2024年09月23日更新
事業承継型M&Aとは?メリットや流れと成功のポイントを解説!
事業承継型M&Aとは、会社や自領の経営権を第三者へ移転あるいは譲渡することで事業承継を行うことです。事業承継の方法にはいくつかあり、M&Aもそのひとつです。どの事業承継方法が適しているかは個々のケースによって違います。この記事では、M&Aと事業承継の違いや、事業承継型M&Aのメリットや必要手続きなどを解説します。
目次
1. 事業承継型M&Aとは
事業承継型M&Aとは、会社や自領の経営権を第三者へ移転あるいは譲渡することで事業承継を行うことです。
これまでは少子化などの理由により会社の後継者がおらず、廃業を選択することが少なくありませんでした。しかし、事業承継型M&Aにより後継者がいなくても会社を引き継ぐことができます。
廃業をせず、事業承継型M&Aを選択することで従業員の雇用や取引先を守ることができたり、技術やノウハウを途絶えさせずに済んだりします。さらに、買い手企業とのシナジー効果により事業の成長やコスト削減を実現することができます。
2. 事業承継とM&Aの違い
事業承継の選択肢の1つにM&Aがある
事業承継とは、事業を後継者へ他の誰かに引き継ぐことをいいます。
事業承継には、「親族内承継」、「親族外承継」、M&Aを活用する「事業承継型M&A」の3つの方法があります。
事業承継とM&Aはそれぞれ以下のような特徴があります。
事業承継 |
|
M&A |
|
かつては事業承継といえば親族への承継が一般的でしたが、近年は後継者不在に悩む経営者も多く、M&Aによる第三者への事業承継が増えてきました。
M&Aを事業承継手段として用いる場合は、株式譲渡により自社(売却側企業)の株式を売却して経営権を後継者(買収側企業)へ移転させるのが一般的です。
事業承継とは
事業承継とは、事業を誰かに引き継ぐことです。自分の行ってきた事業を誰に引き継ぐのか決めることは、経営者にとって最後の重大な仕事です。
事業承継は、人材不足に悩まされる中小企業や個人事業にとって有効な戦略で、件数も増加しています。
事業承継の種類
親族内承継 | 現経営者の子をはじめ、親族に承継 ・心情面や準備期間の確保がしやすい、相続など財産・株式の後継者移転が可能 |
従業員承継 | 親族以外の従業員に承継 ・経営能力のある人材を見極めることが可能 ・経営方針の一貫性を保つことも期待できる |
事業承継型M&A | 社外の第三者へ株式譲渡や事業譲渡により承継 ・相手先を広く探せる ・利益獲得が可能 |
構成要素
事業承継における3つの構成要素は以下の通りです。
構成要素 | 内容 |
---|---|
人(経営)の承継 | 経営者としての地位と役割 |
知的資産の承継 | 経営理念・ブランド力・ノウハウや技術・特許権・取引先等の関係・自社の従業員(人材)など |
資産の承継 | 会社の所有権(株式)・事業用不動産・運転資金など |
M&Aとは
M&Aは英語のMergers&Acquisition(合併と買収)の頭文字を取ったもので、企業の経営戦略として有効な手段です。これまでは「M&Aは大企業が行うもの」「企業の乗っ取り」というイメージも強く持たれていましたが、近年は中小企業でも広く活用されるようになり、そのイメージも変わってきています。
定義
M&Aは「企業や事業の経営権を第三者へ移転・譲渡すること」「複数の法人格をひとつにまとめること」です。狭義的には合併と買収を指しますが、広義的に資本提携や業務提携を含めることもあります。
また、買収と聞くと一方的に企業を買う「敵対的買収」をイメージするかもしれませんが、実際に行われているM&Aのほとんどは「友好的買収」です。
M&A手法の種類
株式譲渡 | 個人、または法人が有する株式を売買することで、経営権を後継者に譲渡 |
事業譲渡 | 企業の一部事業を引き継ぐ。企業の財産や権利を個別に移転する手続きです。 |
会社分割 | 企業が有する事業の一部、または全部を他の会社に承継 |
合併 | 複数の会社を1つにする組織再編行為で買収を実施 |
3. 事業承継型M&Aの最新動向
ここでは、事業承継型M&Aの最新動向を紹介します。
中小企業がM&Aに対して抱くイメージ
M&Aはマイナスイメージも未だに強く、M&Aを前向きにとらえる中小企業の経営者はあまり多くないのが現状です。日本の事業承継問題は深刻なので、M&Aの成功事例を広めて第三者への事業承継は成功の証しという意識改革を起こすことも今後は必要になると考えられます。
事業承継型M&Aの増加
中小企業庁のデータによると、近年の中小企業における事業承継ではかつて主流だった親族内承継の割合が減少し、親族外承継やM&Aによる事業承継など「脱ファミリー化」が加速しています。
その背景にあるのは、少子化などによる後継者不足です。2015年の調査では親族内承継が9割を占めていましたが、2022年までの直近5年間ではその割合が約35%にまで減少しています。
また、2022年の調査で後継者(または後継者候補)の割合で最も高かったのは「非同族」の36.1%であり、買収など「M&Aほか」が20.3%となり、調査開始以降で初めてM&Aによる事業承継の割合が2割を超えました。
参考:中小企業庁「事業承継ガイドライン(令和4年3月)」
4. 事業承継型M&Aのメリット
この章では、事業承継型M&Aのメリットを解説します。買収側と売却側、双方の立場から解説します。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
|
|
売却側のメリット
売却側の主なメリットには以下があります。
後継者問題の解決
後継者問題の解決は、中小企業で顕著です。多くの中小企業における経営者は高齢者で、後継者が見つかりにくい状態となっています。M&Aの手段で、長年育てた事業を次世代に承継できるのは、中小企業にとっては非常に大きなメリットです。
不振事業からの撤退
不振事業からの撤退は、いくつかの事業を展開する比較的規模の大きな企業に特にメリットがあります。不振事業を抱える限り、他の事業で業績をカバーし続けなくてはなりません。不振事業を買収する企業を見つけるM&Aは売却側にとってメリットです。
従業員の雇用を守る
従業員の雇用を守るメリットは、経営者としての責務を果たすことにつながります。M&Aをとおして買収される場合、ほとんどが優良な企業の傘下に入ることを意味します。
創業者が利益を得る
創業者が利益を得るメリットは、個人的なメリットです。優れたアイデアやサービスを事業化し、大手企業に売却することで大きな利益を得ます。
事業承継先の選択肢が増える
事業承継先の選択肢が増えるメリットは、後継者問題の解決策につながります。多くの資金があり、経営ノウハウもある会社へ事業を承継すると、シナジーの発揮により事業拡大の可能性もあるでしょう。
課税額を抑えられる可能性
株式譲渡を用いると、かかる税金は株式譲渡益課税だけなので、課税額を抑えられます。自社を清算すれば法人と個人に課税されるでしょう。
買収側のメリット
買収側のメリットとして考えられるのは以下の4つです。
市場シェアの拡大
市場シェアの拡大は、同業をM&Aで買収したときに顕著です。シナジー効果(相乗効果)を発揮し、市場規模を一気に拡大します。
例えば、コンビニエンスストア業界をみると、2016年にファミリーマートは業界3位でした。ところが、2016年2月にサークルKサンクスをM&Aで買収したことで、ローソンを抜き業界2位に躍り出ます。M&Aによって市場シェアを拡大した好例です。
事業の多角化
事業の多角化は、新規事業参入時に最もメリットを得られます。新規事業では、企業内にノウハウがないことがほとんどです。すでにノウハウを持つ企業を傘下に収めるM&Aが最も効果的で効率的といえます。
2005年12月に花王がカネボウを買収し、化粧品事業へ新規参入しました。
技術力の確保
技術力の確保は、事業の多角化と似た点もあります。他社の優れた技術を自社に取り込むことで、新規事業に参入したり、自社の技術力を強化したりすることが可能です。
優秀な人材の確保
優秀な人材の確保は、今の日本で最も重要なことです。人口が減少傾向の日本企業では優秀な人材の確保が大きな経営課題だからです。自社でゼロから人材育成をするにしても、数年単位の時間がかかります。
しかし、M&Aで他企業を買収すれば、その企業の優秀な社員も自社に迎えることが可能です。
5. 事業承継型M&Aのデメリット
M&Aによるメリットは大きいですが、当然デメリットもあります。M&Aを検討する際は、メリットだけでなくデメリットにも目を向け総合的に判断することが大切です。
売却側のデメリット | 買収側のデメリット |
|
|
売却側のデメリット
売却側のデメリットには主に以下があります。
想定価格以下での売却
M&Aの価格は最終的に交渉で決まります。そのため企業や事業の売却額が想定以下になるケースもあります。売却益をあてにして次の行動を計画していた場合はデメリットとなりえるので、必ずしも企業価値=M&Aの価額とはならないことを理解しておくことも必要です。
買収企業との企業文化の違い
M&Aは多くの場合、これまで面識がなかった企業同士で行います。互いの企業文化は異なるため、PMIと呼ばれる統合作業がうまくいかなければ、従業員同士がうまくいかない可能性もあります。
また、売却側企業はM&Aによって買収側の傘下となるので、売却側の従業員が新しい環境になじめずに辞めてしまうケースもでてくるかもしれません。売却側企業は自社の従業員へ丁寧に説明するとともに、PMIをしっかり行うことが重要です。
社長や経営層、上司が全く知らない人に突然変わる
事業承継目的でM&Aを行う場合、売却側の経営者は引退するケースがほとんどです。売却側企業の従業員からみれば、社長や経営層、上司が突然変わるというケースも起こり得ます。
従業員はM&Aによる不安を少なからず抱えるものです。従業員のモチベーション低下とならないよう、丁寧に引継ぎを行いフォロー体制を整えておくようにしましょう。
買収側の判断で、従業員の待遇が変わる
買収側の判断で従業員の雇用形態や待遇が変わる可能性があることです。売却側の従業員にとって、待遇がさがれば非常に大きなデメリットとなり離職にもつながりかねません。
売却側企業は交渉時に従業員の雇用条件・待遇などについて、買収側企業と十分に協議しておくことが重要です。
多くの時間・費用がかかる
M&Aでは、相手先の選定や交渉から最終契約の締結までに多くの時間がかかります。また、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼すれば、その費用も必要です。
M&Aのスケジュールを策定する際は、費用だけでなく時間も考慮することが重要です。事業承継目的でのM&Aを検討する場合は、経営者自身の引退タイミングなどを見極め、できるだけ早い段階から準備しておくようにしましょう。
経費購入の備品に関する問題
節税対策に会社の経費で買った備品(土地や車など)を、私用で使うことも少なくありません。M&Aを実施すると、そのような備品は事業承継の後に使用できないこともあるので、買取か手放すか早めに決めてください。
買収側のデメリット
買収側のデメリットには主に以下があります。
想定どおりの成果が出ない
M&Aでは買収前に想定していた成果が得られないケースもあります。そうなれば「想定していたシナジー効果が発揮されず、市場規模の拡大もできなかった」という事態が起こるかもしれません。
多額の費用をかけて企業・事業を買収しても、想定していた成果が出ないリスクがあることは買収側のデメリットといえるでしょう。
買収した企業との文化の違い
M&Aでは異なる企業が1つになるので、従業員同士が習慣や文化の違いに戸惑うことが想定されます。いずれは乗り越える必要がある課題ですが、社内で派閥ができたり出身企業同士の反発したりなどの問題につながりしかねません。
買収側企業はM&A後のPMIを丁寧に行い、スムーズな事業運営ができるよう環境を整えることが重要です。
買収前には把握していない問題が発覚
デューデリジェンスを徹底して行ったとしても、買収前には把握していなかった問題がM&A後に発覚することも起こり得ます。M&A後に簿外債務や偶発債務が発覚すれば、事業運営に支障をきたすおそれもあるのは買収側の大きなデメリットといえるでしょう。
優秀人材の流出
M&Aがきっかけで売却側の優秀な人材が流出する可能性があり、買収目的が人材確保の場合は非常に大きなデメリットとなります。キーマンとなる従業員や有資格者など、特に獲得したい人材がいる場合は売却企業と事前に対策を講じておくことも必要です。
6. 事業承継型M&Aの適正チェックポイント
この章では、事業承継型M&Aにおける適性を知るためのチェックポイントを解説します。
年間の売上
自社の売上をより増加するために、M&Aを行う買収側は多いです。買収側には売却側の売上は、大きなポイントになります。年間の売上が5億円より低いと、買収側は事業地盤が弱いとみなされるため、売却先を見つけるのは困難となるでしょう。
営業利益
営業利益が出ていない売却側は、買収先を見つけるのが簡単ではありません。買収側が買収後に資金を供給するケースでは、買収側の事業悪化につながることがあり、倒産となることもあります。
M&Aの経験がある会社は、無理をしてまで赤字の会社を買収するリスクは取らないでしょう。自社が赤字の場合は、「資金を投入することで利益体質にできる」と買収側に思わせる経営の問題点、改善するべき要素などの材料をそろえてください。
従業員数
従業員数で、売却側の価値を表示することも可能です。従業員数の多い会社は、健全な運営体制である可能性を示せるからです。
大きな利益をあげていても従業員が少ない会社の場合、買収側はM&A成立後に売却側の従業員が離職する可能性をリスクと考えます。買収側は従業員を資産の一部として考えることも知っておきましょう。
組織の性質
社長や経営者一族が経営を行う会社は、トップの指示により会社が動くことがほとんどです。買収側は、このような会社を健全な経営ができるとみなさないので、買収対象となることは少ないです。
買収側は売却側の従業員も大切な資産として考えます。トップは重要な意思決定だけを行い、事業を回すのは従業員という会社は買収される確率が高いです。
会社の持つブランド・技術
買収側は、売却側の高い技術力は買収側の事業拡大へつながり、売却側のブランド力は買収側に顧客が付きやすいと考えます。
技術やブランド力などの無形資産は、他社との比較や経営指標上、優位なことで価値が認められるため、定量的な証拠を示す必要があります。
取引先・顧客
買収側と被らない取引先が多いほど、売却側の評価は高くなりがちです。ただし、取引先が多いことにプラスして、各取引先と良い関係があることも買収側へアピールしましょう。
商品やサービスの価値が評価され取引先が価格を決定する力を握っていなければ、高く評価されます。
7. 事業承継型M&Aの成功ポイント
事業承継を効果的に行うポイントを解説します。
タイミング
事業の承継には時間がかかります。経営者が承継を決めてから早くて5年、長くて10年くらいかかるでしょう。引退直前になって考えるのではなく、早い段階から後継者の方針を固めることが重要です。
1つには年齢が挙げられます。経営者個人が何歳まで指揮をするのか、何歳で引退をするのかなどから逆算し、遅くとも10年前には準備を始めましょう。
もう1つは経営状態です。後継者を探すタイミングとして、「営業利益が何%を超えたら」「経常利益が何%を超えたら」「売り上げが何%を超えたら」といった経営指標を定めるのがよいでしょう。事業承継を行って次の事業を始めることも考えられます。
企業価値向上
事業承継型M&Aに限りませんが、買収側は売却側の企業価値を見定めます。売却側がM&Aをうまく進めるには、企業に魅力が必要です。それは、企業価値向上にほかなりません。
営業力でも研究開発力でも、自社の強みを明確にして、しっかりと企業価値を向上することが事業承継型M&Aをスムーズに進めることにつながります。
株主からの理解
事業承継型M&Aを検討していても、株主の理解を得ていなければ反対されて、事業承継型M&Aが不成立となることもあるので株主の理解を得ましょう。
情報漏えいのリスクを減らすために、事業承継型M&Aは株主や役員などのみに伝えることが大切です。従業員に伝わってしまうと、情報漏えいのリスクが高まり、M&Aがうまくいかなくなることもあります。
公的支援の活用
事業承継を支援する中小企業庁ではどのような公的支援が行われているのでしょうか。ここで詳しく紹介します。
事業承継ガイドラインの改訂
2022年3月、5年ぶりに「事業承継ガイドライン」が改訂されました。中小企業は後継者不在率が高く、経営者の高齢化も進んでいます。
円滑な事業承継によって会社を引き継ぐことによる事業の活性化が求められますが、長期化しているコロナの影響もあり、事業承継ができずに廃業を選択するケースも少なくありません。
改訂版「事業承継ガイドライン」は、事業承継に関する課題や、円滑な事業承継のために必要な取り組み、活用すべきツールや注意すべきポイントといった、事業承継の取り組みが円滑に行えるようまとめられています。
参照:中小企業庁「事業承継ガイドライン(令和4年3月)」
中小M&Aハンドブックの策定
「中小M&Aハンドブック」は、2020年に中小企業庁が後継者不在の中小企業向けに中小M&Aのポイントを解説した冊子です。
2020年3月に同庁が策定した「中小M&Aガイドライン」第1章の内容がイラストやマンガを用いてわかりやすく解説されています。なお、本冊子は電子版のみとなっており、中小企業の㏋からダウンロードすることが可能です。
参考:経済産業省「中小M&Aハンドブックを策定しました」
中小M&A推進計画の策定
2021年4月、中小企業庁は「中小M&A推進計画」を作成しました。推進計画では経営者の高齢化による後継者不在や、新型コロナウイルスの影響による休廃業を防ぐため、中小企業の経営資源を将来につないでいくことを目的としています。
M&Aは、事業承継を含めた経営戦略実現のための手段の1つです。「中小M&A推進計画」は、官民が今後5年間に実施すべき取り組みとしてまとめられています。
参考:中小企業庁「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会 取りまとめ(2021年)」
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継などのM&Aを契機とした、新しい取り組み、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引き継ぎを行う中小企業者を支援する制度として「事業承継・引継ぎ補助金」があります。取り組みに要する経費の一部を補助するとともに、経済の活性化を図るのが目的です。
補助金の申請類型は3種類あり、事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)、事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)です。補助金や類型ごとに申請条件や、補助上限額などは異なるため、確認をして進めましょう。
参考:令和4年度 当初予算 事業承継・引継ぎ補助金
事業承継税制
事業承継税制は、中小企業の前経営者から株式・資産などを後継者が贈与、相続や遺贈により取得した際、一定の要件を満たす場合に贈与税・相続税が猶予される制度です。
平成30年度の税制改正では、10年間の措置として納税猶予の対象となる非上場株式などの制限の撤廃や、納税猶予割合の引き上げなど、特例措置が新たに設定されました。
参考:中小企業庁「事業承継税制(一般措置)の前提となる認定」
M&Aの専門家への相談・依頼
売却側よりも、買収側のほうがM&Aの経験が多いケースがほとんどです。売却側が条件交渉や手続きなどを円滑に行うためには、M&Aに精通した専門家に依頼することをおすすめします。
事業承継型M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所には、M&Aに精通したM&Aアドバイザーが在籍しており、親身になって案件をフルサポートします。
M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けていますので、M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
8. 事業承継型M&Aの流れ
ここでは、事業承継型M&Aの流れを解説します。
M&Aの目的や方向性を定める
まずは、M&Aの目的や方向性を定めることが重要です。ここが定まっていないと重要な判断ができず、条件の譲歩もなかなか容認することが難しくなります。M&Aがスムーズに行えなくなったり、M&Aの相手先が有利になる場合もあります。
M&Aの戦略を決めるには専門的な知識が必要になることもあります。M&A専門家と相談しながら現実的なM&A戦略を定めましょう。
M&A仲介会社など専門家に相談
M&A仲介会社などM&Aアドバイザーに相談します。選定基準はさまざまですが、実績や経験、アドバイザーの人柄で判断することになるでしょう。長い付き合いになるので、付き合いやすい人柄は重要な選択基準です。
事業調査
M&A仲介会社が譲渡先候補企業をリストアップし、そこから絞り込んでいきます。最初のリストはロングリストと呼ばれ、十数社~数十社に及ぶ譲渡先候補があります。そこから譲渡先候補を数社まで絞り込んだものをショートリストといいます。
この手順の中で「ノンネームシート」という匿名状態の企業概要書を譲渡先候補に提示します。
ノンネームシート作成のために、売却側はコンサルタントやM&Aアドバイザーに事業調査をしてもらいます。
適切な買収先を見つけるためにも、必要かつ重要な手順です。
譲渡先決定・トップ面談
事業譲渡M&Aでは、コンサルタントやM&Aアドバイザーから候補者を知らされます。有望な候補者が見つかれば、トップ面談を行い譲渡先として決定します。
譲渡側・買収側それぞれの経営トップによる面談を行いますが、条件交渉自体はM&A仲介会社が代行します。トップ面談では条件交渉はしません。トップ面談では、経営理念、譲渡・買収を決断した経緯、M&A後の方針などを話し合うと同時に相手の人物像も見極めます。
トップ面談ではお互いの信頼関係を築き理解を深めます。
基本合意書締結
トップ面談の後、買収側と売却側の合意が得られれば「基本合意書」を締結します。基本合意書では、M&Aスキームの確認や取引価格、デューデリジェンスの協力、独占交渉権などを記載します。
基本合意書に記載されている内容のほとんどは法的拘束力はありませんが、締結によって心理的拘束性は機能するといえます。
デューデリジェンス
買収側の手順ですが、デューデリジェンスで財務や法務の調査を実施します。買収側にとって隠れたリスクがないか、きちんと調査をします。後々のもめごとにならないためにも、売却側は正確な情報を提供しましょう。
最終合意契約書
デューデリジェンスを経て、買収側と売却側との最終合意が得られれば「最終合意契約書」を締結します。M&Aにおける条件や期日を契約します。
クロージング
クロージングとは最終契約書の内容を履行します。クロージングが実行され、手続き上のM&Aフローは完了です。
一般的には契約日からクロージングまでは一定期間を設けますが、契約日までにクロージングに必要な手続きを終えているときや契約日後に必要な手続きを正しく終わらせる前提のときは、契約日と同時にクロージングを行うことも可能です。
経営統合(PMI)
買収側のM&Aは、経営統合(PMI)作業こそが、本番といえるでしょう。PMIに関する検討は、M&Aの準備段階からスタートさせ、デューデリジェンスと並行して計画策定を始めます。
クロージングまでに売り手企業の短期的見直しを遂行し、中長期的な統合計画を策定、経営統合へと進めます。一般的に、100日プランともいわれ、100日をかけ中期経営計画を策定します。
9. 事業承継型M&Aの成功事例
早期リタイアのため事業承継型M&A
譲渡企業
業種:介護事業
売上:1億円
社長の年齢:50代
譲受企業
業種:介護事業
売上:20億円
M&Aの目的・背景
譲渡側は早期リタイアを考え、譲受側は事業拡大のためM&Aを行いました。
事業の選択と集中のため事業承継型M&A
譲渡企業
業種:旅館業
売上:50億円以上
社長の年齢:非開示
譲受企業
業種:サービス業
売上:約200億円
M&Aの目的・背景
譲渡側は本業の不動産業への経営資源集中のため、譲受側は新規事業への参入のためM&Aを行いました。
後継者不在のため事業承継型M&A
譲渡企業
業種:介護事業
売上:約3億円
社長の年齢:60代
譲受企業
業種:介護事業等
売上:約400億円
M&Aの目的・背景
譲渡側は心臓の病気やガンから完治したが後継者が不在という将来的な不安から、譲受側は介護事業の成長戦略のためM&Aを行いました。
後継者不在のため事業承継型M&A
譲渡企業
業種:印刷業
売上:3億円
社長の年齢:70代
譲受企業
業種:印刷業
売上:3億円
M&Aの目的・背景
譲渡側は10年前から事業承継を考えていたが後継者となる人材がおらず、譲受側は取引先の獲得のためM&Aを行いました。
後継者不在のため事業承継型M&A
譲渡企業
業種:不動産管理業
売上:5億円
社長の年齢:50代
譲受企業
業種:不動産業
売上:150億円
M&Aの目的・背景
譲渡側は後継者不在のため、譲受側はエリア拡大のためM&Aを行いました。
10. 日本における事業承継問題の現状
日本は企業の9割を中小企業が占めており、雇用や地域経済への影響を考えると事業承継を行うことが非常に重要だとわかります。ここでは、日本における事業承継問題の現状をみていきましょう。
後継者の不在状況
帝国データバンクの「全国企業後継者不在率動向調査(2022年)」によると、同年の後継者不在率(全国・全業種約27万社を対象)は57.2%で調査開始以降では初の60%割れとなりました。
その背景としては、事業承継相談窓口の設置などでサポート体制が整ったことや、第三者へのM&Aによる事業承継、ファンドを経由した経営再建併用の事業承継などが広く認知されつつあることが考えられます。
しかし、2022年の後継者不在率は前年の61.5%から4%程度低下したものの、依然として後継者不在に悩む企業が多いことがうかがえ、根本的な解決には至っていないのが現状といえるでしょう。
参考:株式会社帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」
経営者の高齢化
中小企業庁 「中小企業白書 第2章 新たな担い手の創出」
出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap2_web.pdf
日本の高齢化は加速が進んでおり、それに伴い企業経営者の全国平均年齢も上昇しています。中小企業庁のデータによれば、1990年の経営者の平均年齢は54歳でしたが、それ以降は上昇し続け2020年には60歳を超えました。
経営者の高齢化は進んでいますが、その割合をみると直近2年間では低下しており、団塊世代の経営者が引退時期に差し掛かっていることを踏まえると事業承継が一定程度進んでいると考えられます。
参考:中小企業庁「 2023年版 中小企業白書・小規模企業白書」 概要
中小企業庁「中小企業白書」第2章~新たな担い手の創出~
中小企業庁「 事業承継ガイドライン(第3版)」
11. 事業承継の種類とメリット・デメリット
事業承継の方法は大きく3種類にわけられ、それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。
親族内承継
親族内承継とは経営者の親族に企業を引き継ぐことで、後継者となるのは経営者の子や親族などです。中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版・2022年4月改訂) 」によれば、2015年に同庁が行った調査では中小企業の9割以上が親族内承継を選択していました。
しかし、直近5年間においては親族内承継は大きく減少し全体の約35%にとどまっています。その代わりに増加しているのが親族外承継であり、全体の65%以上という結果になりました。
参考:中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版・2022年4月改訂) 」
メリット
親族から後継者を選ぶので、早いうちから経営者としての教育を施すことが可能です。承継の方法も「相続」「贈与」「売買」「株式譲渡」といったさまざまな手段があります。取引先や従業員から理解を得やすいこともメリットです。
デメリット
後継者と考えていた親族が、企業の承継に前向きでない場合があります。親族内で後継者を探すため、経営者としての能力や資質が十分に備わっていない可能性もあるでしょう。近い関係だからこそお互いの意見が一致せず、事業承継がスムーズに進まないこともあります。
親族外承継
親族以外の人物に企業を委ねることを、親族外承継と呼びます。一般的には、自社の従業員から選出することが多いです。
「親族以外が経営を承継するため事業関係者に理解してもらう」「自社株の承継をどのようにするか」という点のほか、後継者に株式を買い取る資金力があるかという点も重要なポイントとなります。なお、後々親族に事業を継がせる考えがある場合は、自社株は親族で保有するケースも多いです。
メリット
後継者を選ぶ幅が広がることが最大のメリットです。実施件数も増加傾向にあり、社内外の優秀な人物に事業を承継できれば、さらに企業が成長する可能性もあります。
デメリット
社内に後継者にふさわしい人物が存在するとは限らないことがデメリットです。資質はあっても事業を引き継ぐ意思がない場合もあります。
また、株式を取得するために資金を後継者個人が用意しなければなりませんが、十分な資金を持っているケースは少ないため金融機関などから融資が必要になることも多いです。株式取得にはまとまった金額が必要となるため、後継者候補が資金調達できるかがポイントとなります。
事業承継型M&A(M&Aによる第三者への承継)
事業承継型M&Aは、M&Aを行って自社の経営権を第三者へ承継することをいいます。創業者として作り上げてきた事業を相手としてふさわしいと思える第三者に譲ることで、次世代へ事業を引き継ぎさらなる発展を目指せる有効な方法です。
近年は後継者不在に悩む中小企業割合が高くなっており、国は事業承継税制を策定しM&Aによる事業承継を支援しています。
2023年3月、日本政策金融公庫総合研究所が公表した調査結果(事前調査1万7,252件、うち有効回答4,465件)によれば、後継者が決まっていると回答した中小企業は全体のわずか1割程度でした。
また、廃業を予定していると回答した企業が57.4%となっており、国内企業の9割以上を占める中小企業の役割を考えると、事業承継問題の解決が喫緊の課題であることがわかります。
中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版・2022年4月改訂) 」ではM&Aによる事業承継割合は増加傾向にあるといえます。しかし、後継者問題の解決には至っていないのが現状です。
参考:日本政策金融公庫「中小企業のうち後継者が決定している企業は10.5%、廃業を予定している企業は57.4% ~中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)結果から~」
参考:中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版・2022年4月改訂) 」
メリット
M&Aを活用することで、経営者個人の人脈に依存することなく、後継者の選択肢を広げることが可能です。特に大手企業との買収案件で合意が得られれば、売却益の大幅な増加が期待できる点も、M&Aの大きなメリットの一つです。
特に中小企業では、後継者が見つからないことが大きな問題で、幅広く後継者を探せるM&Aは経営者にとって魅力的な事業承継の手段といえます。事業承継のM&A件数は増加しており、少子高齢化で後継者確保が困難な日本では有効な手段です。
デメリット
希望する買手がみつからない、別会社と一緒になることで経営方針や労働条件などに影響が出るなどのデメリットがあります。買手による雇用や労働条件の変更で、従業員が離職する可能性もあります。
異なる企業文化の統合は簡単ではないため、融合には時間がかかることを踏まえて慎重に交渉を進めなければなりません。譲渡してからの統合作業(PMI)も非常に大切です。
12. 事業承継問題のその他の解決策
事業承継型M&A以外でも後継者問題を解決することは可能です。本記事の趣旨から若干外れますが、2つの後継者対策を紹介します。
IPO
IPOとは「Initial Public Offering」の略で株式公開を表します。事業承継目的でIPOを行う場合は、自社を上場させなければならないため、難易度の高い方法です。
帝国データバンクの調査によれば2022年に行われたIPO件数は91社であり、リーマン・ショック以降では最多となった2021年の125社から大きく減少しました。
要因として考えられるのはウクライナ情勢や円安進行などの世界情勢です。IPOは自社株の市場価値が高いときは有効な手段となり得ますが、株式を購入する個人・団体が不可欠なので事業承継が難航する可能性は高いと考えられます。
参考:株式会社帝国データバンク「2022年のIPO動向」
廃業
承継先がまったくみつからない場合、残念ながら廃業も選択肢です。経営者の立場からはつらい選択ですが、これ以上の成長や発展が見込めない企業は早期に廃業することで損害を最小限に抑えられます。
どのような分野でも興隆があるため、時代の流れで廃業を選択する場合もあるでしょう。
13. 事業承継型M&Aのまとめ
国内の中小企業における後継者不在率は依然として高く、少子化の影響もあり事業承継問題に悩む企業は急増しています。後継者候補がいないという理由で廃業を考えているのであれば、事業承継型M&Aも選択肢のひとつです。
近年はM&Aに対するマイナスイメージも薄れてきており、自社のさらなる発展や成長も目指せるという理由から事業承継型M&Aを選択するケースも増えてきています。
満足度の高い事業承継型M&Aを実現するためには、計画的に進めていくことが重要です。事業承継型M&Aをお考えの場合で何からはじめればよいか迷う場合は、早期段階で専門家へ相談してみることをおすすめします。
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。