2021年10月20日更新
M&Aの譲渡価格の相場はいくら?決め方を解説!
当記事では、M&Aの相場価格を詳しく解説します。M&Aの相場価格についてしっかりと理解していないと、相場より高い金額で買収したり、相場より低い金額で売却したりするかもしれません。当記事を参考にして、M&Aの相場価格の理解を深めていきましょう。
目次
1. M&Aの相場とは
「M&A」とは、「Merger & Acquisition」の略で、「企業買収」「会社売買」「会社合併」といった意味を持ちます。企業は、このM&Aを駆使しメリットを得ることで、自社の事業・サービスをより大きくしていくのです。
実際、当記事をご覧の方の中には、企業・会社の経営権をお持ちで、これから「他社の企業買収」や「自社の事業売却」を検討している方もいるのではないでしょうか。今回は、この「M&Aの譲渡価格の相場」に関して解説します。
相場の重要性
「M&Aの相場」は、M&Aの対象となっている会社の価値を考慮に入れて算出され、「事業売却」したり「企業買収」したりする際に支払う「金額の目安」とされるものです。実際のM&Aでは、基本的に「M&A仲介業者」を介して売買交渉が行われます。
そのため、M&Aの際に実際に支払われる金額は、買い手と売り手の見積もりをすり合わせて決定されることも多いです。しかし、M&A仲介業者を利用するから「M&Aの相場価格は無知識でもいい」といったわけにもいきません。
M&Aの相場金額がどのくらいか理解していないと、相場よりも安い価格で事業売却してしまったり、反対に相場よりも高い価格で企業買収してしまったりする危険性も考えられます。M&Aを行うからには、「M&Aの相場価格」をしっかり理解しておくことが大切です。
買い手の相場
会社売買の相場価格とひとくくりにいっても、会社買収・事業買収をする「買い手側の相場価格」と、会社売却・事業売却をする「売り手側の相場価格」では、多少の相違があるものです。
まず、「買い手側の立場」で考えた場合、会社売買の相場価格は「低く見積もる」傾向にあります。M&Aの相場価格は「会社の価値を考慮に入れて算出」と説明しましたが、「会社の価値」は目に見えるものだけではありません。
そのような目に見えない価値に対して、不用意に会社の大事な資金を使うわけにはいかないでしょう。また、会社買収後は、買収した会社のオーナー・経営者となるケースが多いです。
会社のトップが代わったことで、業績が落ちたり、退職者が増えてしまったりするリスクも伴います。このようなことから、買い手の相場金額は「低め」に見積もられるものなのです。
売り手の相場
反対に、M&Aによって会社を売却したり、事業売却したりする「売り手側の相場価格」は、「買い手」が考えている金額よりも「高く見積もられる」傾向にあります。これまで一生懸命成長させた企業・会社売却で、多額の売却益を期待するからにほかなりません。
ただし、売り手側は自分たちの企業・会社・事業を過大評価しすぎる部分もあり、高い相場金額を提示してしまいがちです。あまりにも会社の価値からかけ離れた金額を提示してしまうと、会社売買・M&Aは成立しにくくなってしまいます。
そのため、事業売却・会社売却を検討している側も、「M&Aの適切な相場価格」を理解しておく必要があります。
2. M&A相場の算出方法
上記では、M&Aの相場価格を理解しておくことの重要性に関して説明しました。そこで、ここからは「M&A相場価格の算出方法」を解説します。
会社売買を検討している方は、この相場価格の算出方法をしっかり理解しましょう。ここでは「修正純資産法」「DCF法」「類似会社比準法」の3つをご紹介します。
修正純資産法
「修正純資産法」は、会社売買で使用頻度の高い相場価格の算出方法であり、中小企業M&Aの相場を算出する際に使用されることが少なくありません。
事業売却・会社売却する側の企業の「財務諸表」を参考にして、その企業の負債を、時価評価した資産から差し引いて「企業価値」を導き出す計算方法です。
修正純資産法で算出された相場価格には、会社売買の対象となる会社の「将来的な価値」が含まれていないため、この算出方法で導き出された金額では納得できない「売り手」が多い側面があります。
DCF法
大手企業によるM&Aでよく使われる計算方法が「DCF法」です。DCFとは、「Discounted Cash Flow(ディスカウント・キャッシュフロー)」の略になります。
これは、企業買収後に予想されるキャッシュフロー金額を加味して、それを現在価値に割り引いて価格を決定する方法です。修正純資産法との違いとして、「将来的に期待できる価値」も価格算出の際に加味されている点があります。
類似会社比準法
「類似会社比較準法」とは、M&Aの対象となっている会社と「同一業種・同一業界」の会社の「株価」をもとに、相場価格を見定めます。
修正純資産法とDCF法は「会社売買の対象となる会社そのもの」に焦点を置いて相場価格を計算する方法ですが、類似会社比較準法は、対象となる会社の「同一業界」に着目して相場価格を決定する方法です。
この算出方法では、M&Aの対象となる会社の価値が低くても、その業界自体の価値が高い場合には、相場金額も高くなる可能性があります。
3. M&Aの譲渡価格・金額とは
上記で、M&A・会社売買の相場価格の算出方法を説明してきました。ここからは、M&Aの「譲渡価格」に焦点を絞って解説します。
譲渡価格の適正価格
会社や事業を「譲り渡す側」と「譲り受ける側」では、譲渡価格のイメージに大きな乖離(かいり)が発生する場合があります。譲渡価格を判断する際に重要なのは、「譲渡価格は適正価格であるか」といったポイントです。
譲渡価格が適正価格になっていれば、譲渡側と譲受側の価格イメージに多少の違いがあっても、M&Aを成立させられます。
譲渡価格の算出方法
譲渡価格の適正価格は、譲渡対象の会社の「時価純資産」に「実質営業利益」を足し合わせる計算方法で算出されるケースが多くなっています。「時価純資産」とは、事業・会社の譲渡側が現時点で行っている「事業の価値」のことです。
具体的には、貸借対照表の簿価を「時価」に修正したうえで、純資産から負債を差し引いて求められます。「実質営業利益」は、M&Aの対象となる企業が「本業によって得られる利益」のことです。
基本的に「実質営業利益」は、「売上総利益-諸経費」から算出される「営業利益」から、「節税対策額」を加えたものになります。この「時価純資産+実質営業利益」によって算出される価格が、M&Aにおける「譲渡価格の適正価格」といえます。
4. M&Aの事業売買と会社売買の価格差
ここまで、ひとくくりに「M&A」と表現してきましたが、M&Aにもいくつかの種類があります。その種類は大きく分けて「事業売買」と「会社売買」があり、M&Aでは、会社そのものを売買する以外に、会社が持つ「事業」を取引するのも可能です。
ここでは、M&Aにおける「事業売買の価格」と「会社売買の価格」を解説します。
事業売買の価格
企業・会社の経営者の中には、新規事業を開始するにあたり、多くの利益を生み出しており、すでに顧客が存在している「事業」を他社から買収したい、と考えている方もいるのではないでしょうか。
また反対に、自社で成長させた「事業」を事業売却して、まとまった資金を獲得したいと考えている会社経営者の方もいるはずです。
事業売却の価格は「会社売却」よりも低い
事業売却する場合、M&A案件に該当する事業のみが売却されて資産化されます。そのため、会社のすべての資産を売却する「会社売買」と比較すると、「事業売買の価格」は低くなるのが常です。
「事業売却」の形態では、あまり高い金額で売却できないため、売却する事業を「子会社化」して、M&Aを行うケースも見られます。事業を切り出して子会社化すると、「事業売却」の形式よりも高い金額で売却が可能です。
事業売買時の税金(事業売却・事業買収ともに税金アリ)
「事業売却」をした場合には、「法人税」と「消費税」の支払いが必要です。消費税は2020(令和2)年現在「10%」、法人税は地方法人税、法人住民税、事業税、特別法人事業税を合わせて約30%程度の実効税率となっています。
例えば、事業売却が1,000万円で行われたとき、およそ320万円の税金(法人税)支払いが必要です。一方で、事業を買収した側も税金支払いが必要で、「10%」の消費税がかかるのです。
会社売買の価格
会社の一部である事業を売却するのではなく、会社全体をM&Aによって売却するケースもあります。
会社売買の価格は「事業売却」する場合より高くなる
会社売買は、事業売買と異なり、売却側の会社の資産がすべて買収側に丸ごと移動するようになります。会社売買の対象となる資産は、「株式」や会社が持つ「不動産」「工場や設備・備品」「従業員」などです。
相場価格の算出方法でも説明したとおり、会社売買・M&Aにおける売買相場は、M&Aの対象となる会社の「資産・価値」をベースに計算されます。
そのため、事業売却する場合と比べて、売却金額の相場が低くなることはありません。同業種の会社であっても、会社売買の価格は、事業売買の10倍以上になるケースもあります。
会社売買時の税金
会社売買時に発生する税金は、会社の売却側のみに発生します。会社の買収側に税金は発生しません。
売却される会社の株主が「個人」の場合は、会社株式の売買益に対して「所得税」と「住民税」が発生します。
2020年現在、所得税は「15%」、住民税は「5%」、さらに2037(令和19)年までの時限措置として復興特別所得税「0.315%」の課税です。
したがって、全部で「20.315%」の税金支払いが必要になります。仮に会社売買で1,000万円の売却益があった場合、売却側は「203万1,500円」が納付額です。
売却される会社の株主が「法人」のケースでは、「法人税」の支払いになります。会社売却益額が他の益金と合算され、上述した約30%の実効税率が課税される計算です。
5. M&Aの譲渡価格決定へのアプローチ
M&Aにおける売却金額は「企業の価値によって決まる」といった説明をしました。売却価格決定の目安となる「企業の価値」を算定する方法は、「コストアプローチ」「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」の3種類です。それぞれ説明します。
動画でも解説しておりますので、ぜひご覧ください。
コストアプローチ
M&Aにおける売却金額の算出方法の一つである「コストアプローチ」とは、企業の「純資産」の「時価評価額」などを基準として「企業価値」を算定する方法のことです。
貸借対照表における「資産」と「負債」を足し合わせて求められる「純資産」に焦点を当てたアプローチ方法になります。
メリット・デメリット
コストアプローチのメリットは、以下のとおりです。
- 純資産を反映によって評価の平等性を担保
- 計算がしやすい
貸借対照表の純資産を基準としており、算出された価値が客観性に優れています。そのため、買い手と売り手の双方が納得感を持って交渉に臨めるでしょう。
一方、コストアプローチのデメリットは、以下のとおりです。
- 将来的な収益が反映されていない
- 価格変動が考慮されない
中小企業の場合、上場企業とは違うため市場価値の算定が難しく、将来的な事業予想も立てづらいといったことがあります。
コストアプローチは、譲渡価格決定へのアプローチの3つの中で一番計算しやすい方法であり、中小企業のM&Aで最も多く用いられる手法です。
インカムアプローチ
「インカムアプローチ」は、会社・事業の「将来的に期待される利益」を、見込まれる「リスク」などを考慮した「割引率」で割り引くことで「企業価値」を算定する方法です。上記で紹介した「DCF法」は、このインカムアプローチの代表的な手法になります。
メリット・デメリット
インカムアプローチのメリットは、以下のとおりです。
- 将来の収益獲得能力も計算に反映
- 固有の性質も評価に反映
M&Aを行う時点で利益が出ていない場合でも、企業の将来性を重視され、高い評価を受ける可能性もあります。企業は通常、将来的な収益を見込んで投資を行うため、事業投資や設備投資を行う際はインカムアプローチによる評価が最も重要です。
インカムアプローチのデメリットは、以下になります。
- 客観性に欠け主観的になりやすい
- 企業が継続するのが前提であり、将来的な収益が予測できないと適用できない
評価時点から数年で消滅・倒産する見込みがある場合は、インカムアプローチによる評価はできません。
マーケットアプローチ
「マーケットアプローチ」とは、市場で成立する価格を目安として「企業価値」を算定するアプローチ方法です。マーケットアプローチは、さらに「市場株価法」と「類似会社比較法」に分けられます。
「市場株価法」とは、M&Aの対象となる会社自体の株式の市場価格や、過去の株式の取引価格を基準として、企業の価値を評価する方法です。
一方、「類似会社比較法」は、マルチプル法とも呼ばれ、M&Aの対象とされる会社と「同類・同業種」の企業の市場株価や、類似の企業買収案件で成立した価格を目安として、M&Aの売却金額を決定する方法になります。
メリット・デメリット
マーケットアプローチのメリットは、以下のとおりです。
- 株価が反映されるため客観性が高い
- 現在の市場動向が反映されたものになる
株価は、経済の景気動向や他社との競争環境などが反映されるため、フラットな視点で判断できる指標となります。
マーケットアプローチのデメリットは、以下のとおりです。
- 市場の影響により評価が変動するリスクがある
- 類似する会社がない場合は適用が難しい
類似会社比較法に関しては、類似企業の選定が重要となります。なぜなら価格の妥当性に関わるため、できるだけ対象となる類似する企業を複数選出するようにしましょう。
以下の動画でM&Aアドバイザーが計算例を用いてマルチプル法に関して解説しておりますので、ぜひご覧ください。
譲渡価格を算定する際の注意点
前述では「企業の価値」を算定する3つの計算方法を紹介してきました。しかし、要素によって計算方法が異なるため、同じ企業であるのに価格に差が出るケースも多いです。
また売り手側と買い手側は立場が異なるため、提示する価格に差が出てしまうのはよくあることです。しかし最終的な譲渡価格の決定は、売り手と買い手が交渉を行い、双方が納得し合意した価格になります。
したがって円滑なM&Aを進めるためには、「適正価格」を知っておくのが非常に重要です。中小企業のM&Aでは、時価純資産法+営業権(3年)を採用しているケースが多くあります。
6. M&Aの価格交渉方法
M&Aの取引が成立する目安金額は、これまで説明してきたようなアプローチ法・価格算出方法によって導き出されます。
ただし、最終的には、企業買収・事業買収したい「買い手」と、事業売却・会社売却をしたい「売り手」がお互いに交渉をして、納得できる金額まですり合わせなければなりません。
もしM&Aによって事業売却などを検討している場合、買い手とうまく交渉するための方法として、大きく2つの交渉方法があります。
個別交渉方式
「個別交渉方式」は、企業買収・事業買収を検討している「買い手」の候補者リストの中から、自分たちの条件に合う「買い手」を1社選び、その買い手と「M&Aの案件・条件交渉」を行う方式です。
お互いに合意が得られると、M&Aの案件が成立します。もし、選んだ1社と交渉を重ね、結果的に合意に至らなかった場合は、再び別の買い手と交渉をスタートしなければなりません。
オークション方式
もう1つのM&Aの交渉方法が、「オークション方式」です。オークション方式では、事業売却・会社売却を希望する「売り手」の情報を匿名で公開し、広く「買い手」を募ります。
そして、集まった買い手の中から、興味のある2~3社を候補先とするのです。その後、候補先とした買い手それぞれにM&Aに関する条件を提示してもらい、最終的にM&Aの取引相手を決定します。
自分の会社・事業を「できるだけ高い金額で売却したい」と考えている場合は、このオークション方式が向いているでしょう。ただし、オークション方式で決定された交渉相手とは、契約する必要があり、途中で売却をやめることはできないので注意が必要です。
7. M&Aの譲渡価格を決める要素
ここでは、M&Aの金額を決める要素に関してご紹介します。何度もいうように、M&Aの取引金額の目安は、M&Aの対象となる「会社・企業の価値」が大きなポイントです。
「会社・企業の価値」の中には、貸借対照表の数字として表れない、「目に見えない価値」があります。
取引先
M&Aの金額を決める要素として「取引先」が挙げられます。企業買収の対象先が、多くの取引相手を抱えていれば、企業買収が成立した後も「取引先を新しく見つける必要がない」といった価値があるのです。
また、企業買収する側からみると、信頼関係がすでに確立している取引先があれば、新しいビジネスチャンスを見つけられるかもしれません。そのため、「取引先」はM&Aで「会社の見えない価値」と考えられます。
顧客リスト
M&Aの金額に影響を与える要素として、「顧客リスト」があります。企業買収を検討している「買い手」は、新規事業に参入するためにM&Aを利用するケースが少なくありません。
新しく事業・ビジネスを始める際、「最初の顧客」を獲得するのは非常に難しいことです。すでに多くの「顧客リスト」を抱えている企業・会社をM&Aによって獲得できれば、「最初の顧客を獲得する」ステージをクリアできます。
このため、M&Aの金額を決定する要素として、「顧客リスト」の存在は大きな要素です。
従業員
もちろん、会社の「従業員」の存在も、M&Aの金額決定に影響を与える要素の1つです。例えば、ある会社がノウハウをまだ持っていない「新規市場」に参入する場合、知識・技術を持つ「従業員」を集めることが必要になります。
しかし、能力のある従業員を一から集めるのは時間・資金の両方が必要です。M&Aによって、すでに知識・技術をもった従業員を獲得できるポイントは、買い手にとって非常に魅力的な要素といえます。
市場シェア
企業の価値を測るうえで、M&Aの対象となる企業の「市場シェア」は、非常に重要な要素といえます。すでに大きな「市場シェア」を獲得している会社を買収できれば、M&A後も、順調にビジネスを展開していける確率が高いです。
また、一から新規市場に参入するよりも、すでに「市場シェア」を獲得している会社や事業をM&Aによって買収した方が、新規参入の成功率を高められます。
技術力
高い「技術力」、他社がまねできない「技術力」を持っている場合、M&Aの際にも売却金額は高くなります。なぜなら、「技術力」といった魅力的な価値があるからです。
同じ業績・利益を上げている会社同士でも、他社と差別化できるような「技術力」がある方が、売買金額は高くなります。
経営者のビジョンや人間性
M&Aの取引金額を決定する要素であり、会社の「見えない価値」として挙げられるものに、「経営者のビジョンや人間性」があります。これは、金額や数字としては表しにくいものです。
しかし、企業買収を考えている「買い手」の中には、経営者がその会社を「どのようなビジョンを持って成長させてきたのか」を重視している場合もあります。
また、「経営者のビジョンや人間性」をみることで、「企業風土が自社に合うかどうか」を判断できるのです。
将来的に期待される利益
買収企業は将来的に一定の利益を獲得できるといった見込みを想定してM&Aに取り組みます。そこで、買収の際は先々見込まれる利益としてのれんを換算し、算出するケースがほとんどです。
のれんは、将来の価値を反映するものです。会社売却の基礎となるため、非常に大切なものでしょう。のれんを算出する際は、過去の営業利益をもとに計算します。例えば、中小企業の場合は、過去3年間の営業利益である平均値をベースに、3~5年分ののれんを上乗せするケースが多いでしょう。
原則として、のれんを検討するのは黒字企業のみです。しかし、たとえ赤字企業の場合でも上乗せされるケースがあります。例えば、優れた技術力、強力なブランド力、希少性の高い企業であれば、今は赤字企業であってものれんとして上乗せできる可能性が高くなります。
8. M&Aの譲渡価格を高めるポイント
譲渡価格を高めるには、自社の魅力を買い手側にわかってもらえる見せ方を工夫しましょう。買い手側の需要に合った、提案書に具体的な情報をしっかりと記載する必要があります。
また、魅力ある企業であれば買い手候補先を多く募れます。そのため、オークション形式にするなどして候補者同士で競わせるのも一つの方法でしょう。複数候補先があれば、譲渡価格を引き上げられる可能性があります。
買収側は買収価格を安く抑えるべき?
買収側は、買収価格を少しでも安くするために売り手と交渉するのは可能ですが、あまりおすすめしません。
なぜなら交渉の結果、想定よりも低い金額でM&Aを成立させたとしても、買収後の事業の引き継ぎや社員のやる気を失わせてしまうケースもあるからです。したがって、買収後の事業をスムーズに進行するためにも買収価格にこだわりすぎずに行うのが良いでしょう。
9. M&Aの手数料価格の相場
M&Aを実施する際は、「M&A仲介会社」を利用するのがベストといえるでしょう。M&A仲介会社に依頼をして相談しながら進めると、会社売買に関して多くの知識がなくても、安心してM&Aが行えます。
ここで確認しておくべきなのが、M&Aの仲介会社を利用する場合、さまざまな「手数料」の支払いが必要になることです。
M&A仲介会社を利用する際に発生する手数料としては、主に「相談料」「着手金」「成功報酬」があります。それぞれの手数料の相場の目安をご紹介していくので、しっかり確認しましょう。
相談料の相場
まずは、M&A仲介会社への「相談料」の相場目安を紹介します。M&A仲介会社には、M&A案件の交渉を進める前に「事前相談」するのが可能です。
この事前相談では「どのような企業買収を検討しているのか」「どの事業を売却したいのか」といった内容の相談をM&A仲介会社と行います。
この事前相談によって、そのM&A仲介会社が「M&Aの実績をしっかり積んでいるか」「自社の企業買収案件を任せても問題ないか」「信頼できそうか」といったことを判断するのが可能です。
M&A仲介会社によってばらつきはあるものの、基本的には「相談料は無料」としているM&A仲介会社が多い傾向にあります。
着手金の相場
M&A仲介会社に依頼をして企業買収や事業売却を行う際には、「着手金」といった手数料を支払う必要があります。「着手金」とは、M&Aの仲介業務を依頼した段階で発生する手数料のことです。
M&Aを進めていく際には、初期の段階で「人件費」や「資料作成費」などの費用が発生してしまいます。そのため、M&Aの交渉などが始まる前から、着手金として手数料を回収するM&A仲介会社が多いのが実態です。
着手金の相場となる金額の目安は「100万円~500万円」程度となっています。この着手金は一度支払うと、たとえM&A取引に失敗したとしても戻ってくることはないので注意が必要です。
着手金の相場金額の目安は「100万円~500万円」ですが、昨今では「着手金を無料」にしているM&A仲介会社も存在します。
成功報酬の相場
M&Aによる企業買収や事業売却が成立した際に、M&A仲介会社に支払う手数料が「成功報酬」です。M&A仲介会社に支払う成功報酬は、基本的に「M&Aの取引金額×一定料率」で算出されます。多くのM&A仲介会社で採用されている料率は以下のとおりです。
成功報酬の目安となる料率(多くのM&A仲介会社で採用)
- M&A成立金額「5億円以下」:5%
- M&A成立金額「5億円超~10億円以下」:4%
- M&A成立金額「10億円超~50億円以下」:3%
- M&A成立金額「50億円超~100億円以下」:2%
- M&A成立金額「100億円超」:1%
成功報酬の計算方法
上記の料率を使用した場合、M&Aによる成功報酬は次のように計算できます。例えば、M&A成立金額が「5億円」だった場合、料率は「5%」なので、「5億円×5%=2,500万円」が成功報酬の金額です。
もし、M&A成立金額が「7億円」だった場合は、「最初の5億円までの金額」は5%の料率が適用され、残りの2億円には料率「4%」が適用されることになります。
すなわち、M&A成立金額が7億円の場合は、「5億円×5%+2億円×4%=3,300万円」が成功報酬です。
成功報酬の目安を確認
成功報酬は、M&Aが成立した金額によって異なります。そこで、成功報酬の相場金額の目安表を作成しましたので、以下を参考にするといいかもしれません。
M&A成立金額 | 成功報酬の相場 |
---|---|
5億円の場合 | 2,500万円 |
10億円の場合 | 4,500万円 |
50億円の場合 | 1億6,500万円 |
100億円の場合 | 2億6,500万円 |
10. M&A仲介会社に依頼するメリット
ここまで、「M&Aの売買金額の相場」や「M&A仲介業者の手数料の目安」などを解説してきました。
M&Aを行う際には、数百万円の小額取引でない限り、「M&A仲介会社」に依頼して会社売買を進めていくことがほとんどでしょう。そこで、ここではM&A仲介会社に依頼するメリットに関してご紹介します。
効率的に「売買相手」を探し出せる
M&A仲介会社を利用せず、独力で売買相手を探すことは非常に困難です。もし見つけられたとしても、「買収するに値しない会社」であったり、「相場価格とはかけ離れた金額」を提示されたりする危険性も考えられます。
M&A仲介会社に依頼をすれば、M&Aに関する幅広い知識と実績によって、自社のニーズに合った売買相手を見つけることが可能です。
適切な相場価格でM&Aを実施できる
当記事では、M&Aの相場の目安となる価格を解説してきましたが、M&Aになじみのない方にとっては、提示されている金額が「相場からかけ離れていないか」「適性価格になっているのか」を判断するのは難しいといえます。
「会社が持つ見えない価値」も考慮に入れるとなると、適切な相場価格を判断するのは困難です。M&A仲介会社に依頼をすれば、M&Aのプロが、適正な相場価格を導き出してくれます。
したがって、相場よりも安い金額で自分たちの大事な会社・事業を手放してしまったり、相場よりも高い価格で中身のない会社を買収してしまったりなどの「M&Aのリスク」を取り除けるのです。
面倒な手間を省ける
M&A案件を開始すると、売買相手探しから、売買相手との交渉、デューデリジェンス、契約書の作成、事業の譲渡など、しなければいけないことが多くあります。
これら「M&Aの手続き」を、普段の自分たちの仕事をしながら並行して進めることは非常に大変なことです。M&A仲介会社に依頼すると、M&Aに伴う面倒で手間のかかる作業から解放され、本業に集中できます。
11. M&A相談ならM&A総合研究所
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M&A総合研究所の手数料率 | |
---|---|
M&A成立金額 | 手数料率 |
5億円以下 | 5% |
5億円超~10億円以下 | 4% |
10億円超~50億円以下 | 3% |
50億円超~100億円以下 | 2% |
100億円超 | 1% |
12. M&Aの譲渡価格の相場まとめ
当記事では、「M&Aの譲渡価格の相場」を中心に、「M&Aの相場価格の算出方法」や「M&A仲介業者の手数料の目安」などを解説しました。
「新規事業でいいスタートを切るために会社売買を検討している」「事業売却をしてまとまった資金を用意したい」など、M&Aに関心がある・M&Aの実施を検討している方は、ぜひ専門家へご相談ください。
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