M&Aにおける資金調達方法とは?スキーム・銀行融資のポイント・返済期間・LBOやMBOも徹底解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aでの資金調達方法・スキームは、直接金融と間接金融の2種類に大別されます。M&Aで資金調達を行う理由まで明確にしておくことが大切です。一般的に間接金融として銀行融資を受ける場合が多いので、銀行融資のポイントや返済期間などを交えて解説します。

目次

  1. M&Aの資金調達とは
  2. M&Aにおける一般的な資金調達方法
  3. M&Aの資金調達方法としての銀行融資
  4. 日本政策金融公庫を利用したM&Aの資金調達方法
  5. M&Aの資金調達方法としてのLBO・MBOとは
  6. M&Aの資金調達に関する相談先
  7. M&Aの資金調達の方法・スキームまとめ
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1. M&Aの資金調達とは

M&Aとは、「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略称です。具体的なM&Aスキーム(手法)には、買収と合併以外にも事業譲渡会社分割株式譲渡などがあります。M&Aとは、事業・会社の売買取引および企業間の組織再編行為の総称のことです。

M&Aを実施する場合には、買収資金や税金、M&Aの仲介業者への手数料を支払う必要があり、多額の資金が必要となるため、資金調達について詳しく知っておく必要があります。
 

M&Aの際に資金調達が必要な4つの理由

M&Aの際に資金調達が必要な理由としては、主に以下の4つが挙げられます。

  • 買収資金の調達
  • 諸経費のための資金調達
  • 税金のための資金調達
  • M&Aの専門家に支払う手数料のための資金調達

買収資金の調達

会社を買収する理由は、主に事業拡大による企業価値の向上と、新規市場への参入のリスク軽減の2つです。これらを目的としたM&Aでは、スキームとして株式譲渡事業譲渡がよく用いられ、譲渡対価は現金で支払われることが一般的です。

金額については、対象企業が中小企業であれば数百万~数億円、大企業同士であれば数千億~数兆円であることもあり、手元資金で工面できない場合には、不足する分を資金調達する必要があります。

諸経費のための資金調達

M&Aを実行する際に必要となるのが、担当従業員の人件費やM&Aの実行にかかる交通費、宿泊費などの各種経費です。株主総会の開催のためには、会場の使用料なども発生します。

M&Aは中長期にわたって取り組む取引なので、諸経費の合計額が高ければそのための資金調達をしなければなりません。

税金のための資金調達

先代経営者の親族である後継者が、相続や贈与によって会社の株式を取得した場合、相続税や贈与税が課される場合があります。法人が売り手から事業譲渡された場合、その中に消費税課税資産が含まれていれば、消費税を支払わねばなりません。

株式譲渡した当事者が個人であれば所得税、法人であれば法人税が課され、事業譲渡では譲渡した法人に法人税が課されます(法人の場合、他の損益と通算して赤字であれば法人税は免除されます)。これらの納税の際、現金が足りなければ資金調達せざるを得ません。

M&Aの仲介業者に支払う手数料のための資金調達

M&Aの各プロセスでは専門的な知識や経験が必要であり、自社単独で実施するのは困難であるため、一般的にM&A仲介会社などの専門家に業務を依頼します。もちろん専門家を起用した際には、手数料が発生します。

M&Aの売り手側であれば、得られた売却対価で専門家に支払う手数料が賄えるでしょう。一方、買い手の場合は、買収対価に加えて専門家への手数料も用意しなければなりません。

専門家の手数料(成功報酬)額は、M&Aの規模に応じて高額となることがあります。手持ち資金では足りない可能性もあり、その場合には資金調達が必要となります。

料金体系については各社で異なるため、業務を依頼する前にしっかりと手数料額を確認しましょう。

2. M&Aにおける一般的な資金調達方法

M&Aの資金調達には、大別して「直接金融」と「間接金融」の2種類があり、この2種類の資金調達方法が主流となっています。その他にも資金調達の方法があり、以下では、一般的な方法を中心に資金調達について詳しく解説します。

①直接金融

直接金融とは、新株式を株主(出資者)へ割り当てる、増資を目的とした資金調達スキームです。会社としては出資を受けるので、融資のように返済義務を負いません。

この直接金融の場合、「既存株主」「少数の第三者株主」「不特定多数」の誰に新株を割当てるかで、資金調達の名称が異なります。

直接金融のメリットとしては、「返済の必要がない」「資金調達コストの削減」「信用力の向上」「高額な資金を調達できる」などが挙げられます。一方、デメリットとしては「出資者に経営への発言権が生まれる」「出資を停止される恐れがある」「調達コストがかさむ」などです。

株主割当増資

会社が新株発行によって、資金調達を行うスキームとして「株主割当」があります。株主割当は、増資を目的に新株式の割当を受ける権利を、既存株主に与えることによって行う方法のことです。株主割当は、株主の持ち株数に応じて新株式が割り当てられます。

株主は、株主割当を行った会社に対して申し込みや払い込みの義務はありません。申し込みがない場合は、権利が失権し資金調達が失敗に終わるので注意しましょう。

株主割当増資のメリットは、「自己資本の比率の拡大」「株主構成の比率が変わらない」「時価と比べて低価格で行える」などです。一方、デメリットは、「すべての株主が同じ割合で増資できるわけではない」などが挙げられます。

第三者割当増資

会社が特定の第三者に対して資金調達を行うスキームの2つ目は、「第三者割当」です。第三者割当も株主割当と同様のスキームですが、業務提携先や取引先・自社の役員・取引金融機関など、発行会社の縁故者に新株式を割り当てます

敵対的M&Aに対する防衛策の一環として行われる場合や、取引先や提携先との財務健全化、関係強化などの方法としても有効です。第三者割当増資は、M&Aスキームとしてもカテゴライズされています。

第三者割当増資のメリットとして、資本業務提携による「シナジー効果」や会計上ののれん代を抑えられる「会計の効果」などが挙げられます。

一方、デメリットは、第三者割当増資は株式数が増加する性質から、「必要買収資金の増加」「完全子会社化ができない」などのデメリットが生じます。

【関連】第三者割当増資とは?株価への影響、メリット・デメリット、手続きを解説【事例付】

公募増資

既存株主や少数の第三者に対してではなく、不特定かつ多数の投資家から出資を受けることを「公募増資」といいます。上場企業が行うのが一般的です。法律上は非上場企業でもできますが、事務処理作業が膨大になるため割に合いません。なお、公募増資時の株価は、その際の市場株価や投資家の需要を参考にして決定されます。

公募増資のメリットは、「株主層の拡大」「株式の流動性向上」「既存株主の株式の希薄化を低減」などが挙げられます。一方、デメリットとしては「配当金の支払い負担増加」「税負担の増加」などが挙げられるでしょう。

社債発行

社債を発行して投資家に売却することで資金を調達する方法を「社債発行」といいます。

株式とは違い、投資家から借入を行う形であるため、投資家に対し定期的に利息を支払い、満期時には元金を償還する仕組みとなっています。

社債発行のメリットは、発行時からコストが確定しており「資金計画が立てやすい」「調達コストは必要経費にできる」「株式発行と比較するとコストが安い」「経営権への影響がない」といったメリットが挙げられます。

一方、社債発行のデメリットは借入の「返済義務がある」「発行手数料がかかる」などが挙げられるでしょう。

 

②間接金融

間接金融とは、銀行融資など金融機関からの借入を行う資金調達スキームです。間接金融は、デットファイナンスとも呼ばれています。銀行からの借入だけでなく、日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」の融資制度も活用できます。

間接金融は主に、プロパー融資・公的融資・ビジネスローン・コマーシャルペーパーなどがあります。
 

プロパー融資 金融機関から融資を受ける方法です。信用力がないと融資は受けられません。
公的融資 政府が100%出資する日本政策金融公庫から借入をする方法です。日本政策金融公庫の特徴として、中小企業の支援を目的とする融資制度が充実しており、低金利での融資が可能です。
ビジネスローン 金融機関やノンバンクの事業資金専用のローン商品をいいます。
コマーシャルペーパー(CP) 企業が短期資金調達の目的で、公開市場で割引形式で発行する無担保の約束手形です。

間接金融のメリットは、「審査基準を満たせば事業資金を借りられる」「複雑な手続きが必要ない」「経営についてのアドバイスを銀行から受けられる」などが挙げられます。

一方、デメリットは、「利息を支払う必要がある」「資金調達コストが高くなる」などが挙げられるでしょう。金融機関などからの借入では、返済期間や金利に注意しておく必要があります。

③その他

資金調達の方法は、直接金融と間接金融の2種類に限ったものではありません。ここでは、2つを紹介します。

アセットファイナンス

アセットファイナンスは、企業が保有する資産(有形および無形)を売却し、資金調達する方法をいいます。不動産の売却・商標権の売却・ファクタリングなどがあります。
 

不動産の売却 活用されていない土地や建物などの有形資産を売却して資金調達する方法です。
商標権の売却 商標権などの無形資産を売却し、資金調達する方法をいいます。
ファクタリング 売掛債権を活用 売掛債権を売却し、売掛金の回収予定日よりも前に現金化する方法です。



アセットファイナンスのメリットには、「迅速に資金調達ができる」「保有資産を貸借対照表から切り離せる」が挙げられます。買い手が見つかれば、保有資産の信用力をもとに、すぐに相応の資金が調達可能です。一方、デメリットとしては「企業イメージ低下につながる恐れ」もあるので注意が必要でしょう。

補助金・助成金

公的に行われている事業者向けの補助金・助成金の資金調達方法があります。

補助金・助成金を活用して資金調達すれば、会社の負担が軽減できますが、補助金・助成金は、出費後にその一部を補填する流れになっているため、事前に自社で必要な経費を用意しておく必要があるでしょう。

補助金・助成金のメリットは、規模や事業内容、資金の利用目的など細かな条件があるものの、「原則的に返済の必要がない」といったメリットがあります。

一方、デメリットとしては、「募集が不定期」「自社の必要なタイミングで利用できるかは不明」「種類によっては審査基準が厳しい」などが挙げられます。

【関連】M&Aのファイナンス手法・流れや目的を徹底解説【事例あり】

3. M&Aの資金調達方法としての銀行融資

直接金融ではなく間接金融により資金調達を行うのであれば、代表的な方法は金融機関からの借入です。金融機関にも、メガバンク、地方銀行、政府系金融機関、信用金庫など多種が存在しています。それぞれ得意分野や付帯条件が異なりますので、よく比較検討しましょう。

銀行融資を受けるメリット

銀行融資は古くからある代表的な資金調達方法です。設備投資、事業投資、運転資金などの目的で活用されますが、M&Aの原資を用意するために借入を行うケースも少なくありません。

銀行融資には、直接金融による資金調達と比較して、「希薄化がない」「手元資金が必要ない」「コストを抑えられる」のメリットがあります。

持株比率を希薄化させずに済む

公募増資や第三者割当増資を行った場合は、新株の発行が必要なので、既存株主の持株比率が減少します。経営者が株主の場合は、持株比率が減ることで経営権が低下してしまうでしょう。

外部投資家がいる場合、増資に反対され機動的な資金調達ができない可能性もあります。銀行融資による資金調達では、株式比率の希薄化が起きず資金を調達可能です。この借入は、貸借対照表上では負債の部に計上されます。

手元に資金が必要ない

手元に資金がなくても、一時的に現預金残高を増やし、M&Aや新規事業への投資ができます。「金で時間を買う」といった格言のとおり、十分な投資を行うことで将来、それ以上のリターンが期待できるでしょう。

経営権と信用力の違いはあるものの、増資と借入は自社の無形力を金銭に替えている点では同様といえます。逆に、自社の無形力に見合うリターンが期待できない場合は、投資はしない方が賢明ともいえるでしょう。

コストを抑えた借入を行える可能性

一般的に、銀行融資などの間接金融での調達で支払う金利は、増資などの直接金融での調達に必要な資本コストよりも低いでしょう。具体的には、借入時の金利は高くても5%以内には入りますが、投資家の期待収益率は上場企業でも10%弱です。

会社の社歴、規模、技術力、ブランド、財務状況などの総合的判断で決められる信用力が高いほど、借入金利は低くなります。メインバンクとして日頃から取引のある銀行は、日頃からの信頼関係があるので、さらに低い金利で借りられるでしょう。

銀行融資を受けるデメリット

銀行融資と増資の最大の違いは、返済義務があるかどうかです。増資で資金調達すれば、自社の事業を成長させて投資家にリターンを提供できますが、銀行融資ではそうはいきません。

そこで、銀行融資を受ける際には、「返済義務」「追加融資の難しさ」「保証人」の問題が生じます。

返済義務を背負う

融資を受ける際には、「返済方法」「返済期日」「金利」などが設定され、それにのっとって借入金を返済する必要があります。当初のM&Aに対する資金計画どおりに事業が進めば問題はないでしょう。

しかし、想定どおり利益が出なかったり想定外の損失を出したりすると、途端に返済計画が頓挫(とんざ)してしまいます。つまり、事前の計画とその遂行が何よりも大切といえます。

信用力次第で追加融資を受けられなくなるおそれ

返済義務があるがゆえに、追加融資にも大きな制約があります。その会社の実力で借入が可能な金額は大体決まっており、すでに借りている資金を返済しない限り、追加融資が受けられないことは多いです。

頻繁にM&Aは行わないにしても、運転資金の借入枠だけは確保しておくなど、余裕を持った事業運営をすべきでしょう。

連帯保証に入っていると会社倒産時に借金を返済する必要

オーナー経営者の中小企業では、借入にあたって、銀行から経営者を連帯保証人に設定するように求められる可能性があります。M&Aおよび事業がうまくいって返済できればよいですが、最悪の場合には会社が倒産し、経営者に債務のみが残ります

このような事態を回避できるよう、自身のリスクは適切に管理する必要があるでしょう。

銀行融資を受ける際のポイント

M&Aの資金調達として銀行融資を受ける場合は、銀行が会社状況のどこを重視しているのかを把握することが大切です。信用を獲得するうえで有効な方法をベースに、スキーム構成を見直すとよいでしょう。

キャッシュフロー状況

銀行融資を受ける際の一つ目のポイントは、キャッシュフロー状況です。銀行がM&Aにおいて最も重視するポイントであり、融資を受ける会社のキャッシュフローはもちろん、買収先のキャッシュフローも精査されます。

特に、経営者や経理担当者の計数管理能力や会社の財務能力が慎重に見極められますので、留意が必要です。

損益状況

M&Aの実施後は、財務内容のコントロールは当然複雑化するため、銀行は会社の損益状況を確認します。金融機関があっせんするM&Aの場合、買収のあっせんを行うころには、信用保証協会の与信枠まで調査している場合もあるので、融資の取りつけと信用の積み重ねが大切です。

有形固定資産

M&Aに対しての銀行融資は、買収対象の会社に価値があるのが大前提です。銀行が事業価値を図る判断材料には「有形固定資産」が該当するため、現在価値が明確な有形固定資産の流動性が高い場合は、銀行融資の可能性も高くなるといえるでしょう。

一方で、権利や特許などの「無形固定資産」の場合は評価がつけにくく、判断材料の対象外となる可能性も考慮しておく必要があります。

のれんの有無

M&Aに際する銀行融資では、「のれんの有無」が注意深く確認されます。一般的に、のれん代が発生するのは、販路や技術に特別な価値がある場合や、キャッシュフローを生み出し純資産以上の収益を上げられる会社などです。

したがって、のれんがある場合は、銀行融資を行う銀行にとってバランスシートで確認できない「何か」を対象に評価をし、価値のあるものと認識します。しかし、客観的な裏付けを行うのが困難なことから、具体的で説得力のある説明が必要でしょう。

事業計画書

事業計画書とは、将来を見越してどのような経営を行っていくのか、どのように利益を上げていくのかを示した書類です。そこで、銀行融資を受ける際に事業計画書を提出します。その場合に銀行は、会社の成長性を考慮して融資を行うと認識しましょう。

銀行融資を受ける際の注意点

実際に銀行融資を受ける場合、考慮しておくべき以下の要素を把握しておくのが大切です。

  • 取引履歴の積み重ね
  • 融資額の限度
  • 低金利融資のポイント

取引履歴の積み重ね

銀行借入をよい条件で受けるためには、通常の企業間取引で履歴を積み重ねることが重要になります。なぜなら、多額の手数料を支払っていて銀行にとって優良顧客であることに加え、日々のキャッシュフローがわかるので信用力が増すからです。

メインバンクからの借入は比較的しやすいといわれています。

融資額の限度

銀行融資の際は、融資額の限度の考慮が必要です。銀行は一つの会社に対して、一定額以上の融資は行わないようにしています。

したがって、会社が一つの銀行の融資額の限度を増やすには限界があることから、複数の銀行から融資を受けられるように、会社状況を見直しておくようにしましょう。

低金利融資のポイント

銀行融資の際は、一定額以上の融資を行わないとお伝えしました。そこで、複数の銀行からの融資では「低金利融資」のポイントをおさえて融資を受けることをおすすめします。

信用保証協会付き融資を活用

低金利融資のポイントに「信用保証協会付き融資」の活用があるでしょう。信用保証協会とは、通称マル保とも呼ばれ、公的組織として保証人になってくれます。この制度を活用すると、中小企業であっても銀行からの融資を受けやすくなります

相見積もりを実行

相見積もりとは、同じ案や企画などを複数の会社から見積もりを出してもらい、比較することをさします。相見積もりを実行するメリットは、返済条件や金利を有利に進められる点にあります。

銀行から有利な条件を提示されても気付けるため、対等な立場で取引を行えるでしょう。

業績の向上

銀行は、全ての会社の格付けを行っています。格付けが上位であるほど融資は有利です。格付けは「決算書を用いた評価」でほぼ決まると見られます。決算書を用いた場合は、収益性・安全性・成長性・債務償還能力の4つの視点から評価されるでしょう。

これら4つの視点は、業績の向上と密接に結びついているので、売上の大きさから生じる利益はもちろんのこと、負債と自己資本比率まで考慮して向上を図りましょう。

スプレッド融資の活用

スプレッド融資とは、市場金利連動貸出のことを示します。その基準となる金利がTIBORとなります。

TIBORに上乗せした金利で融資を受けられるため、低金利で融資を受けられるでしょう。TIBOR(Tokyo Interbank Offered Rate)とは、東京の銀行間取引です。

スプレッド融資は優良中小企業も活用しており、その中には1億円以上の融資に対して、金利1%未満の融資まで見られます。

スプレッド融資の基準となる金利は、複数のリファレンス・バンクから全国銀行協会へ報告があります。報告されたレートを全国銀行協会が集計する流れです。

変動性金利の活用

融資の金利には、固定金利と変動金利の2種類があります。固定金利は、融資決定後も返済期間内は一定の金利です。しかし、銀行は景気の影響によって将来に低金利になる可能性があるので、損失を回避するためにあらかじめ固定金利を高めに設定しています。

したがって、将来的なリスクを負うデメリットはあるものの、変動金利であれば固定金利よりも金利が低い状態で借入できるでしょう。

銀行から低金利の融資を受けて買収したソフトバンクの事例

2006(平成18)年、ソフトバンクは、全額出資で設立する子会社を通じて、ボーダフォンの発行済株式総数の97.7%を取得し、ボーダフォンの2,000億円以下の有利子負債まで引き継いで買収しました。

M&Aの買収に必要な資金は、LBOの方法で1.1兆~1.2兆円の借入をしています。アドバイザーとして、みずほ銀行、ゴールドマン・サックス証券、ドイツ銀行などが参加し、国際的にみても異例のLBOとなりました。

ソフトバンクが受けた融資は「ノンリコースローン(非遡及型融資)」が特徴的です。融資対象の収益や資産売却額のみを買収資金の返済資金として充当し、それ以上の返済義務を負うことなく融資を受けています。

【関連】ソフトバンクの大型M&Aの歴史!戦略と狙いを成功/失敗事例で振り返る

4. 日本政策金融公庫を利用したM&Aの資金調達方法

ここでは、銀行などの民間金融機関とは異なる政府系金融機関の一つである、日本政策金融公庫からの資金調達のうち、特にスモールM&A(小規模M&A)での資金調達を紹介します。

日本政策金融公庫の融資事例の資金用途

日本政策金融公庫が実施したスモールM&Aでの融資事例では、その資金使途は以下の4ケースが代表的です。

  • 買収先企業の株式買取資金(株式譲渡実施時の買収資金)
  • 買収先企業の営業権や事業用資産の買取資金(事業譲渡実施の買収資金)
  • M&A後の設備投資・店舗リニューアル用などの資金(M&Aに伴う設備資金)
  • 買収先の技術力を生かした新製品の研究開発ための資金(M&Aに伴う運転資金)

スモールM&Aを対象とする融資状況

日本政策金融公庫が発表しているスモールM&Aでの具体的な融資状況を紹介します。まずは、運転資金の場合の融資金額構成比です。

  • 500万円以下:65%
  • 500万円超~1,000万円以下:16%
  • 1,000万円超~2,000万円以下:14%
  • 2,000万円超:5%

次は、設備資金の場合の融資金額構成比です。なお、この設備資金には株式譲渡・事業譲渡時の買収資金を含んでいます。
  • 500万円以下:59%
  • 500万円超~1,000万円以下:22%
  • 1,000万円超~2,000万円以下:15%
  • 2,000万円超:4%

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5. M&Aの資金調達方法としてのLBO・MBOとは

増資や通常の融資以外の資金調達スキームに、LBO(Leveredged Buy Out)・MBO(Management Buy Out)があります。いずれも、銀行から借入する点は同じです。相違点は、自社ではなく被買収会社の資産や将来キャッシュフローを担保にする点です。

LBOとは

LBOは、投資ファンドに多く用いられる手法で、リスクは高いものの利益効率はよい投資スキームです。その性質上、敵対的買収を仕掛ける際に多く用いられています。複雑なスキームであるため、金融のプロが行うことが多いですが、そのメリットは非常に大きいでしょう。

スキームの構造

LBOは、売り手企業の資産や将来キャッシュフローを担保に、買い手が融資を受けるスキームです。通常の融資では、買い手会社の資産や信用力によって融資を受けます。しかし、LBOでは売り手会社が担保になるため、買い手会社が誰でも融資を受けられる仕組みです。

メリット

M&Aを行う際に、買い手会社は自社の資金を拠出する必要がありません。そのうえ、自社の信用力がなくても、資金調達が可能です。LBOを行う際にはSPC(特定目的会社)を使うことが多く、通常の借入と比較して、利益効率が高まるレバレッジ効果が期待できます。

デメリット

自社の信用力を使わない分、銀行が負うリスクが高いため、金利が高いなど諸条件が悪いことが多いでしょう。実際、当初の売り手企業の事業計画が達成できなかった場合には、金利支払いや返済が非常に難しくなります。

代表的な事例

2003(平成15)年に米国の投資ファンド「リップルウッド」が日本テレコムを買収した事例では、LBOの手法で米系銀行・日系銀行から2,090億円を集めたといわれています。

1年後の2004(平成16)年には、ソフトバンクグループが日本テレコムを買収し、リップルウッドの投資利益は約800億円でした。リップルウッドは、自己資金の数百億円から、1年間で800億円稼いだ計算になります。

日本テレコムHD,リップルに固定通信事業を売却。米AT&Tと米モトローラ出身役員が経営に参加

MBOとは

MBOはLBOとよく似ていますが、実施主体が会社経営陣である点が大きく異なります。投資目的ではなく、投資家と経営陣の事業方針が対立した場合や上場のメリットがなくなった場合など、「所有と経営の一致」を目的に行われる手法です。

スキームの構造

MBOは、売り手企業の資産や将来キャッシュフローを担保に、売り手企業の経営陣が融資を受けるスキームです。通常の融資では、買い手会社の資産や信用力によって融資を受けます。

しかし、MBOではLBOと同様に売り手会社が担保なので、経営陣に金銭面での信用力が少ない場合でも融資を受けられます。

メリット

MBOは、株主と経営者を一致させるために行われます。これにより、経営の機動力の確保や大胆な事業投資が可能となるでしょう。MBOを行えば、上場会社でも非上場会社になるため、上場維持コストを減らす効果も期待できます。

デメリット

事業計画どおりに業績を伸ばせなかった場合に問題となります。通常、MBOの後には再上場を行うなどのゴールが設定されていますが、それができなくなるためです。

株式を保有している経営陣にとっては、株式の引き取り先がいなくなるので、その会社の経営に関与し続けなければならないこととなります。

代表的な事例

2006年、「すかいらーく」が、MBOにより上場廃止になりました。当時のすかいらーく代表取締役だった谷真氏がMBOの旗振り役となり、みずほ銀行などから2,200億円の融資を受けて買収資金を用意しています。

8年後の2014(平成26)年に再上場を達成しましたが、期待どおりの企業価値向上は達成できず、投資利益もほとんど得られなかったようです。

すかいらく:株式非公開へ、最大2720億円でMBO-M&A積極的(9)
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6. M&Aの資金調達に関する相談先

資金調達は規模を問わず、さまざまな会社の経営者が考える課題でしょう。特に中小企業は、より安定的な資金調達を実現するために日々努力しています。

昨今は、中小企業を支援する公的な制度やクラウドファンディングなど、新しい資金調達方法などの選択肢も増えています。自社にあった資金調達方法を活用しましょう。

M&Aを行う場合は、専門家への依頼費用も必要です。M&Aは、M&A仲介会社に依頼をして進めていくのが一般的でしょう。M&A仲介会社に相談し、マッチングから手続きなどのサポートを受けながら進めるほうが、自社のみで行うよりもM&Aの成功率を高められます。

仲介会社などの専門家に依頼する場合、まとまった金額を準備しておく必要があります。M&Aが成立した後の成功報酬なども必要です。

成功報酬は、一般的に買取金額の5〜10%程度となるため、買収金額に上乗せした金額を用意する必要があるでしょう。専門家の依頼にかかる費用は、それぞれ料金体系が異なるため、事前によく確認しましょう。

M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は中小・中堅規模の案件を扱っており、さまざまな業種で成約実績を有しています。M&Aの経験・知識が豊富なM&Aアドバイザーが、丁寧に案件をフルサポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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7. M&Aの資金調達の方法・スキームまとめ

M&Aの資金調達は、合併や買収に必要な資金だけではなく、「諸経費、税金、専門家への相談料」までを考慮しておくのが肝要です。しかし、資金調達に成功したとしても、買収のスキームを誤ってしまうと大きな損失を生み出してしまいます。

M&Aの資金調達を成功させるためには、自社の財務状況やキャッシュフローなどさまざまな視点を考慮する必要があります。M&A仲介会社などの専門家に相談しながら進めるのがよいでしょう。

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