地方のM&A動向!地域ごとの中小企業のM&Aの特徴や成功のポイントを解説!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

地方の中小企業におけるM&Aに対して、国からの支援が強化中です。この記事では、地方のM&Aにおける動きをはじめ、後継者を見つけられない地方企業の理由やM&Aの成功と失敗例、M&Aを成功させるために押さえるべきポイントなどを掲示します。

目次

  1. 地方のM&A動向
  2. 地方のM&Aは今後ますます増えていくことが予測される
  3. 地方でのM&Aを行う際の課題
  4. 北海道地方のM&Aの現状
  5. 東北地方のM&Aの現状
  6. 関東地方のM&Aの現状
  7. 中部地方のM&Aの現状
  8. 近畿地方のM&Aの現状
  9. 中国・四国地方のM&Aの現状
  10. 九州地方のM&Aの現状
  11. 地方のM&A成功事例/失敗事例
  12. 地方のM&Aを成功させるポイント
  13. 地方のM&Aに関する相談先
  14. 地方のM&A動向まとめ
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1. 地方のM&A動向

近年、国内のM&A実施件数は右肩上がりとなっていますが、地域ごとに差がみられます。はじめに全国のM&A状況やM&A動向を確認しておきましょう。

 

全国のM&Aの現状

中小企業庁「M&A支援機関登録制度 実績報告等について」

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shigenshuyaku/008/001.pdf

全国のM&A件数をエリア別に比較すると、譲渡側・譲受側の属性が東京であるケースが圧倒的に高くなっています。関東地方は国内人口の約1/3を占め経済活動の中心でもあり、東京都内およびその周辺に本社を構える企業が多いことが要因のひとつです。

地方経済を活発にするため、経済産業省は地域未来投資促進法による支援を行っています。設備や研究開発費の補助、融資・規制の緩和、税制措置などに加えて、M&Aによる事業承継の支援も強化されました。

地方のM&Aに対する支援は、各都道府県に設置している事業承継・引継ぎ支援センターの人員補強やファンドからの出資に対する措置、登録免許・不動産取得税の減税、法人・個人事業者への事業承継税制や事業承継補助金の創設などがあります。

地方は都市部と比べて中小企業の廃業率が高いですが、事業承継やM&Aが行いやすい体勢が整備されつつあるので、支援体制がさらに認知されれば廃業率を下げることも期待できるでしょう。以下では、地方のM&A動向を売り手・買い手それぞれの立場から解説します。

売り手側のM&A動向

続いて、売り手側のM&A動向に見られる4つの特徴を確認しましょう。

後継者問題の解決手段

東京商工リサーチが発表した2019(令和元)年「休廃業・解散企業」動向調査によると、休廃業か解散を選んだ企業は2018年で46,724件、2019年では43,348件に減少しています。

休廃業か解散を選んだ企業の経営者年齢を見ると、60歳を超えている企業が全体の8割程度あり、後継者がいないために事業承継ができなかったことが原因でしょう。

事業承継・M&Aの支援制度を利用すれば、親族・社内のみならず第三者へのM&Aが事業承継の手段になるため、後継者不足の解決手段として有効視されています。

単独では難しい規模の事業拡大

自社の力だけでは、資金・ノウハウ・技術・販路・取引先・拠点などが限られてしまい、思うように事業の規模を広げられません。売り手は小規模・同等規模の同業者などへ会社を売却し、買い手の経営資源を使って事業拡大を図ります。

買い手に未開拓地方の拠点を提供できればドミナント化が図れるため、売り手にも規模の経済が働き、事業活動を優位に進めることが可能です。買い手とノウハウや人材を共有できれば、開発、販売力の強化が可能になり、売上・利益の向上も見込めます。

増加するM&Aは都市部から地方にシフト

M&Aの件数は、地方よりも都市部(東京・大阪)での成約が多いです。しかし、地方のM&Aは2010(平成22)~2012(平成24)年頃から年を追うごとに増え、2018年には増加当初に比べて倍近くの件数に達しています。

都市部でのM&A件数も高い数字を維持していますが、地方のM&Aも活発になり、M&Aが徐々に都市部から地方へシフトしているといえるでしょう。

医療・卸売分野のM&Aニーズの高まり

中小企業庁「M&A支援機関登録制度 実績報告等について」

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shigenshuyaku/008/001.pdf

医療・介護業界は、超高齢社会を迎えた日本において、市場が拡張しています。厚生労働省によると2020(令和2)年の医療費の合計額は約42兆2,000億円でした。外食業界の市場が約28兆9,000億円ですから、医療業界の規模の大きさがうかがえます。

医療・介護業界では、医院(無床診療所・有床診療所・歯科診療所)や老人保健施設において、後継者不在状況が顕著です。医療施設や福祉施設は、患者や利用者・入所者など地域に根づいて業務を行っているため、簡単に廃業できる事業ではありません。

したがって、後継者不在の医療・福祉施設では後継者を求めるM&Aが増加しています。医療法人は一般企業のように上場ができないので、創業者利益を得るためにはM&Aを行うしかない特殊事情も影響しているでしょう。

一方、卸売業界のなかでも、医療業界の関連業種である医薬品卸売業界は、市場規模が横ばい状態です。この市場の飽和状態を受けて、業界再編のため大手によるM&Aが盛んになっています。

【関連】国内M&A市場の展望・トレンドまとめ【2022年最新版】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

買い手側のM&A動向

買い手側のM&A動向には、以下の特徴が見られます。

地方企業を買収することで事業拡大を狙う

企業を継続していくうえで直面する課題に、事業の衰退があります。一事業にのみ特化していると時代の変化などで成長が鈍化するため、企業は別事業を始めたり主力事業の転換を図ったりといった対応を迫られるでしょう。

そのようなケースでM&Aによる地方企業の買収が活用され、M&Aは新しい事業やエリア、製品・サービスなどを効率的に獲得しています。新事業・新エリアの獲得は、許認可や特許を得ることで新しい分野への進出を図り、同業者を傘下に収めて規模の経済を働かせることが可能です。

製品・サービスの獲得では、自社製品との親和性や異種性により、付加価値をつけた新しい製品・サービスの提供につなげることで事業の拡大を目指せます。

薬局業・サービス業などが増加傾向

薬局業は、2018(平成30)年度の診療報酬改定により、かかりつけ薬剤師による地域医療への支援に対して調剤報酬が加算されたり、同じクリニックに対する処方箋の割合が一定の基準を超えると調剤基本料が下がったりと、事業運営の変化が求められています。

以前のように調剤報酬を得られなくなったグループ薬局は、後継者・人材不足に悩む地方の薬局を対象に、基本調剤料を下げずに加算を得られる薬局を獲得して売上の維持に取り組んでいるのが現状です。

他業種に比べて生産性が低いサービス業は、売上増のために単価の値上げに踏み切ると、利用客が同業者へ移ってしまう問題も抱えています。業務の効率化や低賃金で高質なサービスを提供できる対策を考えても、資金・人材の確保に対応できない企業が少なくありません。

買い手はこのような企業をM&Aで買収し、事業範囲拡大や優秀な人材の確保などを効率的に図っています。

都市部の企業による積極的な買収

東京、大阪、名古屋などの大都市在住の企業による、周辺地域の企業に対する積極的な買収姿勢も鮮明です。特に東京在住の企業の場合、買収対象企業は関東近県にとどまらず、全国各地の企業に対して買収を行っている特徴があります。

日本M&Aセンターの統計によれば、東京に加えその近県である神奈川、埼玉、千葉の1都3県で実施されるM&A件数は、全国のM&A実施数の40%近くを占めるほどの盛況ぶりです。

2. 地方のM&Aは今後ますます増えていくことが予測される

M&Aは都市部に限って行われるわけではなく、地方企業によるM&A件数は増加傾向にあります。その背景にあるのは、国の支援(支援機関・補助金・税制措置)の強化や、M&A仲介会社の増加などです。

現在、多くの中小企業は転換期を迎え、廃業または中核事業の転換を迫られていたり、経営者の高齢化が進んでいたりします。後継者不足や買い手候補に対する許容範囲の狭さといった問題を解消できれば、地方のM&Aはさらに活性化するでしょう。

地方の企業は取引先・社員とのつながりを大切にするため、同業種・類似業種を営む買い手を探せれば、取引や雇用契約も継続されやすいです。

M&Aが有効な手段であることは広く認知され始めているので、今後は、より一層、地方のM&Aは加速すると考えられます。

3. 地方でのM&Aを行う際の課題

地方の中小企業のM&Aは、前述のとおり増加が見込まれます。しかしながら、都市部のM&A環境と比較すると、地方ではM&Aの実施を阻害する一面を持っていることも否定できません。ここでは、地方の中小企業のM&Aを困難とさせている3つの要因を確認します。

M&A対象が少ない

地方といっても、人口50万人以上である政令指定都市やその周辺地域であれば、相応数の中小企業数があります。しかし、政令指定都市からも離れた地方では、中小企業数自体が少なくコミュニティも小さなものです。

必然的にM&Aの取引対象候補となる企業数も少ないので、M&Aの成約うんぬんの前に交渉相手探しの段階で苦戦し、M&Aが困難なものとなっています。

M&Aに消極的な傾向

地方の中小企業で一定の社歴がある場合、多くは親族内承継で創業家一族が代々、経営者となり、家族主義経営を踏襲している状況です。そのような中小企業の場合、経営戦略としてのM&Aの有効性を頭で理解したとしても、心情的に相いれない傾向があります。

高齢の経営者の場合、M&Aに対して「買収=乗っ取り」「売却=身売り」などといったネガティブなイメージが払しょくできていないケースもあり、結果として地方では、全体的にM&Aに消極的な風潮がぬぐえません。

M&Aの専門家が少ない

昨今、M&A仲介会社やM&A仲介を行う士業事務所・金融機関などは増加傾向にあります。ただし、それは都市圏での話です。地方では、まだM&Aの専門業者の数は多くありません。M&Aの実施を検討しようとする中小企業があっても、身近に相談できる専門家がいません

経営者の周囲にM&Aの造詣が深い人物がいるのもめったにないことなので、M&A検討の相談ができない環境のなか、結局、M&Aを保留あるいは断念してしまうことになります。

【関連】事業承継・引継ぎ補助金とは?採択率や申請書、事例を解説【令和4年度当初予算案】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

4. 北海道地方のM&Aの現状

北海道は農林水産業と建設業で特にM&Aが多く行われています。その背景にあるのは高齢化と人口減少であり、働き手不足を補うためにM&Aを活用するケースも多いです。

また、後継者問題の解決手段としてM&Aが行われるケースも多くみられます。帝国データバンクの調査によれば、2023年の北海道の後継者不在率は66.5%であり、全国では4番目の高さとなりました。

近年は以前に比べると事業承継目的のM&Aを行う中小企業が増えており、それにより後継者不在率は改善傾向にあります。

参考:株式会社帝国データバンク「全国 後継者 不在率動向調査(2023年)]

5. 東北地方のM&Aの現状

東北地方は一次産業が強い地方で、林業や農業の生産高は中部・関西などよりも高くなっています。東北地方のなかでは宮城県のM&A実施件数が最多ですが、しかし東北全体としてのM&Aがそれほど盛んではないのが現状です。

また、東北地方では人口における高齢者の割合増加が顕著であり、2020年の国勢調査では65歳以上の人口割合では秋田県が37.5%と全国で最も高くなっています。

山形県・青森県・岩手県も全国10位以内に入っており、若年層の働き手不足が深刻な状況です。後継者不在に悩む企業も少なくないため、事業承継目的M&Aの潜在ニーズは高いと考えられます。

参考:総務省「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果」

6. 関東地方のM&Aの現状

関東地方は三次産業が多く、一次産業の割合が少ない産業構造となっており、三次産業のなかでは卸売・サービス・小売が多いのが特徴です。

国内人口の約1/3が関東地方に集中していることもあり、本社が関東にある企業も多いため、M&A実施件数も国内で最も高くなっています。

また、交通網が東京中心に発達しているため利便性がよく、首都圏内では県をまたいで行われるM&Aも多いのが特徴です。

7. 中部地方のM&Aの現状

関東・関西とともに三大都市圏の1つである中部地方は、愛知県の名古屋エリアを中心として経済活動が展開されています。そのため、名古屋を中心に事業拡大を狙うM&Aも多いです。

また、愛知県は東京と大阪の中間に位置するため、特に物流業では関東と関西を結ぶ販路を獲得する目的でM&Aを行うケースもみられます。

8. 近畿地方のM&Aの現状

関東地方に続き、全国で2番目に大きい経済圏である近畿地方では、M&Aも多く行われています。なかでも大阪のM&Aが多く、大阪に本社を置く企業が近畿圏内の企業とM&Aを行うケースや、近畿エリア進出への足掛かりとして大阪の企業を買収するケースも多いです。

また、近畿地方のなかで京都は伝統産業だけでなく、製造業やIT事業などさまざまなM&Aが行われています。日本固有の伝統工芸店や和菓子店などのM&Aが多いのは、京都の特徴のひとつです。

9. 中国・四国地方のM&Aの現状

中国・四国地方で経済活動の中心となっているのは広島県と岡山県で、重化学工業や紙パルプなどが有力産業です。そのため、M&Aも広島県や岡山県の企業が行うケースが多くみられます。

特に広島県と愛媛県、岡山県と香川県のように地域間の移動がしやすいのも特徴であり、販路や営業拠点などアクセスのしやすさからM&Aが行われるケースも多いです。

10. 九州地方のM&Aの現状

関東・関西・中部に続く大きな経済圏である九州地方は、福岡県を中心としてさまざまな事業が行われています。M&Aも福岡県に本社あるいは拠点を置く企業が行うケースが多いです。福岡県以外では、鹿児島県や熊本県などJR九州新幹線が通るエリアでも、M&Aが比較的多く行われています。

また、九州地方は農業・林業・漁業などの第一次産業、半導体関連業・自動車部品関連業などの第二次産業、観光・運送・介護医療などの第三次産業まで、幅広い事業でM&Aが行われているのも特徴のひとつです。

11. 地方のM&A成功事例/失敗事例

ここでは、地方のM&Aにおける成功事例・失敗例を見ていきましょう。

地方のM&A成功事例

売却・買収で成功に至った実例を4件紹介します。

事務機器販売会社の売却

ライバル企業とのし烈な競争中であった事務機器の販売事業を営む会社が、今後の事業運営が危ういと判断して遠方の同業者に会社を売却しました。

成功に至った要因には、専門家を介して買い手を見つけた点と、売り手と買い手の双方にメリットがあった点が挙げられます。買い手側のメリットは、拠点とサービスの拡大が見込めたことです。

M&Aによる事業承継:その1

この成功事例は、経営者が高齢を理由に事業承継を望んだものの、社内承継では資金面の負担がネックとなり、専門家を介して類似する業種へ会社を売却しました。成功の要因は、事業運営と雇用の継続を図るために社内承継をあきらめてM&Aに切り替えた点です。

事業承継では、親族以外の後継者は事業に関する資産や株式などを買い取る資金を用意しなくてはいけません。金融機関などから融資を受けて資金を集めることも可能ですが、返済の負担を強いてしまいます。

その点、M&Aによる売却であれば、後継者である社員が資金を用意したり返済の義務を負ったりする事態を避けつつ、希望する条件(事業・雇用の継続)の実現が可能です。

M&Aによる事業承継:その2

水産物の加工販売と卸を営む会社が、親族内事業承継をあきらめて、同業者へのM&Aを完了させた事例です。はじめは子どもへの事業承継を進めていましたが折り合いがつかず、役員への事業承継を検討し、最後にM&Aによる売却へと行きつきました。

2年の期間をかけて、社外の第三者に事業を譲り渡しています。専門家の助言・支援を受けたため、求める希望額で譲渡を完了できました。事業ブランドの価値を認められたので、会社の商号も引き継がれています。

共同経営を活用した自社従業員への事業承継

高齢を迎えた経営者が、自社の社員に出版に関する校正業務を担う会社を譲渡した事例です。社員が事業を承継すれば、経営を担う以外に、株式などの買収資金の用意と債務の引き継ぎが伴います。

しかし、共同経営を選択したことで経営にかかる負担の分散が可能になり、会社の株価が低いことから資金面の負担も大きくありませんでした。金融機関からの借り入れもなかったため、社員への事業承継がスムーズに完了しています。

地方のM&A失敗事例

売却・買収で失敗に至った実例を4件、掲示します。

後継者不在のため会社を清算

会社の業績は好調を維持していましたが、後継者がいないためにM&Aなどを検討せず会社を清算することを決めた結果、関係者の混乱を招いたケースです。地方企業は、特に社員・取引先・取引金融機関とのつながりが強いので、廃業で周囲に与える影響も大きくなります。

この会社は経営に問題がなかったので、M&Aを活用して事業承継を行えた可能性は十分にあるでしょう。自社の清算を決める前に、M&Aの可能性を確認し、関係者への影響も考慮すべきです。

M&A条件の精査不足による従業員の離職

M&Aを実行し自社の後継者問題を解消したものの、M&Aの条件を精査・吟味していなかったため、M&Aの完了後に売り手側の社員が会社を離れてしまったケースです。

従業員の離職原因には、勤務地が遠方になる・買い手側の社風になじめない・給料水準が下がったことなどです。M&Aを進める際は、自社と合わない社風なら行わない、労働条件の維持・向上を受け入れてくれる買い手を交渉先とするなどの対応が重要といえます。

後継者の育成・選定の準備不足

高齢にもかかわらず後継者の育成・選定を怠ったため、経営者の突然死によって遺産の相続者が後継者問題に対応する必要性が生じたケースです。健康である、または持病がないからといって後継者問題をないがしろにしていると、役員・社員・親族にも影響が及びます。

事業は人の寿命よりも長く続くため、経営者は高齢に差し掛かる前に、次の承継者を探すことが大切です。後継者を選び育てるだけでも長い時間がかかるので、経営者は早い時期から後継者をすえると、自身の死が訪れても残された関係者に迷惑をかけずにすみます。

デューデリジェンスの甘さにより損害賠償請求を受けたケース

M&Aで買収した会社の不正(ソフトウエアの不正使用)が明らかになり、ソフトウェア会社から損害賠償請求を受けたケースです。デューデリジェンスによる調べが甘かった点と、最終契約書に表明保証・補償条項を盛り込まなかった点が失敗の要因と考えられます。

M&Aの手法によっては、売り手が抱えるリスクも承継するため、買収を完了する前に徹底した調査が不可欠です。契約内容に反した事態が発覚した際の損害を抑えられるように、条件の明記を忘れないことも重要になります。

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12. 地方のM&Aを成功させるポイント

ここでは、地方のM&Aを行う際に、特に売り手側において意識するべきポイントを解説します。

目的を明確化する

具体的なM&Aっ計画や戦略を策定する前に「何を目指してM&Aを行うのか」を明確にしておくことが重要です。

M&Aを行う目的は企業によって異なりますが、将来の自社(事業)が目指す姿を明確にしておかなければ、効果的なM&A戦略の策定が難しくなるだけでなく、M&A交渉を進めていくうちに方向性がずれてしまう可能性もあります。

また、事前にM&Aを行う目的を明確にしておけば、交渉先の選定もしやすくなる点がメリットです。自社と相手先の双方にとってM&Aが有効なのかを判断することで、適切な交渉先を絞り込みやすくなります。

情報漏洩に注意する

M&Aでは交渉先に対して自社の財務情報・人事構成・ノウハウや技術など秘密情報を開示します。もしM&A成立前に情報が漏洩するようなことがあれば、自社の企業価値を大きく低下させるリスクもあるため、開示前は必ず秘密保持契約を締結することが重要です。

また、M&Aを行うという情報がM&A成立前(基本合意締結前)に外部に漏れることも、同様のリスクをはらみます。M&Aが成立する前に情報が社内に漏洩すれば、従業員に不安が広がり離職につながる可能性もあるでしょう。

情報漏洩のリスクを防ぐためには、自社でM&Aを検討する際や交渉に関する情報の共有範囲は最小限にとどめておくことも重要です。

経営状態をよくしておく

M&Aを実行すれば、買い手側の売上高は当然のごとく増大します。しかし、営業利益率に焦点を当てると、規模の経済による効果が得られるものの、組織が増えたことで売り手を管理するための費用がかさみ、思うように営業利益率を上げられないかもしれません。

したがって、M&Aでは営業利益率のアップを含む財務内容の改善が求められます。赤字会社でも買い手の思惑によっては売却も可能ですが、多数の買い手候補にアピールするには、M&A後の経営計画を想像しやすい経営状態が望ましいでしょう。

企業の独自性をアピールする

買い手はM&Aによって、事業規模・市場シェアの拡大や、新製品・サービスの開発・提供、経営の多角化などを図ります。つまり、買い手は、他社と異なる革新性・製造力・保有する顧客・ブランド力・財務力・経営力・マーケティング力などを求めるということです。

売り手は、それらのなかから自社に強みのある項目を探し出し、それをうまく買い手に伝えると興味を持ってもらいやすいでしょう。

買い手企業とのシナジー効果を考える

買い手がM&Aの実行により、新しい製品の開発・提供を目指している場合は、売り手とのシナジー効果を重要視します。買い手は、事業を営む市場で、さらなる成長を図ろうとするでしょう。

売り手には、買い手の製品・サービスと関わりがあることや、買い手にはない技術を備えていること、ブランド力のある製品・サービスを持っていること、取得の難しい許認可を得ていることなどが求められます。

このような特色を備えていれば、買い手とのシナジー効果の発揮が予想でき、M&Aの交渉を進めやすいでしょう。

経営者への依存度を下げておく

買い手は、オーナー経営者の力に頼った事業運営を行う会社に対して、M&A後に経営状態が悪化することを懸念します。中小企業は、オーナー経営者によるワンマン経営で事業が成り立つケースも多いため、売り手は経営者に対する会社の依存度を下げておきましょう。

現経営者がいなくなっても事業を継続できるように、事業に関する権限を分散してください。買い手が、組織での事業運営が可能と判断すれば、交渉を前向きに考えます。

M&Aの専門家に相談する

M&Aの成約は、事前の準備・戦略の決定・交渉先の絞り込みや決定・交渉や成約の手続きなど、いくつもの過程を経て完了します。交渉先の決定は、多くの候補から交渉先を探さなければ、希望に合った買収先を見つけられないこともあるでしょう。

交渉・成約の際もM&Aの知識が乏しければ、交渉の決裂や成約の破棄、M&A後の訴訟問題などが生じる可能性もあります。M&Aを行う際は、M&A仲介会社などの専門家に業務依頼すると、独自のネットワーク・データベースから交渉先を探し、スムーズにM&Aを進められるでしょう。

【関連】M&Aの相談先はどこがおすすめ?【徹底解説】

13. 地方のM&Aに関する相談先

中小企業においてM&Aの相談先をお探しでしたら、M&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所は、全国の中小企業のM&A成約に携わっているM&仲介会社です。本社は東京ですが、大阪と名古屋にもオフィスがあります。メールや電話での相談も可能です。

M&A総合研究所には、M&Aの豊富な経験と知識を持ったアドバイザーが多数在籍しており、相談時からクロージングまでM&Aを徹底サポートします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談を受け付けていますので、M&Aを検討する際には、お気軽にお問い合わせください。

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14. 地方のM&A動向まとめ

地方のM&Aはこれから増えていくと予想されています。自社の希望に合ったM&Aを実現するためには、早い段階からM&A仲介会社などの専門家に相談し、サポートを受けながら進めるとよいでしょう。本記事の概要は以下のとおりです。

・地方における後継者難の理由
→小さなコミュニティ・地域のみで探すため
→地元愛の強さがあり大手企業とM&Aを行いたくないため
→M&A仲介会社など専門家の数が限られているため

・地方のM&Aを成功させるポイント
→経営状態をよくしておく
→企業の独自性をアピールする
→買い手企業とのシナジー効果を考える
→経営者の依存度を下げておく
→M&Aの専門家に相談する

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