2020年10月13日更新
特殊運送・輸送会社のM&A・売却事例はある?流れや注意点を解説

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
当記事では、特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収について、特殊運送・輸送会社の概要、主要なスキーム、M&A・売却・買収の流れと注意点を解説しています。そのほかにも、特殊運送・輸送会社のM&A・売却事例やおすすめの相談先も紹介しています。
目次
1. 特殊運送・輸送会社のM&A
当記事では、特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収について解説していきますが、まずは、特殊運送・輸送事業の概要、M&A・売却・買収・事業承継の基本的な意味を簡単に説明します。
特殊運送・輸送とは
特殊運送・輸送とは、大型の機器・車両などの重量物や、医療品・化学品・医療機器・電子機器など繊細な取り扱いが求められる貨物を運ぶことをさします。
特殊運送・輸送を担う会社では、貨物を所定の場所に運ぶだけでなく、貨物の荷下ろし・組立・保管・管理などの事業も請け負っていることが多いでしょう。
また、特殊運送はトラックを用いた貨物の運搬をさし、特殊輸送はトラック・船舶・航空機などで遠方に大量の貨物を運ぶことをさします。
特殊運送・輸送と一般的な運送との違い
特殊運送・輸送と一般的な運送との違いは、運搬する荷物・荷物の取り扱い方法です。特殊運送・輸送では、大型・車両・重機などの重量物や、精密機械・液体・動植物・危険物など、繊細な取り扱いが求められる貨物を運びます。
運搬の際に荷崩れ・変質を起こさないように、特殊な荷付けが必要とされる点が特徴といえるでしょう。
対して、一般的な運送では、特別な取り扱いや荷付けを必要としない一般貨物を運び、特殊運送・輸送と一般的な運送とでは、取り扱う荷物と荷物の取り扱いに違いが見られます。
M&A・売却・買収とは
M&A・売却・買収とは、第三者と特殊運送・輸送会社や特殊運送・輸送事業の売買を行うことです。
よく利用されるスキームには、会社そのものを譲渡する株式譲渡と、事業の一部やすべてを譲渡する事業譲渡があります。
そのほかのスキームには、会社を一つにまとめる合併や、切り離した会社の権利義務を承継させる分割、両社の株式を交換する株式交換、1社以上が自社株式を新設会社に移す株式移転があります。
事業承継とは
事業承継とは、特殊運送・輸送事業の経営を、親族・役員・従業員・第三者(M&A)に引き継がせることです。
親族・社内の人間への事業承継では、従業員の反発を抑えられたり、会社の方針・業務に精通していたりと、事業承継後もスムーズな運営が期待できます。
とはいえ、昨今の中小企業では、子どもに会社を継ぐ意思がない・事業承継による自社株式取得の負担を懸念するなどの理由から、同業者や関連業種など会社運営の経験がある・経営を任せられる第三者に事業承継するケースが増えています。
2. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却事例
特殊運送・輸送会社によるM&A・売却では、どのような企業が譲渡・承継の対象とされているのでしょうか。ここでは、自社のM&A・売却を検討されている方に向けて、特殊運送・輸送会社のM&A・売却事例を紹介します。
- 安田倉庫株式会社による大西運輸株式会社とオオニシ機工株式会社のM&A
- 株式会社丸運による静岡石油輸送株式会社のM&A
- ニッコンホールディングス株式会社による松久運輸株式会社と株式会社松久総合のM&A
- トナミホールディングス株式会社による株式会社ケーワイケーのM&A
- 株式会社ゼロによる株式会社HIZロジスティクスのM&A
①安田倉庫株式会社による大西運輸株式会社とオオニシ機工株式会社のM&A
1つ目に紹介する特殊運送・輸送会社のM&A・売却事例は、安田倉庫株式会社による大西運輸株式会社とオオニシ機工株式会社のM&Aです。
首都・関西圏の物流施設を中心にしたメディカル関連・IT機器などの配送・保管や、アジアを中心とした国際輸送のサービスなどを手掛ける安田倉庫株式会社は、2019年9月に、大西運輸株式会社とオオニシ機工株式会社の全株式を取得する旨を決議しています。
大西運輸株式会社は、石川県金沢市に拠点を置き、北陸3県と関東・中京・関西への配送網を有する会社で、オオニシ機工株式会社は、一般建設会社として北陸3県を基盤に建材輸配送などを営む大西運輸株式会社のグループ会社です。
安田倉庫株式会社は、大西運輸とオオニシ機工の2社を買収することで、輸配送のネットワークを充実させ、サービスの質を高めるとしています。
②株式会社丸運による静岡石油輸送株式会社のM&A
2つ目に紹介する特殊運送・輸送会社のM&A・売却事例は、株式会社丸運による静岡石油輸送株式会社のM&Aです。
一般貨物をはじめ、特殊貨物(重量品・長尺物など)や、液体危険物(石油製品・潤滑油など)、食品、医療関連器具などの物流を担う株式会社丸運は、2019年4月、静岡県と山梨県の一部で石油製品の配送を手掛ける静岡石油輸送株式会社の株式を取得しました。
丸運は、静岡石油輸送が発行する株式の51%を取得して子会社としていますが、縮小する事業基盤の維持と拡大のために、同業者の買収に踏み切ったと見られます。
③ニッコンホールディングス株式会社による松久運輸株式会社と株式会社松久総合のM&A
3つ目に紹介する特殊運送・輸送会社のM&A・売却事例は、ニッコンホールディングス株式会社による松久運輸株式会社と株式会社松久総合のM&Aです。
国内外での物流・倉庫事業などを展開するニッコンホールディングス株式会社は、2018年12月、松久運輸株式会社と株式会社松久総合の全株式を取得して子会社としています。
対象企業は、完成車・トラック・積車輸送事業をはじめ、部品・貨物の一元管理を行う倉庫事業、部品供給・組立・入出庫の管理事業を手掛けている会社です。
ニッコンホールディングスは、松久運輸と松久総合が所有する業務運営のノウハウ・ネットワークを活かして、より広い範囲をカバーし効率的な事業運営を目指します。
④トナミホールディングス株式会社による株式会社ケーワイケーのM&A
4つ目に紹介する特殊運送・輸送会社のM&A・売却事例は、トナミホールディングス株式会社による株式会社ケーワイケーのM&Aです。
貨物自動車運送事業や貨物利用運送事業などを展開するトナミホールディングスは、2018年6月に、千葉県柏市藤ヶ谷に本社を置くケーワイケーの全株式を取得し、完全子会社としています。
トナミホールディングスは、ケーワイケーの運送力・地域に根差した配送サービスのノウハウを獲得し、事業基盤の強化やシナジーの獲得を目指しています。
⑤株式会社ゼロによる株式会社HIZロジスティクスのM&A
5つ目に紹介する特殊運送・輸送会社のM&A・売却事例は、株式会社ゼロによる株式会社HIZロジスティクスのM&Aです。
車両の輸送事業や、原材料・製品の輸入・引取・保管・納入・配送などの一般貨物事業などを手掛けるゼロは、2017年11月、車両輸送を営むHIZロジスティクスの全株式を取得し子会社しています。
ゼロは、グループによる物流ネットワークの最適化を図るために、全国の子会社・他社の取り込みを行っており、北海道・東北エリアの物流体制を統括すべく、青森県に本社を構えるHIZロジスティクスを買収しました。
なお、今回の買収に合わせて、2017年12月にHIZロジスティクスの商号を「株式会社ゼロ・プラス東日本」に変更しています。
3. 特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる背景
特殊運送・輸送会社のM&A(第三者への事業承継を含む)には、どのような背景が見られるのでしょうか。
この章では、特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる主な理由・目的を4つ取り上げ解説します。
- 経営者の高齢化による後継者問題
- 特殊車両運転の人材を確保する目的
- 特殊車両の獲得を目的としたM&Aの増加
- 特殊運送・輸送のノウハウを獲得するため
①経営者の高齢化による後継者問題
1つ目に挙げる特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる背景は、経営者の高齢化による後継者問題の解消です。
日本政策金融公庫は、日本公庫総研レポート(2019年3月)で、2012~2017年の貨物自動車運送事業者数の増減を公表しています。
保有台数が20両以下のグループでは2,410の事業者が減っているものの、21両以上のグループは1,603の事業者の増加が見られます。
小規模事業者は、経営者の高齢化などを理由に、事業の統廃合や同業者へのM&A(第三者への事業承継を含む)を選択したため、事業者の数が減少したと考えられます。
②特殊車両運転の人材を確保する目的
2つ目に挙げる特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる背景は、特殊車両運転の人材を確保するためです。
国土交通省が2018年の10月に発表した「物流を取り巻く現状について」によると、ドライバーの不足について、企業の63%が不足またはやや不足と答えています。
特殊な貨物を輸送し、長さ・幅・高さ・重量が一定の基準を超える特殊車両のドライバーも不足していると推測されるため、運転手の確保を目的として特殊運送・輸送会社のM&A(第三者への事業承継を含む)を実施していると考えられます。
③特殊車両の獲得を目的としたM&Aの増加
3つ目に挙げる特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる背景は、特殊車両を獲得するためです。
特殊運送・輸送事業では特殊な車両を必要としますが、一般の運送会社とは異なり、貨物に応じた車両を揃えなければなりません。
そこで、特殊運送・輸送会社をM&A(第三者への事業承継を含む)で買収し、保有する特殊車両を確保しています。
さらに、燃料費の削減・販路の拡大などによるスケールメリットが得られることから、特殊車両を確保するためのM&Aが増えていると見られます。
④特殊運送・輸送のノウハウを獲得するため
4つ目に挙げる特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる背景は、特殊運送・輸送のノウハウを獲得するためです。
特殊運送・輸送事業では、各企業により取り扱う荷物や付随するサービスが異なるため、同業者をM&Aで買収すれば、自社にはないノウハウの獲得が可能です。
特殊運送・輸送会社のM&Aを行うことにより、取り扱う貨物の種類を増やせたり、荷下ろし・組立・管理といったサービスを付与できたりするのも、大きなメリットといえるでしょう。
4. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収の主な流れ
特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収は、どのような手順で行われるのでしょうか。ここでは、特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収の流れをみていきましょう。
- 仲介会社などへの相談
- M&A先の選定
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
①仲介会社などへの相談
特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収を行うことが決まったら、まずはM&A仲介会社などの専門家に相談します。
自社のみで相手先企業を探し、交渉や専門な手続きを進めるのは非常に難しいため、M&A仲介会社などにサポートを依頼するのが一般的です。
さらに、譲渡・承継する資産・負債などの選定や、スキーム・譲渡価格の見極め、デューデリジェンス・PMIへの対応も必要になるため、専門家のサポートは不可欠ともいえるでしょう。
秘密保持契約書の締結
M&A仲介会社などの専門家に依頼することが決まったら、秘密保持契約書を締結します。秘密保持契約書とは、秘密の保持・目的外の使用禁止・有効期間などを定めた書面です。
M&A仲介を進めるためには、自社の情報を専門家に開示しなければなりませんが、万一情報が外へ漏れてしまうと、業績や取引先・従業員の関係性に影響が及ぶ可能性もあります。
また、秘密保持契約書の締結に合わせて、相談先とM&A仲介契約も結びます。M&A仲介契約の内容は、支援する業務範囲や目的・直接交渉の禁止などです。
これら2つの契約は最初に行う重要な手続きとなるため、M&A仲介会社が信頼に値するかなども厳しくチェックしてから行うとよいでしょう。
②M&A先の選定
M&A仲介会社との契約が済んだら、次はM&A先の選定を進めていきます。M&A仲介会社に自社の希望を伝えると何社かの候補が紹介されるので、候補のなかから交渉を進めたい相手を選びます。
買い手候補に交渉を打診して了承が得られたら、トップ同士の面談に移ります。トップ面談では、相手企業の理念や経営方針、経営者の人間性などを把握し、契約に関する疑問点があれば解消するようにしましょう。
意向表明書の提示
双方が面談を通じて交渉を進める相手だと判断したら、買い手候補から意向表明書が提示されます。買い手候補が買収の意思を示す書類といえばわかりやすいでしょう。
場合によっては省略されることもありますが、買い手から提出されるケースがほとんどです。意向表明書には、自社の概要のほかに以下のような内容が記載されます。
- M&Aを実行する理由・目的
- 取引価額・取引の形態
- 取引価格の算出方法
- 売り手側の経営者・役員・従業員の処遇
- M&Aに必要な資金の調達方法
- スケジュール
- デューデリジェンスの概要
- 独占交渉権の有無
- 有効期間
- 秘密保持義務
- 法的拘束力の有無など
③基本合意書の締結
買い手側が提示した意向表明書の内容に問題がなければ、双方で基本合意書の締結に移ります。基本合意書に盛り込まれる内容には、以下のような事項があります。
- 取引の内容
- 役員・従業員の処遇
- 表明保証
- デューデリジェンスの実施と協力
- 善管注意義務
- 誠実交渉義務
- 秘密保持義務
- 独占交渉権
- 代金の修正と契約解除
- 契約期間
- 協議事項
- 適用法と管轄する裁判所
- 契約の効果など
④デューデリジェンスの実施
基本合意書の締結後は、買い手側企業によるデューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスとは、売り手側が提出した情報に誤りがないか、財務・法務などあらゆる面から調査することです。
売り手側にはデューデリジェンスに協力する義務があり、資料の用意・質疑応答などが必要な事項に対応しなければなりません。
そのほか、M&Aの実施がこの時点で従業員に知られないように、デューデリジェンスに応じる場所を社外に設けるなどの対応も必要だといえるでしょう。
⑤最終契約書の締結
デューデリジェンスの実施による条件の変更に、双方が合意すると、最終契約書の締結に移ります。最終契約書に記載される内容には、以下のような事項があります。
- 取引契約の合意
- 取引の対象物
- 取引価額の支払い
- 取引の手法
- クロージングの実施方法
- 役員・従業員の処遇
- 表明保証
- 賠償・補償
- 取引契約の解除
- 善管注意義務
- 秘密保持義務
- 競業避止義務
- 専属的合意管轄の裁判所
- 費用負担など
⑥クロージング
最終契約書を締結した後に、対価の支払いや譲渡対象の引き渡しを済ませると、M&Aのクロージングを迎えます。最終契約書の締結日からクロージングまでは、一定の期間を空けることが一般的です。
ただし、最終契約書の締結日までにクロージングの手続きを終えている・最終契約の後に必要な手続きを済ませることを約束している場合は、最終契約書の締結とクロージングを同じ日に行うことがあります。
5. 特殊運送・輸送会社がM&Aを行うメリット
特殊運送・輸送会社がM&Aを行うと、どのようなメリットを享受できるのでしょうか。特殊運送・輸送会社のM&Aによるメリットには、以下の5つが挙げられます。
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用先を確保
- 特殊車両・設備の引き継ぎ
- 取引先や顧客などとの関係維持・引き継ぎ
- ノウハウの引き継ぎができる
①後継者問題の解決
1つ目に挙げる特殊運送・輸送会社がM&Aを行うメリットは、後継者問題の解決です。
国土交通省は「一般貨物自動車運送事業に係る 標準的な運賃の告示について(令和2年3月)」という資料で、トラック運送事業者の車両規模別割合を公表していますが、最も多いのは保有台数が10両以下の小規模事業者で、全体の約55%占めています。
このようなデータから、トラック輸送事業に含まれる特殊運送・輸送も、業種に占める中小企業の割合が高いと推測されます。
現在、国内の中小企業の多くは、経営者の高齢化に悩まされており、特殊運送・輸送会社においても、後継者問題に直面している企業が多いと考えられるため、M&Aを利用して会社・事業の譲渡を選択していることがわかります。
②従業員の雇用先を確保
2つ目に挙げる特殊運送・輸送会社がM&Aを行うメリットは、従業員の雇用先を確保できる点です。特殊運送・輸送会社では、事業の継続にドライバーなどの従業員の雇用は欠かせません。
つまり、特殊運送・輸送会社のM&Aでは、買い手側に従業員の雇用を受け入れてもらいやすいといえるため、自社の従業員から職を奪わずに、会社・事業を譲渡できるでしょう。
③特殊車両・設備の引き継ぎ
3つ目に挙げる特殊運送・輸送会社がM&Aを行うメリットは、特殊車両・設備の引き継ぎです。特殊車両を新たに購入するとなれば、多額の費用を用意しなければいけません。
さらに、特殊車両を購入してからも、安全に運営を行うためには、車両の整備を必要とするでしょう。このような理由により、特殊運送・輸送会社のM&Aでは、特殊車両・整備の引き継ぎが可能です。
多くの特殊車両を抱えている・車両を整備する体制と施設が完備されているなら、買い手に会社・事業を引き継いでもらえる可能性が高いといえます。
④取引先や顧客などとの関係維持・引き継ぎ
4つ目に挙げる特殊運送・輸送会社がM&Aを行うメリットは、関係の維持と取引契約・顧客の引き継ぎです。買い手側は、M&Aを実行することで、事業基盤の強化や、配送路線の拡大、シナジーの獲得などを図ろうとしています。
そのため、M&Aを実行しても取引先・顧客の理解を得られやすく、関係の維持と取引・顧客の引き継ぎも可能といえるでしょう。
⑤ノウハウの引き継ぎができる
5つ目に挙げる特殊運送・輸送会社がM&Aを行うメリットは、ノウハウの引き継がせられる点です。買い手側は、売り手のノウハウを獲得したいと考えています。一からノウハウを形成すると、多くの時間が必要になり、費用・人材を確保しなければいけません。
その点、特殊運送・輸送事業を行う既存の会社を買収すれば、短期間・低コストで、形成されたノウハウを獲得できます。
ノウハウを保有する売り手は、同業者や関連業種、新規参入業者の目に留まりやすいといえるので、自社のノウハウを引き継がせることも可能といえます。
6. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収における注意点
特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収では、どのような点に注意をすればよいのでしょうか。ここでは、売却・買収する側に分けて、それぞれが注意するポイントを取り上げます。
売却側の注意点
特殊運送・輸送会社のM&Aの売却を進める際は、以下5つのポイントを意識して行うことが大切です。
- M&Aの際は計画的に準備を行う
- M&Aの目的を明確にする
- 最初から買い手を限定して考えない
- 最終的な契約成立までは情報漏えいに注意する
- M&Aの専門家に相談する
注意点1:M&Aの際は計画的に準備を行う
1つ目に挙げる売却側の注意点は、M&Aの際の計画的な準備です。M&Aでは買い手を探す前に、会社・事業のブラッシュアップや、税務・労務・株主の整理、訴訟問題の解消などを終えておく必要があります。
買い手を探し始めてからも、適正なスキーム・譲渡価格の決定や、買い手の選定、買い手に提出する資料の作成、交渉・成約の手続き、デューデリジェンスへの対応など、いくつもの過程を経なければM&Aを完了することはできません。
準備が不十分なままでM&Aの売却を進めてしまうと、希望する期間・価格・条件でM&Aを実現できない可能性があります。
そのため、特殊運送・輸送会社のM&Aでは、計画的に準備を進めることが重要といえるでしょう。
注意点2:M&Aの目的を明確にする
2つ目に挙げる売却側の注意点は、M&Aの目的を明確にすることです。M&Aを実行する場合、会社・事業の継続や、取引・雇用の維持、シナジーの獲得など、会社ごとにM&Aの目的が異なります。
優先する条件・最適なスキーム・交渉や手続きの方法が異なるため、特殊運送・輸送会社の売却では、M&Aの目的を明確にする必要があります。
M&Aの目的をはっきりさせておけば、ふさわしい買い手候補を見つけられ、スムーズに交渉・成約を進められる確率が高くなるといえるでしょう。
注意点3:最初から買い手を限定して考えない
3つ目に挙げる売却側の注意点は、最初から買い手を限定して考えないことです。自社の希望を頑固に押し通してしまうと、買い手を見つけられない可能性も考えられます。
買い手が提示する条件をすべて受け入れる必要はないものの、希望条件の譲歩を拒んでしまうと、交渉の決裂に至り、売却の機会を逃しかねません。
そのため、M&Aでは買い手の幅を広げることも重要であり、妥協する点や押し通す点を再確認し、より多くの買い手を候補先に含めるとよいでしょう。
注意点4:最終的な契約成立までは情報漏えいに注意する
4つ目に挙げる売却側の注意点は、情報漏えいへの注意です。M&Aを進めていることが外部に漏れてしまうと、自社の信用低下や取引先・従業員の離職を招き、企業価値を下げてしまうことも考えられます。
そのため、M&Aによる売却では、最終契約書の締結までは関係者への通知を控えることが重要です。ただし、会社の財務担当や役員・各部門のキーパーソン・取引先には、基本合意後に通知することが望ましいでしょう。
特に、取引先との契約にチェンジ・オブ・コントロール条項を定めている場合には、最終契約書の締結前に、売却の通知と承諾を得る必要があるので注意が必要です。
注意点5:M&Aの専門家に相談する
5つ目に挙げる売却側の注意点は、M&Aの専門家へ相談することです。自社のみで買い手を探す場合、買い手候補を見つけるまでに時間を要したり、買い手候補が見つからなかったりと、望んだ期間までにM&Aを完了できないケースも考えられます。
また、自社にM&Aの専門家を置いていない場合、ふさわしいスキーム・譲渡価格の判断に困ったり、交渉・成約の手続きに手間取ったりと、不当な条件での成約・契約の破棄などの事態も想定されるでしょう。
M&Aを成功させるためには、M&Aの専門家に相談し、サポートのもと進めることをおすすめします。
M&A仲介会社をはじめ、地元の士業や、金融機関、公的機関などに協力を依頼すれば、適切なアドバイス・サポートが受けられ、成功する確率も高くなります。
買収側の注意点
特殊運送・輸送会社のM&Aで、買収を実行に移す場合には、どのような点に注意を払えばよいのでしょうか。買収側の視点から、特殊運送・輸送会社のM&Aの注意点を取り上げます。
- デューデリジェンスを徹底する
- 特殊車両の保有台数や保管台数にも注目する
- 港の使用権なども確認する
- M&Aの専門家に相談する
注意点1:デューデリジェンスを徹底する
1つ目に挙げる買収側の注意点は、デューデリジェンスの徹底です。買収側は、対象企業が提示した情報に誤りがないことを確認するために、デューデリジェンスを実施します。
調査する範囲は、財務・税務・法務・人事・IT・ビジネスなど多岐に渡ることから、専門的な知識を必要とするでしょう。
自社のみでデューデリジェンスを実施してしまうと、簿外債務・偶発債務などのリスクを把握できずに、思わぬ損害を被るケースも想定されます。
そのため、デューデリジェンスを実施する際は、M&A仲介会社などの専門家の協力を依頼するようにしましょう。
注意点2:特殊車両の保有台数や保管台数にも注目する
2つ目に挙げる買収側の注意点は、特殊車両の保有台数や保管台数の把握です。特殊運送・輸送事業では、事業規模を把握するために、保有・管理する特殊車両の台数が目安にされています。
これは、車両の台数に応じて、運送・輸送量や、ネットワークの数に影響が及ぶといえるからです。そのため、特殊運送・輸送会社の買収では、保有・管理する特殊車両の数を把握することが大切です。
承継後の事業運営を可能とする・自社事業とのシナジーを生むなど、買収の目的に合った保有数台であることを確認しておきましょう。
注意点3:港の使用権なども確認する
3つ目に挙げる買収側の注意点は、港の使用権などの確認です。特殊運送・輸送会社が、港湾で荷物の受け渡しを行う場合には、港湾運送事業法に基づいた許可を必要とします。
そのため、特殊運送・輸送会社の買収で、港湾運送事業も承継する場合には、対象企業が港湾運送事業の許可を得ていることを確認しましょう。
また、港湾運送事業の譲渡・譲受には、国土交通大臣から許可を得なければ効力を得られないとされているので、対象企業が取得する許可に加えて、譲渡・譲受の許可を得ることも忘れないようにしてください。
注意点4:M&Aの専門家に相談する
4つ目に挙げる買収側の注意点は、M&Aの専門家への相談です。自社のみで売り手を探すには限界がありますし、探せたとしても想定した期間までに見つかるとは限りません。
しかも、買収ではスキーム・買収価格の決定や、交渉・成約の手続き、デューデリジェンス・PMIの実施など、専門的な知識を必要とします。
買収の経験がない・自社にM&Aの専門家を置いていない場合には、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。
経験と知識を備えた専門家に協力を仰ぐことで、リスクを回避し、望んだ条件・期間での買収が可能になります。
7. 特殊運送・輸送会社のM&Aの際におすすめの相談先
特殊運送・輸送会社のM&Aを検討されている方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、多様な業種を取り扱う中堅・中小企業向けのM&A仲介会社です。
M&A総合研究所では、案件ごとにM&Aアドバイザーがクロージングまでをフルサポートいたします。
料金体系はレーマン方式の完全成果報酬型を採用しており、着手金・中間金・月額費用は無料です。
特殊運送・輸送会社のM&Aを実施される際は、ぜひM&A総合研究所へお問い合わせください。無料で相談をお受けしております。
8. まとめ
特殊運送・輸送会社のM&Aと売却について、特殊運送・輸送会社の概要や、選択されるスキーム、M&A・売却事例などを紹介しました。
特殊運送・輸送会社のM&Aでは、後継者問題の解消、ドライバー・車両・ノウハウの確保、新規参入を目的に、売却・買収が行われています。
【特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる背景】
- 経営者の高齢化による後継者問題
- 特殊車両運転の人材を確保する目的
- 特殊車両の獲得を目的としたM&Aの増加
- 特殊輸送事業に参入するケースも増えてきた
- 特殊運送・輸送のノウハウを獲得するため
【特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収の主な流れ】
- 仲介会社などへの相談
- M&A先の選定
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
【 特殊運送・輸送会社がM&Aを行うメリット】
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用先を確保
- 特殊車両・設備の引き継ぎ
- 取引先や顧客などとの関係維持・引き継ぎ
- ノウハウの引き継ぎができる
【 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収における注意点】
- 売却側の注意点
- 買収側の注意点
また、特殊運送・輸送会社のM&Aでは、専門知識を必要とすることから、M&A仲介会社などの専門家に協力を依頼するようにしましょう。
M&A総合研究所は、中堅・中小企業向けの案件を取り扱うM&A仲介会社です。アドバイザーによるフルサポートや、初期費用を抑えた料金体系、短期間でのクロージング、希望額を上回る譲渡額の提示をはじめ、高い成約率による支援を行っています。
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