2022年06月06日更新
企業再生と事業再生の違いとは?条件、手続き、メリットを解説【成功事例あり】
企業再生とは実質的破綻状態となった企業に対して、さまざまな手法を使い経営を立ち直す手法のことです。この記事では、企業再生を行う条件、手続き、メリットについて解説し、企業再生とよく似た言葉である事業再生との違いについても紹介します。
1. 企業再生とは
企業再生とは、会社が赤字経営などで倒産状況となった場合に、赤字状態である事業の見直しや不採算事業を切り捨てるなどさまざまな手法を使用して経営状態を回復させることをいいます。
企業再生の必要性
企業再生は、会社の将来に悩む経営者の味方となる方法であり、企業を清算するよりメリットも多いです。
ただ、再生には経営者のやる気が欠かせず、再生にはどのような方法がベストなのか判断しなければなりません。まずは専門家に相談して、使える方法である企業再生を検討しましょう。
2. 企業再生と事業再生の違いとは?
ここでは事業再生の理解と、企業再生と事業再生の主な違いについて解説します。
事業再生とは
事業再生とはターンアラウンドとも呼ばれ、実施している事業を修正したり改革したりすることで今まで以上に収益を上げてその事業を再生することをいいます。
事業再生を一言でいうと、資金繰り悪化や債務超過等に陥っている企業の事業を再建し、経営の健全化を図ることです。これらは自前で実施することは容易なことではありません。事業再生のため金融機関に相談するのもひとつの手ですが、経営再建のために経営陣の右腕としてコンサルを行っている会社や法人は多くあります。
事業再生を行うためにコンサルタントへ依頼する会社や法人も多いです。
企業再生と事業再生の主な違い
現時点の法律においては企業再生・事業再生どちらの言葉に関しても、明確には分けられていません。
実際は民事再生や会社再生などの目的を意識した言葉で、企業が当事者の場合は企業再生といいます。
一方、事業再生は企業再生するために具体的な方法として考えるときに使います。
3. 企業再生のメリット
企業再生を行うことにより、多くのメリットがあります。
ここでは多くのメリットの中から、特に下記について解説します。
- 廃業・倒産・清算を避けられる
- 赤字のある場合は破産手続きをしなくてすむ
- 各種手続き・契約などの費用が軽くてすむ
- 会社自体は存続できる
- 従業員の雇用・取引先の契約が継続できる
今回は企業再生によるメリットについて解説します。
①廃業・倒産・清算を避けられる
企業再生を行い成功した場合に関しては、企業自体を継続して存続できるため、廃業・倒産・清算などの手続きを行い資金を手放す必要性がありません。
廃業・倒産・清算はデメリットが多く、経営者としては回避したいため、有効な手段です。
②赤字のある場合は破産手続きをしなくてすむ
企業再生を行うことにより、赤字のある場合は破産手続きをしなくてすむ場合があります。
赤字経営が続いてしまうと経営を継続できないため、破産手続きを行う必要があります。
しかし、企業再生を行えば債権者からの協力などにより、破産手続きを行う必要がなくなるため、企業自体を引き続き継続して行うことが可能です。
③各種手続き・契約の費用が軽くてすむ
赤字経営が続いて廃業する場合は、各種手続きや専門家への依頼などで20万円くらいの費用が必要です。
また、会社破産などを行った場合は会社の資産が全てなくなり、自分自身が個人保証を行っていると多くの負債を抱えます。
しかし、企業再生では債権者の協力などがあるため、廃業の場合とは異なり各種手続き・契約などの費用は廃業時に比べて軽く済ませることが可能です。
④会社自体は存続できる
破産の手続きを行うと経営の継続を行うことができません。しかし、企業再生を行えば、会社自体は消滅させる必要性がなく、存続できます。
今まで経営してきた会社を消滅させたくない経営者は多いです。会社を残したいと考える経営者にとって企業再生は有効な手法といえます。
⑤従業員の雇用・取引先の契約が継続できる
破産手続きを行った場合は、従業員はすべて解雇され、取引先の契約に関しても契約が解除されます。
しかし、企業再生を行った場合は雇用・取引先の契約に関しては継続して行うことが可能です。
会社を経営するにあたって、従業員の雇用確保や取引先の契約などは守りたい項目です。そのような際は、企業再生により従業員の雇用・取引先の契約を継続できます。
ただ、従業員の雇用形態に関しては異動によって状況が変化するため、従業員に対して事前に説明することが重要です。
4. 企業再生の条件
実際に企業再生を行おうとしても誰でも簡単に行えるわけではなく、ある一定の条件が必要です。
ここでは、企業再生を行うための条件について以下の内容を解説します。
- 経営者がまだ現役世代で意欲がある
- 赤字が解消され資金繰りが健全化できる
- 再生可能である
- 債権者の協力がある
①経営者がまだ現役世代で意欲がある
企業再生の条件1つ目は、経営者がまだ現役世代で意欲があることです。
企業再生を行うためには多くの時間と資金を要します。
そのため、経営者が現役世代でなく引退の近い年齢であると企業再生を行う前にリタイアする可能性が高いです。
経営者が現役世代で企業再生を行う決意と経営危機に陥った原因を冷静に分析できる能力が必要といえます。
②赤字が解消され資金繰りが健全化できる
企業再生の条件2つ目は、赤字が解消され資金繰りが健全化できることです。
企業再生を行うために民事再生などの手続きを行った結果、赤字が解消されても、その後にまた債務超過に陥ってしまう可能性もあります。
そのため、赤字が解消された後は、企業が安定して収益を上げ、資金繰りを健全化する必要があるのです。
③再生可能である
企業再生の条件3つ目は、再生可能であることです。企業再生を行える可能性が低い場合は債権者などの協力も得られにくく、企業再生するのは非常に困難です。
企業再生可能かどうかは、その企業が持つ「市場性」を重視する傾向があり、市場にとって需要があれば、社会的な意義があるため企業再生も可能と考えられます。
④債権者の協力がある
企業再生の条件4つ目は、債権者の協力があることです。企業再生を行うためには自社のみの力で企業再生を行うことは非常に困難で、債権者の協力が必要です。
特に金融機関が該当する場合が多いですが、企業の最大債権者は負債を抱える金額も大きくなります。
法的再生を行う際は最大債権者の同意が必要となり、私的再生においても最大債権者の協力が得られないと企業再生を行うことはほぼ不可能となるため、債権者の協力は非常に重要な項目です。
5. 企業再生の手法
企業再生の手法は以下の2つに分けることができます。
- 法的再生
- 私的再生
法的再生とは
法的再生とは裁判所が関わりをもって行われる法的整理の手続きを利用して企業再生を行う手段のことをいいます。
法的再生のメリット、デメリットを見ていきましょう。
メリット
法的再生の手続き内容は、法律で定められているためはっきりしており、裁判所が関わるので当事者間の公平性も保たれるメリットがあります。また、再生できない内容の計画は認められないので、債権者の理解を得やすいでしょう。
さらに、特定調停を除いて、法律の決まりにより支払いを停止できます。債権者に反対者がいても、多数決で再生が可能です。
デメリット
法的再生を行うと、信用・企業イメージが損なわれることがデメリットといえます。信用調査会社が公表する倒産速報により公になるからです。大切な取引先が不安を感じて、取引を停止したり取引を減らしたりすると、再生に影響が与えられる可能性があるのです。
また、書類作成や手続きには、手間がかかり専門的な知識も欠かせません。弁護士費用や裁判所で手続きする費用もかかります。
法的再生の手法一覧
法的再生を細かく分けて見ていきましょう。
- 民事再生
- 会社更生
- 特定調停
民事再生
民事再生とは民事再生法に基づいて行われる裁判手続きのことをいいます。
民事再生とは経済的に厳しい状況下にある企業に対して、現在の経営者が中心となり、その他多くの利害関係者同意のもとに再生計画を作成し、その計画に沿って実施します。
民事再生を行うための方法は以下のとおりです。
- 自力再建型
- プレパッケージ型
- スポンサー型
上記3つの方法は、それぞれ資金の調達方法などは異なりますが、再生計画の提出や手続きなどは3つの方法とも基本的に同じであるため、自社の状況に合わせて方法を選択する必要があります。
会社更生
会社更生とは民事再生と同じく法的再生の手法です。
会社更生は会社の再生や再建を行うとともに、更生計画案に反対する債務者がいても、債権者の多数決により計画を行える点が民事再生と異なります。
会社更生を行うためには多額の費用が必要となるため、多くの資金を納付でき、外部などから優秀な人材を集められる会社向けの再建方法です。
特定調停
特定調停とは、裁判所で行われる民事調停手続の1つで、特定債務などの調整を行うための特定調停に関する法律である「特定調停法」に基づいて行われます。
債務の返済が行えなくなる可能性がある債務者の経済的な再生を行うために、債務者が負った金銭債務の調整を行うことが目的です。
一般的に特定調停は、個人債務者の債務整理として用いることが多いですが、最近では事業再生のために選択される場面もみられます。
私的再生とは
私的再生は会社整理の手法の1つで私的整理ともいい、裁判所の力を借りることなく自分自身の力で会社の再建を行うことです。
そのため、債権者との和解を行い、以前までの権利を変更しながら会社を再建することが目標です。
メリット
法的再生におけるデメリットの逆になりますが、裁判所が関与しないため非公開なので、法的再生と違い公表されない点が私的再生のメリットです。ただ、交渉相手の債権者は知るため、秘密保持契約の締結が必要です。
また、弁護士の書面作成は必須ではなく裁判所への費用は要りません。費用が低額なのもメリットといえます。
デメリット
私的再生のデメリットも法的再生におけるメリットの逆で、法律による支払停止などの効力がなく、はっきりした手続きも定められていません。そのため、話し合いのとき、他の債権者に「一部の債権者にのみ有利な内容かもしれない」と公平性を疑われることもあるでしょう。
多数決もないため、合意が不可能な債権者からの協力を得られないのもデメリットといえます。
私的再生の手法一覧
私的再生を細かく分けて見ていきましょう。
- 私的整理ガイドライン
- 支援協議会スキーム
- 特定認証ADR手続き
- 事業再生支援業務
- 企業再生ファンド
私的整理ガイドライン
私的整理ガイドラインは、債権者と債務者の両方が合意して、権利の放棄などを行う手続き規定のことです。平成13年に私的整理に関するガイドライン研究会が公表しています。
なお、私的整理に関するガイドライン研究会は、日本経済団体連合会や全国銀行協会などが委員を務めています。
法的な拘束力はありませんが、私的再生を行う際の一般的な方法として使用されています。
支援協議会スキーム
支援協議会スキームとは中小企業の事業を再生するために支援を行う国の公的支援機関のことをいい、全都道府県に設置し、中立的な第三者機関として存在しています。
支援協議会スキームは他の手続きに比べると費用が安いです。
支援協議会スキームを行うためには、第1次対応として相談企業からの相談受け付けを行い、一定の条件を満たす企業に関しては第2次対応として再生計画の支援を行います。
特定認証ADR手続き
特定認証ADR手続きは事業再生ADR手続きともいわれ、法務大臣から認証紛争解決の事業者として認証を受けた事業者が、経済産業大臣より事業再生ADRの認定を受けて行う事業のことです。
法的な手続きを行うことなく、企業の事業を再生するための私的整理手続きに関する協議の仲介手続きを行います。
私的整理ガイドラインとは異なり、債務者・債権者以外の公平中立な第三者が手続きを行います。
特定認証ADR手続きの流れは、以下のとおりです。
- 事前相談し申込みを行う
- 債務者に対して債権回収などを禁止する内容の通知を行う
- 概要を説明するために債権者会議を行う
- 事業再生計画案の検討を行う
- 協議のために債権者会議を行う
- 決議のために債権者会議を行う
合計3回の債権者会議を行って、債権者全員一致の同意により事業再生計画を成立します。
事業再生支援業務
事業再生支援業務は、地域経済活性化機構(REVIC)によって行われます。
地域経済活性化機構は企業再生支援機構を前身とする官民ファンドで、地方の中堅・中小企業、大企業を主な対象とします。
事業再生支援業務は、有用な資源を持つにも関わらず多額な債務を負った事業者に対して、事業再生計画を基本として事業再生と支援を行います。金融機関調整・金融機関への債権の買取り・人材の投入や融資などが業務内容です。
企業再生ファンド
企業再生ファンドとは、投資家から資金を集めて、経営不振となった企業の再生を行うファンドです。
企業再生ファンドには、民間によるものだけではなく、「地域経済活性化支援機構」という国が運営する企業再生ファンドも存在します。
企業再生ファンドは、企業再生の専門家を企業に送り込むことが一般的です。
送り込まれた専門家たちは資金の調達方法の見直し・営業効率の改善・費用の削減などを実施し、企業を再生させます。
6. 企業再生の手続き
企業再生にはさまざまな手続きがあります。一般的な手続きは下記のとおりです。
- 企業再生・M&Aの専門家に相談
- 企業再生の分析・検討
- デューデリジェンス
- 再生計画案の策定
- 実行
企業再生・M&Aの専門家に相談
企業再生の多くは、赤字経営が続いていることが原因とみられます。そのため、自社の力だけで解決しようとするのではなく、企業再生・M&Aの専門家に相談することがおすすめです。
企業再生の手段であるM&Aのご相談をご検討の場合は、M&A総合研究所へお任せください。
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M&Aに関して、無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
企業再生の分析・検討
企業再生を行うためには自社の状況を詳しく理解する必要があります。
自社を詳しく理解するために、M&Aの専門家が各専門分野の特性にあった分析・検討を行います。
主な企業再生の分析・検討方法は、以下です。
- 外部環境分析(販売面の分析、供給面の分析、新規参入状況の分析、競合状況の分析)
- 内部環境の分析(ビジネスモデル、商流などの分析、内部データの分析、業務フローの分析)
- SWOT分析
- 事業の採算性分析
- 組織管理上の問題点把握
- 経営改善課題の把握
上記の方法を使って詳しく自社を分析・検討しましょう。
デューデリジェンス
デューデリジェンスとはM&Aや企業再生を行うときに、買収対象である企業の経営状況や事業内容などを調査して、法務面の問題点や財務状況・収益力などの企業分析を行うことをいい、DD(ディーディー)とも呼ばれます。
デューデリジェンスは主に買い手側の企業から依頼されて、公認会計士や税理士などが実施します。
再生計画案の策定
企業再生の分析・検討が終わったら、財務内容を中心に考えて再生計画案の策定を行います。
再生計画案を策定する場合は、収益力のある事業を残し、収益力のない赤字部門は収益改善を行います。
再生計画案は下記の作業を行います。
- 不採算事業など問題となる「事業の見直し」
- 資金力、信用度などから支援してもらう「スポンサー」探し
- 債権者による債権金額確定の「債権届出」を作成
- 「債権届出」に対する認否書の作成
- 公認会計士による債権者の資産を確定する「財産評定」作業
再生計画案は、3年くらいの売り上げと利益の予測推移を作成する必要があります。
実行
再生計画案を何度も練り直し、可決したら計画案どおりに実行していきます。
その際、私的再生手続きにおいては、作成した再生計画案をもとに企業再生の了承を債権者全員から得る必要があります。
話し合いで了承を得られない場合は、法的再生手続きを行います。
法的再生手続きを行う場合は、裁判所を経由しての企業再生となるため、弁護士などの専門家に依頼しなければいけません。
企業再生を行う際は、債権者に説明した再生計画案の内容をしっかり実行できるように、慎重に行いましょう。
7. 企業再生の成功事例
企業再生の成功事例は多く存在しますが、今回は「日本航空の企業再生成功事例」を紹介します。
日本航空の企業再生成功事例
1951年8月に日本航空は設立し、国際航空運送協会(IATA)統計で旅客・貨物運送の実績世界一を5年間受賞するなど、日本だけでなく世界を代表する航空会社となりました。
その後、1987年に完全民営化され、ホテル事業・IT事業・教育事業など多くの子会社を設立し、さらなる事業の拡大を行いました。しかし、これらの事業が上手くいかず、2010年1月に経営が傾いた結果、会社更生手続きを行っています。
企業再生は企業再生支援機構のもとで行われ、社員に対して徹底した「意識改革」を行いました。その結果、2010年3月期には1,337億円赤字があったものの、2012年3月期には2,049億円の黒字となりV字回復しています。
8. 企業再生の検討・相談におすすめのM&A仲介会社
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9. まとめ
企業再生とは、赤字経営や債務超過などにより破綻状態となった企業を、さまざまな手法で再生することをいいます。企業再生は法的再生と私的再生の2つに分かれます。
企業再生を行うことにより廃業・倒産・清算を避けられるため、会社自体を存続できる点がメリットです。そして、大事な従業員の雇用や取引先の契約も継続できます。
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