M&Aにおける物的承継とは?意味や目的・注意点まで分かりやすく解説!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aにおける物的承継とは、事業承継の中でも会社の株式や土地を後継者に引き継ぐことであり、事業承継の1つの要素です。
今回は、物的承継の意味や目的、注意点などについてわかりやすく解説します。
 

目次

  1. 事業承継とは?
  2. 物的承継とは?
  3. M&Aにおける物的承継と目的
  4. M&Aにおける物的承継が増えている理由
  5. M&Aにおける物的承継のメリット
  6. M&Aにおける物的承継のデメリット
  7. M&Aにおける物的承継を成功させるための方法と注意点
  8. M&Aにおける物的承継は流れのポイントをしっかりつかんで早めに準備を始めよう
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1. 事業承継とは?

事業承継とは、会社の経営権や資産などを後継者に引き継ぐことです。
具体的に、事業承継によって引き継がれるものは、経営権、経営資源、物的資産の3つがあります。

  • 経営権  社長の役割と経営権、後続者の選定・育成など
  • 経営資源 経営理念、ブランド、独自ノウハウ、技術、人材、人脈、信用など
  • 物的資産 自社株式、個人資産、土地、建物、設備、運転資金など

事業承継を行う場合、以上の3つの要素が引き継がれていきます。
また、以上の3つの要素が事業承継の際にスムーズに引き継げず、十分に引き継ぐことができないと事業承継後に事業が傾いてしまうリスクがあります。

そのため、事業承継は専門家などに相談して、慎重に進めることが大切です。

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事業承継の種類

事業承継は、誰に引き継ぐのかによって3つの種類に分かれます。

  • 親族内事業承継 
  • 社内事業承継
  • M&Aによる事業承継

また、後続者選定を誤ってしまうと、どの種類の事業承継を行った場合でも事業が傾いてしまう可能性が高いです。
そのため、事業承継をする場合は、最適な後継者の選定やそれによるメリットやデメリットを理解することが大切です。

親族内事業承継

親族内事業承継とは、経営者の親族に事業を引き継ぐことです。
また、息子や娘以外にも甥や姪、その他親戚などに事業を引き継ぐ場合も親族内事業承継になります。

親族内事業承継の場合、経営者の親族が若い頃から勤めていることが多いので、他の事業承継と比較して十分な育成期間が設けられていることが特徴的です。

しかし、後継者(親族)が事業を引き継ぐことを決めるタイミングによっても、育成期間は異なるので、十分な育成期間が設けられないこともあります。

社内事業承継

社内事業承継とは、後継者として相応しい役員や従業員に事業を引き継ぐことです。

社内事業承継では、最初に経営理念やマネジメントなど経営者に必要な仕事を教え、経営資源の承継を進め、経営権の承継、物的資産の承継を行います。

また、仕事ぶりを近くで見ていた従業員や役員に承継することで、会社全体に安心感や納得感が生まれやすかったり、実務上の引き継ぎが手軽であるなどのメリットがあります。

しかし、後継者が辞退してしまったり資金不足により株式を買い取れずに事業承継が成立しないなどのリスクもあります。

M&Aによる事業承継

M&Aによる事業承継とは、親族や社内の従業員や役員ではなく、外部の相応しい相手に事業承継を行うことです。

M&Aでは、経営権や自社株式、その他設備や土地などの資産を1度に引き継ぐ場合と、M&A実施後に半年から1年ほどかけて少しずつ行う場合があります。
ただ、経営権と自社株式は同時に引き継ぐことが一般的です。

さらに、M&Aによる事業承継では、経営者は売却益を得ることができたり、従業員や役員の雇用や待遇を保障させることができます。

そのため、引退を考えている経営者や新規事業の立ち上げ資金が必要な経営者には、効果的な事業承継です。

2. 物的承継とは?

事業承継がどのようなものなのかわかりましたが、物的承継とはどのような意味なのでしょうか?
また、事業承継と物的承継の違いや特徴についても気になることが多いです。

ここでは物的紹介について解説します。

事業承継で不動産や株式などを後継者に引き継ぐこと

物的承継とは、会社の株式や事業用不動産などの会社に関する資産を、後続者に引き継ぐことです。

会社が保有している不動産や設備、資金などは株式を承継することで、自動的に後継者に引き継ぐことができます。

ただ、物的承継で株式を引き継ぐ場合には、相続税や贈与税が課税されるので、負担額が大きすぎる場合には、事業承継がスムーズに進まないことがあります。
そのため、物的承継をする場合は、早めの節税対策が必要です。

事業承継の要

物的承継では、会社の株式や不動産などの会社に関する資産を後継者に引き継ぎます。

株式を後継者に承継することによって会社のオーナーは後継者に切り替わり、その他資産も全て自動的に後継者に引き継がれます。
また、株式を承継する際には贈与税や相続税が課税されるので、場合によっては後継者が負担しきれずに事業承継がスムーズに進まない可能性もあります。

そのため、物的承継は事業承継の要であり、とても重要な引き継ぎ業務なので、物的承継では節税対策や専門家との相談がとても大切です。

3. M&Aにおける物的承継と目的

M&Aにおける物的承継とその目的について、主に2つ解説します。

第三者への物的承継

M&Aにおける物的承継とは、第三者に物的承継を行うことです。
親族や社内で後継者を見つけて引き継がせる場合、M&Aではなく通常の物的承継になります。

M&Aにおける物的承継を行う主な目的には、

  • 外部から後継者に相応しい人物を見つける
  • 親族や社内に後継者が見つからない
  • 売却益を得るため

など、企業によって目的はさまざまです。

近年M&Aを検討する会社が増加傾向

近年M&Aを検討する会社が増加傾向にあり、今後も増加し続けていくことが予想されています。
M&Aを検討する会社が増加傾向にある理由には、以下のようなものがあります。

  • 少子高齢化による人口減少
  • 社内の従業員の高齢化
  • 後継者が見つからない
  • 外部で優秀な後継者を見つけたい

以上のような理由からM&Aを検討する会社が増加しており、これから親族や社内で後継者として相応しい人物を見つけることが難しくなっていく可能性も高いです。
そのため、親族や社内のみで引き継がれている会社が珍しくなっていくでしょう。

4. M&Aにおける物的承継が増えている理由

近年では、M&Aにおける物的承継を行う企業が増えており、今後も増え続けていくことが予想されています。
また、M&Aにおける物的承継が増えている理由は、主に以下の2つがあります。

  • 親族にも社内にも後継者がいない
  • 外部に広く後継者を探すことができる

ここでは、以上2つの理由をそれぞれ解説します。

親族にも社内にも後継者候補がいない

M&Aにおける物的承継が増えている1つ目の理由は、親族にも社内にも後継者がいないからです。

日本国内では少子高齢化による人口減少や企業や業界の高齢化が問題になっており、その影響で若い世代の後継者が見つからずに廃業を余儀なくされる企業が多くなっています。
しかし、価値の高い事業であれば、できるだけ廃業させずに存続させたいと考える経営者が多いです。

そのため、M&Aによる物的承継によって、自社の事業を存続させる場合が多くなっています。

外部に広く後継者を探すことができる

M&Aにおける物的承継が増えてる2つ目の理由は、外部に広く後継者を探すことができるからです。

親族や社内に後継者として相応しい人物がいない場合、妥協して後継者を選ぶよりもM&Aによって後継者として相応しい第三者を探す方が事業拡大には効果的です。
自分が成長させてきた事業が拡大していけば、ただ存続させるよりも価値があると考える経営者は多いです。

また、妥協して親族や社内で後継者を選んだ結果、事業が傾いてしまうと多くの従業員にも迷惑をかけてしまいます。

5. M&Aにおける物的承継のメリット

M&Aにおける物的承継のメリットには、主に以下2つが挙げられます。

  • 家族や従業員以外から後継者を探せるため選択肢が増える
  • 譲渡後事業拡大できる可能性が広がる

 M&Aにおける物的承継には、以上の2つのメリットがあります。
ここではそれぞれのメリットを解説します。

家族や従業員以外から後継者を探せるため選択肢が増える

M&Aにおける物的承継の1つ目のメリットは、家族や従業員以外から後継者を探せるため選択肢が増えるということです。

親族内事業承継や社内事業承継では、事業を引き継ぐために必要なスキルや知識が不足している場合や後継者として相応しい人物がいない場合に、事業の存続が厳しくなってしまいます。

しかし、M&Aによる物的承継では、自社が行っている事業の経験やスキルが豊富な人物や資金に余裕のある企業が後継者になってくれるので、事業をしっかりと引き継いでもらうことが可能です。

譲渡後事業拡大できる可能性が広がる

M&Aによる物的承継の2つ目のメリットは、譲渡後事業拡大できる可能性が広がることです。

親族や社内の人物に承継した場合、事業を存続させることはできても、ほとんど現状維持で拡大していかないことがあります。
しかし、自社の同業種の企業や資金が豊富な企業に買収されれば、これまでよりも事業を拡大できる可能性が高いです。

また、自分が成長させた事業が拡大すれば、さらに世の中に普及していく可能性も十分にあります。

6. M&Aにおける物的承継のデメリット

M&Aにおける物的承継には、主に2つのメリットがありましたが、その反対に主に以下2つのデメリットも存在します。

  • 相応しい後継者が見つからない
  • 交渉を成立させるのに時間を要する

そのため、M&Aによる物的承継を行う場合は、以上2つのデメリットを理解した上で進めることが大切です。
ここでは2つのデメリットをそれぞれ解説します。

相応しい後継者が見つからない

M&Aにおける物的承継の1つ目のデメリットは、相応しい後継者が見つからないことです。

親族内事業承継や社内事業承継よりも後継者を幅広く探すことができますが、それでも相応しい後継者が見つからないことがあります。
特に、専門性の高い事業を行っている場合では、事業を維持・拡大させられるだけの相応しい人物を見つけられない可能性が高いです。

また、希望額で売却できなかったり、交渉決裂してしまう場合もあるので、慎重に探すことをおすすめします。

交渉を成立させるのに時間を要する

M&Aにおける物的承継の2つ目のデメリットは、交渉を成立させるのに時間を要することです。
M&Aを行う場合、自社を買収するメリットを提示したり専門家などに相談してM&A交渉を進めていく必要があります。

自社のみでも交渉を進めることはできますが、M&Aに関する知識や経験がない場合がほとんどなので、失敗する可能性が高いです。
また、お互いの利害が対立したり交渉決裂のリスクがあるので、専門家によるサポートを受けて慎重にM&Aを進めることが大切です。

そのため、M&Aによる物的承継を行う場合は、かなりの時間を要することを理解しておきましょう。

7. M&Aにおける物的承継を成功させるための方法と注意点

M&Aに失敗してしまうと大きな損失になってしまいます。
M&Aにおける物的承継を成功させるための方法と注意点は、主に以下の3つです。

  • 早めに準備を始める
  • 税金対策を早めに始める
  • 信頼できる相談先を見つける

ここでは、以上の3つをそれぞれ解説します。

また、成功させるための方法や注意点などを詳しく知りたい方は、下記のサイトをご覧ください。

早めに準備を始める

M&Aにおける物的承継を成功させるための方法と注意点の1つ目は、早めに準備を始めることです。

M&Aでは、専門家への相談や財務状況の整理、売却先企業の選定や交渉など、さまざまな業務を行う必要があります。
また、予定通りに進まずに必要以上に時間がかかってしまうなどのリスクもあります。

そのため、必要な業務や予定などを把握して、余裕を持って始めるために、できるだけ早く準備しましょう。

税金対策を早めに始める

M&Aにおける物的承継を成功させるための方法と注意点の2つ目は、税金対策を早めに始めることです。

M&Aにおける物的承継では、自社株式や不動産などの資産を第三者に引き継ぐので、その資産に対して贈与税や相続税が課税されます。

また、引き継ぐ資産が多いほど課税額も高くなってくるので、場合によっては引き継ぎ先が負担しきれずM&Aがスムーズに進まなくなる可能性が高いです。

そのため、税金が優遇される制度を活用したり、専門家に相談するなどして、税金対策を早めに始めるようにしましょう。

信頼できる相談先を見つける

M&Aにおける物的承継を成功させるための方法と注意点の3つ目は、信頼できる相談先を見つけることです。

M&Aに関する経験や知識を持っていない経営者が初めてM&Aを行う時に、自社のみで進めようとするとわからないことが多くなります。
また、交渉がうまくいかず対立したり決裂することや自社が損をする契約をしてしまう可能性が高いです。

そのため、M&Aを行う場合は、すぐに相談できるような専門家や機関などを見つけておくことが大切です。

8. M&Aにおける物的承継は流れのポイントをしっかりつかんで早めに準備を始めよう

「後継者が見つからない」「外部で後継者を見つけたい」などの理由から、M&Aにおける物的承継を検討する企業は多くなっています。

また、「自社の事業が今後どのように展開するのか?」「相応しい後継者を見つけることができるのか?」など未知数なことが多いので、自社が将来的にM&Aによる物的承継を行わないと断言することは難しいです。

しかし、どのようなポイントを意識して行えばいいのわからない経営者は多く、失敗してしまうことも少なくありません。
M&Aにおける物的承継を成功させるためには、しっかりとポイントを抑えつつ。余裕を持って事前に税金対策や相談先の確保、手続きなどを行う必要があります。

そのため、流れやポイントなどをしっかり掴んで早めに準備を始めるようにしましょう。

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