありません。

そこで、新たな有力な事業承継の方法として近年、脚光を浴びているのが、M&Aにより第三者に事業承継する方法です。

それぞれの事業承継方法にあるメリットやデメリットも含め、順番に内容を確認しましょう。

親族内事業承継

親族内承継とは、配偶者や子どもなど、経営者の親族を後継者とする事業承継の方法です。

親族への事業承継のメリットは、後継者選定が簡単に行えることです。また、株式や事業資産の引き継ぎも贈与以外に相続という方法が選べます。

ただし、親族への事業承継の場合、後継者教育をしっかり行う手順が重要です。実際に従業員や役員として会社に従事させ、経営者となるための準備をさせましょう。

従業員や役員、取引先などから後継者に不満が出ないようにする、地ならしも必要です。

なお、親族内事業承継は、後継者本人からも後日、不満が出ることがあります。当初はやる気があるように思えていた後継者が、実際に経営についての勉強をし始めるとモチベーションが低下してしまうことがあります。

後継者教育の途中においては、こまめに話し合いを重ねて事業承継への意思を確認しておき、場合によっては、向き不向きの判断を厳密に考える必要もあるでしょう。

親族内事業承継のメリット

親族内事業承継の主なメリットには、以下の3つがあります。

【親族内事業承継のメリット】

  • 従業員や取引先から心情的に受け入れられやすい
  • 後継者を教育する時間を十分とれる
  • 相続等によって財産や株式を後継者に移転できるので、所有と経営の分離を回避できる。

現経営者の親族であれば、従業員や取引先から受け入れられやすいというメリットがあります。

元々会社の従業員として働いている場合はもちろん、ほかの職業に就いていて事業承継のために転職してくる場合でも、現経営者の親族であれば安心感があります。

また、親族を後継者にすると、実際に事業承継を行うかなり前の時期から、後継者を教育できます。

M&Aによる事業承継では、通常、実際に事業承継が行われる直前まで後継者が分からないため、こういった教育期間をとることはできません。

事業承継後の教育期間についても、旧経営者の親族であればじっくりと時間をかけて教育できます。

加えて、相続によって会社の株式を移転できるため、会社から株式が流出するのを防げます。

親族内事業承継のデメリット

親族内事業承継の主なデメリットには、以下の2つがあります。

【親族内事業承継のデメリット】

  • 後継者に適した親族がいるとは限らない
  • 資産の相続をめぐりトラブルになることがある

身近な親族に後継者がみつかればそれが一番よいですが、親族内に後継者に適した人物がみつかるとは限らないのは、デメリットの一つといえるでしょう。

自分の子供を後継者にしたいと考えていても、子供が経営者としての素質がないというのはよくある事例です。

経営の資質と意欲を持っている後継者が自分の身内にいるとは限らないのです。

親族内事業承継では、事業にかかる資産を相続や贈与で後継者に承継するのが一般的ですが、この場合は、後継者以外の親族と相続トラブルにならないように注意する必要があります。

旧経営者が会社の株式や不動産などを個人名義で所有していた場合、旧経営者が死亡すると本来は法定相続人に資産が相続されます。

それが会社の後継者に相続されるとなれば、資産を相続できるはずだった親族から反発を招く恐れもあります。

社内事業承継

社内事業承継とは、会社の従業員や役員を後継者とする事業承継の方法です。

社内事業承継のメリットは、これまで会社の事業に携わり、それをよく知っている人物が後継者であることです。また、単に事業への理解があるだけではなく、人物像や経営者の向き不向きについて判断がしやすいこともメリットになります。

ただし、社内事業承継では、後継者は親族ではありませんから、経営権に直結する会社の株式の引き渡しを相続によっては行えません。つまり、後継者は、株式の買い取りが必須で、そのための資金を用意する必要があります。

この資金が用意できないために後継者候補がそれを辞退し、社内事業承継を断念せざるを得ないというケースも少なくありません。この問題の一つの解決策としては、早い段階から後継者を選定し、事業承継を実施するまで長い期間を置くことで、後継者が資金準備できるようになるかもしれません。

また、それ以外にも何らかの方法がないか、公的支援機関などに相談してみるのもよいでしょう。

社内事業承継のメリット

社内事業承継の主なメリットには、以下の2つがあります。

【社内事業承継のメリット】

  • 事業内容や会社の内情に詳しい人間を後継者に選べる
  • 親族内事業承継に比べ後継者の選択肢が多い

血縁がなくとも、長い間会社で働いている従業員や役員であれば、会社の事業内容や内情をよく把握していると考えられます。また、会社内の人間関係についても理解しているはずです。

そのため、社内の後継者に事業を継承すれば、役員・従業員の士気向上が期待できたり、役員・従業員から理解を得やすいと言えるでしょう。

近年では、事業承継に社内事業承継を選択する企業が増えてきています。

会社をよく知る人物が後継者になれば、会社と全く関係がない人物を後継者にするのに比べて安心感があるのは大きな利点です。

一般的に、社内事業承継は、親族内事業承継に比べて後継者候補の選択肢が多いのもメリットの一つです。従業員や役員を選択肢とするので、比較的幅広い選択肢から後継者を選べます。

社内事業承継のデメリット

社内事業承継の主なデメリットには、以下の2つがあります。

【社内事業承継のデメリット】

  • 買収資金の捻出が困難なことがある
  • 優秀な従業員が優秀な経営者とは限らない
  • 個人債務保証の引き継ぎが問題となりやすい

社内事業承継では、社内事業承継と違って資産の相続や贈与ができないので、株式などの資産の承継は売却によって行われます。

しかし、従業員として給与所得で生活していた人が、会社の株式を買い取れるだけの資金を持っていることほとんどありません。

もし、従業員が会社の買収資金を捻出できない場合は、MBOなどの資金調達手段を利用しなければならず、手続きに手間がかかってしまいます。

優秀な従業員を後継者に据えても、その従業員が経営者として手腕を振るえるかどうかは分かりません。

従業員が経営者として素質があるかどうかは、実際に事業承継してみないと分からない部分が多く、不確定要素があるはデメリットといえるでしょう。

外部から招聘した第三者への事業承継

親族内にも、会社にも、適切な後継者候補がいないのであれば、外部から招聘するという方法もあります。

「事業を何らかの形で他者に引継ぎたい」と考えている中小企業の多くがこの方法による事業の継承を行っています。

外部から第三者を招聘する事業継承は、中小企業の後継者不在に直面した経営者の後継者問題を解決する有力な選択肢として認識されるようになりました。この方法は、一般に、第三者への事業承継と呼ばれます。

以下では、第三者への事業承継のメリット・デメリットについて説明していきます。

外部から招聘した第三者への事業承継のメリット

第三者への事業承継のメリットとしては以下の2点を挙げられます。

  • 身近に後継者がいない場合でも、広く候補者を募れる。
  • 現在の経営者が会社売却の利益を得られる

身内や社内に適切な後継者候補が見つからなかったとしても、適切な人材を外部に見つけられるかもしれません。候補者の数自体は多くなる分、適切な人材が後継者候補となる可能性が高くなります。

また、現在の経営者が保有する株式を後継者に売却して会社経営を任せるので、会社を売却した利益を現経営者は得られます。

外部から招聘した第三者への事業承継のデメリット

第三者への事業承継のデメリットとしては以下の2点を挙げられます。

  • 希望する条件を満たすような候補者(買い手)を見つけるのが難しい
  • 役員や従業員から反発を招きやすい(理解を得られない)

第三者を候補者として招聘する場合、候補者の数そのものは増えるかもしれません。しかし、会社の提示する条件に合致する候補者となるとかなり数が絞られてしまいます。経営方針や給与・待遇面などで折り合いがつかないこともままあります。

また、全く会社のことを知らない第三者が経営に携わるわけですから、これまで会社にいた役員や従業員からは反発されやすくなります。

M&Aによる事業承継

M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」の略で、合併(Mergers)と買収(Acquisitions)のことです。

親族内事業承継も社内事業承継も不可能な場合、廃業してしまう経営者も多かったのですが、近年は大企業だけでなく中小企業にもM&Aが浸透した結果、事業承継の方法としてM&Aを選択するケースが増えてきました。

M&Aの買い手側は、何らかの魅力を感じて会社の買収を行うわけですから、M&Aが成立すれば、買収された会社は基本的にはそのまま存続し、事業も継続されていきます。新たな経営者は第三者ではありますが、これで後継者への事業承継が実現します。

また、M&Aの買い手側は資金力のある相手であることが多いですから、売却した会社や事業は経営が安定し、さらに業績の拡大も見込めます。

そして、会社・事業を売却した経営者は、多額の売却益が得られることも大きなメリットでしょう。

株式譲渡

事業譲渡

合併

会社合併

事業承継をしなければ「廃業」するしかない

上述した3つの方法で事業承継をしない場合、最終的には廃業の道を選ばざるを得ません。

廃業の場合、業種によって多少の差はありますが、設備や施設、在庫品などの廃棄コストが発生します。また、長年、従事してくれた社員たちを解雇し、路頭に迷わせるのは必至です。

さらに、取引先の事業にも大きなダメージを与えることになります。廃業は何とか回避して、事業承継を成功させる方法を取るべきでしょう。

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5. 事業承継を実行するための6つの流れ

「事業承継を実際に行っていこう」と思っても、手続きなどの具体的な手順がわからない場合も多いかもしれません。ここからは、事業承継を行う際に必要となる手順を見ていきましょう。

事業承継を行う際に必要となる手順は、以下の6つです。

  1. 会社の状況把握
  2. 後継者候補の選定
  3. 事業計画書の作成
  4. 関係者への説明
  5. 経営改善
  6. 具体的作業への着手

どの手順も、事業承継を成功させるためには重要です。それぞれの手順について、順番に確認していきましょう。

①会社の状況・後継者の把握

まずは、事業承継したいと考えている会社の状況を把握しましょう。会社の状況とは、以下のようなものです。

  • 会社の資産状況
  • 株式保有状況
  • 株式評価額

これらの数値は経営をしているなら気にかけていることが多いと思いますが、あらためて確認したほうがよいです。

まずは、資産状況を知るために財務諸表を見てみましょう。株式については特に専門的な知識も必要となるので、少しでもわからないことはM&Aアドバイザーに相談してみるとよいでしょう。

②経営改善・企業価値の磨き上げ

後継者によりよい状態で事業を引き継いでもらうためには、経営改善も必要です。経営改善とは、会社の財政状態をよくすることや、従業員のスキルを高めることなどがあります。

特に財政面では、不要な資産は売却して負債があるならできるだけ減らしましょう。M&Aアドバイザーによっては、経営改善もしっかりアドバイスをくれることがあるので、まずは相談してみるとよいでしょう。

③事業承継計画書の作成・M&A相手企業とのマッチング

事業承継をするなら、計画書を作成することも大切です。計画をしっかり立てたうえで行動に移すことで、失敗の可能性を下げられます。

まずは、会社の状況と後継者候補について、具体的に書くのがよいでしょう。後継者候補にどこまで教育ができていて、これから何を教えなければならないのか整理すれば行動しやすくなります。

計画を立てる際には、M&Aアドバイザーに客観的なアドバイスをもらいながら進めると安心です。無理のない計画を立て、着実に実行していきましょう。

④関係者への説明

事業承継が確実なものとなった段階で、関係者への説明を行います。関係者とは、取引先や従業員です。

説明の時期が早すぎると、取引先に不信感を持たれて離れられたり、従業員が次の職場を見つけるためにすぐに辞めてしまったりするかもしれません。もしも従業員や取引先がいなくなれば、後継者候補も引継ぎを止めてしまう可能性があります。

したがって、事業承継をすることが間違いないという状況になってから説明を行いましょう。関係者への説明を行うまでは、情報が漏れないように注意が必要です。

⑥具体的作業への着手

全ての手続きが完了したら、計画書に基づいて具体的作業に取り組みます。後継者に経営権を譲り、事業を引き継いでもらいましょう。

ただし、計画書どおりのタイミングで引き継ぐとなると、後継者の教育が終わっていないということもあるかもしれません。そのような場合は、焦らずに事業の引き継ぎを遅らせるべきです。

準備が不十分なまま急いで事業承継をすると、事業承継が失敗して会社の経営が傾いてしまうかもしれません。「早めに事業承継を終わらせてしまいたい」という気持ちがある場合も、落ち着いて引き継いでいきましょう。

したがって、M&Aアドバイザーと相談しながら、ベストなタイミングで事業を引き継ぐようにしましょう。

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⑥ポスト事業承継の実施

6. 事業承継で課される税金

相続・贈与時に課される税金

相続時に課される税金

贈与時に課される税金

株式譲渡によるM&Aで課される税金

譲渡側に課される税金

譲受側に課される税金

事業譲渡によるM&Aで課される税金

譲渡側に課される税金

譲受側に課される税金

7. 事業承継の失敗要因とリスク

事業承継の失敗要因

後継者選び・教育で失敗

親族内での相続争いで失敗

社内周知で失敗

M&Aの準備不足で失敗

事業承継に失敗した場合に被るリスク

業績悪化

後継者・人材の流出

廃業

8. 事業承継を成功させる5つのポイント

事業承継を成功させるためには、以下のように5つのポイントがあります。

  1. 早めに準備する
  2. 後継者教育に力を入れる
  3. 税金対策をする
  4. 資金集めをする
  5. 遺産トラブルを回避する

事業承継を失敗させたくないなら、ポイントを押さえておくことが大切です。ポイントを知らないまま事業承継をすると、後悔する可能性が高くなってしまいます。

それぞれのポイントについて、順番に確認していきましょう。

①早めに準備する

事業承継を成功させるなら、早めに準備することが大切です。事業承継は、思い立ったその日にできるわけではありません。

事業承継とは、長期間必要なものであり、後継者教育も含めると5年以上かかるともいわれています。

したがって、経営者がリタイアしようと考え始めたのであれば、すぐにでも準備に取り掛かるのがよいでしょう。「後継者候補はいるから、すぐに引継げるだろう」という考えは捨ててください。

できるだけ短期間で事業を引き継ぎたいなら、経営能力のある人にM&Aで事業承継してもらいましょう。そうすれば、最低限の後継者教育だけですませられます。

②後継者教育に力を入れる

事業承継の成功のために、後継者教育は欠かせません。特に、親族内事業承継なら、経営経験のない後継者に事業を引き継ぐこともよくあります。

そのような場合には、基礎的な経営学から徹底的に教え込むことが必要です。後継者教育の手を抜いてしまうと、リタイア後も会社経営が心配で自分の生活が楽しめなくなります。

M&Aで後継者を見つけるときも、自社の経営理念などをしっかりと引き継いでもらうようにしてください。

③税金対策をする

事業承継は、自社株を後継者に引き継ぐので、税金に注意が必要です。税金について考えずに事業承継をしてしまうと、後継者が納税資金を集められずに経営も失敗してしまう可能性があります。

事業承継で考えるべき税金は、後継者にかかる贈与税や相続税と、現経営者にかかる所得税です。いずれの税金も税率が一律ではなく、扱う金額が高額になるほど税金も高くなります。

したがって、事前に税理士などの専門家に、税金について相談するべきです。専門家に相談することによって、節税対策も教えてもらえます。

特に、後継者の贈与税・相続税対策には、事業承継税制による猶予制度を有効活用するとよいでしょう

事業承継税制による猶予制度

一般的な事業承継の税金対策に、事業承継税制による猶予精度があります。事業承継税制を使えば、自社株についての贈与税や相続税を猶予してもらうことが可能です。

特に2027(令和9)年までの間は、事業承継税制の特例期間となっており、贈与税・相続税の猶予割合が100%で、場合によっては免除になる場合もあるなど、優遇措置を受けられます。

ただし、その手続きは専門性が高く、士業専門家の確認も必要です。制度の理由を考えるなら、迷わず専門家の門をたたきましょう。

④資金集めをする

事業承継の際には、資金集めが必要となることがあります。

たとえば、後継者のために経営状況をよくしようと新商品を出す場合などです。新商品を考案して作り上げるためには、資金が欠かせません。そのとき、できるだけ後継者の負担とならないように、負債を作らずに資金集めをするべきです。

具体的な方法としては、事業承継補助金や特例の利用が考えられます。以下にいくつか例示します。

事業承継補助金

事業承継補助金とは、事業承継をきっかけに経営革新や事業転換に取り組む中小企業を対象とした補助金制度です。

国、都道府県、区市町村のさまざまなレベルで制度が存在し、その内容は異なります。自社の地域や事業内容、事業規模で受けられる補助金制度が変わりますので、各自治体に問い合わせしてみましょう。

中小企業信用保険法の特例

中小企業信用保険法の特例を利用して、資金を集められます。この特例は、認定を受ければ事業に必要な資金について一定の保険を別枠化してもらえるものです。

つまり、保険を別枠化することで信用保証協会の債務保証も別枠化され、金融機関からお金を借りやすくなります。既存の債務保証で悩んでいる場合には、中小企業信用保険法の特例の利用を考えてみましょう。

事業承継特別保証制度

信用保証協会が2020年4月から新たに開始した、事業承継に関する融資制度です。

一番の特色は、これまでの融資では経営者の個人保証が求められていましたが、それがなくなりました。ただし、融資申し込みには、いくつかの条件があり、資料の準備も必要です。

さらに、経営者保証コーディネーターの確認を受けた場合には、信用保証率を大幅に低減される措置が受けられます。

経営者保証コーディネーターとは、各自治体が事業承継支援のために組織している、事業承継ネットワーク事務局などが雇用・認定した専門家のことです。

詳細は信用保証協会に直接、問い合わせるか、取引のある金融機関でも相談できます。

⑤遺産トラブルを回避する

事業承継を失敗させないためには、遺産トラブルを回避することも重要です。後継者が親族のときには特に気をつけておかなければなりません。

現経営者の財産のほとんどが株式で占められているときに、遺産トラブルに発展しやすいです。後継者に株式を全て相続させると、他の相続人に平等に財産が渡らないことがあります。

そうなったときにもめないように、後継者以外の親族に事業承継への理解を持ってもらえるように事前に話し合っておくようにしましょう

遺言を残す

相続での後継者への事業承継を考えているなら、遺言を残すのが確実です。

遺言書は記載する財産の金額にもよりますが、20万円程度で作れるでしょう。心配することなく相続を迎えられることを考えれば、決して高くない金額です。

親族内に後継者がいるときは、遺言を作成しておきましょう。

【関連】事業承継に関する課題と現状を徹底解説!

9. 事業承継に関する相談先

事業承継をご予定の経営者様は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。事業承継では、経営権(株式)、事業資産、知的資産など多くのものを引き継がなければなりませんが、日々の業務をこなしながらこれらを進めていくのは難しいものです。

M&A総合研究所では、豊富な支援実績を持つM&Aアドバイザーによる専任フルサポートを行っていますので、経営者様のご負担を軽減しながらM&Aを進めていただくことができます。

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10. 事業承継のまとめ

事業承継とは、現経営者が持つ経営権(株式)、事業資産、知的資産を後継者に引き継ぐことです。

事業承継を成功させるためには、後継者選定や後継者教育、周囲への周知など、さまざまな手続きが必要です。したがって、現経営者だけで全てを行うことは難しいでしょう。

事業承継を成功させるなら、できるだけ早いタイミングで専門家に相談するのが有効です。

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