分割型分割と分社型分割とは?適格要件や仕訳・会計処理、会社法上の扱いを解説

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取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

会社分割には、新設合併・吸収合併の区分以外にも分割型分割と分社型分割があるので、それらの違いを理解しておくことが重要です。本記事では、分割型分割と分社型分割の違いについて、適格要件や仕訳・会計処理、会社上場の取り扱いや税務面から解説します。

目次

  1. 分割型分割と分社型分割とは
  2. 分割型分割と分社型分割の適格要件
  3. 分割型分割と分社型分割の仕訳・会計処理
  4. 分割型分割と分社型分割の会社法上の扱い
  5. 分割型分割と分社型分割の税務上の区分
  6. 分割型分割と分社型分割の違いまとめ
  7. 分割型分割や分社型分割を始めとするM&Aの相談先
  8. まとめ
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1. 分割型分割と分社型分割とは

分割型分割と分社型分割とは

分割型分割と分社型分割とは

出典:https://www.flickr.com/groups/japanese/

会社分割とは、ある会社がいくつかの事業を同時に営んでいる時、そのうちの一部を他の会社へ譲り渡すことです。

事業譲渡と似た部分もありますが、会社分割では事業を包括的に承継できることに違いがあり、取引先などと結んでいる契約は新たに結びなおす必要がありません。また、分割する事業で働いている従業員から個別に同意を得る必要もありません。

対価は、事業譲渡の場合は現金ですが、分割型分割や分社型分割では株式を新たに発行して対価とするのが一般的です。よって、事業を買い取るための資金が用意できなくても、分割型分割や分社型分割を行うことができます。

会社分割には、分割型分割と分社型分割という分類以外に、新しく作った会社が事業を引き継ぐ「新設分割」と、もともとある会社が事業を引き継ぐ「吸収分割」という分け方もあります。

対価を会社に支払うか株主に支払うかで2種類、新しい会社に引き継ぐかもともとある会社に引き継ぐかで2種類、合計で4種類の会社分割があることになります。

これら4種類の会社分割は、分割型新設分割・分割型吸収分割・分社型新設分割・分社型吸収分割と呼ばれます。

【会社分割の種類】

  1. 分割型新設分割
  2. 分割型吸収分割
  3. 分社型新設分割
  4. 分社型吸収分割

分割型分割とは

分割型分割とは、事業を譲り受けて引き継ぐ会社(承継会社)が、事業を分割して譲り渡した会社(分割会社)の株式を保有している株主に対価を払う取引です。この場合、分割会社へは対価は支払われません。

会社法では分割型分割という規定はなく、分社型分割に剰余金の配当を組み合わせたものを分割型分割と呼んでいます。

分割型分割は一部の事業の譲渡を想定していますが、もし全事業を譲渡した場合は吸収合併と同じになるため、分割型分割は吸収合併と似た部分があるといえます。

分社型分割とは

分社型分割とは、事業を分割して譲り渡した会社が、その事業を承継した会社から対価として株式などを受け取る取引のことです。

結局のところ、分割型分割と分社型分割の違いは対価を誰が受け取るかという点なので、違いを理解するのは決して難しいものではありません。

2. 分割型分割と分社型分割の適格要件

分割型分割と分社型分割の適格要件

分割型分割と分社型分割の適格要件

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適格要件とは、一定の条件を満たす時に、分割型分割や分社型分割の税制が優遇される制度です。分割型分割や分社型分割を行う際は、適格要件を満たすかどうか確認することが大切です。

分割型分割と分社型分割の適格要件は、事業を分割する会社とそれを承継する会社間に、支配関係があるかどうかによって条件が変わってきます。

株式を100%保有している場合を完全支配関係、50%超100%未満の場合を支配関係と呼びますが、分割型分割と分社型分割の適格要件は、完全支配関係・支配関係・支配関係なしの場合でそれぞれ条件が変わります

この章では、分割型分割と分社型分割、それぞれの適格要件について解説します。

分割型分割の適格要件

分割型分割では、支配株主がいない会社同士の分割である「スピンオフ分割」があるのが特徴です。

完全支配関係が最も条件が緩く、次いで支配関係、支配関係なしの順に条件が厳しくなっていきます。スピンオフ分割では、非支配の継続など独自の3つの条件が課せられるのが注意点です

【分割型分割の適格要件】

要件 株式を100%持っている 株式を50%超持っている 株式を50%以下持っている スピンオフ分割
対価としてお金などを支払わない
保有株式数に比例した対価
株主が株を引き続き持ち続ける  
主要な事業の移転  
事業の継続  
事業の関連性      
事業規模の差が大き過ぎない
または経営への参画
     
承継会社の設立      
特定の株主が支配しない      
役員に就くこと      

金銭等を交付しない

金銭等を交付しない要件とは、事業を承継する会社が対価を支払う時に、自社か自社の完全親会社の株式以外を交付しないことです。

案分型の交付

案分型の交付とは、株主の保有株式数に比例して対価を支払うことです。案分型の交付要件は、分社型分割では課されることはありません。

株式の継続保有

株式の継続保有要件とは、対価を受けた株主がその株式を継続して保有する見込みであることです。

完全支配関係または支配関係の場合は、分割後も完全支配関係または支配関係の継続が見込まれることとなります。

主要な事業の移転

主要な事業の移転とは、分割した事業の主要な資産と負債が承継会社に移転するとともに、分割する事業で働いていた従業員のおおむね80%以上が、承継会社で働くことが見込まれることです。

事業の継続

事業の継続要件とは、事業が分割後に営業を終了することなく継続すること、その見込みが十分あることです。

事業の関連性

事業の関連性要件とは、分割会社が承継会社に譲り渡した事業が、承継会社が営んでいる事業と関連性を持っていることです。複数の事業を営んでいる場合は、そのうちのどれかが関連性を持っていれば要件を満たせます。

規模の同等

規模の同等要件とは、分割した事業の規模と、それを承継した会社が営んでいる事業の規模が大きく違わないことです。

具体的には、売上高でおおむね5倍、従業員の数でおおむね5倍を超えないことと定められており、どちらか一方の条件に該当すれば要件を満たすことができます。

経営参画

経営参画要件とは、分割会社と承継会社の特定役員(勤続5年以下の役員)のうちの1人以上が、分割後の承継会社の特定役員の職に就くこと、またはそれが見込まれることです。

法人の新設

法人の新設要件とは、分割した事業を承継する会社が、既存の会社ではなく新たに設立された会社であることです。

非支配の継続

非支配の継続要件とは、分割した事業を承継した会社が、特定の株主に支配されないことです。

特定役員の要件

特定役員の要件とは、事業を分割した会社の役員または重要な使用人が、分割後に承継会社の役員となることです。

重要な使用人とは、使用人の中で最高の権限を持つ者のことで、誰が該当するかは会社によって異なります。一般的には、理事・監事・本部長などが重要な使用人となることが多いです。

分社型分割の適格要件

分社型分割の適格要件は以下のようになります。分割型分割と同様、完全支配関係・支配関係・支配関係なしの3つの場合に分かれ、完全支配関係の要件が最も緩く、次いで支配関係、支配関係なしの順に要件が厳しくなります。

【分社型分割の適格要件】

  株式を100%持っている 株式を50%超持っている 株式を50%以下持っている
対価としてお金などを支払わない
保有株式数に比例した対価
主要な事業の移転  
事業の継続  
事業の関連性    
規模の同等または経営参画    

【関連】会社分割の適格分割・非適格分割を解説!改正はされた?

3. 分割型分割と分社型分割の仕訳・会計処理

分割型分割と分社型分割の仕訳・会計処理

分割型分割と分社型分割の仕訳・会計処理

出典:https://pixabay.com/ja/

分割型分割や分社型分割では、どのように仕訳・会計処理を行うかが分かりにくい部分があります。

詳細な仕訳・会計処理は会計士などの専門家でないと理解が難しいですが、この章では、分割型分割や分社型分割の仕訳・会計処理がおおむねどのような形で行われるか、その概要を解説します。

分割型分割の仕訳・会計処理

会社法には分割型分割についての規定はなく、一旦分割会社が対価を受け取った後、その株式をあらためて株主に配当するという形で仕訳・会計処理を行います。

したがって、まず分社型分割と同じ仕訳・会計処理を行い、それに加えて株式の現物配当の仕訳・会計処理を行います

分割型分割と分社型分割は、承継会社にとっては株式の交付先が違うだけなので、承継会社の仕訳・会計処理は、分社型分割の場合と同様に行えばよいことになります。

分割型分割の場合は、対価を受け取った分割会社の株主の仕訳・会計処理も発生します。分割会社の株式を貸方、交付された承継会社の株式を借方に計上し、適格要件を満たさない場合はみなし配当や譲渡損益を計上します。

分社型分割の仕訳・会計処理

分社型分割では、取引の対象となるのは事業を分割する会社とそれを承継する会社で、分割型分割のように株主は関係しません。

まず、事業を分割した会社は、事業に関する資産と負債を承継会社へ譲渡し、代わりに承継会社の株式を取得することになるので、これらの取引を仕訳・会計処理すればよいことになります。

なお、適格要件を満たさない場合は、加えて譲渡損益の仕訳・会計処理が必要になるため注意が必要です。

事業を承継した会社は、分割会社の仕訳・会計処理の逆を行えばよいことになりますが、適格要件を満たさない場合は、資産・負債の額が時価になることと、純資産の増減を考慮するのが注意点です。

【関連】会社分割の仕訳・会計処理を解説!吸収分割・新設分割で違う?

4. 分割型分割と分社型分割の会社法上の扱い

分割型分割と分社型分割の会社法上の扱い

分割型分割と分社型分割の会社法上の扱い

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分割型分割と分社型分割を規定している法律は会社法ですが、これらはどのように規定されているのでしょうか。この章では、分割型分割と分社型分割の会社法上の扱いについて解説します。

分割型分割の会社法上の扱い

旧商法には分割型分割に関する規定がありましたが、会社法では分割型分割は廃止され、明確な規定は存在していません

しかし、分社型分割で一旦対価を分割会社が受け取ったうえで、それを株主に配当として交付すれば分割型分割と同じになるので、規定されていないからといって分割型分割ができないわけではありません。

分社型分割の会社法上の扱い

会社法で規定されているのは分社型分割についてのみで、分割型分割は「人的分割類似行為」という、分社型分割の派生のような形で取り扱われています。

5. 分割型分割と分社型分割の税務上の区分

分割型分割と分社型分割の税務上の区分

分割型分割と分社型分割の税務上の区分

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分社型分割を始めとする会社分割では、譲渡益などに対する税務を理解しておく必要があります。さらに、適格要件を満たすかどうかでも区分が変わってくるので注意が必要です。

分割型分割は人為的分割

分割型分割は、人為的分割(または人的分割)とも呼ばれ、その対価を株主が受け取る取引です。

よって、事業を分割した会社と譲り受けた会社に加えて、対価を受け取った株主の税務も考える必要があります税金が生じるのは事業を譲り渡した側の会社とその株主です。

適格要件を満たす場合

適格要件を満たす場合は、所得税や法人税は課せられません。税務としては、分割会社は分割した事業に関する資産と負債の消滅、およびそれに伴う資本金と利益積立金の移転を行います。

次に、承継会社は承継した事業に関する資産・負債を簿価で引き継ぎます。分割会社の株主は、元々保有していた分割会社の株式が、事業を分割した分だけ価値が減少するとともに、その減少分は新たに取得した承継会社の株式の取得原価となります。

非適格分割型分割の場合

適格要件を満たさない非適格分割型分割の場合は、税金がかかってくるので注意が必要です。

まず、資産・負債や対価を時価評価するのに伴い、譲渡損益やみなし配当が発生します。また、所得税や法人税も考える必要があります。

分社型分割は物的分割

分社型分割は株主の税務が関係しないので、分割型分割に比べると税務はやや簡単になります。適格分社型分割の場合だけ税金が発生するのは、分割型分割と同じです。

適格要件を満たさない場合、分割した資産・負債の含み損益に応じて、事業を譲渡した分割会社に税金が発生します。

【関連】会社分割の税金・税務に関して解説!消費税の納税義務はない?

6. 分割型分割と分社型分割の違いまとめ

分割型分割と分社型分割の違いまとめ

分割型分割と分社型分割の違いまとめ

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分割型分割と分社型分割について、適格要件・仕訳と会計処理・会社法上の扱い・税務上の区分の面で違いを述べましたが、分かりやすく表にまとめると以下のようになります。

【両者の違いまとめ】

  分割型分割 分社型分割
適格要件 スピンオフ分割の制度がある 案分型の交付要件がない
仕訳・会計処理 分割会社と承継会社のみ 分割会社の株主にも仕訳が発生
会社法上の扱い 規定されていない 規定されている
税務上の区分 分割会社・分割会社の株主に課税(非適格分割型分割) 分割会社に課税(非適格分社型分割)

7. 分割型分割や分社型分割を始めとするM&Aの相談先

分割型分割や分社型分割を始めとするM&Aの相談先

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8. まとめ

まとめ

まとめ

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本記事では、分割型分割と分社型分割の違いについて解説しました。主な違いは、対価を株主に支払うのが分割型分割、対価を分割会社に支払うのが分社型分割ということです。

そのほかにも適格要件の違いなどもあるため、会社分割を行う際は両者の違いを理解しておくことが大切です。

【会社分割の種類】

  1. 分割型新設分割
  2. 分割型吸収分割
  3. 分社型新設分割
  4. 分社型吸収分割

【分割型分割の適格要件】
要件 完全支配関係 支配関係 支配関係なし スピンオフ分割
金銭等を交付しない
案分型の交付
株式の継続保有  
主要な事業の移転  
事業の継続  
事業の関連性      
規模の同等または経営参画      
法人の新設      
非支配の継続      
特定役員の要件      

【分社型分割の適格要件】
  完全支配関係 支配関係 支配関係なし
金銭等を交付しない
株式の継続保有
主要な事業の移転  
事業の継続  
事業の関連性    
規模の同等または経営参画    

【適格要件の違い】
  • 分割型分割:スピンオフ分割
  • 分社型分割:案分型の交付要件なし

【仕訳・会計処理の違い】
  • 分割型分割:分割会社・承継会社
  • 分社型分割:分割会社・承継会社・分割会社の株主

【会社法上の扱い】
  • 分割型分割:規定なし
  • 分社型分割:規定あり

【税務上の区分(非適格分割)】
  • 分割型分割:分割会社・分割会社の株主
  • 分社型分割:分割会社

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