監査法人とは?コンサルティングファームとの違いや役割・業務内容を解説!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

監査法人は、企業の財務報告をしっかりと行うためには非常に重要な組織であり、多くの企業で監査法人が導入されています。
しかし、監査法人について詳しく知らない経営者が多く、監査法人の設立がなかなかスムーズに進まない企業が多いのも現状です。
この記事では、監査法人という組織に関する説明や、コンサルティングファームとの違いについても深掘りして解説します。

目次

  1. 監査法人の役割
  2. 監査法人とコンサルティングファームの違い
  3. 監査法人の業務内容
  4. 代表的な監査法人(BIG4)
  5. M&Aにおける買収監査とは
  6. 監査法人の業務をよく知り事前準備をしっかり行おう!
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1. 監査法人の役割

そもそも監査法人とはどのような役割を持っていて、どのような組織なのでしょうか。

まずは、監査法人の役割や監査法人の概要について解説します。

監査法人とは

監査法人とは、企業の監査を担当している公認会計士5人以上によって設立された法人のことです。

最低5人以上の公認会計士が必要であり、主に上場企業などの大企業を監査するために設立されます。
また、監査法人が企業の財務報告に誤りがないかを確認し、財務報告の内容の真っ当さを担保させる役割があります。

そのため、監査法人によって企業の信頼性や透明性をアピールすることも可能です。
 

企業の会計処理や決算内容をチェックする

上記でも解説しましたが、監査法人は企業の財務報告の真っ当さを担保し、企業の正しい財務報告を行う役割があります。

実際に、企業によっては法人税を下げるために実際の利益よりも少ない利益を報告することや間違った会計処理をしているなどがあります。
以上のような会計処理や決算内容の誤りをチェックして、虚偽の情報がないかを判断します。

そのため、監査法人による確認が済んでいる決算内容は、大方正しい内容になっています。

2. 監査法人とコンサルティングファームの違い

監査法人とコンサルティングファームには、共通点も存在しているため明確な違いについて理解している方も少ないでしょう。
しかし、それぞれに共通点だけでなくさまざまな違いや特徴があるため、しっかりと理解しておくことが大切です。

ここでは、監査法人とコンサルティングファームの違いについて解説します。

守りのコンサル

守りのコンサルとは、監査法人内のアドバイザリー部門が自社に対してアドバイスやサポートを行うことです。

監査法人は、自社の会計処理や決算内容などの財務報告に不備がないように徹底しているため、守りのコンサルティングと言えます。

ただ、監査法人は業務に関するアドバイスやサポートは行いますが、利益拡大などに直接繋がることはしていないため、コンサルティングファームとは異なります。

攻めのコンサル

攻めのコンサルとは、コンサルティングファームが企業の利益拡大や事業拡大などに関わるコンサルティングを行うことです。

コンサルティングファームは、基本的に企業の財務に関することにアドバイスやサポートは行いませんが、企業の利益になるアドバイスやサポートは積極的に行います。

そのため、監査法人とコンサルティングファームでは、同じコンサル業務でも携わる内容が大きく違います。

3. 監査法人の業務内容

監査法人の主な役割について上記で解説しましたが、具体的な業務内容についても解説します。

監査法人の業務では、主に会計処理や決算内容のチェックなどを行う監査業務と、その他の業務を行う非監査業務の2つに分かれており、それぞれ業務内容が異なります。

ここでは、以上2種類の業務について解説します。

監査業務

監査法人が行う業務のほとんどは監査業務であり、監査業務は公認会計士のみしか携わることができない業務の1つです。

主に、企業が行った会計処理などの結果をまとめた財務諸表を徹底的に確認し、誤情報がないかを報告書にまとめます。
財務諸表の内容は、企業の利害関係者である株主や投資家などにとって非常に重要なことであり、企業自体の信頼性や透明性を担保するためにも必要なことです。

また、以下2つの条件どちらか、もしくは両方に該当する企業には、監査法人による監査が行われます。

  1. 最終事業年度の資本金が5億円以上の企業
  2. 負債額が200億円以上ある企業

以上2つの条件に該当する企業には必ず監査が必要ですが、該当しない企業などにもニーズに応じて行っています。

監査法人はプロの公認会計士によって、完全に不備がないか慎重に確認します。

非監査業務

非監査業務とは、上記で解説した業務とは別に企業のコンサルティングや上場サポートなどを行う業務のことです。

この非監査業務は、公認会計士でなくても行える業務でもあるため、コンサルティング専門のコンサルタントによって行われることが多く、主に財務コンサルタントやM&Aコンサルタントなどが担当します。

また、非上場企業の場合はIPO(新規公開株式)のサポート業務も行います。

非上場企業であれば上場するために新たに証券取引所に自社株式を公開して、多くの投資家に売り出していく必要があるため、そのためのサポートが主な業務です。

監査法人のコンサルタントでは、以上のような業務をメインに行っています。

4. 代表的な監査法人(BIG4)

日本に数多く存在している監査法人のうち、4社は大手監査法人に分類されており、その4つをまとめて4大監査法人やBIG4と呼ばれています。

ここでは、そんな代表的な監査法人(BIG4)についてそれぞれ紹介します。

あずさ監査法人

1つ目の監査法人は、あずさ監査法人です。

あずさ監査法人は、2003年に設立された監査法人であり、主に監査や保証業務、アドバイザリー業務を行っていることが特徴です。
また、東京や大阪、名古屋などの全国の主要都市に事務所を配置しており、現在では数多くの人材育成も行っています。

そのため、人材の品質が高く信頼性の高い監査法人でもあります。

新日本監査法人

2つ目の監査法人は、新日本監査法人です。

新日本監査法人は、2008年に日本で初めて有限責任監査法人になったことで、その後数多くの監査法人が加わっています。
さらに、2021年には経済産業省が定める「DX認定取得事業者」監査法人の中で初めて取得しており、とても評価や実績の豊富な監査法人であることがわかります。

そのため、新日本監査法人は数多く存在する監査法人の中でもDXを推進する仕組みが整備されています。

PwCあらた監査法人

3つ目の監査法人は、PwCあらた監査法人です。

PwCあらた監査法人は、AIや最新テクノロジーを活用した監査に積極的に取り組んでおり、高度な情報分析や業務の効率化などを行っています。
そのため、今後の監査業務においても高いニーズや評価がされることが予想されます。

また、現在の法人名称は2015年に変更されたものであり、現在の名称になってから有限責任監査法人に移行しているため、PwCあらた監査法人は有限責任監査法人に最後に移行した監査法人です。
 

トーマツ監査法人

4つ目の監査法人は、トーマツ監査法人です。

トーマツ監査法人は、公認会計士が監査業務から非監査業務までを徹底して行っており、非常に高品質で評価の高い監査対応を行っていることが特徴的です。
現在では、全国に30ヶ所に拠点を置いており、メインの監査業務以外にもさまざまなサービスを提供しているため、今後も規模を展開していくことが予想されます。

また、トーマツ監査法人はPwCあらた監査法人の業務のように、業務の効率化や高速化が図れるツールなどを導入しているため、よりスピーディで正確な業務対応が可能です。

そのため、これまでに数多くの企業の監査業務を行っており、実際に約3,000社以上に監査業務を行った実績があります。

5. M&Aにおける買収監査とは

買収監査とは、M&Aにおいて買収する企業の財務状況や税務状況、買収後のリスクなどを調査することで、デューデリジェンスと呼ばれます。
そんなM&Aでは、買収側企業が買収前に買収監査を行いM&A取引の最終判断を行います。

ここでは、M&Aにおける買収監査の目的や種類・内容などについて解説します。

【関連】DD(デューデリジェンス)の意味とは?種類から注意点や期間まで解説!

買収監査の目的

買収監査の目的は、主に買収側企業がM&Aによって発生する可能性のあるリスクを回避するためです。

M&Aによって、すでに従業員や設備・資本などが整っている事業や企業を買収できるため、大きなメリットが多くあります。
しかし、その反対に取引にかかる費用や時間、買収後に事業がうまくいかないなどのさまざまなコストやリスクが潜んでいる状態でもあります。

買収監査をせずにM&Aをすることで発生する可能性がある主なリスク

  • 自社の求める経営資源や設備などが整っていなかった
  • M&Aによるシナジー効果があまり得られなかった
  • 買収金額が適正ではなく、必要以上に費用を支払ってしまった
  • 売却側企業や財務や法律、業務でさまざまなトラブルを抱えており、コストがかかった
将来的に、主に以上のようなコストが考えられます。

そのため、M&Aでは、買収側企業が、徹底した買収監査を行い、M&A取引によって発生したコストを補えるような利益が得られる事業や企業であるのかどうかを調査し確認します。

買収監査は、M&Aで基本合意書を締結した段階で行われますが、M&A取引の中には買収監査によってM&Aは中止された事例も少なくありません。

買収監査の種類

買収監査には、主に以下の種類があります。

  • 法務買収監査
  • 財務・税務買収監査
  • 人事買収監査
  • IT買収監査
  • ビジネス買収監査

買収監査とひとくちに言っても、以上5つの種類に分かれておりそれぞれ内容や特徴が違います。

そのため、買収監査を検討している場合は、買収監査だけではなくどのような種類や目的で買収監査を行うのかまでしっかりと考えて判断することが大切なため、これからM&Aを行う経営者はしっかり理解しておきましょう。

【関連】M&Aにおける人事DD(デューデリジェンス)からPMIまでを徹底解説!

買収監査の費用

買収監査の費用は、M&Aの規模によって大きく変動するため、実際の取引を行ってみないと判断できない場合が多いです。

ただ、多くのM&Aでは買収監査に最低でも100万〜200万円ほど必要になっている場合が多いため、これからM&Aを検討している企業は、監査法人の費用相場を参考程度に知っておくことをおすすめします。
M&Aは、主にM&A仲介会社に依頼してM&A取引を進めていくため、最低でもM&A仲介会社への手数料が発生します。

そのため、M&Aでは買収監査を行わなくても多くのお金や時間が発生してしまうため、買収監査で発生する費用を節約しようと考えてしまう場合が多いです。

しかし、M&A成立後に発生しうるリスクを踏まえて考えると、買収監査で発生する費用は決して高額ではないので、妥協せず費用が高くなっても徹底的に行うことが重要です。

買収監査に必要な資料

買収監査に必要な資料は、買収監査共通で必要なものと買収監査の種類別に必要なものがあります。

買収監査共通で必要な書類は、主に以下の通りです。

  • 会社案内
  • 商業登記簿謄本
  • 組織図
  • 株主名簿
  • 従業員と役員名簿
  • 定款
  • 事業所と工場の一覧
  • 人事に関する資料
  • システムや業務に関する資料
  • 取引に関する各種契約書


買収監査の種類別(財務、ビジネス)に必要な資料は、主に以下の通りです。

財務・税務監査法人で必要な書類

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 資産勘定に関するデータ
  • 負債勘定に関するデータ

ビジネス監査法人で必要な書類
  • 得意先リストと得意先別売上高が記された資料
  • 仕入先リストと仕入先別仕入高が記された資料
  • 在庫データ
  • 減価償却費やリース料が記された資料
  • 総勘定元帳
  • 商品や店舗別の仕入高や売上高が記された資料

M&Aで買収監査を実施する場合は、以上の資料を事前に集めておくようにしましょう。
ただ、多くの場合は依頼しているM&A仲介会社が丁寧に説明してくれます。

楽天ベンチャーズ

楽天ベンチャーズとは、スタートアップのIT企業への投資を行っているファンドであり、主に世界中を対象にしています。

さらに、設立して間もない「アーリーステージ」や成長過程の「グローステージ」のIT企業まで幅広く投資活動を行っており、楽天が投資している企業が将来的に時代の最先端を進みながら成長していけるように支援しています。

また、楽天ベンチャーズは従来のファンドとは違い、投資している企業の成長をサポートするために、楽天グループの楽天技術研究所(RIT)が保有しているさまざまなノウハウやスキル、インフラを活用しています。

主に以下のようなノウハウ・スキルを活用してサポートしています。

  • AI
  • ビッグデータ
  • 電子商取引
  • 金融サービス

以上のような楽天のノウハウやスキルを活用することで、投資だけでは実現が厳しいサポートも積極的に行っています。

6. 監査法人の業務をよく知り事前準備をしっかり行おう!

今回紹介した通り、監査法人は上場企業をはじめとした大企業には欠かさず存在している組織であり、企業が利害関係者や社会から高い信頼性や透明性を獲得するためには、必要不可欠な存在です。

さらに、大企業でなくても監査法人による徹底した監査をしてもらい、自社の財務について徹底した管理を行いたいと考えてる企業が多くいます。
しかし、監査法人について詳しく知らない経営者は多く、どの監査法人に依頼するべきなのか判断できないという方も多いと思うので、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。

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