2020年12月24日公開
M&Aを従業員に説明するタイミングとは?迷惑をかけない方法を紹介

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
経営者としては、企業成長を目指すうえでM&Aを決断しなければならない時もあります。しかし、M&Aの影響で従業員に迷惑をかける可能性もあるため、説明責任も伴います。本記事では、M&Aを従業員に説明するタイミングや迷惑をかけない方法を解説します。
1. M&Aを従業員に説明するタイミングとは?
M&Aの交渉は、ごく一部の限られた経営陣のみで進めるのが一般的です。中途半端に情報が漏洩してしまうと、M&Aの交渉が失敗して従業員に迷惑をかけることになる恐れがあるためです。
具体的には、M&Aを検討している事実が漏洩すると、不安に感じる従業員が自主退職したり、取引先から契約を打ち切られたりなどのリスクが想定されます。企業価値に影響を及ぼすレベルになると、M&A交渉が破談になる恐れもあります。
このような理由から、M&Aは基本的に従業員に秘密にしたまま進行する形が望ましいですが、どこかのタイミングで説明しなければならないのも確かです。この章では、従業員に説明するタイミングや説明する際の注意点を紹介します。
M&Aの際、従業員に説明する適切なタイミング
経営者は従業員に対する説明責任がありますが、タイミングを誤るとM&Aの交渉に影響を与えるだけでなく、M&A先や取引先に迷惑を与える恐れもあります。
一口に従業員といっても、役職によって社内における立場は変わるため、M&Aの際は役職ごとに説明するタイミングを分けることが大切です。
【M&Aを従業員に説明する適切なタイミング】
- 基本合意締結の前
- 基本合意締結の後
- M&Aのクロージング後
1.基本合意締結の前に説明する役職
M&Aの基本合意締結の前に説明する従業員は、経営に深く関係している役職です。会社の経営に貢献している重要な役職にも関わらず、説明するタイミングが遅れると反感を買ってしまう恐れもあります。
また、実務の面からみても重要な役職からの意見は有効的に活用することができます。経営者や一部経営陣だけで抱え込むと、M&Aの可能性を見失ってしまう恐れもあるので、早期に相談して意見を共有しておく形が望ましいでしょう。
そのほか、経理担当がいる場合は早期段階でM&Aに関する説明を行う必要があります。企業価値評価の段階で財務状態を伝えなくてはならないので、経理担当の協力が必要不可欠となります。
2.基本合意締結の後に説明する役職
M&Aの基本合意締結の後に説明する従業員は、各事業部の責任者や役員クラスです。説明不十分のままM&Aを実行してすると、キーマンが自主退職すれば買収側に迷惑がかかるリスクがあるため、早めにM&Aに対する姿勢を確認する必要があります。
M&Aにおいて、従業員は人的資産として企業価値に含まれています。重要な役員クラスが退職すると企業価値評価に影響がでる恐れがあるので、辞めることがないよう慎重に説明しなくてはなりません。
責任者や役員クラスは少なからず会社に貢献している自負があるため、一般の従業員とは扱いを変えることも大切です。該当する従業員を一堂に集めて説明するのではなく、一人一人と直接面談する形が望ましいでしょう。
3.M&Aのクロージング後に説明する役職
一般従業員に対してはM&Aのクロージング後に説明します。具体的なタイミングとしては、最終契約直前あるいは直後の情報開示が一般的です。
説明を受ける従業員からすると突然の出来事であるため、M&A後の雇用・待遇について質問されることが想定されます。買い手企業の人材に同席してもらうなど、事前準備を進めておくと柔軟に対応することができます。
ただし、買収企業が上場企業である場合は、インサイダー取引に注意が必要です。M&Aの影響は大きくなるため、一般情報公開前より先に従業員へ公表する場合、株式市場に影響がでないように努めなくてはなりません。
M&Aを従業員に説明する際の注意
M&Aの従業員に対する説明では、タイミング以外にもいくつかの注意点があります。迷惑をかけないために注意すべきポイントには以下の2つが挙げられます。
【M&Aを従業員に説明する際の注意点】
- M&Aの交渉が必ずうまくいくと約束しない
- 従業員の不安な気持ちを理解する
1.M&Aの交渉が必ずうまくいくと約束しない
M&Aは従業員に迷惑がかからない条件で成約させることが望ましいですが、必ずしも交渉がうまくいくとは限りません。
時には、雇用条件の一部を変更したり、一部の従業員は受け入れられないなどの条件が提示されることもあります。
役員クラスに対する事前説明で、M&Aのリスクがゼロであるかのように説明していると、M&A前後の説明に食い違いが生じて自主退職にもつながりかねません。
企業価値にも影響がでかねないので、M&Aに一定のリスクが伴うことについて納得してもらうことが大切です。
また、大量に従業員の自主退職が発生すると、統合プロセスがうまくいかない事態も想定されます。買い手に迷惑をかけるどころか、求めるシナジー効果が生み出せなくなり、M&Aが失敗に終わる可能性も高くなります。
2.従業員の不安な気持ちを理解する
M&Aによる買収の報告を受けた従業員は、自分の将来について不安に感じることが多いです。従業員に与えられるM&A情報は限られているため、環境の変化や先が見通せないことに対して不安が大きくなるのも当然といえるでしょう。
報告を受けた従業員は、M&A後の自身の雇用条件について質問してくることが想定されます。その際に未定であると伝えてしまうと不安を募らせるだけなので、情報を整理した段階で従業員に説明するほうがよいでしょう。
従業員が関心の高いポイントには、仕事内容や給与・地位、転勤の可能性などがあります。説明タイミング次第では確定していないこともありますが、分かっている部分に関しては伝えると好印象を与えることができます。
2. M&Aの際、従業員に迷惑をかけない方法とは
経営者としては、M&A後も従業員が気持ちよく働ける環境を維持したいところです。しかし、企業の成長のために実行するM&Aであっても、結果的に従業員に迷惑をかけてしまうこともあります。
従業員の不満が溜まると、自主退職が相次いでM&Aが失敗に終わる可能性もあるので、従業員になるべく迷惑がかからないよう努めることが大切です。
【M&Aの際に従業員に迷惑をかけない方法】
- M&Aで交渉を行い雇用や待遇を維持してもらう
- 変更する場合は個別に話し合う
- 退職する場合はきちんと対応する
M&Aで交渉を行い雇用や待遇を維持してもらう
従業員のM&Aに対する関心の高いポイントは自身の待遇です。M&A後の雇用条件の悪化について不安に感じているので、M&A交渉では従業員の雇用や待遇を維持してもらうように進める形が望ましいです。
従業員にM&Aを説明するタイミングでM&A後の雇用・待遇について説明することができれば、従業員の不安を和らげることになり、M&Aで迷惑がかかるリスクも大幅に抑えることができます。
従業員の雇用維持は売り手側の要望というイメージが強いですが、あらゆる業種で働き手不足が深刻化しているので買い手側にとっても従業員の離職は望ましくありません。双方の条件のすり合わせをしながら、従業員の雇用・待遇維持に努めたいところです。
変更する場合は個別に話し合う
M&Aの交渉を慎重に進めていたとしても、売り手と買い手のニーズが一致せずに従業員の雇用・待遇を変更せざるを得ない状況になることもあります。
そのような状況になったら、対象の従業員と個別に話し合う場を設けましょう。従業員は先行きが不透明なことに不安を感じることが多いので、検討している雇用・待遇を直接伝えれば納得してもらえることも少なくないでしょう。
情報を公開するタイミング次第では秘密保持の観点から説明できる情報が限られますが、伝えられる情報はしっかり伝えてあげると従業員に迷惑がかかりにくくなります。
退職する場合はきちんと対応する
退職には自己都合退職と会社都合退職があります。自己都合退職は従業員の判断や事情による退職、会社都合退職は普通解雇や倒産などの会社側からの働きかけによる退職を指します。
退職理由がM&Aのみという場合は、会社都合退職とはなりません。しかし、M&A後に遠方への転勤や大幅の賃金値下げなどの雇用・待遇が著しく悪化する場合においては会社都合退職となることもあります。
自己都合退職の場合、退職金が目減りしてしまうため従業員に与える迷惑が大きくなります。M&Aを理由に退職する全ての従業員を自己都合退職で一律処理するのではなく、従業員一人一人の条件を鑑みたうえで対応することが大切です。
3. M&Aの際、従業員に説明する手順
従業員にM&Aを説明する際は段取りを誤るとM&Aの失敗に繋がり、迷惑をかける恐れがあります。そのため、従業員に説明する時は適切な手順や方法を把握したうえでタイミングを見極める必要があります。
【M&Aの際に従業員に説明する手順】
- 伝える時は全員に伝える
- 伝える際はM&Aを感じさせずに招集
- 買い手側にも参加してもらう
1.伝える時は全員に伝える
M&Aのクロージング後に一般の従業員に説明する時は、全ての従業員に同時に伝える必要があります。従業員から従業員への又聞きが発生すると、正確な情報が伝わらずに社内が混乱する恐れがあるためです。
説明するタイミングは、最終契約前日または当日の朝礼や夕礼などが適切です。出張や病欠などの一部の従業員を除き、一度に大勢の従業員に説明することができます。
タイミングを誤ると情報漏洩に繋がりM&A先や取引先に迷惑がかかる恐れがあります。適切なタイミングで一斉に伝えることが大切です。
2.伝える際はM&Aを感じさせずに招集
基本的に、M&Aはクロージングが完了するまで情報を漏らすわけにはいきません。正式にM&Aが決定するよりも前にM&Aを伝える場合は、招集する際もM&Aを悟られないよう、適当な口実をつける必要があります。
その段階でM&Aを伝える相手は各事業部の責任者や役員クラスに限られるので、招集する口実は「重要な経営方針の発表」などがよいでしょう。
デューデリジェンスなどの実地調査が行われる際は社内に悟られるリスクが高まるので、マネジメントインタビューや資料提供の対応を担当する人材には、十分に注意するよう話を通しておくことも大切です。
3.買い手側にも参加してもらう
一般の従業員にM&Aを報告する場では、一通りの説明が終わると従業員から買い手企業に関する質問が殺到することが想定されます。転勤の有無や仕事内容の変化、給与問題など、従業員が知りたい情報は沢山あります。
具体的な雇用・待遇については、買い手側の責任者から説明してもらうと従業員も納得しやすくなります。細かい条件についても説明できるので、柔軟な対応により従業員の不安を和らげることができます。
より多くの従業員に残ってもらいたいという気持ちは売り手側も買い手側も共通しているので、共同作業であることを意識しながら取り組むことが望ましいです。
M&Aのご相談はM&A総合研究所へ
M&Aを実行する際は、情報漏洩に注意しながら従業員への説明責任も果たさなくてはなりません。従業員の役職によっても情報を開示するタイミングが異なるので、経営者が考えるべき事項は多くなります。
M&Aで従業員への対応でお悩みの経営者様は、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。M&Aの実務はもちろんのこと、従業員に対するケアもサポートしていることが多いので、万全の体制でM&Aに臨むことができます。
M&A総合研究所は、M&A・事業承継の仲介事業を手掛けているM&A仲介会社です。あらゆる業種での中堅・中小規模の案件を得意としており、中小企業のM&A仲介における豊富な実績があります。
M&Aサポートを担当するのは経験豊富なM&Aアドバイザーです。過去の仲介・相談で経験・ノウハウを培っており、従業員に対するケアに関しても長けているので、説明タイミングや伝える方法に関して具体的なアドバイスをいたします。
無料相談は24時間お受けしています。M&Aに関するご相談は、お気軽にM&A総合研究所までご連絡ください。経験豊富なスタッフが真摯に対応させていただきます。
4. まとめ
M&Aは企業成長の方法として活用することができますが、従業員への説明タイミングや方法を誤るとM&A先や取引先、従業員に迷惑をかけて取返しが付かない事態に発展する恐れもあります。
M&Aを成功させるためには従業員からの理解が必要不可欠です。全ての従業員に対して真摯に向き合って説明責任を果たすことができれば、M&Aが成功する確率も高めることができます。
【M&Aを従業員に説明する適切なタイミング】
- 基本合意締結の前
- 基本合意締結の後
- M&Aのクロージング後
【M&Aを従業員に説明する際の注意点】
- M&Aの交渉が必ずうまくいくと約束しない
- 従業員の不安な気持ちを理解する
【M&Aの際に従業員に迷惑をかけない方法】
- M&Aで交渉を行い雇用や待遇を維持してもらう
- 変更する場合は個別に話し合う
- 退職する場合はきちんと対応する
【M&Aの際に従業員に説明する手順】
- 伝える時は全員に伝える
- 伝える際はM&Aを感じさせずに招集
- 買い手側にも参加してもらう
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