2020年07月16日更新
株式譲渡制限会社とは?株主総会の許可がなければ株式譲渡できない?

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
当記事では、株式譲渡制限会社について解説しています。株式譲渡制限会社について、詳しく知らない方はぜひ参考にしてください。株式譲渡制限会社と公開会社の違いは何か、どのようなメリット・デメリットがあるのか、株主総会への影響はあるのかなども説明しています。
1. 株式譲渡制限会社とは
今回は、「株式譲渡制限会社」について詳しく解説していきます。「株式譲渡制限会社による株式譲渡方法」や「株式譲渡制限会社のメリット・デメリット」について、知りたい方は参考にしてみてください。まずは、「株式譲渡制限会社」とは何かについて解説します。
「株式譲渡制限会社」とは、会社が発行している株式に対して、自由に譲渡できないように制限が設けられている会社のことです。「非公開会社」と表現されることもあります。
通常、会社に出資した株主は、その対価として「株式」を受け取り、その株式は自由に売り買いできます。しかし「株式譲渡制限会社(非公開会社)」では、株式を自由に売買できないようになっています。
「株式譲渡制限会社(非公開会社)」においては、第三者に株式を譲渡する際、「取締役会」または「株主総会」の承認を得る必要があることが、定款で定められています。
この定款による制限があることで、株式を保有してほしくない人物に自社株が渡ってしまうことを避けることができます。
公開会社との違い
「株式譲渡制限会社(非公開会社)」と異なり、株式譲渡に関して特に制限が設けられておらず、自由に株式を売買できるのが「公開会社」です。
「公開会社」といっても、必ず上場しているわけではありません。未上場企業であっても、株式を自由に取引できるのであれば「公開会社」となります。
「株式譲渡制限会社(非公開会社)」と「公開会社」の違いは、「株式譲渡に関して制限があるかどうか」という点です。「公開会社」は、その一部の株式であっても譲渡制限を設けることはなく、「大企業向け」の会社形態といえます。
一方で、「株式譲渡制限会社(非公開会社)」は、「すべての株式」に対して譲渡制限が設けられており、「中小企業向け」の会社形態と考えられています。
株式譲渡制限会社になるためには
「株式譲渡制限会社(非公開会社)」となるためには、会社定款の中に、「自社株式の譲渡をする際には、取締役会あるいは株主総会による承認、代表取締役による審査・承認が必要となる」という旨の規定を加える必要があります。
自分たちの会社に「取締役会」がある場合には取締役会からの承認を、取締役会がない場合には「株主総会」からの承認を獲得できなければ、「株式譲渡制限会社(非公開会社)」の株式を自由に取引できません。
もともと多くの中小企業では、「有限会社」という会社形態が使われていました。有限会社という会社形態は、株式譲渡に対して制限が設けられており、事実上の「株式譲渡制限会社(非公開会社)」でした。
そのため、有限会社の定款には「株式譲渡制限に関する記載」がされていないケースもあります。この有限会社から株式会社に会社形態を変更する際には、株式譲渡制限に関する内容を定款に加えることを忘れないように注意しなければいけません。
2. 株式譲渡制限会社の株式譲渡方法
ここでは、株式譲渡制限会社(非公開会社)の株式を譲渡する方法について解説します。譲渡制限がある株式を売却・譲渡する方法としては、以下の2種類があります。
【株式譲渡制限会社の株式を譲渡する方法】
- 株主総会にて承認
- 定款で定めておく
①株主総会にて承認
株式譲渡制限会社(非公開会社)の株式を譲渡する方法として一般的なのが、「株主総会あるいは取締役会」から承認を得る方法です。
自分が現在保有している株式譲渡制限会社(非公開会社)の株式を譲渡したいと考えた場合、まずは「株式譲渡契約書」のような契約書を譲受側と作成します。契約書の作成が完了したら、会社に対して「株式譲渡の承認」を請求しましょう。
譲渡制限株式の譲渡請求が届いたら、非公開会社は定款に定められているとおりに、取締役会や株主総会を開いて、「株式譲渡を認めるかどうか」を話し合います。
株主総会あるいは取締役会からの承認を得ることができれば、譲渡制限のある株式を第三者に譲渡することが可能となります。
②定款で定めておく
株式譲渡制限会社の株式を譲渡する際には、上記で解説したように、原則「株主総会あるいは取締役会からの承認」を得る必要があります。
しかし、例外的な方法として、株式譲渡の承認の際に、「株主総会や取締役会」以外の組織や人物が承認の否決を行うことを、定款にあらかじめ定めておくこともあります。
よくある例としては、「株式譲渡には『代表取締役』の承認が必要」という記載です。この場合は、株式譲渡の承認は「代表取締役」が行うことになります。わざわざ株主総会や取締役会を開かずとも、株式譲渡の手続きを進められます。
そもそも「株式譲渡」は、基本的にM&Aスキームの1つです。株式譲渡を実施することで、「後継者問題を解消」「会社の発展が期待」「短時間でM&Aを実現し、事業拡大を図る」ことができます。
株式譲渡を実施する際には、複雑な手順を踏む必要があります。株式譲渡のリスクに対する予防をしておかなければ、株式譲渡・M&Aに失敗してしまう可能性も考えられます。
「これから株式譲渡を実施しようとしているけれど、失敗はしたくない」という方は、「M&A仲介会社」の活用を検討してみましょう。
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3. 株式譲渡制限会社のメリットとデメリット
続いては、株式譲渡制限会社のメリット・デメリットについて解説していきます。株式譲渡制限会社は株式譲渡に制限をかけることで、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
株式譲渡制限会社のメリット
まずは、「株式譲渡制限会社のメリット」についてご紹介します。株式譲渡制限会社のメリットとして考えられるのは、以下の点です。
【株式譲渡制限会社のメリット】
- 取締役会や監査役の設置義務がない
- 役員の任期が最大10年まで延長可能
- 請求がない場合は株券を発行しなくても良い
- 株式の発行制限がない
- 株主総会招集の手続きが楽
- 相続クーデターを予防できる
- 計算書類の作成が楽
- 後継者の負担が軽減される
取締役会や監査役の設置義務がない
株式譲渡制限会社のメリットの1つが「取締役会や監査役の設置義務がない」という点です。通常、公開会社では「取締役3人以上・監査役1人以上」を用意し、「取締役会」を設置しなければいけません。
一方、株式譲渡制限会社では、定款に定めることで、「取締役や監査役の資格を『株主のみにする』」などの制限を加えることができ、取締役会を設置する義務もありません。監査役を必ず用意する必要もなく、取締役が1名以上いれば問題ありません。
役員の任期が最大10年まで延長可能
「役員の任期が最大10年まで延長できる」というメリットが株式譲渡制限会社にはあります。通常は、取締役の任期は2年、監査役の任期は4年です。
しかし、株式譲渡制限会社では、定款で定めることによって、取締役・監査役の任期をそれぞれ10年まで延長できます。
請求がない場合は株券を発行しなくても良い
公開会社では自社の株式を発行する際、自社株式に関わる株券を遅滞がないように発行する必要があります。しかし、株式譲渡制限会社では、株主から「株券発行の請求」がない場合には株券を発行しなくても良いと認められています。
株式の発行制限がない
株式譲渡制限会社は、「発行する株式の発行制限がない」というメリットがあります。通常、公開会社は「発行済株式数の4倍」までしか「株式の発行可能数」を設定できません。しかし、株式譲渡制限会社であれば、制限なく株式を発行できます。
株主総会招集の手続きが楽
株式譲渡制限会社には、「株主総会招集の手続きが楽になる」というメリットがあります。公開会社の場合、株主総会が開催される「2週間前」に、文書やメールなどによって通知しなければいけません。
しかし、株主譲渡制限会社であれば、株主総会開催の「1週間前」に通知すれば良いと認められています。また、条件がそろえばより短い期間での通知も可能で、さらに「口頭による招集」も認められています。
相続クーデターを予防できる
株式譲渡制限会社では、定款に記載することで、相続によって移転した譲渡制限株式を、相続人に売渡してもらえるよう請求できます。
相続によって自社の株式が「自社が望まない人物・自社にとって不都合な人物」の手に渡ると、「相続クーデター」が発生する危険性があります。しかし、「相続人に対して売渡請求できる制度」を利用することで、相続クーデターを予防できるのです。
計算書類の作成が楽
株式譲渡制限会社であれば、「計算書類の作成が楽になる」というメリットがあります。自社が発行する株式に譲渡制限が設けられている場合には、計算書類に記載する必要がある「注記」を簡略化できます。
株式譲渡制限会社の計算書類で注記すべき内容は、以下の6点です。
- 重要な会計方針にかかわる事項に関する注記
- 会計方針の変更に関する注記
- 表示方法の変更に関する注記
- 誤りの訂正に関する注記
- 株主資本など変動計算書に関する注記
- その他の注記
後継者の負担が軽減される
株式譲渡制限会社には、後継者に株式を集中させやすいというメリットもあります。後継者問題に悩む中小企業の経営者は多く、後継者が過半数の株式を取得したり保有したりするのは金銭的にかなりの負担となります。
株式を多く保有すればするほど、相続税や贈与税がかかるので、後継者の負担を軽減することは大切です。そのため、会社が後継者の発言権が確保できるくらいの株式を買い取るなどすれば、代金が後継者の納税の資金となるので、株式の集中と負担の軽減で会社を守りやすくなるでしょう。
株式譲渡制限会社のデメリット
次に、「株式譲渡制限会社のデメリット」について解説していきます。「株式譲渡制限会社のデメリット」として考えられるのは、以下の3点です。
【株式譲渡制限会社のデメリット】
- 決算公告が必要
- 会社を乗っ取られる可能性がある
- 株主総会の開催が手間
決算公告が必要
株式譲渡制限会社のデメリットの1つが「決算公告が必要」となることです。「決算公告」とは、会社法の規定に基づいて、会社が定款で定めた方法によって財務諸表を開示することです。
株式譲渡制限会社は、公開会社と同じように、決算期ごとに「決算公告」によって決算内容を公表しなければいけません。決算の内容を官報に掲載する際には、最低でも約6万円の掲載料が必要となります。最も安い掲載料となっているのが官報への掲載です。
会社を乗っ取られる可能性がある
株式譲渡制限会社のメリットで「株式の売渡請求をすることで、相続クーデターを予防できる」ことを紹介しました。しかし、これにはある注意点があります。それが、「売渡請求の対象となる株主は選ばれない」ということです。
つまり、「経営者の後継者」に対しても売渡請求を行使できるのです。株式譲渡制限会社の経営者が、自分の子供を後継者として株式を相続させる際にも、他の株主が子供への相続を拒否する可能性があります。
その結果、後継者となるはずだった子供に対する「売渡請求」が行使され、子供が会社から追い出されてしまう可能性があります。
株主総会の開催が手間
株式譲渡制限会社は「株式会社」となるため、「株主総会」の開催を行う必要があります。多くの株主が存在する場合には、それぞれに株主総会の通知を行わなければならず、非常に手間のかかる作業というデメリットが挙げられます。
4. 株式譲渡制限会社を公開会社にするには
ここからは、株式譲渡制限会社(非公開会社)を公開会社に変更する方法・流れについて解説していきます。株式会社を設立する際には、「株式譲渡制限会社(非公開会社)」として設立されるケースが多いです。
「株式譲渡制限会社(非公開会社)」として会社を設立すれば、知らない第三者の株主に自社株が渡ることを避けることができ、監査役や取締役会の設置義務がないなどのメリットを享受できます。
株式譲渡制限会社を公開会社に変える場面
株式譲渡制限会社(非公開会社)を公開会社に変える必要がある場面としては、例えば「株式市場に上場するケース」などがあります。会社設立当初は「株式譲渡制限会社」にしておき、上場する段階で「株式譲渡制限会社から公開会社に変更」するケースもあります。
「譲渡制限」を廃止する必要あり
株式譲渡制限会社を公開会社に変えるためには、発行株式に設けられている「譲渡制限」を廃止する必要があります。譲渡制限の廃止手続きを行い、定款で定められている制限を廃止した場合、自動的に現在の取締役や監査役の任期が満了となります。
取締役会と監査役の設置が必要
株式譲渡制限会社を公開会社に変える際には、「取締役会」と「監査役」を設置する必要があります。現在、取締役が3人以上いない場合は3人以上の取締役を選任し、監査役がいない場合には、1人以上の監査役を選任しなければいけません。
「発行可能株式総数」の変更が必要
株式譲渡制限会社を公開会社にする場合、「発行可能株式総数」を変更しなければいけません。株式譲渡制限会社では、「株式の発行制限」がありません。
しかし、公開会社になると、「発行可能株式総数」は「発行済株式総数の4倍まで」しか発行できなくなります。
そのため、現在登記されている「発行可能株式総数」が「発行済株式総数の4倍」以上である場合には、登記変更で「発行可能株式総数」の変更手続きをする必要があります。
5. まとめ
当記事では、「株式譲渡制限会社」についてまとめてきました。「株式譲渡制限会社(非公開会社)」は、会社が発行している株式に対して、自由に譲渡できないように制限が設けられている会社です。
株式譲渡制限会社の株式を譲渡する方法は、以下の2種類です。
- 株主総会にて承認
- 定款で定めておく
そして、株式譲渡制限会社のメリットは以下のとおりです。
- 取締役会や監査役の設置義務がない
- 役員の任期が最大10年まで延長可能
- 請求がない場合は株券を発行しなくても良い
- 株式の発行制限がない
- 株主総会招集の手続きが楽
- 相続クーデターを予防できる
- 計算書類の作成が楽
- 後継者の負担が軽減される
株式譲渡制限会社について詳しく知りたい方は、ぜひ当記事を参考にしてください。
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