病院・医療法人のM&A・買収・売却!価格相場やスキーム・手法を解説!【成功事例あり】

企業情報本部長 兼 企業情報第一本部長
辻 亮人

大手M&A仲介会社にて、事業承継や戦略的な成長を目指すM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、経営者が抱える業界特有のお悩みに寄り添いながら、設備工事業や建設コンサルタント、製造業、医療法人など幅広い業種を担当。

病院・医療法人のM&A(買収、売却)の事例は増加傾向にありますが、病院・医療法人のM&Aスキームは一般企業のM&Aスキームとは異なっています。この記事では、病院・医療法人のM&A(買収、売却)の価格の計算方法やスキーム・手法について紹介します。

目次

  1. 病院・医療法人業界の現状は?M&Aをするのはアリ?
  2. 病院・医療法人のM&A動向とメリット
  3. 病院・医療法人の種類
  4. 病院・医療法人のM&Aスキーム
  5. 病院・医療法人のM&A譲渡価格
  6. 病院・医療法人のM&Aで考えるべきポイント
  7. 病院・医療法人のM&A成功事例
  8. まとめ
  9. 病院・医療法人業界の成約事例一覧
  10. 病院・医療法人業界のM&A案件一覧
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1. 病院・医療法人業界の現状は?M&Aをするのはアリ?

現在、病院・医療法人業界でのM&A件数は増加傾向にあります。その理由は、病院・医療法人業界特有の問題を解決するためにM&Aという手段をとっているからです。この記事では、病院・医療法人のM&Aについて解説していきます。

まず病院・医療業界の現状について以下の4点だけ確認しておきましょう。
 

  1. 病院・医療法人の市場規模
  2. 病院・医療法人が抱える問題
  3. 後継者問題
  4. 基準病床数による縛り

その他の病院・医療法人の現状やM&Aなどについての説明は以下の記事で詳しく行っています。興味のある方はぜひご覧ください。

【関連】病院・医療法人のM&A(売買)動向・価格相場【最新事例あり】

それでは、病院・医療法人業界の現状について、順番に確認していきましょう。M&Aで病院・医療法人の譲渡や買収を行いたい場合は、ぜひ確認してください。

①病院・医療法人の市場規模

高齢化の影響を受けて、病院・医療法人の市場規模は増加傾向にあります。2019年10月のWISEMANの情報によると、社会保障給付費のうち医療部門(年金・医療・福祉その他を合算)が2016年度で116兆9,027億円となり過去最高額となっています。

今後さらに高齢者が増加するため市場規模は拡大すると考えられています。

②病院・医療法人が抱える問題

現在、病院・医療法人が抱えている問題はたくさんありますが、この記事では、以下の6点について解説します。
 

  • 医師不足
  • 人材確保
  • 医療政策の影響
  • 高齢化に伴う需要増
  • 病院や医療法人施設の老朽化
  • 高額な設備投資

それぞれについて、順番に確認していきましょう。

医師不足

2019年の厚生労働省の情報によると、全国の医師数は32万7,210人です。そして2019年の日医総研リサーチエッセイの情報によると、日本では人口 1,000人に対して医者が2.4人しかいない数であり、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均値(3.5人)よりも低い値です。

このデータから日本は深刻な医師不足といえます。

人材確保

医師不足の影響により、特に地方の病院を中心に人材確保が困難な状況になっています。地方の病院では、都会の病院に比べて給料が低い傾向があるため優秀な医師が集まりにくい状況です。そのため、その病院は人手不足になり、医師は重労働になります。

この状況が続くと、若手の医師に重労働を避ける傾向が進み、地方の病院にはさらに医師が集まりにくくなるという悪循環となるでしょう。

医療政策の影響

医師の報酬は、診療報酬制度をもとに支払われています。しかし、社会保障費の増加が国の財政を圧迫していることから、医師の診療報酬を下げる改定が行われました。2000年代には2度診療報酬が下げられたため、病院・医療法人の売り上げは大きく低下したのです。

高齢化に伴う需要増

日本は高齢化が進行していることから、病院・医療法人の需要は増加傾向にあります。しかし、人材が確保できていない病院・医療法人ではすべての需要に応えられない状態です。

今後も病院や医療法人の需要は増えていく見込みなので、対応していかなければなりません。

施設の老朽化

病院・医療法人の施設の老朽化は進んでいます。しかし、施設の改築のために病院・医療法人の営業を簡単に停止できません。営業を続けながら改築をするためには、別の建物や土地を購入する必要があるなど高額な経費がかかると予想されるため、施設の改築ができない病院がほとんどです。

しかし、病院や医療法人は多くの人が利用する施設を持っているので、少しずつでも改築して安全性を高めていく必要があります。

高額な設備投資

病院・医療法人で使う医療機器は専門的であるため高価なものばかりです。これらを揃え、最新技術の治療を行うためには高額な設備投資が必要になります。

③後継者問題

病院・医療法人の業界では、後継者問題も起こっています。この主な原因として以下の3点が考えられています。
 

  • 小規模施設の後継者問題
  • 後継者には医師免許が必要
  • 事業を引き継ぎたがらない傾向がある

これら3点について簡単に見ていきましょう。

小規模施設の後継者不足

小規模施設、いわゆる町の診療所では、勤務している医師の数が少ないのが現状です。また、人材確保が困難である状況も影響し、小規模施設を中心に深刻な後継者不足の問題を抱えています。

後継者には医師免許が必要

病院を引き継ぐためには、後継者が医師免許を持っていることが必須になります。当然ですが、医師がいない病院は病院として運営できません

事業を引き継ぎたがらない傾向がある

後継者にしたいと考えている医師が病院を継ぎたがらない傾向があります。最近の若い世代は、重責を負ってまで病院や医療法人の跡を継ぎたがりません。これは、中小企業における後継者問題にも見られる傾向です。

事業承継直前になって後継者に病院・医療法人の引き継ぎを拒否されるケースもあります。したがって、早めに若い世代の後継者候補と話し合わなければなりません。

④基準病床数による縛り

各都道府県は、医療計画を策定し、基準病床数を設定しています。都道府県内での病床数が基準病床数を超えると、稼働率を上げるために無駄な入院をさせるなど患者にとって不利益を受ける可能性があります。そのため、基準病床数が超える場合は知事の権限で新規病院の病床数を減らせます。

しかし、基準病床数の計算方法は実際に必要とする必要病床数と大きく乖離しているため、深刻な病床不足になっています。各都道府県はすぐに基準病床数の変更を行う必要があるでしょう。

2. 病院・医療法人のM&A動向とメリット

先ほど病院・医療法人の現状について紹介しました。

高齢化に伴い、医療の需要は増加しているのですが、人材不足・後継者不足など問題点が多くあり、厳しい状態です。病院・医療法人の業界では、これらの問題点を解決するためにM&Aを実施する事例が増加している傾向があります。

ここからは病院・医療法人業界での以下3つのM&Aスキームを確認しましょう。
 

  1. 同地域の病院が合併
  2. 大手グループによる買収
  3. 医師同士の譲渡

病院や医療法人のM&Aを検討しているなら、まずはスキームを理解しておくと便利です。それぞれについて、順番に確認していきます。

①同地域の病院が合併

病院・医療法人のM&Aスキームで同じ地域内での病院が合併するというものがあります。

このスキームのメリットは以下の2つです。
 

  1. 病床数を増やせる
  2. スケールメリットを活かせる

それぞれについて、順番に確認していきましょう。

病床数を増やせる

地方へ行くほど高齢者の人口は相対的に増加するため、病院の需要性や必要となる病床数は増加します。

しかし、一病院で受け入れ可能な患者数には限界があるのです。そこで同じ地域内での病院同士が合併を行うことで、その地域内で受け入れ可能な患者数が増加し、売り上げが増加するというメリットが得られます。

スケールメリットを活かせる

病院同士が合併をすることで規模が大きくなり、資金力が増大します。資金力が増大することで最新の医療機器を導入できたり、施設の改築を行ったりするなど合併によるスケールメリットを活かすこともできます。

これも病院同士が合併することで得られるメリットの1つといえるでしょう。

②大手グループによる買収

病院・医療法人業界のM&Aスキームの1つに大手グループによる買収があります。

病院・医療法人業界の大手グループには徳洲会グループなどがあり、このような大手グループが規模の小さい病院などの買収を行うというスキームになります。

このM&Aスキームのメリットは以下の4つです。
 

  1. 買い手側は新たな拠点を得られる
  2. スケールメリットを得られる
  3. 売り手側は譲渡して後継者問題を解消できる
  4. 医療が継続できる

大手グループによる買収のM&Aスキームについて、詳しく見ておきましょう。

買い手側は新たな拠点を得られる

買い手側のメリットになりますが、買い手側は病院・医療法人業界で新たな拠点を得られます。医療法人が売り上げを伸ばす方法ですが、医療行為の報酬には診療報酬制度があるため基本的には患者の単価を上げて売り上げを増大させることはできません。

そのため、事業規模や拠点を拡大し、診療を行う患者数を増やすことで売り上げを伸ばそうとしているのが現状です。しかし、病院を建設するところから始めると莫大な費用が掛かることは容易に想像できます。コスト面については、買収を行うことで比較的に安価で新たな拠点を得ることが可能です

スケールメリットを得られる

これは、大手グループの傘下に入ることによるメリットです。資金繰りがよくなるため、施設の改築を実施したり、最新医療機器を購入したりすることもできます。

また、繁忙期に医師の数が足りない場合には一時的に派遣をしてもらうことも可能となるでしょう。

売り手側は譲渡して後継者問題を解消できる

売り手側のメリットとして病院・医療法人の後継者問題を解消できます。先ほども紹介したように病院は簡単に廃業できません。そのため、病院を引き続き運営するための手段として大手グループの医療法人に売却する事例は増加しています。

もしも病院や医療法人の後継者が見つかっていないなら、M&Aによる譲渡を行うことを前向きに検討しましょう。

医療が継続できる

これは、その地域に住んでいる人たちに対するメリットです。特に町の病院が廃業になると、診察をしてもらえる施設がなくなる、もしくは地理的に遠くなって患者は不利益を受けることになります。

しかし、大手グループにM&Aで譲渡することで、今までどおりに病院・医療法人での医療を継続できるのです。

③医師同士の譲渡

3つ目のM&Aスキームに医師同士の譲渡があります。このM&Aスキームについては、小規模の医療機関に後継者として医者が譲渡されたと想定しての開設です。

このM&Aスキームのメリットは以下の3点があります。
 

  1. そのまま設備と患者を引き継げる
  2. 開業の手間がかからない
  3. 売り手は譲渡により後継者問題を解決できる

医師同士の譲渡というM&Aスキームについて、順番に確認していきましょう。

そのまま設備と患者を引き継げる

勤務している医療機関からの独立・開業を行うと採算が合わない、人材不足などの問題が発生するため、病院開業はハードルが高いです。しかし、病院の施設や患者をそのまま引き継ぐことができれば、独立というハードルが低くなります。

M&Aによって譲渡してもらうことは、独立・開業を考えている医師にとっては大きなメリットであると考えられるでしょう。

開業の手間がかからない

病院をそのまま引き継げるため、開業における手続きの手間を省けます。

病院・医療法人業界では、開業の際にさまざまな手続きが必要です。もちろんすべての行政手続きを省けるわけではありませんが、開業の手間が減ることは確かだといえます。

売り手は譲渡により後継者問題を解決できる

売り手側にとっては、M&Aで譲渡することで後継者問題を解決できるというメリットがあります。しかし、病院の売却先を探すよりも病院を引き継いでくれる医師を探す方が一般的には困難です。

売却先探しはM&A仲介会社がサポートしてくれますが、後継者となる医師探しは独自のコネクションや引き継ぐ意思の確認などが必要になります。したがって、自身で後継者を探すのが難しいようであれば、M&Aによる譲渡を検討しましょう。

【関連】病院/医療法人の事業譲渡・売却の手続きやメリット・デメリットを解説!

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3. 病院・医療法人の種類

次は病院・医療法人の種類について紹介します。一般企業の場合、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社の4種類しか設立できません。しかし、病院・医療法人の場合は一般企業よりも種類がたくさんあります。

まずは、病院・医療法人の種類が違っていればどうなるのかを見ておきましょう。

種類が違う場合はどうなる?

病院・医療法人の種類が多いことでM&Aなどの手続きが手間になる場合があります。

監督省庁が異なる

病院・医療法人の種類が異なると監督する監督省庁が変わります。基本的には都道府県が監督を行っているのですが、都道府県をまたがって経営している医療法人(大手グループなど)は、厚生労働省の監督です。

また、医療法人の種類によっては国税庁が監督を行っているものもあります。詳細については後程紹介します。

M&Aの手続きが異なる

M&Aを行う場合には監督省庁の許認可が必要になります。そのため、買収される病院・医療法人の種類によってM&Aの手続きが異なります。

また、買い手側の医療法人についてですが、事業規模が大きくなると買収する医療法人の監督省庁が変わる可能性があるため、それについても手続きを行う必要があります。

医療法人の種類

ここからは、医療法人の種類と監督する管轄省庁の解説をしていきます。

社会医療法人

社会医療法人は、公共性の高い医療法人のことです。例えば、救急医療や夜間診療など利益を追求しない部門を設置している病院がこれに当てはまります。社会医療法人は都道府県の管轄です。

特定医療法人

医療法人の中でも社会福祉に著しく貢献しており、かつ公的に運営されているという条件を満たしている医療法人のことを特定医療法人といいます。

特定医療法人は社会法人よりも公共性が高いことから、税制の面で優遇されているのです。そのため、特定医療法人は国税庁が管轄しています。

拠出型医療法人

拠出型医療法人は、従事する医師や名士、もしくは基金から出資してもらうことで運営している医療法人のことです。

2つ以上の都道府県で運営する医療法人は厚生労働省が管轄し、1つの都道府県で運営する医療法人は都道府県が管轄しています。

経過措置型医療法人

経過措置型医療法人は、2007年以前に持ち分ありの社団法人として設立された医療法人のことです。

医師や名士が出資を行うと病院の公共性や非営利性が失われるという考えに基づき、現在では、持ち分ありの社団法人を税制面で厳しくすることで持ち分なしの社団法人に変えようとしています。

この変化の途中であるため、経過措置型医療法人と呼ばれています。

管轄は拠出型医療法人と同様に広域は厚生労働省、1都道府県で運営している医療法人はその都道府県の管轄です。

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4. 病院・医療法人のM&Aスキーム

病院・医療法人のM&Aスキームは一般企業のM&Aスキームと異なっています

一般企業のM&Aスキームは、M&A仲介会社を経由してM&A相手を探索し、被買収企業の企業監査(デューデリジェンス)を実施してからM&Aの契約・統合を行うことが多いです。

しかし、病院・医療法人ではやや違いが出てくることがあります。一般企業のM&Aスキームについては以下の記事で詳しく紹介しているので興味のある方はご覧ください。

【関連】M&Aのスケジュールを解説!【買収までの流れ・手順】

病院・医療業界のM&Aスキームには主に3つの方法があります。
 

  1. 出資持分譲渡
  2. 事業譲渡
  3. 合併

これら3つのM&Aスキームについて詳しく紹介します。

①出資持分譲渡

出資持分譲渡とは、病院・医療法人に出資されている財産を売却先に譲渡することでM&Aを行うという方法です。株式会社でいうと株式譲渡に該当します

登記変更のみで可能

出資持分譲渡によるM&Aを行う場合、理事の変更など登記の変更を行うだけでM&Aを完了できます。

手続き期間が短い

買い手側の経営者が出資を取得する方法が簡便でかつ手続きも登記変更だけでよいことから、他のM&Aスキームよりも比較的短期間でM&Aを完了できます。

経営者の入れ替えだけで医療法人は継続

出資持分譲渡は包括承継が原則であるため、医師に対して異動の希望を聞く必要はありません。そのため、出資持分譲渡によるM&Aが行われても医療法人は継続して運営できます。

②事業譲渡

医療法人の事業譲渡とは、病院にある特定の科(皮膚科や泌尿器科など)を他のグループに譲渡することをさします。専門性のある科は、事業譲渡の対象になることが多いでしょう。

行政当局の許可が必要

医療法人自体が省庁に管轄されているため、M&Aを行う際にはその監督省庁に事前に申請し、許可を得ておく必要があります

手続き期間が長く、手間が多い

事業譲渡は、出資持分譲渡に比べて手続き期間が長く、手間が多い方法です。理由は、事業譲渡を行うとその科の営業権を引き継ぐことができないからです。つまり、事業譲渡した後、営業するには監督省庁に申請をする必要があります

また、そこに勤務している医師や従業員と雇用を再契約する必要も出てくるでしょう。

さらに、医療機器などをリース契約していた場合には再契約をする必要があります。これら以外にも手続きをする必要があるため手間が多く、営業を再開するまでにはある程度の時間が必要となります。

病床引継ぎが原則なし

先ほど紹介したように病床数は都道府県が管理をしています。しかし、これらについても原則として引き継ぐことができないため、都道府県に再申請をする必要があります

合併

医療法人の合併は、病院単位で行います。合併の場合、原則的に包括承継となるため、譲渡される病院の従業員や負債などすべてを引き継ぐことが必要です。

行政当局の許可が必要

事業譲渡と同じく、管轄されている省庁に許可を得ておく必要があります。

医療審議会に諮る必要

医療の公共性や必要性の観点から病院・医療法人の合併の際には所在地の都道府県の医療審議会に諮る必要があります。医療審査会で合併に問題はないと認められて初めて合併を実施できるのです。

病床は引き継げる

合併は、包括承継であるため病床を引き継ぐことができます。事業承継と異なり、病床数について再申請をする必要はありません

【関連】病院/医療法人の売却・売買マニュアル【案件/相場情報あり】

5. 病院・医療法人のM&A譲渡価格

病院・医療法人の価格の算出方法は、一般の会社と同じように算定されます

主な算出方法は以下の3つです。
 

  1. DCF方式(収益基準方式)
  2. 買収事例比較方式(市場基準方式)
  3. 時価純資産額+営業権(資産基準+営業権)方式

これらについて簡単に説明していきます。なお、企業価値や病院・医療法人の価格の算出方法について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

【関連】M&Aの企業価値評価とは?算出方法を詳しく解説!

①DCF方式(収益基準方式)

DCF方式は、譲渡される病院・医療法人が将来あげられる収益を予想し、その収益額を現在価値に直して病院・医療法人の価格を決める方法です。

病院・医療法人の将来性を明確にできる方法であるため、DCF法はよく使われます。

買収事例比較方式(市場基準方式)

買収事例比較方式は、今までに行われてきたM&Aをもとに病院・医療法人の価格を決める方法です。

時価純資産額+営業権(資産基準+営業権)方式

この計算方法は、対象となる病院・医療法人の時価純資産額に営業権の価値を合計して価格を決める方法です。

営業権の価値を算定することが難しいため、両者が納得する価格を算出しにくい計算方法といえるでしょう。

価格決定に関係する要素

病院・医療法人の価格は先ほど紹介した方法で算出されます。しかし、企業監査(デューデリジェンス)を行い、対象となる病院・医療法人に問題がある場合、その程度によって価格は変動するのです。

ここからは病院・医療法人の価格決定に関係する要素について紹介します。

病院の経営状況・財務状況

病院の経営状態が直近で悪化している場合、将来的にも悪化すると予想されるため、DCF法で計算すると低価格になると考えられます。また、他の計算方法でも算出された価格よりも減額される可能性があるのです。

したがって、病院・医療法人のM&A譲渡価格を上げたいなら、できるだけ経営状態を良くする必要が出てくるでしょう。

資産状況

資産状況は、貸借対照表の純資産の部で確認できます。純資産が少ない場合は、時価純資産額+営業権方式による計算に大きな影響を与えるのです。

職員・医師の勤務状況・患者の偏り、医療訴訟などリスクの有無

病院・医療法人のM&Aでは職員・医師の勤務状況が悪いと価格が下がります。また、患者が特定の医師に偏っている場合や医療訴訟を抱えている場合などリスクが高いと思われる病院・医療法人の価格が下がる傾向があります

したがって、病院・医療法人のM&Aを成功させたい場合は、できるだけ買い手側にリスクを感じさせないように見直しておく必要があるでしょう。

病院の地理的条件

病院の所在地について、交通の便が良くない病院は患者数が少ないと考えられるため、価格が下がります。

医療行政への対応

病院は行政・自治体の許認可を受けて運営を行っています。そのため、医療行政への対応が悪いと価格が下がる傾向が強いです。

病院・医療法人のM&Aの際には、医療行政への対応も意識しておきましょう。

以上が、病院・医療法人のM&A譲渡価格についてでした。ここからは、病院・医療法人のM&Aで考えるべきポイントを見ていきます。

6. 病院・医療法人のM&Aで考えるべきポイント

病院・医療法人のM&Aで考えるべきポイントについて以下の4点を紹介します。
 

  1. 情報開示
  2. 売り手への配慮
  3. 適切な買い手
  4. 限られた時間

これらのポイントを意識することで、病院・医療法人のM&Aは成功しやすくなるはずです。それぞれについて、順番に確認していきましょう。

①情報開示

買い手は、売り手の病院・医療法人について情報開示を求める必要があります。特に包括承継の合併の場合、負債や経営上の問題点もすべて引き継ぐことになるので売り手側の情報開示は非常に重要です。

売り手側が十分な情報開示を行ってくれない場合は、企業監査により調査する手段もあるので押さえておきましょう。情報開示が不十分なまま、病院・医療法人のM&Aを行うと後悔する可能性が高いので注意してください。

②売り手への配慮

買い手側が考えるべきポイントですが、売り手側に配慮する必要があります。あまりにも買い手側の利益を先行しすぎた条件を提示するとM&Aの交渉が難航する恐れがあるのです。

したがって、病院・医療法人のM&Aで譲渡してもらうなら、売り手側にもメリットがあるような条件を提示しましょう。

③適切な買い手

売り手側が考えるべきポイントですが、適切な買い手を探す必要があります。特に、高い価格で病院・医療法人をM&Aで譲渡できる譲渡先を見つけることが必要です。

買い手が違えばM&Aでの譲渡価格も変わってくるので、焦らずに良い買い手を探しましょう。また、病院・医療法人のM&Aでは単に譲渡価格だけで相手を選ぶのではなく、医師やスタッフも納得する買い手を選ぶこともポイントとなります。

④限られた時間

病院・医療法人のM&Aでは、時間が限られています。病院の営業を簡単に停止できません。M&Aにより営業を停止する場合、できるだけ営業停止期間が短くなるように手続きなどを行う必要があるのです。

病院・医療法人のM&Aを少しでも検討しているなら、早めにM&A仲介会社に相談してみてください。

M&A仲介会社をお探しの場合は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。

M&A総合研究所には病院・医療法人のM&Aにおける知識や経験が豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、親身になって案件をフルサポートいたします。

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7. 病院・医療法人のM&A成功事例

最後に病院・医療法人のM&A成功事例について紹介します。実際に行われた病院・医療法人のM&Aについて理解して、M&Aの参考にしてください。

まずは病院・医療法人の売却(譲渡)側と買収側について見ていきます。

売却(譲渡)側と買収側

売却側は、埼玉県で約30年間経営を行っていた医療法人Aです。医療法人Aの理事長は65歳と高齢であり、病院の引継ぎについて考えていました。後継者についてですが、外部から紹介された医師に後継者教育を行っていましたが失敗したため、いまだに後継者問題を抱えている状態でした。

一方、買収側は愛知県で経営を行っている医療法人Bです。医療法人Bは事業拡大を考えており、できれば関東に進出したいと考えていました。

手法

今回の事例では、医療法人Bの事業拡大が目的であるため、吸収合併という形でM&Aが行われました

双方のメリット

売却側はM&Aにより後継者問題を解決できました。また、買収側は埼玉県の医療法人を買収することに成功し、関東地方へ進出することに成功しています。

このように、病院・医療法人のM&Aが成功すれば、売却(譲渡)側と買収側のどちらにもメリットがあることを知っておきましょう。

NTT西日本による医療法人警和会への事業譲渡

医療法人警和会

医療法人警和会

出典:http://www.oph.gr.jp/post.html

大規模病院間での事業譲渡で話題となった事例も紹介しておきます。

2019年4月に、NTT西日本が西日本大阪病院を医療法人警和会へ事業譲渡しました。名称は「第二大阪警察病院」に変わります。地域医療への貢献をするために、以前から連携関係にある警和会に事業譲渡することを決めています。

警和会は、両病院が持つスタッフのポテンシャルと診療機能を引き継ぎながら協力して安心で安全な医療を提供するよう取り組むとしています。

その他の病院・医療法人のM&A成功事例については以下の記事で紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

【関連】病院・医療法人のM&A(売買)動向・価格相場【最新事例あり】
【関連】病院/医療法人の事業承継の成功事例15選!ポイントや注意点を解説!

8. まとめ

病院・医療法人のM&Aについて紹介してきました。実際に病院・医療法人のM&Aを行うなら、専門家であるM&A仲介会社に相談することをおすすめします。

しかし、自分自身でも病院・医療法人のM&Aについて理解しておけば相談がスムーズに進むので、ぜひ今回の内容を押さえておいてください。

病院・医療法人のM&Aは特殊であり、かつ注意するべき点がたくさんあります。したがって、病院・医療法人のM&Aを成功させたいなら、M&Aの専門家に協力してもらうことが重要です。

9. 病院・医療法人業界の成約事例一覧

10. 病院・医療法人業界のM&A案件一覧

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