2022年06月06日更新
M&Aを失敗する理由・事例25選!失敗しないための対策も解説【海外・日本企業】
海外ではシェアの拡大など大規模なM&Aが行われています。M&Aは成功もあれば失敗もあります。日本国内外、規模にかかわらず失敗は多く存在するでしょう。今回はそのようなM&Aによる失敗とはなにか、失敗の事例を踏まえて解説します。
1. M&Aにおける失敗とは
企業のシェアを拡大し、売り上げや利益の増大を目的とした大規模なM&Aは海外ではよくあるケースです。
現在、海外だけではなく、日本の大企業でも大規模なM&Aや中小企業のような問題を解決するための事業譲渡、個人事業のような小規模M&Aなど多くのM&A取引が行われています。
このM&Aとは日本でも海外でも、新規事業の参入によるノウハウの獲得やコストの削減、既存事業の強化を目的として行われるものですが、その目的を達成できれば成功、できなければ失敗です。
多くのM&Aの失敗要因は、以下の4つに集約されます。
- 投資対効果が見合わない
- 損害が発生する
- 破産する場合もある
- のれん代の減損損失が生じる
順番にM&Aの失敗要因を見ていきましょう。
①投資対効果が見合わない
投資対効果が見合わないとは、投資額に比して得られたリターンが小さいことを指します。
不動産の購入などと同様に、競争相手がいる場合やどうしてもその企業が買収したい場合に価格が跳ね上がることがあるでしょう。
このような状況のときに勢いで買収先企業を決めてしまうと譲受をされてから、事業がうまくいっていても投資対効果がなかなか得られず失敗に終わってしまいます。
②損害が発生する
買収時の評価額の査定が甘かったことが要因となり、買収した会社がのれんの減損などで巨額の損失を計上することがあります。債務調査が甘く、事業譲渡を受けたタイミングで債務を引き継いでしまう事例もあります。
③破産する場合もある
会社を買収する場合に専門家に財務やコンプライアンスの状況を調査してもらうのですが、その手続きを怠り発生するM&Aの失敗事例です。
このような失敗事例の結果としては、買収した企業の不正や不良資産に気づけず、最悪の状況では破産まで追い込まれることがあります。M&Aは、ときとして一つの企業を破産させてしまうほど効力があるものです。
④のれん代の減損損失が生じる
会社を買収する際の買収価格が適切でなかった場合に、発生しうるM&Aの失敗事例です。
まず、M&Aで会社を買った後、貸借対照表の資産の部に、買収価格を記載する必要があります。この買収価格には、買収価格と買った会社の純資産額の差額、いわゆる「のれん代」が含まれます。
IFRS会計基準では、「のれん代」は、将来にわたる企業価値の減少が認められた際に、一括償却です。
そのため、当初の想定より事業が落ち込み、買収した会社の企業価値が減少したと監査法人から指摘されれば、多額の減損を計上する必要が生じます。
M&Aを失敗させないためには?
M&Aを成功させたいのであれば、M&Aの専門家にアドバイスをしてもらうことが必須です。M&Aを実施するときには、法務・税務・会計とさまざまな専門知識が必要となります。
「誰に相談するべきなのかわからない」とお悩みでしたら、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所であれば、M&Aに詳しいM&Aアドバイザーが、M&A案件をフルサポートいたします。
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2. M&Aの失敗確率
M&Aはメリットが多く、会社の規模も拡大し成功できると考える方も多いですが、M&A市場では成功事例の方が話題になり、ニュースを埋めてしまうため実際の失敗事例を語る方は少ないです。
2018年8月の日本経済新聞(電子版)によると、日本企業による海外企業買収の成功率は1~2割となっており、グローバル化など海外企業買収での失敗事例が多いようです。
このような失敗事例にはいくつかの共通する要因が含まれており、その要因を理解してM&Aを行った企業は成功を収めています。
M&Aが失敗する要因は細かなところの配慮が足りていなかったり、トラブル対策ができていなかったりすることが要因として挙げられ、さまざまな理由があります。
もちろん予想だにしないトラブルなどが起こりうるのがビジネスの世界なので、仕方のない状況に陥ることもありますが、失敗の要因を理解していればそれを未然に防ぐことも可能です。
3. 買収側のM&Aの失敗要因
ここではM&Aの失敗要因を解説しますが、まず「買収側」の失敗する要因と対策を解説します。
M&Aにおいて、買収する側は物を買うのと同じであり、購入後はその企業とビジネスをともにしていくことを考えると失敗はしたくないものです。
このM&Aの失敗要因をしっかりと理解してM&Aにて買収を考える方は慎重に行うようにしましょう。買収側のM&Aの失敗要因は以下のようなことが考えられます。
- ゴールが不明確
- 買収企業の選択ミス
- FAや仲介のいいなり
- デューデリジェンスの不足
- 根拠のない自信
- 根拠のない価格設定
- 責任の所在が不明確
- 従業員の離脱
- 簿外債務の見落とし
- 買収対象の業績悪化
- 買収後の放置
詳しく確認しましょう。
①ゴールが不明確
この失敗の要因として考えられるのは、「M&Aありきの経営戦略」となっていることです。
M&Aとはあくまでも成功や目的を達成するための経営戦略の手段です。しかし、M&Aをすることを目的化してしまう企業が多く、M&Aの失敗事例ではよくあります。
この場合、M&Aにて企業買収することがゴールになってしまい、M&Aにて統合・買収をすれば事業がうまくいくと考えてしまっています。ですからM&A後のアフターケアや統合後の企業の動きが考えられておらず失敗してしまうのです。
②買収企業の選択ミス
基本的にM&Aを検討した場合は、M&A戦略を立案してから行っていきます。
M&Aを行う上で、この戦略の立案は一番重要なことで一番悩ましいものでありますが、このプロセスをおろそかにすると失敗の要因となります。
M&A仲介会社やアドバイザーから買収企業リストなどで企業紹介を受けるのですが、重要なのは、先に立てたM&A戦略を細かく決めておかないと買収企業の選択を間違う点です。
買収企業の選択の失敗は、M&Aの最初の段階では失敗したことに気づきにくく、合併・買収後にリスクに気づくことがありますが、そのときにはもう手遅れなパターンが多いです。
このようなことがないように、M&Aの事前準備として買収企業候補の細かな設定と重要視するポイントを理解しておきましょう。
③FAや仲介のいいなり
M&Aにて買収を行うときの失敗要因としては、買収企業の選択をミスすることと関連することですが、ファイナンシャルアドバイザー(FA)やM&A仲介のいいなりとなり、M&Aを進める場合も失敗することです。
このような失敗事例は、ファイナンシャルアドバイザーやM&A仲介が持ち込んできた案件に、いわれるがままに買収してしまうことで生じます。
失敗する理由は、M&A仲介は買収側の企業の本質的な事業の強みや重要視している部分を理解せずに案件を持ち出してくることがあるからです。
信頼できないファイナンシャルアドバイザーやM&A仲介に依頼しなければいいのですが、新規事業への参加などの場合、どうしても異業種になるのでそちらの事業に詳しいアドバイザーやM&A仲介を選んでしまうことも少なくありません。
このようなことをなくすためにも、事前相談やM&A戦略を立案する場合には、細かなところまで打ち合わせや相談をしておいたほうがよいでしょう。
④デューデリジェンスの不足
M&Aのデューデリジェンス(DD)とは専門家に売り手企業の財務状況やコンプライアンスの状況を調査してもらうことをいいますが、このデューデリジェンス(DD)不足はトラブルを生むことになります。
デューデリジェンス(DD)の実施をした際には少なからず何らかの知り得なかった事象が発覚します。
その際に細かなことだと見落としてしまったり、デューデリジェンス(DD)自体を高額だからと自社内部のスタッフで行ったりすることがありますが、これはM&Aに失敗する典型的な要因です。
デューデリジェンス(DD)費用は安いものではありませんが、それを行わないでいると後々都合の悪い事実が発覚しても対処しきれない場合があります。
このような失敗がないように、M&Aにおいて買収する側は調査に時間とコストをしっかりかける必要があります。
⑤根拠のない自信
M&Aでは証券会社からの紹介案件だと失敗するケースが多く、付き合いのある取引先や顧客とのM&Aが成功すると勘違いしてしまうことによる失敗の要因も見られます。
この失敗の原因となるのが日本のM&Aではよくある「情」によるもので、M&Aはあくまでもビジネス上の取引であり、企業の将来を決めるものなので、情が入ることによりリスクを理解せず失敗してしまうのです。
「数十年の付き合いだから」「優良顧客だから」などの根拠のない自信ではなく、事業を行うかどうかは明確な根拠を基に推論しないとM&Aは失敗してしまいます。
なぜならM&Aは失敗する確率の方が高く、リスクを回避しないと事業そのものがなくなってしまう取引だからです。
⑥根拠のない価格設定
オーナー系企業にありがちな失敗事例ですが、企業の評価ロジックを熟知しないまま、他社の買収事例から「ここならこの金額で買える」など根拠のない価格目線が買収の際の金額交渉で足かせとなるパターンです。
特にこのようなパターンで多いのが、価格交渉より前にデューデリジェンス(DD)などのプロセスをしてしまい、その費用がもったいなく感じて、少し高値で交渉されても応じてしまうパターンです。
M&Aでの価格の算定や評価はファイナンシャルアドバイザー(FA)がしっかりと熟知しているので、デューデリジェンス(DD)の結果も踏まえて考えられるように、専門会社に依頼し根拠に基づいた金額交渉をしましょう。
⑦責任の所在が不明確
M&Aにて買収・合併をした場合、当然買収側の企業の代表者がトップにたちます。
しかしこの状況になると形だけの代表者となるケースが多く、会社の責任を一身に背負う存在がいなくなるリスクがあります。
この要因として考えられるのは、M&A後、実務上は別の会社のままで各事業が前の事業を行い続ける場合が多く、会社が重大なミスを犯してしまっても責任の所在が不明確となることです。
このようなことから、M&Aを実施するときは、事業ごとに責任の所在がどこにあるのかを明確にする必要があります。
⑧従業員の離脱
この要因は失敗事例として表に出てこない場合が多いですが、この要因でのM&A失敗事例は日本のみならず海外でも多いケースです。
企業統合後に企業文化の違いから、買収企業の優秀な人材が離職してしまうことは多々あるでしょう。これにより予想していたシナジー効果が得られないと、M&Aの実施自体が失敗と評価されてしまいます。
実際、M&Aにて買収を行う際に「買ってみないとわからない」とよくいわれますが、この要因に顕著に現れています。
この場合は、最終契約の前に統合後のプロセスをしっかりと組み立てることや、買収した会社側が強くなってしまうことを防ぐために、適切な権限委譲を行うことが必要です。
⑨簿外債務の見落とし
契約は、それまでに行ったM&Aプロセスを総まとめにするものであり、デューデリジェンス(DD)や専門家の調査で発覚した事象も含めて契約をしていくことになります。
このときに、デューデリジェンス(DD)で簿外債務が示唆されていなかったり、示唆されているのにもかかわらず簿外債務がないことを表明保証に加えなかったりすることなどを、契約でカバーすることが必要です。簿外債務が顕在化したときに売り手企業に請求できなくなってしまい、買い手企業が負担することになるからです。
ポイントとしては契約条件交渉などの際はM&Aに関して専門的な人と相談し、細かな部分もしっかりと打ち合わせして契約を進めていくことが大切です。
⑩買収対象の業績悪化
売り手企業は買い手企業に対してあえて対象会社が経営悪化している状況を伝える義務はありません。もちろん虚偽の情報を与えるのは違法になりますが、基本的な経営状態以外にわざわざ悪化している状況を伝える必要はありません。
M&Aでは業績状況を把握していないと、統合後に業績が悪化している事象が発覚し、結果として事業を拡大するなどの効果が得られなくなってしまい失敗になってしまいます。
売り手企業が虚偽の事実を伝えることはルール違反ですが、周知である市場動向などを自分から教える義務はありません。
デューデリジェンス(DD)はもちろん、市場動向なども考慮しつつ買収を進めるのが重要です
⑪買収後の放置
海外ではこのケースが多く、経営陣に買収後も引き継ぎ経営を任せてしまうものの、経営陣がインセンティブなどを失っており、企業経営が破綻してしまう可能性があります。ですから、しっかりとPMIを実施したり、経営戦略を見直したりすることが大切です。
以下の記事では、M&Aの買い手が持つべき心構えを紹介しているので、買収を検討している方は併せてご確認ください。
4. 売却側のM&Aの失敗要因
M&Aでは売却側は事業や会社を譲渡することが目的となっていますが、買い手企業がいれば売却がうまくいくとは限りません。
買い手企業がいてもさまざまなプロセスのなかで、交渉が破談してしまったり、後々トラブルとなる要因を対処したりしておかないと責任問題にもなりかねませんので、M&Aにて売却側の失敗する要因もしっかり理解しましょう。
売却側のM&Aの失敗要因は以下のようなことが考えられます。
- 買収側のいいなり
- 情報漏えいによる取引停止
- 株券・株主名簿の未整備
- 議事録の書類不足
- 合理性がない条件変更
- 簿外債務の有無
- 不誠実な対応
- M&A手続き中の業績悪化
- 株主と役員の意思が統一しない
順番に失敗の要因を確認しましょう。
①買収側のいいなり
M&Aを行う際に「弊社が買収すれば、シナジー効果があるため、これだけバリューアップできます。」といったように買い手企業が自信満々に乗り込んで行くこともあります。しかし、このようなM&Aですと条件の交渉が高圧的になりM&Aが成功するのは難しいです。
高圧的な態度の企業は、従業員の離反や反発などの問題が起きることが多く、よほどの場合でない限りは買い手側の条件には乗らない方がよいでしょう。
②情報漏えいによる取引停止
売り手企業で失敗してしまうことが多いパターンです。
M&Aでは、売却側の企業は情報漏えいに関しては特に厳重に管理する必要があり、M&Aの実行自体を周囲に知られない方がよいケースも多く、顧客などがいる場合は不安を抱かせることがあります。
情報漏えいが起こると、その取引自体が停止になってしまったり、最悪はその後の売却にも影響したりする場合があります。
③株券・株主名簿の未整備
株式の譲渡などをM&Aで行う場合には、売り手側の企業はしっかりと株券・株主名簿の整備をしておく必要があります。
M&Aをするのにこの株券・株主名簿が未整備の状態では、M&Aが成約して株式を譲渡するときにつまずいてしまい、取引が中断することもあります。
中小企業にありがちなケースですが、株券と株主に関する記録が全くされてなく、経営者が記憶しているだけの状態になってしまっているケースが多いです。
このようなことから、売却側は事前に調査を行い、自社の株式の実態をしっかりと残しておきましょう。
④議事録の書類不足
この議事録は買収側の企業としては売却側の企業の動向をチェックする重要な書類です。
議事録を整備していない企業は役員登記などをしっかりと行っていない場合があるので信用を大きく落とし、売却までの交渉がうまくいかず、結果として失敗になることが多いです。
そのためM&Aをするときは、株式総会議事録・取締役会議事録の2つの書類に関しては前もって整備しておき、未整備の状態で長期間放置されている場合は、司法書士など専門家に相談しましょう。
直近3期分まで整備しておけば議事録の調査で問題が生じることは、ほとんどないでしょう。
⑤合理性がない条件変更
M&Aでは買い手企業と売り手企業の希望条件が異なることが多く、売り手は可能な限りのキャッシュを獲得する必要がありますし、買い手は極力費用を抑えなければなりませんので、この状況になるのは当然です。
このような交渉を繰り返していくのですが、M&Aが成約直前になり条件の変更を申し出ると変更に向けた十分な準備期間が得られないため、M&Aは失敗となってしまします。
売り手企業でよく行ってしまう合理性のない条件変更としては、買収に興味を示している企業が他に現れたりすると譲渡価格の引き上げを希望するなどが挙げられます。
⑥簿外債務の有無
簿外債務はM&Aおいて買い手企業に深刻なリスクになり得るものなので、買い手企業は簿外債務に対して入念に調査を重ねます。
簿外債務は買い手企業の信用を失うことになりかねませんし、保証やデリバティブに関する債務なども売り手側は作らない方がいいでしょう。
悪意があってもなくても、買い手企業からすれば簿外債務には変わりありません。
⑦不誠実な対応
この失敗の要因はM&Aを行う買い手企業と売り手企業の両方にいえることです。
売り手企業に関していうと、希望条件が満たされないからといって情報提供を渋ってしまったり、直前に条件変更を申し出たりするなど、不誠実な対応がたまに見られます。
必要な情報は全て提供し、その上で条件に不満がある場合にはM&Aアドバイザーに相談するのが懸命です。
⑧M&A手続き中の業績悪化
M&Aの成約にかかる期間としては3カ月から12カ月といわれており、この期間中に業績が悪化してしまうケースも日本国内・海外ともに多く存在します。
ビジネスは季節やその年のトレンドなどにより売上高が左右するものも多く、M&A手続き期間でも、売却するものだからと気を抜いたり、売却のことばかり考えたりしてしまうのはよくありません。
したがって、経営者も本業に力を入れて取り組み、M&Aの手続きが終わるまで両立することが大切です。
⑨株主と役員の意思が統一しない
M&Aの売り手側・買い手側両社にいえることですが、特にこの失敗事例で多いのは売却側の役員との意見の不一致です。
役員と経営者の意思の不一致はM&Aを進める前に判明していれば大きな問題にはなりませんが、交渉の途中で判明してしまうことがあります。
この場合はスムーズな交渉ができなくなり、せっかく買い手候補の企業が見つかっているのにもかかわらず売却ができずに失敗してしまいます。
最悪な場合は時期を逃すことによって、企業が破綻するまで事業を続けることになりかねません。
以下の記事では、事業承継における失敗事例を解説していますので、検討している方はこちらも確認してみてください。
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5. M&Aで失敗しないための対策
M&Aが失敗する要因を、買収側、売却側に分けて見てきました。
以下では、このような失敗に陥らないために有用な、M&A成功に導く方針を6つの方針を紹介します。
①M&Aの目的に応じて戦略を策定する
そもそも、M&Aは会社の経営戦略の一つの手段であって、目的ではありません。
そのため、会社全体の方針から「なぜこのM&Aをやるのか」を導けなければ、従業員は不安に感じ、M&Aの成功確率は低下します。
経営戦略の中のM&Aの位置づけとは、例えば、「販路拡大」「関連事業分野への進出」「新規事業創出」などです。
自社がM&Aを行うことの必要性を認識している従業員が多いほど、そのM&Aの成功確率は高くなります。
②自社にふさわしい相手先企業を選ぶ
二つの会社がM&Aにより一つになる以上、二つの会社の業績の単純加算よりも高い業績を目指さなければ意味がありません。
M&Aのプロセスで複数の中から相手先企業を選ぶためには、感覚的に決めるのではなく、「なぜふさわしいか」を言語化する必要があります。
一般的には、「売却のニーズ」「シナジー効果」「財務健全性」「実現可能性」の観点から分析すると良いでしょう。
売却のニーズ
自社と親和性のある企業・事業が存在する場合、その事業を売却するニーズがあるかという観点です。
売り手企業の経営者が高齢だったり、別事業をやりたいと考えていたりして、事業承継先を探している場合には、相手の売却ニーズが高いといえます。
それ以外にも、企業グループの中で非中核の子会社や事業は売却ニーズが高いことが多いです。
シナジー効果
買い手企業と売り手企業が持つビジネス上のリソースがうまく化学反応を起こし、2社の単純合算した以上の業績を達成することを、「シナジー効果」といいます。
買い手企業の事業分野や販路、ノウハウなどを使って、売り手企業の持つ技術を伸ばしていけるかどうかが重要です。
買い手と売り手の経営戦略が合致しているかどうかの試金石になる観点です。
財務面の健全性
相手の財務面の健全性のチェックはM&Aの事前準備としては必須といって良いでしょう。
買い手企業からすると、売り手企業の財務状態が悪いならば、想定外の追加出資や負債を抱える可能性があります。逆に売り手企業からすると、買い手企業の財務状況がひっ迫しているなら売り手企業の現預金や資産が吸い上げられる危険性があります。
収益性・安全性の観点から、相手方の財務データを分析することが必要です。
M&Aの実現可能性
どんなに相手方の条件が良くても、M&Aが実現不可能であれば交渉を行う意味はありません。
実現不可能とは、「オーナー株主の判断」「買収価格目線が全く違う」の2パターンが良く挙げられます。
株主構成の中に買収に賛同しなさそうな株主がいたら事前に意向を確認したり、後述のように、買収価格目線を早めにすり合わせたりすることが必要です。
③企業価値評価を行う
M&Aの実現可能性の要素として、「買収価格目線」の観点があります。M&Aにおける買収価格目線はいわゆる「企業価値評価」によって定めることが一般的です。
実際に計算してみて、相手方と買収価格目線をすり合わせる際に参考にすると良いでしょう。
コストアプローチ
コストアプローチでは、売り手企業の貸借対照表に記載されている純資産額を企業価値と考え、売却価格の基準にします。
資産と負債のみによって企業価値が測られるので、将来期待される収益やキャッシュフローの価値が織り込まれていない計算方法です。
直感的にわかりやすいため、小規模M&Aで良く使われます。
インカムアプローチ
インカムアプローチは、ファイナンス理論をベースにした方法で、対象企業の将来のキャッシュフロー(期待収益)を現在価値に割り引き、その合計を企業価値とします。
具体的には、売り手企業の事業計画から計算されたフリーキャッシュフローを、アドバイザーが理論的に計算した割引率で割り引いて求められます。
合理的な方法である一方、相手との前提の共有が難しく、水掛け論になることも少なくありません。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、類似上場企業の株価と業績(営業利益やEBITDAなど)の倍率をベンチマークとして、対象企業の業績から想定株式価値総額を計算する方法です。
具体的には、売り手企業の業績の数値に、M&Aアドバイザーなどが算出した類似上場企業の倍率を掛け合わせて求められます。
上場を控えた会社で良く用いられる傾向にあり、非上場企業のM&Aの世界でも良く取り上げられる方法です。
④デューデリジェンスを徹底する
M&Aのプロセスの中でも、専門家の手を借りて行うデューデリジェンスも、M&Aの成功のために重要です。
将来のキャッシュアウト原因となる簿外債務や社内外トラブルの発見はもちろんのこと、それ以上に、M&Aによるシナジーおよび経営戦略の実現に関する確認事項が重要です。
デューデリジェンスの内容によって、企業価値評価に影響を及ぼす項目もあるので、注意する必要があるでしょう。
⑤経営統合(PMI)を念入りに準備する
買収成立後は、買い手企業と売り手企業のどちらも、経営統合(PMI)に取り組む必要があります。PMIでは、M&Aを手段とする経営戦略の実現のために行われる各種施策を実行しなければなりません。
具体的には、買収後の3カ月程度の期間を使って、シナジーを見込んだ中期経営計画を作成することが多いです。その他にも、社風や社内規則のすり合わせなどを行う必要もあり、極めて多忙になることが予想されます。
上場会社ではM&Aの成果が比較的早期に求められる雰囲気があるため、迅速なPMIがM&Aの成功に大きな影響を持ちます。
⑥M&Aの専門家からサポートを受ける
相手先候補の選定から、PMIに至るまでには多様な知識が必要となるため、全てを自社内で完結させるのは非常に難しく、外部の専門家に頼ることは必須といっていいでしょう。
しかし、M&Aの分野は近年高度化しており、M&Aの成功のためには気を付けるべき点が多数あるにもかかわらず、知識・経験が不足しているアドバイザーが多くいるといわれています。
M&A総合研究所は、主に中堅・中小企業を中心にM&Aのお手伝いをしている仲介会社です。経験豊富なアドバイザーが、M&Aを通じた経営戦略の実現や経営計画の実現をサポートいたします。
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