2023年09月21日更新
特定目的会社(TMK)とは?メリット・デメリット、仕組みを解説
特定目的会社(TMK)とは、不動産を流動化させるために設立できる会社のことをいいます。この記事では、特定目的会社(TMK)とはどのような仕組みになっているのか、また、特定目的会社(TMK)を設立した際のメリット・デメリットなどをわかりやすく解説しています。
1. 特定目的会社(TMK)とは
現在の会社法では、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4種類しか設立できないとされています。しかし、実際には会社法に規定のない特定目的会社(TMK)というのも存在します。
では、特定目的会社(TMK)とは、どのような形態の会社を指すのでしょうか。この記事では、特定目的会社(TMK)とはどのような目的で設立されるのか、特定目的会社(TMK)の仕組みや設立するメリット・デメリットについて解説します。
特定目的会社(TMK)を設立する目的とは
特定目的会社(TMK)とは、資産の流動化に関する法律の下に設立できる社団法人のことを指します。特定目的会社(TMK)の資産とは主に不動産を指しますが、一般的に不動産購入には多額の資金が必要になります。
また、投資した資産を元手にして収益を上げ、投資分をすべてを回収するためには時間もかかります。不動産を購入した場合は負債額が大きくなりがちなので、第三者からすると倒産してもおかしくない状態にみえることもあります。
不動産を購入するような会社は別事業を行っていることが多く、新たに事業を始める際は金融機関からの借り入れや増資による資金調達が必要になります。
しかし、不動産を購入した際の負債額が大きすぎると、財務上の観点から安全性が非常に低いとみなされてしまうたい、金融機関などから借り入れが難しくなるケースもあります。
このようなデメリットを解消するために用いられるのが、特定目的会社(TMK)の設立です。特定目的会社(TMK)を説汁することにより、不動産だけでなく付随する負債も移転させることができます。
つまり、特定目的会社(TMK)を設立することにより、当該会社の財務上の安全性が改善されるため、資金調達しやすくなります。
特定目的会社(TMK)の運営とは
特定目的会社(TMK)とは営利社団法人の1つであるため、売上がなければ継続して運営することが困難になります。
ではどのように運営していくのかというと、まず会社は特定目的会社(TMK)を設立します。そして、特定目的会社(TMK)の所有者は、不動産信託など当該会社が発行する証券の保有者となります。
資産価値を証券に変える手続きを行うことから、特定目的会社(TMK)を立ち上げることとは資産の流動化と呼ばれます。
特定目的会社(TMK)の柱となる売り上げとは不動産の家賃収入で、そこから維持費や管理費などを差し引いた収益が証券保有者に還元されるという仕組みで運営されています。
特定目的会社(TMK)を活用するシーン
特定目的会社(TMK)を活用した事例には、六本木ヒルズやホテルオークラの建て替え、歌舞伎座など、さまざまなものがあります。
規模の大きな不動産を一般的な会社が保有していると負債額が大きくなり、財務上の安全性が低くなりますが、都心であるなどの立地を考慮すると家賃収入などを見込むことができます。
このような不動産を管理する会社が特定目的会社(TMK)を活用すれば、負債を背負うことはなく収益を得ることが可能になります。また、管理会社の財務状況が改善するため、金融機関や株主などからの資金調達が容易になります。
特定目的会社(TMK)は、規模が大きい不動産でかつ収益が見込める不動産を保有・管理する会社が活用する場合が多いです。
特定目的会社(TMK)と特定目的会社(SPC)との違いとは
特定目的会社(TMK)と似た言葉に特定目的会社(SPC)という会社もありますが、両者の違いとはどのようなものなのでしょうか。
特定目的会社(SPC)とは、証券化やプロジェクトファイナンスを目的とする事業を行う会社を指し、簡単にいえば資産を流動化する会社のことです。特定目的会社(TMK)も特定目的会社(SPC)も、どちらも資産を流動化する手続きですが、両者には異なる点が存在します。
特定目的会社(TMK)と特定目的会社(SPC)の違いとは、流動化させる対象にあります。特定目的会社(TMK)は資産のうち不動産に限られますが、特定目的会社(SPC)は不動産に限らずさまざまな資産を流動化させることができます。
つまり、特定目的会社(SPC)の一種として特定目的会社(TMK)があるという関係性になります。
特定目的会社(TMK)と特定目的会社(SPC)との違いは、以下記事でくわしく解説していますので、是非ご覧ください。
特定目的会社(TMK)と株式会社との違いとは
特定目的会社(TMK)と株式会社の大きな違いとは、行える事業が特定されているかどうかという点です。
株式会社の場合は利益をあげるための事業に制限はなく、また、事業を行うために従業員を雇用しても問題はありません。
これに対して、特定目的会社(TMK)では行えるのは資産の流動化に関する事業のみであり、特定目的会社(TMK)では従業員を雇用することはできません。
このように、特定目的会社(TMK)で大きな制限がかけられている理由は、会社設立の根拠となる法律が異なっているからです。
株式会社は会社法が根拠になっており、会社法では行える事業や従業員の雇用について制限はありません。
一方、特定目的会社(TMK)は資産の流動化に関する法律が根拠になっており、資産の流動化が認められる代わりに、会社の決算報告の方法や監査方法など詳細に決められています。
特定目的会社(TMK)の設立手順とは
特定目的会社(TMK)とは特定目的会社(SPC)のなかの1つであるため、設立手順も特定目的会社(SPC)の場合と同様です。
特定目的会社(TMK)を立ち上げる場合はいくつかの要件を満たす必要があり、例えば資本金が10~15万円以上、内閣総理大臣への届け出が必須、取締役と監査役を1人ずつ置くことなどがあります。
特定目的会社(TMK)では登録免許税の支払いが必須ですが、一定の条件を満たせば減免される税制優遇も存在します。
特定目的会社(TMK)の設立には要件を満たす必要があるだけでなく、税制優遇が受けられるように進めるのが望ましいため、専門家に相談しながら行うことをおすすめします。
2. 特定目的会社(TMK)のメリット・デメリット
特定目的会社(TMK)のメリット・デメリットとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。この章では、メリット・デメリットについてそれぞれ解説します。
特定目的会社(TMK)のメリットとは
特定目的会社(TMK)の主なメリットとして挙げられるのは、以下の3点です。
- 資産のオフバランス化
- 自己資本比率の維持
- 資産を倒産から守る
1.資産のオフバランス化
特定目的会社(TMK)を行う1つ目のメリットは、資産のオフバランス化ができることです。資産のオフバランス化とは、貸借対照表から負債を切り離すことをいいます。
前述のとおり、負債で大規模の不動産の所有している場合は安全性が低くなるため、融資や出資を受けづらくなります。
つまり、不動産に対する多額の負債を抱えている企業は、新たな事業などへの投資がしにくくなるわけですが、特定目的会社(TMK)を設立することにより不動産と多額の負債を移動させることができます。
これにより、企業は資産のオフバランス化されて融資や出資を受けやすくなり、投資や新事業の進出が行いやすくなります。
2.自己資本比率の維持
特定目的会社(TMK)を行う2つ目のメリットは、自己資本比率の維持です。自己資本比率とは、総資産に対する純資産の割合です。
通常、企業が資金調達をする場合、投資家から出資してもらうか、金融機関などから融資してもらうか、2つの選択肢があります。
投資家からの出資により資金調達した場合は純資産額、金融機関からの借り入れによる資金調達の場合は負債額が増加します。
特定目的会社(TMK)を設立すれば、不動産にかかる負債をすべて特定目的会社(TMK)に移動できるため、自己資本比率を適切な値で維持することができます。
また、特定目的会社(TMK)を設立して自社内の資産を整理することで、残留する自己資本が増える場合もあり、そのようなケースでは増資を行って株主を増やすリスクを犯してまで資金調達をする必要がなくなります。
このように、特定目的会社(TMK)を設立による自己資本比率を維持することによって、さまざまなメリットを得ることができます。
3.資産を倒産から守る
特定目的会社(TMK)を行うメリット3つ目は、資産を倒産から守れることです。事業がうまくいかなくなり倒産となれば、企業は保有している資産をすべて売却して清算に充てる必要があり、不動産についても同様です。
このような不動産売却のリスクが回避できる方法として有効なのが、特定目的会社(TMK)の設立です。
特定目的会社(TMK)を設立して不動産を移動させておけば、会社が倒産しても不動産を売却する必要はありません。
むしろ、清算をする際には精算価格で資産が売却され、評価額よりも低い価格で清算される可能性もあります。
金銭面からも不動産の管理会社を守れることは大きなメリットとなるため、不動産を倒産から守るという理由で特定目的会社(TMK)を設立するケースも多くみられます。
特定目的会社(TMK)のデメリットとは
特定目的会社(TMK)の設立には多くのメリットがありますが、当然のことながらデメリットも存在します。では、特定目的会社(TMK)の設立するデメリットとはどのようなものなのかをみていきましょう。
1.設立や維持にコストがかかる
特定目的会社(TMK)を設立するデメリットは、設立や維持にコストがかかることです。設立するためには特定目的会社(TMK)の資本金が必要です。
会社法に基づく資本金の場合は1円で済みますが、特別目的会社(SPC)に基づく設立の場合は10万円以上が必要になります。
ただし、資本金はその会社や関連する親会社、移動させる不動産の収益性などを示すと考えている投資家は多いため、コストを理由とした極端に少ない資本金の設定は極力避けたほうがよいでしょう。
また、登録免許税は3万円以上かかります。さらに特定目的会社(TMK)を設立する場合、専門的な知識が必要になるため、各専門家へ依頼するケースが一般的です。
各専門家への報酬も加味すると、特定目的会社(TMK)を設立するときにはかなりの資金が必要であることがわかります。
それ以外に、特定目的会社(TMK)を維持するためのコストも必要です。特定目的会社(TMK)は資産流動化法に基づき、財務諸表の作成や監査を行うことが義務付けられていますが、自社と特定目的会社(TMK)に対して行う必要があるため維持費用は単純に2倍になります。
これらのコストがかかることを十分理解したうえでメリットとデメリットを総合的に判断し、特定目的会社(TMK)を設立することが大切です。
コストに対する税制優遇措置
コスト面だけみると、特定目的会社(TMK)の設立はデメリットが大きいようにも感じますが、特定目的会社(TMK)を設立すると2つの税制優遇措置を受けることができます。
1つ目は、配当金の損金算入です。通常、法人の配当金は損金不算入ですが、租税特別措置法の要件を満たした特定目的会社(TMK)は配当金を損金算入することができます。
2つ目は、登録免許税と不動産取得税の減免です。こちらについても一定の要件を満たした特定目的会社(TMK)に対して減免が認められます。
税制優遇の要件や詳細については、会計士や税理士などの専門家に相談するのがよいでしょう。
3. 特定目的会社(TMK)の仕組み
ここまで特定目的会社(TMK)を設立する目的や主なメリット・デメリットについて述べましたが、特定目的会社(TMK)とはどのような仕組みになっているのでしょうか。
特定目的会社(TMK)の特徴的な仕組みとは、資産を流動化させることです。特定目的会社(TMK)では不動産を証券に変換して投資家に発行します。
不動産の所有者は投資家ですが、実際には特定目的会社(TMK)を設立した会社が証券のほとんどを所有することになるため、その会社が親会社、特定目的会社(TMK)が関連する会社です。
つまり、設立した会社は、実質的に不動産を保有を維持し続けることができるというのが特定目的会社(TMK)のメカニズムです。
4. 特定目的会社(TMK)の相談
企業経営を続けていくうえでは資金調達が必要になる場面も多いですが、どの企業でもスムーズな資金調達が行えるというわけではありません。
資金調達が難しい場合の解決手段のひとつに特定目的会社(TMK)の設立がありますが、設立の際はさまざまな手続きが必要になります。また、できる限り税制優遇が受けられるよう、専門家のサポート下で進めていくのをおすすめします。
特定目的会社(TMK)の設立をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、経験豊富なM&Aアドバイザーが担当につき、親身になってフルサポートいたします。
料金体系は完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)となっており、着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。
無料相談は随時お受けしておりますので、特定目的会社(TMK)の設立やM&A・事業承継をご検討の際は、どうぞお気軽にご連絡ください。
5. まとめ
今回は特定目的会社(TMK)について解説しました。特定目的会社(TMK)とは資産の流動化に関する法律の下に設立できる社団法人であり、大規模な不動産を所有している大企業で設立されるケースが多くみられます。
また、不動産所得用の不動産がある場合、資産のオフバランス化を目的として中小企業でも実施されるケースもあります。
特定目的会社(TMK)を設立するにあたっては専門知識が必要になるため、専門家に相談しながら進めていくようにしましょう。
【特定目的会社(TMK)のメリット】
- 資産のオフバランス化
- 自己資本比率の維持
- 資産を倒産から守る
- 設立や維持にコストがかかる
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