輸送用機械・部品製造業界のM&Aの現状は?動向や事例から相場も紹介!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、輸送用機械・部品製造業界のM&Aについて、業界の動向やM&A・売却・買収のメリット、M&Aを実施する際の注意点を解説します。また、売却事例や、積極的に買収する企業も併せて紹介します。輸送用機械・部品製造業界のM&Aを検討中の方は必見です。

目次

  1. 輸送用機械・部品製造業界のM&Aの現状
  2. 輸送用機械・部品製造業界のM&Aの動向
  3. 輸送用機械・部品製造業界のM&A・売却・買収事例15選
  4. 輸送用機械・部品製造業界がM&A・売却・買収を行うメリット
  5. 輸送用機械・部品製造業界のM&Aの相場
  6. 輸送用機械・部品製造業界のM&A・高値で売る6つのコツ
  7. 輸送用機械・部品製造業界のM&Aにおける積極買収企業
  8. 輸送用機械・部品製造業界でM&Aを実施する際の5つの注意点
  9. 輸送用機械・部品製造業界のM&A・売却・買収の際におすすめの相談先
  10. 輸送用機械・部品製造業界のM&A・売却・買収のまとめ
  11. 業務・産業用機械製造業界の成約事例一覧
  12. 業務・産業用機械製造業界のM&A案件一覧
  • セミナー情報
  • セミナー情報
  • 業務・産業用機械製造会社のM&A・事業承継

1. 輸送用機械・部品製造業界のM&Aの現状

輸送用機械・部品製造業界では、どのようなM&Aが選択されているのでしょうか。業界で行われているM&A・売却・買収事業承継スキームを紹介する前に、輸送用機械・部品製造業界の概要を説明します。

輸送用機械・部品製造業界とは

輸送用機械・部品製造業とは、自動車をはじめ、航空機・船舶・鉄道といった人・モノを輸送する機械と、その機械を構成する部品を製造する事業者のことです。

輸送用機械・部品製造業界では、商品出荷額の約9割を自動車製造関連が占めています。完成品を扱う業者を頂点として、主要部品製造や下請けなどの各メーカーで構成されています。

ピラミッド型の構造が形成されているのが特徴です。階層が下がるごとに利益率は低くなります。業界の中では、頂点である完成品メーカーが最も利幅が大きくなります。

M&A・売却・買収とは

M&A・売却・買収とは、輸送用機械・部品製造の事業会社・事業を譲渡したり、承継したりする行為のことです。

M&Aには、事業譲渡株式譲渡を行う買収、会社の権利義務を承継する分割、2つ以上の会社が1つになる合併、他社と協力関係を結ぶ資本・業務提携があります。

自社のみで輸送用機械・部品製造業を続けることが難しい場合や、企業価値向上・ノウハウ共有・事業規模拡大などを目的とした場合、M&A・売却・買収は有効な手段といえるでしょう。

事業承継とは

事業承継とは、自社の輸送用機械・部品製造業を後継者に引き継ぐ行為をさします。後継者となり得るのは、子どもや親族・従業員や役員、M&Aによって選んだ第三者です。

近年、中小企業の事業承継では、子どもや親族への承継が減っています。従業員または親族・社外の第三者への事業承継を選択する割合が増加している現状です。

親族への事業承継が減少している理由には、子どもの意思を尊重したい・子どもに会社を継ぐ意思がない・後継者への教育が完了していないなどが挙げられます。

子どもや親族を後継者にできない場合、従業員への事業承継も選択肢になります。しかし、自社株の取得には多額の資金が必要になるため、困難なケースも少なくありません。

親族・社外へのM&Aを選択すれば、事業の引き継ぎができるだけでなく、経営者は個人保証・担保も解消できます。

2. 輸送用機械・部品製造業界のM&Aの動向

輸送用機械・部品製造業界では、どのような理由・背景から、M&Aが行われているのでしょうか。ここでは、輸送用機械・部品製造業界におけるM&A動向の特徴を4つ紹介します。

  1. 新興国を対象とした事業展開が増加
  2. 事業拡大を目的としたM&Aの増加
  3. IoTなど技術目的のM&Aも活況
  4. 多岐にわたるニーズに対応する目的のM&Aも見られる

①新興国を対象とした事業展開が増加

1つ目に挙げる輸送用機械・部品製造業界のM&A動向は、新興国を対象とした事業展開の増加です。

国内では少子化・高齢化・若者の車離れの影響から、自動車の需要は減っていくと推測されます。輸送用機械・部品製造業の拠点を新興国に設け、成長が見込まれる市場に参入する企業が増えているでしょう。

自社で製造工場を建てることはもちろん、M&Aによる現地企業の買収を実施し、輸送用機械・部品製造・開発・設計・販売を行っています。

②事業拡大を目的としたM&Aの増加

2つ目に挙げる輸送用機械・部品製造業界のM&A動向は、事業拡大を目的としたM&Aの増加です。

輸送用機械・部品製造業者の中には、中期経営計画で売上高の増加を掲げている企業が見られます。このような企業は、目標達成のためにM&Aを利用し事業拡大を図っています。新しい事業にも目を向け、商品のラインアップを充実させる狙いです。

そのほか、新しいエリアへの進出を図るために、国内外の企業をM&A(事業承継を含む)によって獲得している企業も見られます。事業を拡大することで、未対応エリアのカバーやグループ拡大によるコストの削減などを目指しているといえるでしょう。

③IoTなど技術目的のM&Aも活況

3つ目に挙げる輸送用機械・部品製造業界のM&A動向は、IoTなどの技術を目的としたM&Aの活況です。

輸送用機械・部品製造業では、工場のオートメーション化に伴うデータ解析や、製造する自動車の安全運転・自動運転への対応を図ることが急務となっています。

M&A(事業承継を含む)を介して技術力・ノウハウを保有する企業を買収し、人とモノをつなぐIoTや、データを含めたつながりを実現するIoE、AIなどの技術・ノウハウを獲得する企業の増加が顕著です。移り変わる市場環境への適応を目指しています。

④多岐にわたるニーズに対応する目的のM&Aも見られる

4つ目に挙げる輸送用機械・部品製造業界のM&A動向は、M&Aの実施による、バラエティに富んだニーズへの対応です。

自動車組み立てメーカーは、消費者の需要に応えるため多様な車種を販売しています。車を提供する地域・国ごとに、生産する車に合った部品の種類・量をそろえなければなりません。

輸送用機械・部品製造業者も、自動車組み立てメーカーの要望に応えられなければ、市場での競争に勝つことは難しいといえるでしょう。

このような背景から、輸送用機械・部品製造業では、多岐にわたるニーズに応えるために、M&A(事業承継を含む)を実施し、部品・素材の製造技術・ノウハウを所有する企業などを傘下に収めています

3. 輸送用機械・部品製造業界のM&A・売却・買収事例15選

輸送用機械・部品製造業界では、どのような企業が自社の輸送用機械・部品製造事業を売却しているのでしょうか。

ここでは、輸送用機械・部品製造業界で行われた売却事例を9件ご紹介します。

  1. 横浜ゴムによるTrelleborg社のWheel Systems事業の買収
  2. SUBARUによるスバルITクリエーションズの吸収合併
  3. Tanaakkと武蔵精密工業の資本業務提携
  4. 住江織物によるプレテリアテキスタイルの子会社化
  5. エクセディとアスターの資本業務提携
  6. 本田技研工業による連結子会社への一部事業承継
  7. ブリヂストン米国グループ会社によるAzuga Holdings Inc.の買収
  8. ウーブン・プラネットHDによるCARMERAの買収
  9. ブリヂストンによるLCY Chemical Corporationへの中国グループ会社の譲渡
  10. 日産自動車によるダイムラーAGの保有株式売却
  11. 極東開発工業によるタイ王国・TREX THAIRUNG CO., LTD.の売却
  12. 本田技研工業による浅間技研工業の売却
  13. モリタホールディングスによるミヤタサイクルの売却
  14. Immersive Technologies Pty Ltd.によるコマツへの売却
  15. 日信工業によるVeoneer Nissin Brake Systems America LLCの売却

①横浜ゴムによるTrelleborg社のWheel Systems事業の買収

横浜ゴムは2022年3月、Trelleborg AB(スウェーデン)が保有するTrelleborg Wheel Systems Holding ABの全ての株式を取得しました。

横浜ゴムはタイヤ・ホイール、工業品、航空部品、スポーツ用品、その他情報処理サービスなどの事業を展開している企業です。Trelleborg Wheel Systems Holding ABは、農業機械用や産業車両用タイヤなどの生産、販売を展開しています。

今回のM&Aにより、タイヤ商品やサービスの研究開発、生産、販売、品質、ESGなど、両社の利便性と効率性を高めたサービスの提供、全ての領域で保有する強みを融合し、オフハイウェイタイヤ事業の成長拡大を目指します。

②SUBARUによるスバルITクリエーションズの吸収合併

SUBARUは2022年2月、完全子会社のスバルITクリエーションズの吸収合併を行いました。SUBARUを吸収合併存続会社とし、スバルITクリエーションズは解散します。

完全子会社との合併のため、吸収合併による新株の発行や合併交付金の支払いは発生しません。SUBARUは、自動車、部品の製造・修理および販売事業、航空機、宇宙関連機器などの製造、販売、修理などの幅広い事業を展開する企業です。

対象会社となったスバルITクリエーションズは、ITシステムの企画・提案、開発、保守、運用などを展開していました。

今回のM&Aにより、SUBARUグループは、ITリソースを集中させ、「量的・質的」両面からITガバナンスの強化や人材育成などを行い、IT体制の強化を目指し、企業価値向上を目指します。

③Tanaakkと武蔵精密工業の資本業務提携

Tanaakk(タナーク)は2022年2月、武蔵精密工業と資本提携契約を締結し、第三者割当増資を行いました。

Tanaakkは、企業の株式価値向上のためのサブスクリプション型のGrowth-as-a-Serviceを提供する会社です。アメリカ・ヨーロッパ・アジアなど16,300社の上場企業、および800社を超えるユニコーン企業のDBを用いて企業価値向上パッケージを開発、提供しています。

対象会社の武蔵精密工業は、四輪、二輪車向けデファレンシャル、トランスミッションギヤ、カムシャフトなどの開発・製造・販売を行う会社です。コア事業の商品展開を進める一方で、先端AI技術開発やSDGsの幅広い領域での達成貢献に向けた展開なども行います。

今回のM&Aにより、両社の事業協業を進め、企業価値向上、ならびにTANAAKKの展開するクラウド事業拡大を目指します。

④住江織物によるプレテリアテキスタイルの子会社化

住江織物は2022年1月、プレテリアテキスタイルの全ての株式を取得し、子会社化しました。

住江織物はインテリア事業をメインとして、ホテル、オフィス、医療・福祉・教育施設などへカーペットやカーテン、壁紙といったインテリア内装材を販売している会社です。対象会社であるプレテリアテキスタイルは、内装仕上工事・インテリアオプション販売を行っています。

今回のM&Aにより、両社のシナジー効果創出し、顧客からの幅広い要望の具現化、「スペースデザインビジネス」拡大を目指します。

⑤エクセディとアスターの資本業務提携

エクセディは2022年1月、アスターと資本業務提携を締結しました。

エクセディはマニュアルクラッチやトルクコンバータ、建設・産業機械用製品、二輪車用クラッチなどの製造、販売を行っています。対象会社であるアスターは秋田県に拠点を置く会社で、モーター、コイル、自動車関連部品、産業用機器部品の製造、販売事業を展開しています。

次世代モビリティおよび環境対応製品のコアデバイスとなるモーター開発について、資本業務提携を締結した。

今回の資本業務提携により、エクセディは新たな価値創造、商品開発、および事業拡充を図り、2050年までにカーボンニュートラル実現を目指します。

⑥本田技研工業による連結子会社への一部事業承継

本田技研工業は2022年1月、一部事業をホンダ・レーシングへ承継を行う会社分割を実施しました。そして、本田技術研究所が有する四輪モータースポーツ事業も、ホンダ・レーシングへ承継させます。

本田技研工業は事業の原点である二輪事業、四輪事業、ライフクリエーション事業、航空機および航空機エンジンの開発などを行う大手輸送機器メーカーです。

ホンダ・レーシングは、モータースポーツ用二輪車、四輪車などの研究開発、製造、販売、修理を行っています。本田技術研究所は、二輪や四輪といった既存事業で培ってきた技術を生かしつつ、新領域の開発を行う会社です。

今回のM&Aにより、二輪・四輪各レース部門の持つ知見の相互活用や事業の効率化、ブランド価値向上を目指します。

⑦ブリヂストン米国グループ会社によるAzuga Holdings Inc.の買収

ブリヂストンの米国グループ会社・ブリヂストンアメリカスインク(BSAM)は、2021年8月、北米のデジタルフリートソリューションプロバイダーであるAzuga Holdings Inc.を買収する契約を、Azugaの大株主であるSumeru Equity Partnersなどと締結しました。取得価額は約428億円です。

ブリヂストンアメリカスインクは、車両関係や建築向けの製品、販売・サービス、フリート管理などを行っています。

このM&Aにより、BSAMは、フリートを対象とした包括的なモビリティソリューションの拡大を図り、タイや事業においても、シナジー効果を期待しています。

⑧ウーブン・プラネットHDによるCARMERAの買収

トヨタの子会社であるウーブン・プラネット・ホールディングスは、2021年7月、自動運転モビリティのための高精度地図を中心とする次世代道路情報解析などを行うアメリカのCARMERA, Inc.を買収しました。

ウーブン・プラネットHDは、グループ全体の戦略的意思決定、パートナーとの協業拡大、新事業機会の創出や事業会社に対してシェアードサービスの提供を行っています。

このM&Aにより、ウーブン・プラネットHDは、高精度地図の開発から商業化への移行を加速させることを期待します

⑨ブリヂストンによるLCY Chemical Corporationへの中国グループ会社の譲渡

ブリヂストンは2021年6月、乗用車用タイヤ向けに合成ゴムを製造する普利司通(恵州)合成橡胶有限公司(BSRC)の全株式を、LCY Chemical Corporationに売却することを決定しました。譲渡価額は非公表です。

LCYは、化学関連事業などをグローバルに展開しています。このM&Aにより、新たなシナジー効果を期待すると供に、BSRCがサステナブルに社会や顧客価値を創出することが可能であると考え決断に至りました。タイヤ事業を取り巻く環境変化に迅速に対応するため、事業再編を進めている一環と考えています。

⑩日産自動車によるダイムラーAGの保有株式売却

日産自動車は2021年5月、保有するドイツのダイムラーAGの全株式を、機関投資家に対して、Accelerated Book Building(ABB)と呼ばれる手法により売却することを決定しました。売却総額は、約11億4,900万ユーロです。

このM&Aにより、日産自動車は、取得資金を電動化促進に向けた投資など、事業競争力を強化し、高めていくための原資として活用することを目的としています。両社の事業上のパートナーシップに変更はなく、複数の分野での協業を継続する模様です。

⑪極東開発工業によるタイ王国・TREX THAIRUNG CO., LTD.の売却

特装車の製造・架装・販売・修理および部品の製造・販売などを手掛ける極東開発工業は、2019年の7月に、自社と連結子会社・日本トレクスが保有するタイ王国・TREX THAIRUNG CO., LTD.の株式をすべて譲渡しています。

株式の譲渡先は、タイ王国で立ち上げた合弁会社・TREX THAIRUNG CO., LTD.の共同出資会社・THAI RUNG UNION CAR PUBLIC CO., LTD.です。

極東開発工業は、TREX THAIRUNG CO., LTD.の中期的な業績が芳しくないことから、対象企業の株式を売却して技術支援に徹するとしています。

⑫本田技研工業による浅間技研工業の売却

国内外で四輪・二輪車の製造・販売などを手掛ける本田技研工業は、2019年7月に、輸送機・建機事業や資源・化学品事業などを営む住友商事に、浅間技研工業の株式を譲渡する契約を結んでいます。

住友商事は、自動車向けのブレーキ関連部品を製造する浅間技研工業を買収することで、規模の拡大が見込まれるブレーキディスク・ドラム市場で、確固たる地位を確立する方針です。すでに2004年6月には、自動車ブレーキ関連部品の製造会社・キリウを子会社化し、海外での事業拡大を図っています。

自動車ブレーキ関連部品の製造事業において、さらなる事業拡大と付加価値の向上を目指すため、対象企業の買収を行っています。

⑬モリタホールディングスによるミヤタサイクルの売却

消防車両・産業機械・環境車両の開発・製造・販売事業などを手掛けるモリタホールディングスは2019年7月に、自動車販売事業を営む持分法適用関連会社・ミヤタサイクルの全株式を、美利達工業股份有限公司へ売却しています。

ミヤタサイクルは、連結子会社の宮田工業による新設分割で、自動車販売事業を承継させた会社です。モリタホールディングスは、美利達工業股份有限公司との関係を強化するため、2014年3月までに、保有するミヤタサイクルの株式45%を譲渡していました。

モリタホールディングスは、ミヤタサイクルの業容拡大と、自社が保有する経営資源の有効活用を目的に、対象会社の売却を選択しています。

⑭Immersive Technologies Pty Ltd.によるコマツへの売却

オーストラリアのImmersive Technologies Pty Ltd.は2019年7月に、オーストラリアの100%子会社を通じてコマツに売却しています。

Immersive Technologies Pty Ltd.は、鉱山機械向けシミュレータを開発・製造・販売している会社で、コマツは、油圧ショベルやブルドーザーなどの建設・鉱山機械の会社です。

このM&Aにより、コマツはImmersive Technologies Pty Ltd.のソリューションをラインアップに取り入れることで、顧客の安全性や生産性の向上とさらなるオペレーションの最適化を見込んでいます。

⑮日信工業によるVeoneer Nissin Brake Systems America LLCの売却

二輪・四輪車向けのブレーキ装置やアルミ製品などを開発・製造・販売する日信工業は、2019年6月に持分法適用関連会社・Veoneer Nissin Brake Systems America LLCの全株式を、Veoneer,Inc.の完全子会社・Veoneer US,Inc.へ売却しています。

日信工業は、Veoneer,Inc.と共同で四輪車用のブレーキ・コントロールやブレーキ・アプライシステム、関連する部品の開発・設計・製造・販売事業を展開している会社です。

両社の経営戦略を検討した結果、経営資源を最適に利用するため、対象企業の株式を譲渡し、企業価値の最大化を図るとしています。なお、日信工業はほか3社と、2021年1月に日立Astemoとして経営統合しました。

  • 業務・産業用機械製造会社のM&A・事業承継

4. 輸送用機械・部品製造業界がM&A・売却・買収を行うメリット

輸送用機械・部品製造業のM&Aには、どのようなメリットが挙げられているのでしょうか。ここでは、輸送用機械・部品製造業の売却・買収で得られるメリットを買収側・売却側それぞれの立場から解説します。

売却側のメリット

輸送用機械・部品製造業を売却する側は、主に以下5つのメリットが得られます。

  • 従業員の雇用先を確保する
  • 後継者問題を解決する
  • 自社製品の販路拡大
  • 個人保証・担保の解消
  • 譲渡・売却益の獲得

従業員の雇用先を確保する

廃業・事業からの撤退を選択すると、従業員を解雇しなければなりません。輸送用機械・部品製造業を第三者へ譲渡すれば、雇用の継続が可能になります。

株式譲渡であれば、株式を譲り渡すことで雇用が引き継がれます。事業譲渡でも、従業員の同意を得て買い手による再契約をすれば、雇用の維持が可能です。売り手側は輸送用機械・部品製造業の譲渡を選択して、従業員の雇用先を確保しています。

後継者問題を解決する

親族や社内に後継者がいなかったり、後継者がいても育成が間に合わなかったりと、後継者問題を抱えている事業者も少なくありません。輸送用機械・部品製造業を第三者に売却すれば、後継者問題を解決できるだけでなく、後継者の育成に要する期間を短縮できます。

経営者の体調の悪化など、一刻も早く事業を譲りたい場合にも、第三者への売却は有効といえるでしょう。

自社製品の販路拡大

自社の営業力だけでは販路拡大が望めない場合、他社へ輸送用機械・部品製品業を譲り渡して、経営資源の共有を図ります。買い手が持つ販路・事業エリア・ノウハウなどが活用できれば、自社製品を多くのメーカーに届けられます。販路の拡大につなげられるといえるでしょう。

個人保証・担保の解消

事業譲渡の場合、平成26年に定められた「経営者保証に関するガイドライン」により、条件に該当する企業に対して、金融機関が保証契約の解除に応じる割合は高くなっています。

株式譲渡では買い手に金融機関と交渉してもらい、個人保証・担保の解消を盛り込んだ譲渡契約を結びます

このように、買い手が個人保証・担保を肩代わりしてくれれば、オーナーは借入金の返済から解放されるため、輸送用機械・部品製造業の売却が選択されているでしょう。

譲渡・売却益の獲得

株式譲渡ではオーナー(株主)に、事業譲渡では会社に譲渡・売却益が入るのがメリットです。獲得した資金は、新会社の立ち上げ費用、他事業に回す資金、引退後の生活費などに充当できます。譲渡・売却益の獲得を目的とした売却を行うケースも多くみられます。

買収側のメリット

輸送用機械・部品製造業を買収する側のメリットには、主に以下5つが挙げられます。

  • 競争力の強化
  • 製品ラインアップの充実
  • スムーズな新規参入
  • 材料費などのコスト削減
  • ノウハウ・人材・設備などの獲得

競争力の強化

輸送用機械・部品製造業では、市場の環境が移り替わる時機を迎えているため、市場での競争を勝ち抜けない企業も現れるでしょう。

輸送用機械・部品製造事業や関連業種の買収を行い、事業エリアを確保したり、自社事業とのシナジーを獲得したりすれば、自社の事業に付加価値を加えることが可能になります。

市場での競争力を高められることから、輸送用機械・部品製造事業や関連業種を買収する企業が増えています。業界での生き残りを図るためにもM&Aを検討するとよいでしょう。

製品ラインアップの充実

自社で新しい製品を開発するためには時間・コスト・技術が必要になります。他社の輸送用機械・部品製造事業を買収して提供する製品の拡充を図れば、短期間で製品ラインアップの充実が可能です。

自社の企業価値を向上させることにもつながるので、輸送用機械・部品製造業を買収する側にはメリットがあるといえるでしょう。

スムーズな新規参入

自社で新事業を始める場合、高い参入障壁・参入にかかるコストや時間などを考慮して、新規参入を諦める企業も少なくありません。輸送用機械・部品製造業を買収すれば、すでに事業を営んでいる企業・事業を獲得するため、スムーズな参入が可能です。

買収した企業・事業に顧客がついていれば、承継してからの売上も期待できます。買収側にメリットがあるといえるでしょう。

材料費などのコスト削減

同業種や関連業種を買収すれば、部品の製造に使う材料の中に共通するものが含まれていることも多いです。同じ原料をこれまでより多く仕入れるため、安い価格で購入することが可能になります。

原料にかかるコスト削減につながるので、買収側にはメリットがあるといえるでしょう。

ノウハウ・人材・設備などの獲得

自社のみで新しい製品を開発するには、手間・コスト・技術の開発期間が必要です。開発に必要な人材・設備もそろえなければなりません。

輸送用機械・部品製造業を買収して、売り手側が展開する事業を譲り受けて、必要なノウハウ・人材・設備を確保すれば、短期間での新製品開発が可能になります。

5. 輸送用機械・部品製造業界のM&Aの相場

輸送用機械・部品製造業界のM&Aを行う際に、実際にいくらぐらいで売却できるのか、相場が何より気になるところです。ここでは、会社売却価格の算出方法を簡単にご説明しましょう。

売却価格を算出するにあたり、まず、自社の企業価値評価を行う必要があります。企業価値評価とは、現在の企業価値である時価純資産に、将来期待できる収益である営業権(のれん)を加えて算出するものです。コストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチの3つを組み合わせて算出します。

次に、上記で算出した企業価値をもとに、売り手側と買い手側が条件をすり合わせます。両者の交渉結果を加味したうえで、最終的な売却価格が決定される流れです。

ただし、この売却価格の相場算出には、専門的知識や豊富な交渉経験が必要となります。経営者自身が行うことは容易ではありません。知識豊富な専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

6. 輸送用機械・部品製造業界のM&A・高値で売る6つのコツ

輸送用機械・部品製造業界のM&Aで会社を高値で売却するコツを6つご紹介しましょう。

  1. 土壌汚染の程度を調査する
  2. 金型技術のノウハウを所有する
  3. オートメーション化の割合を高める
  4. 業界構造の変化に柔軟に対応する
  5. 営業部署を設けている
  6. 簿外債務の有無や偶発債務のリスクを洗い出しておく

①土壌汚染の程度を調査する

輸送用機械・部品製造業界のM&Aを行う際は、事前に土壌汚染の程度を調査しておく必要があります。周辺住民や従業員などの健康被害だけでなく、企業の信用度・不動産価値の低下などに関わるからです。

こういったリスクを避けるために、信頼のおける調査機関に土壌調査を依頼するとよいでしょう。正確な調査結果を買い手側に提供できるようにしておくことが重要です。

②金型技術のノウハウを所有する

近年、大手製造業が高い金型技術を保有する企業との取引や買収などのM&Aを積極的に進めています。安価な製品の大量生産で台頭してきた中国やアジア各国が、高品質なものづくりの力を付けつつある中で、日本の製造業も大量生産が求められる状況です。

高度な金型技術がものづくりの先進技術を支えています。金型技術のノウハウを持っているかどうかがM&Aの成否を大きく左右するといっても過言ではありません。

③オートメーション化の割合を高める

生産コストを下げるために、多くの日本企業が中国に生産拠点を作りました。しかし、中国の人件費高騰により、その拠点は東南アジア各国に移転しています。ところが、その東南アジアでも人件費高騰の問題が生じつつある現状です。

海外の人件費高騰と、国内の人手不足を受けて、日本の製造業ではファクトリーオートメーションが加速度的に進んでいます。ファクトリーオートメーションとは、工場における生産工程の自動化を図るシステムのことです。

輸送用機械・部品製造業界のM&Aによる売却側も、オートメーション化をどの程度導入しているかが評価基準の一つとされています。オートメーション化の割合を高めることがカギとなるでしょう。

④業界構造の変化に柔軟に対応する

昨今、自動車業界をはじめとするさまざまな業界で業界再編が起きています。取引先が偏っていると、企業リスクは大きくなるので注意が必要です。

業界構造の変化に柔軟に対応できる体制を整えておけば、買収する際のリスクを抑えられます。輸送用機械・部品製造業界のM&Aを検討する可能性も高くなるでしょう。

⑤営業部署を設けている

中小規模の輸送用機械・部品製造会社は、営業部署を持たずに、経営者自らが営業を行っているところがあります。営業スタッフが一人ですべて行うケースも少なくありません。

買収後に営業部門を新設するにはコストがかかります。営業部署を設けている会社を買収する方が効率的です。輸送用機械・部品製造業界は、営業力の弱い会社が多く見られます。営業体制の整っている会社は、好条件で売却されることが可能となるでしょう。

⑥簿外債務の有無や偶発債務のリスクを洗い出しておく

輸送用機械・部品製造業界の中小企業や小規模事業者の中には、帳簿の記載ミスにより簿外債務が発生しているケースが多く見受けられます。買い手によるデューデリジェンス(企業調査)の際に簿外債務が見つかると、信用度が大きく下がります。売却価格にも影響するでしょう。

こういったリスクを避けるために、専門家のサポートを受けて、簿外債務の有無や偶発債務のリスクを洗い出しておくことをおすすめします。

7. 輸送用機械・部品製造業界のM&Aにおける積極買収企業

輸送用機械・部品製造業の会社は、どのような企業によって買収されているのでしょうか。ここでは、輸送用機械・部品製造業を積極的に買収している企業を、買収目的とあわせて紹介します。

  1. アルコニックス
  2. 小倉クラッチ

①アルコニックス

アルコニックス株式会社

アルコニックス

出典:https://www.alconix.com/index.php

アルコニックスは、グループで電子機能材・装置素材・金属加工事業に取り組んでいます。中期経営計画では商社企業と製造業の融合を掲げ、業容を拡大するために流通業のM&Aを進めるほか、製造業の買収にも力を入れるとしています。

買収例を挙げると、2018年の12月に中間持株会社をつうじて、摩擦調整材などを製造する東北化工の株式を取得しました。

2019年の2月にも買収に合わせて設立した中間持株会社を介して、自動車の小型モーターに用いられるカーボンブラシの製造企業・富士カーボン製造所の株式を取得し、M&Aを実施しています。

アルコニックスは、今後も業容を拡大させるために該当する事業者のM&Aを実施すると予想されます。

②小倉クラッチ

小倉クラッチ株式会社

小倉クラッチ

出典:https://www.oguraclutch.co.jp/

小倉クラッチは、カーエアコン用のクラッチや、自動車などに用いられるルーツブロワ、強化した自動車用のクラッチなどの開発・製造・販売を手掛ける企業です。

2019年の中期経営計画では、2021年度までの売上目標を500億円に定め、人材の育成・最適な配置・高品質化による顧客満足度向上・新分野への積極的な進出を掲げています。

2018年の7月に新設した子会社が三泉の電磁コイル・電磁クラッチ部品などの製造事業を買収し、事業領域を拡大しています。今後も新分野の開拓を進めることが予想されるため、輸送用機械・部品製造業の買収が行われる可能性が高いといえるでしょう。

8. 輸送用機械・部品製造業界でM&Aを実施する際の5つの注意点

輸送用機械・部品製造業界でM&Aを実施する場合には、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

ここでは、輸送用機械・部品製造業界でM&Aを実施する際の注意点を5つ取り上げます。

  1. M&Aの計画は成立まで外部に漏らさない
  2. 簿外債務の確認をきちんと行う
  3. M&Aの目的が曖昧にならないようにする
  4. M&Aの成立は時間がかかることを認識する
  5. M&Aの専門家に相談する

①M&Aの計画は成立まで外部に漏らさない

1つ目に挙げる輸送用機械・部品製造業界でM&Aを実施する際の注意点は、M&Aの成立までに譲渡の計画を漏らさないことです。

M&Aが成立するまでにM&Aを実施する計画が会社の外へ漏れてしまうと、不安をあおってしまい取引契約の解除や従業員の離職も起こり得ます

M&Aの実行計画の報告は、会社の財務従事者などの主要な従業員には基本合意を締結した後に打ち明けましょう。そのほかの従業員にはクロージング後に行うのが適切なタイミングといえるでしょう。

②簿外債務の確認をきちんと行う

2つ目に挙げる輸送用機械・部品製造業界でM&Aを実施する際の注意点は、簿外債務の確認です。

譲渡後に簿外債務が発覚すれば、表明保証条項に違反するとして、買い手から訴えられたり、譲渡契約が解除されたりする可能性もあります。輸送用機械・部品製造業のM&Aを成功させるためには、事前に簿外債務の有無を確かめておくことが重要です。

③M&Aの目的が曖昧にならないようにする

3つ目に挙げる輸送用機械・部品製造業界でM&Aを実施する際の注意点は、M&Aの目的を明確にすることです。

M&Aの目的によって、ふさわしいスキーム・優先する条件・準備や交渉の進め方・必要な手続きが異なります。M&Aの目的を曖昧にしておくと、買い手が見つからない・望まない条件をのんでしまった・定めた期間までに成約を完了できないなど、希望するM&Aからかけ離れてしまうことも考えられます。

M&Aを成功に導くためには、事前にM&Aの目的を明確にしておくことが重要です。

④M&Aの成立は時間がかかることを認識する

4つ目に挙げる輸送用機械・部品製造業界でM&Aを実施する際の注意点は、成立までに要する期間を認識しておくことです。

M&Aでは、実行前の準備・条件の決定・買い手の探索と選定・デューデリジェンスへの対応・成約の手続きなど、成立までに多くの過程を経なければなりません。

M&Aの必要性を感じてから実行しても短期間での譲渡は難しいものです。焦って買い手を決めてしまえば、希望する条件で成約できないことも想定されます。

輸送用機械・部品製造業界でM&Aを行う場合は、成立までに要する期間を把握しましょう。早めに準備を進めておくなど、余裕を持ってM&Aに臨むことをおすすめします。

⑤M&Aの専門家に相談する

5つ目に挙げる輸送用機械・部品製造業界でM&Aを実施する際の注意点は、M&A専門家へ相談することです。

自社のみで輸送用機械・部品製造業のM&Aに取り掛かってしまうと、交渉先が見つからない・見つかるまでの期間が長い・希望する譲渡価格に達しない・交渉が決裂してしまったなど、求めるM&Aを実現できないことがあります。

輸送用機械・部品製造業を譲渡する場合には、M&Aの専門家に協力を仰ぐことが成功のカギともいえます。M&A仲介会社・士業・金融機関・公的機関などの相談先から、自社に合ったところを選ぶとよいでしょう。

9. 輸送用機械・部品製造業界のM&A・売却・買収の際におすすめの相談先

輸送用機械・部品製造業界のM&A・売却・買収の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aアドバイザーがクロージングまで案件をフルサポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。初期費用を抑えてM&Aを進めたい場合も安心してご利用できます。

輸送用機械・部品製造業界のM&A・売却・買収をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所の無料相談をご利用ください。

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10. 輸送用機械・部品製造業界のM&A・売却・買収のまとめ

輸送用機械・部品製造業界のM&Aについて、業界の動向や、売却事例、積極的に買収する企業などを紹介しました。市場環境が変化しているため、M&Aによる事業の継続や事業価値の向上などに取り組む企業が増加しています。

自社だけの力では競争に勝てないと判断した企業は、売却・買収を選択して、市場での生き残りを図っているといえるでしょう。輸送用機械・部品製造業のM&Aを成功させるためには、自社に合ったスキームを選択し戦略を立てて進める必要があります。

M&Aに関する専門的な知識や高い交渉力が求められるため、専門家のサポートがおすすめです。

11. 業務・産業用機械製造業界の成約事例一覧

12. 業務・産業用機械製造業界のM&A案件一覧

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