特殊運送・輸送会社のM&A・売却事例はある?流れや注意点を解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

物流業界の中でも、特殊運送・輸送会社は一般の運送会社とは異なる存在です。本記事では、特殊運送・輸送会社の概要、M&Aを行う理由、M&A・売却・買収の流れやメリット・注意点、M&A・売却事例、M&A・買収に積極的な企業などについて解説します。

目次

  1. 特殊運送・輸送会社のM&A
  2. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収事例
  3. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収が行われる背景
  4. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収の主な流れ
  5. 特殊運送・輸送会社がM&A・売却・買収を行うメリット
  6. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収における注意点
  7. 特殊運送・輸送会社のM&Aにおける積極買収企業
  8. 特殊運送・輸送会社のM&Aの際におすすめの相談先
  9. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収まとめ

1. 特殊運送・輸送会社のM&A

まずは、特殊運送・輸送事業の概要、M&A・売却・買収事業承継の基本的な意味を確認しましょう。

特殊運送・輸送とは

特殊運送・輸送とは、大型の機器・車両などの重量物や、医療品・化学品・医療機器・電子機器など繊細な取り扱いが求められる貨物を運ぶことをさします。特殊運送・輸送を担う会社では、貨物を所定の場所に運ぶだけでなく、貨物の荷下ろし・組立・保管・管理などの事業も請け負っていることも多いです。

また、特殊運送はトラックを用いた貨物の運搬をさし、特殊輸送はトラック・船舶・航空機などで遠方に大量の貨物を運ぶことをさします。

特殊運送・輸送と一般的な運送との違い

特殊運送・輸送と一般的な運送との違いは、運搬する荷物とその取り扱い方法です。特殊運送・輸送では、大型・車両・重機などの重量物や、精密機械・液体・動植物・危険物など、繊細な取り扱いが求められる貨物を運びます。

運搬の際に荷崩れ・変質を起こさないように、特殊な荷付けが必要とされる点が特徴です。それに対して一般的な運送では、特別な取り扱いや荷付けを必要としない一般貨物を運びます。

特殊運送・輸送事業を開始する方法

運送業を行うには許可証が必要です。特殊運送・輸送事業の場合には、以下の2種類の許可を、国土交通大臣または地方運輸局長から取得する必要があります。

  • 一般貨物自動車運送事業許可:トラックを用いて、不特定多数の荷主から依頼された荷物を有料で運送する事業の許可
  • 特定貨物自動車運送事業許可:トラックや特殊車両を用いて、特定の荷主から依頼された荷物を有料で運送する事業の許可

特殊運送・輸送会社を開始する際の留意点

前項の許可を取得するには、以下の審査をクリアしなければなりません。

  • 特殊車両の種類ごとに5台以上保有(一般貨物自動車運送事業)
  • 営業所ごとに5台以上の車両確保有(特定貨物自動車運送事業)
  • 道路運送車両法に定められた資格を持つ整備管理者の在籍(営業所ごとに配置)
  • 1年以上の使用権を持つ車両保管場所の確保
  • 保管場所での駐車車両間の距離50cm以上
  • ドライバーの在籍(日雇い者・2カ月以内の期間従事者・試用期間者は除く)
  • 運行管理者の配置(営業所ごとに保有車両数÷30+1の人数)

また、海運輸送も手掛ける場合には、以下の手続きが必要です。
  • 船舶運航事業者の届出:国土交通省
  • 港湾運送事業(荷役・仕分け・保管など)許可の取得:地方運輸局海事振興部港運課

M&A・売却・買収とは

M&Aとは、Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略称であり、企業間の組織再編行為や会社・事業の売却・買収取引の総称です。具体的なM&Aスキームには以下のようなものがあります。

  • 株式譲渡:会社そのものの売却・買収取引
  • 事業譲渡:事業の売却・買収取引
  • 株式交換:完全親子会社関係になる前提で両社の株式を交換する取引
  • 株式移転:持株会社体制を構築する取引
  • 合併:複数の企業を1社に統合する組織再編行為
  • 会社分割:事業部門を丸ごと他社が承継する組織再編行為
  • 第三者割当増資:特定の相手から出資を受ける

事業承継とは

事業承継とは、特殊運送・輸送事業の経営を、親族・役員・従業員・第三者(M&A)のいずれかに引き継がせることです。親族・社内の人間への事業承継では、従業員の反発を抑えられたり、会社の方針・業務に精通していたりと、事業承継後もスムーズな運営が期待できます。

しかしながら、昨今の中小企業では、子どもに会社を継ぐ意思がない・事業承継による自社株式取得の負担を懸念するなどの理由から、同業者や関連業種など会社運営の経験がある・経営を任せられる第三者に事業承継するケースが増えています。

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2. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収事例

ここでは、特殊運送・輸送会社関連のM&A・売却・買収事例を紹介します。

  1. ハマキョウレックスによる東日本急行とのM&A
  2. トナミホールディングスによるサンライズトランスポートとのM&A
  3. 安田倉庫による大西運輸とオオニシ機工とのM&A
  4. 丸運による静岡石油輸送とのM&A
  5. ニッコンホールディングスによる松久運輸と松久総合とのM&A
  6. トナミホールディングスによるケーワイケーとのM&A
  7. ゼロによるHIZロジスティクスとのM&A

①ハマキョウレックスによる東日本急行とのM&A

2022(令和4)年4月、ハマキョウレックスは、東日本急行の株式79.6%を取得して子会社化しました。取得価額は公表されていません。ハマキョウレックスは、アパレル・食品・医薬品・医療機器などの物流センター(3PL)事業と貨物自動車運送業を行っている企業です。

東日本急行は、関東圏を中心に一般貨物自動車運送事業、3PL事業を行っています。ハマキョウレックスのM&Aの狙いは、両社の物流ノウハウを組み合わせることでシナジーを創出し、付加価値の高い物流サービスを構築することです。

②トナミホールディングスによるサンライズトランスポートとのM&A

2022年3月、トナミホールディングスは、サンライズトランスポートの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。トナミホールディングスは、総合物流事業を行うグループの持株会社です。サンライズトランスポートは、東北エリアで一般貨物自動車運送事業、貨物利用運送事業を行っています。

トナミホールディングスのM&Aの目的は、東北エリアでの配車力の充実によるロジスティクス提案力の強化、グループ内の経営資源共有化による生産性の拡大などです。

③安田倉庫による大西運輸とオオニシ機工とのM&A

首都・関西圏の物流施設を中心にしたメディカル関連・IT機器などの配送・保管や、アジアを中心とした国際輸送のサービスなどを手掛ける安田倉庫は、2019(令和元)年9月に、大西運輸とオオニシ機工の全株式を取得する旨を決議しています。

大西運輸は、石川県金沢市に拠点を置き、北陸3県と関東・中京・関西への配送網を有する会社で、オオニシ機工は、一般建設会社として北陸3県を基盤に建材輸配送などを営む大西運輸のグループ会社です。

安田倉庫は、大西運輸とオオニシ機工の2社を買収することで、輸配送のネットワークを充実させ、サービスの質を高めるとしています。

④丸運による静岡石油輸送とのM&A

一般貨物をはじめ、特殊貨物(重量品・長尺物など)や、液体危険物(石油製品・潤滑油など)、食品、医療関連器具などの物流を担う丸運は、2019(平成31)年4月、静岡県と山梨県の一部で石油製品の配送を手掛ける静岡石油輸送の株式51%を取得して子会社化しました。

丸運は、縮小する事業基盤の維持と拡大のために、同業者の買収に踏み切ったと見られます。

⑤ニッコンホールディングスによる松久運輸と松久総合とのM&A

国内外での物流・倉庫事業などを展開するニッコンホールディングスは、2018(平成30)年12月、松久運輸と松久総合の全株式を取得して完全子会社としています。対象企業は、完成車・トラック・積車輸送事業をはじめ、部品・貨物の一元管理を行う倉庫事業、部品供給・組立・入出庫の管理事業を手掛けている会社です。

ニッコンホールディングスは、松久運輸と松久総合が所有する業務運営のノウハウ・ネットワークを生かして、より広い範囲をカバーし効率的な事業運営を目指します。

⑥トナミホールディングスによるケーワイケーとのM&A

貨物自動車運送事業や貨物利用運送事業などを展開するトナミホールディングスは、2018年6月に、千葉県柏市藤ヶ谷に本社を置くケーワイケーの全株式を取得し完全子会社化しました。

トナミホールディングスは、ケーワイケーの運送力・地域に根差した配送サービスのノウハウを獲得し、事業基盤の強化やシナジーの獲得を目指しています。

⑦ゼロによるHIZロジスティクスのM&A

車両の輸送事業や、原材料・製品の輸入・引取・保管・納入・配送などの一般貨物事業などを手掛けるゼロは、2017(平成29)年11月、車両輸送を営むHIZロジスティクスの全株式を取得し完全子会社にしています。

ゼロは、グループによる物流ネットワークの最適化を図るために、全国の子会社・他社の取り込みを行っており、北海道・東北エリアの物流体制を統括すべく、青森県に本社を構えるHIZロジスティクスを買収しました。

なお、今回の買収に合わせて、2017年12月にHIZロジスティクスの商号を「ゼロ・プラス東日本」に変更しています。

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3. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収が行われる背景

この章では、特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる主な理由・目的を解説します。

  1. 経営者の高齢化による後継者問題
  2. 特殊車両運転の人材を確保する目的
  3. 特殊車両の獲得を目的としたM&Aの増加
  4. 特殊運送・輸送のノウハウを獲得するため

①経営者の高齢化による後継者問題

1つ目に挙げる特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる背景は、経営者の高齢化による後継者問題の解消です。

日本政策金融公庫は、日本公庫総研レポート(2019年3月)で、2012(平成24)~2017年の貨物自動車運送事業者数の増減を公表しました。保有台数が20両以下のグループでは2,410の事業者が減っているものの、21両以上のグループは1,603の事業者増加が見られます。

小規模事業者は、経営者の高齢化などを理由に、事業の統廃合や同業者へのM&A(第三者への事業承継を含む)を選択したため、事業者の数が減少したと考えられるでしょう。

②特殊車両運転の人材を確保する目的

2つ目に挙げる特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる背景は、特殊車両運転の人材を確保するためです。

国土交通省が2020(令和2)年に発表した資料「物流を取り巻く動向と物流施策の現状について」によると、トラックドライバーは全産業平均以上のペースで高齢化が進んでいるのが現状です。今後、高齢の労働者の退職によって 労働力不足が深刻化すると考えられています。

人手が不足していると感じている企業の割合は、2020年では「不足」と答えた企業が13%、「やや不足」と答えた企業が34%でした。

特殊な貨物を輸送し、長さ・幅・高さ・重量が一定の基準を超える特殊車両のドライバーも不足していると推測されるため、運転手の確保を目的として特殊運送・輸送会社のM&A(第三者への事業承継を含む)を実施していると考えられます。

③特殊車両の獲得を目的としたM&Aの増加

3つ目に挙げる特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる背景は、特殊車両を獲得するためです。

特殊運送・輸送事業では特殊な車両が必要ですから、一般の運送会社とは異なり、貨物に応じた車両をそろえなければなりません。そこで、特殊運送・輸送会社をM&A(第三者への事業承継を含む)で買収し、保有する特殊車両を確保しています。

燃料費の削減・販路の拡大などによるスケールメリットが得られることから、特殊車両を確保するためのM&Aが増えていると見られます。

④特殊運送・輸送のノウハウを獲得するため

4つ目に挙げる特殊運送・輸送会社のM&Aが行われる背景は、特殊運送・輸送のノウハウを獲得するためです。特殊運送・輸送事業では、各企業により取り扱う荷物や付随するサービスが異なるため、同業者をM&Aで買収すれば、自社にはないノウハウを獲得できます。

特殊運送・輸送会社のM&Aを行うことにより、取り扱う貨物の種類を増やせたり、荷下ろし・組立・管理といったサービスを付与できたりするのも、大きなメリットといえるでしょう。

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4. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収の主な流れ

ここでは、特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収の流れを見ていきましょう。

  1. 仲介会社などへの相談
  2. M&A先の選定
  3. 基本合意書の締結
  4. デューデリジェンスの実施
  5. 最終契約書の締結
  6. クロージング

①仲介会社などへの相談

特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収を行うことが決まったら、まずはM&A仲介会社などの専門家に相談します。自社のみで相手先企業を探し、交渉や専門的な手続きを進めるのは非常に難しいため、M&A仲介会社などにサポートを依頼するのが一般的です。

秘密保持契約書の締結

M&A仲介会社などの専門家に依頼することが決まったら、秘密保持契約書を締結します。秘密保持契約書とは、秘密の保持・目的外の使用禁止・有効期間などを定めた書面です

M&A仲介を進めるためには、自社の情報を専門家に開示しなければなりませんが、万一、情報が外へ漏れてしまうと、業績や取引先・従業員との関係性に影響が及ぶ可能性もあります。秘密保持契約書の締結とともに締結するのが、相談先とのM&A仲介契約です。

なお、M&A仲介契約の中に秘密保持条項を設け、1つの契約書面とする場合もあります。

②M&A先の選定

M&A仲介会社との契約後は、M&A先の選定を進めていきます。M&A仲介会社に自社の希望を伝えると何社かの候補が紹介されるので、候補の中から交渉を進めたい相手を選びましょう。売却・買収候補に交渉を打診して了承が得られたら、秘密保持契約を締結後、情報を開示し交渉を開始します。

交渉開始後、必ず行われるのが、双方の経営トップ同士の面談です。トップ面談では、相手企業の理念や経営方針、経営者の人間性などを把握し、M&A交渉に関する疑問点があれば解消するようにしましょう。なお、交渉そのものはM&A仲介会社が行います。

意向表明書の提示

交渉開始時、買い手候補から意向表明書が提示される場合があります。これは、買い手候補が買収の意思を示す書類ですが、提示が義務付けられているものではありません。意向表明書には、買い手側の会社概要のほかに以下のような内容が記載されます。

  • M&Aを実行する理由・目的
  • 取引価額・取引の形態
  • 取引価額の算出方法
  • 売り手側の経営者・役員・従業員の処遇
  • M&Aに必要な資金の調達方法
  • スケジュール
  • デューデリジェンスの概要
  • 独占交渉権の有無
  • 有効期間
  • 秘密保持義務
  • 法的拘束力の有無

③基本合意書の締結

交渉が進み大筋で条件面で合意が形成されたら、基本合意書を締結します。この基本合意書は、合意内容確認書という位置付けです。法的拘束力はないため、M&Aが成約したわけではありません。基本合意書に盛り込まれる内容には、以下のような事項があります。

  • 取引の内容
  • 役員・従業員の処遇
  • 表明保証
  • デューデリジェンスの実施と協力
  • 善管注意義務
  • 誠実交渉義務
  • 秘密保持義務
  • 独占交渉権
  • 代金の修正と契約解除
  • 契約期間
  • 協議事項
  • 適用法と管轄する裁判所
  • 契約の効果

④デューデリジェンスの実施

基本合意書の締結後は、買い手側企業によるデューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスとは、売り手側に対する財務・税務・法務・労務・IT・事業などのあらゆる面について、士業などの専門家を起用して調査することです。

売り手側にはデューデリジェンスに協力する義務があり、資料の用意・質疑応答など必要な事項に対応しなければなりません。また、M&Aの実施がこの時点で従業員に知られないように、デューデリジェンスに応じる場所を社外に設けるなどの対応も必要となるでしょう。

⑤最終契約書の締結

デューデリジェンス実施後の最終交渉で合意すると、最終契約書の締結です。最終契約書に記載される内容には、以下のような事項があります。

  • 取引契約の合意
  • 取引の対象物
  • 取引価額の支払い
  • 取引の手法
  • クロージングの実施方法
  • 役員・従業員の処遇
  • 表明保証
  • 賠償・補償
  • 取引契約の解除
  • 善管注意義務
  • 秘密保持義務
  • 競業避止義務
  • 専属的合意管轄の裁判所
  • 費用負担

⑥クロージング

最終契約書を締結後、対価の支払いや譲渡対象の引き渡しなどの契約内容の履行をクロージングといいます。最終契約書の締結日からクロージングまでは、一定の期間を空けるのが一般的です。

ただし、最終契約書の締結日までにクロージングの手続きを終えている、または最終契約の後に必要な手続きをすませることを約束している場合は、最終契約書の締結とクロージングを同じ日に行うことがあります。

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5. 特殊運送・輸送会社がM&A・売却・買収を行うメリット

ここでは、特殊運送・輸送会社がM&Aを行うメリットについて、売却側・買収側に分けて確認します。

売却側のメリット

特殊運送・輸送会社のM&Aによる売却側の主なメリットは、以下の5つが挙げられます。

  1. 後継者問題の解決
  2. 従業員の雇用先を確保
  3. 特殊車両・設備の引き継ぎ
  4. 取引先や顧客などとの関係維持・引き継ぎ
  5. ノウハウの引き継ぎ

①後継者問題の解決

現在、国内の中小企業の多くは、後継者問題を抱えています。特に高齢経営者の場合、事業承継の行く末が危ぶまれる事態です。特殊運送・輸送会社においても、この後継者問題に直面している企業が少なからずあります。その解決手段として、M&Aによる買い手への事業承継が活用されているのです。

②従業員の雇用先を確保

後継者不在の特殊運送・輸送会社が仮に廃業した場合、従業員は解雇となり職を失います。しかし、M&Aによる事業承継を実施すれば会社は存続しますから、従業員が職を失わずにすむのです。

③特殊車両・設備の引き継ぎ

特殊車両を新たに購入するとなれば、多額の費用を用意しなければいけません。特殊車両を購入してからも、安全に運営を行うためには、車両の整備を必要とするでしょう。このような理由により、特殊運送・輸送会社のM&Aでは、特殊車両・整備の引き継ぎが可能です。

多くの特殊車両を抱えている、または車両を整備する体制と施設が完備されているなら、買い手に会社・事業を引き継いでもらえる可能性が高いといえます。

④取引先や顧客などとの関係維持・引き継ぎ

買い手側は、M&Aを実行することで、事業基盤の強化や、配送路線の拡大、シナジーの獲得などを図ろうとしています。M&Aを実行しても取引先・顧客の理解を得られやすく、関係の維持と取引・顧客の引き継ぎも可能といえるでしょう。

⑤ノウハウの引き継ぎ

買い手側は、売り手のノウハウを獲得したいと考えています。一からノウハウを形成するには多くの時間が必要になり、費用・人材を確保しなければいけません。その点、特殊運送・輸送事業を行う既存の会社を買収すれば、短期間・低コストで、形成されたノウハウを獲得できます。

ノウハウを保有する売り手は、同業者や関連業種、新規参入業者の目に留まりやすいといえるので、自社のノウハウを引き継がせられるのです。

買収側のメリット

特殊運送・輸送会社のM&Aによる買収側の主なメリットは、以下の3つが挙げられます。

  1. 事業規模を拡大できる
  2. 生産性・収益性を向上できる
  3. 低リスク・短時間で新規事業に参入できる

①事業規模を拡大できる

特殊運送・輸送会社を買収すれば、対象企業が行っている事業を獲得できるわけですから、一挙に事業規模が拡大します。通常の経営でそのような事業規模の拡大には時間を要するのに対し、M&Aによる買収では時間を大幅に短縮して実現できるのです。

②生産性・収益性を向上できる

買収した特殊運送・輸送会社との間で、効率化によるコスト削減や、経営リソースの共用化・ノウハウの融合・協業などによるシナジー効果を得て、生産性・収益性の向上が期待できます。

③低リスク・短時間で新規事業に参入できる

特殊運送・輸送業は、許可の取得が必須であり必要な車両とその駐車スペース、整備体制や管理者の配置など、参入障壁の高い事業です。異業種から新規参入する場合の難易度は、決して低くありません。その点、M&Aであれば、既存の特殊運送・輸送会社を買収すれば、難なく特殊運送・輸送事業への新規参入が実現します。

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6. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収における注意点

ここでは、特殊運送・輸送会社のM&Aでの注意点について、売却側・買収側に分けてポイントを解説します。

売却側の注意点

特殊運送・輸送会社のM&Aの売却を進める際は、以下5つのポイントを意識して行うことが大切です。

  1. M&Aの際は計画的に準備を行う
  2. M&Aの目的を明確にする
  3. 最初から買い手を限定して考えない
  4. 最終的な契約成立までは情報漏えいに注意する
  5. M&Aの専門家に相談する

①M&Aの際は計画的に準備を行う

1つ目に挙げる売却側の注意点は、M&Aの際の計画的な準備です。M&Aでは買い手を探す前に、会社・事業のブラッシュアップや、税務・労務・株主の整理、訴訟問題の解消などを終えておく必要があります。

買い手を探し始めてからも、適正なスキーム・譲渡価額の決定や、買い手の選定、買い手に提出する資料の作成、交渉・成約の手続き、デューデリジェンスへの対応など、いくつもの過程を経なければM&Aを完了できません。

準備が不十分なままでM&Aの売却を進めてしまうと、希望する期間・価額・条件でM&Aを実現できない可能性があります。特殊運送・輸送会社のM&Aでは、計画的に準備を進めることが重要といえるでしょう。

②M&Aの目的を明確にする

2つ目に挙げる売却側の注意点は、M&Aの目的を明確にすることです。M&Aを実行する場合、会社・事業の継続や、取引・雇用の維持、シナジーの獲得など、会社ごとにM&Aの目的が異なります。

優先する条件・最適なスキーム・交渉や手続きの方法が異なるため、特殊運送・輸送会社の売却では、M&Aの目的を明確にする必要があります。M&Aの目的をはっきりさせておけば、ふさわしい買い手候補を見つけられ、スムーズに交渉・成約を進められる確率が高くなるでしょう。

③最初から買い手を限定して考えない

3つ目に挙げる売却側の注意点は、最初から買い手を限定して考えないことです。自社の希望を頑固に押し通してしまうと、買い手を見つけられない可能性も考えられます。

買い手が提示する条件全てを受け入れる必要はないものの、希望条件の譲歩を拒んでしまうと、交渉の決裂に至り、売却の機会を逃しかねません。M&Aでは買い手の幅を広げることも重要であり、妥協する点や譲れない点を再確認し、より多くの買い手を候補先に含めるとよいでしょう。

④最終的な契約成立までは情報漏えいに注意する

4つ目に挙げる売却側の注意点は、情報漏えいへの注意です。M&Aを進めていることが外部に漏れてしまうと、自社の信用低下や取引先・従業員の離職を招き、企業価値を下げてしまうことも考えられます。M&Aによる売却では、最終契約書の締結までは関係者への通知を控えることが重要です。

ただし、会社の財務担当や役員・各部門のキーパーソン・取引先には、基本合意後に通知することが望ましいでしょう。特に取引先との契約にチェンジ・オブ・コントロール条項を定めている場合には、最終契約書の締結前に、売却の通知と承諾を得る必要があるので注意が必要です。

⑤M&Aの専門家に相談する

5つ目に挙げる売却側の注意点は、M&Aの専門家へ相談することです。自社のみで買い手を探す場合、買い手候補を見つけるまでに時間を要したり、買い手候補が見つからなかったりと、望んだ期間までにM&Aを完了できないケースも考えられます。

自社にM&Aの専門家を置いていない場合、ふさわしいスキーム・譲渡価額の判断に困ったり、交渉・成約の手続きに手間取ったりと、不利な条件での成約・破談などの事態に陥ってしまうかもしれません。

したがって、M&Aを成功させるためには、M&Aの専門家に相談し、サポートを得ながら進めるのがおすすめです。M&A仲介会社をはじめ、地元の士業事務所や、金融機関などに業務を依頼すれば、適切なアドバイス・サポートが受けられ、成功する確率も高くなります。

買収側の注意点

特殊運送・輸送会社のM&Aにおける買収側の視点から、注意点を取り上げます。

  1. デューデリジェンスを徹底する
  2. 特殊車両の保有台数や保管台数にも注目する
  3. 港の使用権なども確認する
  4. M&Aの専門家に相談する

①デューデリジェンスを徹底する

1つ目に挙げる買収側の注意点は、デューデリジェンスの徹底です。デューデリジェンスで調査する範囲は、財務・税務・法務・労務・IT・ビジネスなど多岐に渡ることから、専門的な知識を必要とします。

デューデリジェンスを徹底しておかなければ、偶発債務などの簿外債務や訴訟リスクなどを把握できず、M&A・買収後に思わぬ損害を被るかもしれないのです。デューデリジェンスを実施する際は、M&A仲介会社などの専門家に采配してもらいましょう。

②特殊車両の保有台数や保管台数にも注目する

2つ目に挙げる買収側の注意点は、特殊車両の保有台数や保管台数の把握です。特殊運送・輸送事業では、事業規模を把握するために、保有・管理する特殊車両の台数が目安にされます。これは、車両の台数に応じて、運送・輸送量やネットワークの数に影響が及ぶからです。

したがって、特殊運送・輸送会社の買収では、保有・管理する特殊車両の数を把握しなければなりません。買収後の事業運営を可能とする、または自社事業とのシナジーを生むなど、買収の目的に合った保有数台であることを確認しましょう。

③港の使用権なども確認する

3つ目に挙げる買収側の注意点は、港の使用権などの確認です。特殊運送・輸送会社が、港湾で荷物の受け渡しを行う場合には、港湾運送事業法に基づいた許可を必要とします。特殊運送・輸送会社の買収で、港湾運送事業も承継する場合には、対象企業が港湾運送事業の許可を得ていることを確認しましょう。

港湾運送事業の譲渡・譲受は、国土交通大臣から許可を得なければならないので、対象企業が取得する許可に加えて、譲渡・譲受の許可も忘れずに得るようにしましょう。

④M&Aの専門家に相談する

4つ目に挙げる買収側の注意点は、M&Aの専門家への相談です。自社のみで売り手を探すには限界がありますし、探せたとしても想定した期間までに見つかるとは限りません。

しかも、買収ではスキーム・買収価額の決定や、交渉・成約の手続き、デューデリジェンス・PMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)の実施など、専門的な知識を必要とします。

買収の経験がない、または自社にM&Aの専門家が在籍していない場合には、M&Aの専門家に相談するのが得策です。経験と知識を備えた専門家の協力を得ることで、リスクを回避し、望んだ条件・期間での買収が可能になるでしょう。

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7. 特殊運送・輸送会社のM&Aにおける積極買収企業

ここでは、特殊運送・輸送会社のM&Aに対する積極買収企業を2社紹介します。

フジホールディングス

フジホールディングスは、長距離輸送や航空貨物事業などを手掛ける会社です。多くのグループ企業があるため、全国各地に物流ネットワークを保有しています。

グループの中核企業であるフジトランスポートは、特殊な車両による大型の精密機械の輸送をはじめ、精密機械・半導体・薬品などの特殊品の輸送を得意としているのが特徴です。

フジホールディングスは、2012年に針生運送、2014(平成26)年に県運、2016(平成28)年に静岡運送を傘下に収めています。2021(令和3)年6月と7月には、北陸トランスポート、日向商運の後継者不在の運送会社2社より全株式を譲受しました。

フジグループの規模は、拠点数全国108カ所、トラック保有台数2,350台、グループ総数2,700名です。長距離輸送の「ロジスティクス・プロバイダー」として、2035(令和17)年には大型トラックの保有台数を5,000台・200拠点を目指すとしています。

トナミホールディングス

トナミホールディングスは、「2021年4月1日~2024(令和6)年3月31日」までの3ヵ年を「長期的な成長ビジョン連結営業収益2,000億円、営業利益100億円を目指すスタート期間」と位置づけ、その1つとして、M&Aや事業再編による事業の成長に力を入れるとしました。

これまでトナミホールディングスは、2014年に菱星物流、2016年にテイクワン、2018年にケーワイケー、2020年に御幸倉庫、新生倉庫運輸のように、特殊運送・輸送会社を次々と買収し傘下に収めています。

2022年3月には、東北エリアで工夫を凝らした配車力を強みとしているサンライズトランスポートを子会社化しました。経営計画と過去のM&A実績から、トナミホールディングスは、グループの輸配送機能・役割を発揮させ、さらなる企業価値向上のため、今後も買収を進めるでしょう。

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8. 特殊運送・輸送会社のM&Aの際におすすめの相談先

特殊運送・輸送会社のM&Aを検討されている場合は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、多様な業種を取り扱う中堅・中小企業向けのM&A仲介会社です。M&A総合研究所では、案件ごとにM&Aアドバイザーがクロージングまでフルサポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。特殊運送・輸送会社のM&Aを実施される際は、ぜひM&A総合研究所へお問い合わせください。随時、無料で相談を受けつけています。

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9. 特殊運送・輸送会社のM&A・売却・買収まとめ

特殊運送・輸送事業は参入障壁が高いため、特殊運送・輸送会社のM&Aでは、比較的、売り手市場と評される場合もあります。ただし、売り手側も後継者問題を解消し事業承継を図るなどの切羽詰まった状況にある企業もあり、一概に売り手市場ともいいきれません。

いずれにしろ、特殊運送・輸送会社のM&Aをスムーズに成功させるには、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼するのが得策です。

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