2024年06月20日更新
M&Aの失敗理由・事例25選!失敗の確率・対策方法も解説【海外・日本企業】
海外では、シェアの拡大などを目的に大規模なM&Aが行われています。M&Aは成功もあれば失敗もあります。日本国内外、規模にかかわらず失敗は多く存在するでしょう。今回はM&Aによる失敗の理由を、事例を踏まえて解説します。
目次
1. M&Aにおける失敗とは
企業のシェアを拡大し、売り上げや利益の増大を目的とした大規模なM&Aは、海外で多く見られるケースです。現在は海外だけではなく、日本の大企業でも大規模なM&Aや中小企業のような問題を解決するための事業譲渡、個人事業のような小規模M&Aなど多くのM&A取引が行われています。
M&Aは日本でも海外でも、新規事業の参入によるノウハウの獲得やコストの削減、既存事業の強化を目的として行われるものですが、その目的を達成できれば成功、できなければ失敗です。多くのM&Aの失敗要因は、以下の5つに集約されます。
- 投資対効果が見合わない
- 損害が発生する
- 破産する場合もある
- のれん代の減損損失が生じる
- 企業イメージが悪くなる
- M&A後に粉飾が発覚する
順番にM&Aの失敗要因を解説します。
①投資対効果が見合わない
投資対効果が見合わないとは、投資額に比して得られたリターンが小さいことです。不動産の購入などと同様に、競争相手がいる場合やどうしてもその企業が買収したい場合などに価格が跳ね上がることがあります。
このような状況で勢いで買収先企業を決めてしまうと、譲受後に事業がうまくいっていても投資対効果がなかなか得られず失敗に終わってしまいかねません。
②損害が発生する
買収時の評価額の査定が甘かったことが要因となり、買収した会社がのれんの減損などで巨額の損失を計上することがあります。債務調査が甘く、事業譲渡を受けたタイミングで債務を引き継いでしまう事例も少なくありません。
③破産する場合もある
会社を買収するにあたって専門家に財務・コンプライアンスの状況を調査してもらうのが一般的ですが、その手続きを怠り発生するM&Aの失敗パターンです。
このような失敗パターンでは、買収した企業の不正や不良資産に気づかず、最悪の状況では破産まで追い込まれることがあります。M&Aは、1つの企業を破産させてしまうほど大きな効力があるものです。
④のれん代の減損損失が生じる
会社を買収する際の買収価格が適切でなかった場合に、発生するM&Aの失敗パターンです。
M&Aで会社を買った後、貸借対照表の資産の部に買収価格を記載しなければなりません。この買収価格には、買収価格と買った会社の純資産額の差額、いわゆる「のれん代」が含まれます。
IFRS会計基準では、「のれん代」は将来にわたる企業価値の減少が認められた際に一括償却します。
当初の想定よりも事業が落ち込み、買収した会社の企業価値が減少したと監査法人から指摘されれば、多額の減損を計上しなければなりません。
⑤企業イメージが悪くなる
売却側のコンプライアンス・ハラスメント・環境汚染・訴訟のリスクなどの発生に伴い、M&A後に自社のイメージが悪化してしまうトラブルが発生することもあります。とりわけ文化・宗教などに違いが見られる海外企業とのM&Aで発生しやすい失敗パターンです。
⑥M&A後に粉飾が発覚する
企業が他の企業を買収する場合、専門家にその企業のお金の状態やルール遵守をチェックしてもらうのが普通です。しかし、ちゃんとチェックしなかったせいで、買った後に問題が出てきて、買収側の企業が困ることもあります。最悪、買った方の企業が倒産することも。なので、買収前にしっかりと調査することが大切です。
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2. 日本企業のM&A失敗事例9選
まずは、日本企業のM&A失敗事例を9件紹介します。
M&Aの失敗要因・事例①
2014年10月に、DeNAは、住まいに特化したまとめサイトを手がけるiemo(イエモ)と女性向けファッションのまとめサイトを運営するペロリをM&Aにより50億円で買収しました。
M&Aを実施した2年後に信ぴょう性に乏しい記事が掲載されていたり、盗用が指摘されたりするなど、10件のサイトを休止しただけでなく謝罪会見まで開かざるを得ない状況に陥ってしまい、M&Aの失敗事例とされています。
M&Aの失敗要因・事例②
セブン&アイホールディングスは、2013年12月にニッセンを子会社化し資本業務提携締結を発表しました。
しかし、期待したシナジー効果を得られず、セブン&アイホールディングスの通信販売事業は2016年2月期に84億5,100万円の営業損失を出し、ニッセンは2016年6月に完全子会社ニッセンホールディングスとなっています。
M&Aの失敗要因・事例③
2012年10月、グリーは設立5年で売上高が5億円のゲーム会社ポケラボを138億円で買収しました。
その後はヒット作に恵まれずに2015年6月期には63億円の減損損失を計上し、それと同時にアメリカのソーシャルゲームプラットフォーム会社へ出資した90億円も減損損失しています。
M&Aの失敗要因・事例④
日本国内のM&A失敗事例として、2008年12月に、世界最大手の家電メーカーのパナソニックが三洋電機を400億円で買収し子会社化した事例も挙げられます。
その後、追加投資を行い2011年に完全子会社化しており、総投資額は8,100億円以上にも及ぶとされていました。ところが、リチウム電池事業を読み外し、2013年3月期の個別決算では6,000億円以上の評価損を計上しています。
M&Aの失敗要因・事例⑤
2007年5月、HOYAは、ペンタックスを紆余曲折しながら1,000億円で買収しました。その後、吸収合併を行います。しかし、業績は上を向かずに2009年の3月連結決算では304億円の減損損失を計上し、2011年にデジカメ事業がリコーに売却しています。
M&Aの失敗要因・事例⑥
2005年12月、セブン&アイホールディングスは1,300億円を投じて野村プリンシパル・ファイナンスから株式を65%取得し、その後に株式交換により完全子会社化しました。
その後も累計で2,300億円を投資しましたが、業績は伸びることなく評価減を行い、2010年2月期個別決算で670億円の評価損益を計上しています。
M&Aの失敗要因・事例⑦
2004年9月、新生銀行はM&Aにより第三者割当増資を引き受けて、アプラスを350億円で普通株式の67%、優先株式を300億円でUFJ銀行から取得しました。
その後も優先株式を受けましたが、過払金訴訟の影響を受けて業績が悪化し、1,010億円の減損損失を計上しています。
M&Aの失敗要因・事例⑧
これは匿名企業事例です。売上の減少が続く会社の社長がM&Aによる売却に向けて順調にプロセスを進めていところ、大手企業から事業計画の提案を受けたため、交渉段階まで進んでいたM&Aを断り、大手企業とのプロジェクトを進めることにしました。
しかし、途中で大手企業からプロジェクトの中止を受けて、慌てて次の売却先を見つけることになってしまう失敗事例が報告されています。これは、機会を逃したことでM&A市場の変化に付いていけず失敗につながった事例です。
M&Aの失敗要因・事例⑨
M&Aで売却先を決めたA社の経営者が、従業員にいつM&Aを打ち明けようか考えていたところ、外部からその情報が漏れて従業員の不信感が募り、人材流出を起こしたために売却の話が打ち切りとなってしまったケースです。
M&Aに関わる人は専門家でなくても、情報の管理には常に気を使わないといけません。
3. 海外企業のM&A失敗事例16選
M&Aは日本国内・海外で毎日多数の案件があります。M&Aの成功率は日本国内と海外では確率が異なっており、世界全体で見ても失敗事例が多いでしょう。成功と失敗を分ける基準も企業ごとに異なっているので、ここでは海外M&Aの失敗事例を16件解説します。
M&Aの失敗要因・事例①
LIXILは、ドイツの水栓器具を取り扱うグローエを2016年7月に、M&Aにて完全子会社化しました。当初はガバナンスの強化などを視野に入れて事業を進めていく方針でしたが、グローエの中国子会社にて不正会計が発覚し、M&Aは失敗でした。
周囲からは調査の甘さや多国籍企業を買収するリスクに対して考えの甘さがあったといわれています。
M&Aの失敗要因・事例②
日本郵政は2015年5月に、オーストラリアの物流子会社のトール・ホールディングスを買収しました。
日本郵政は上場前に成長戦略を立てる必要があり、その一環としてトール・ホールディングスを買収しました。実際に日本郵政も買収後に経営陣を送り込むことなく、放置状態が続いた結果として4,000億円以上の減損損失を計上しています。
M&Aの失敗要因・事例③
2014年4月、アメリカのマイクロソフトがフィンランドのベンダーであるノキアの携帯端末事業を約72億ドルで買収した際の事例です。
当時スマートフォンの販売事業は低迷しており、2015年には約76億ドルの減損損失を計上せざるを得ない状況に陥りました。
M&Aの失敗要因・事例④
日本のM&A失敗事例としては、丸紅によるガビロンの買収も目立っています。
2012年5月、大手商社の丸紅は、アメリカ穀物メジャーのガビロンを約2,880億円で買収し事業の拡大を図りました。しかし、中国向け大豆の輸出でトップだった丸紅がガビロンを買収したことで、中国での寡占化が警戒され両社が一体となり中国でのビジネスを行うことを禁じられてしまい業績不振となりました。
結果、ガビロンの買収はのれん代500億円の損失を出し、失敗に終わりました。この失敗の理由としてはカントリーリスクが関係しています。海外進出で、たびたび見られる失敗パターンです。
M&Aの失敗要因・事例⑤
大手飲料メーカーのキリンホールディングスも、海外M&Aに失敗しています。2011年8月にキリンは、ブラジルビール大手のスキンカリオールを約2,000億円で買収し、2015年には減損損失を1,100億円計上しました。
日本国内では人口の減少が問題視される中で、市場が縮小し売り上げが得られない状況に陥っていたため、新興国のブラジルに事業を進出させようとした目論見ですが、予想に反してブラジルの景気が低迷してしまいました。
M&Aの失敗要因・事例⑥
製薬会社の第一三共も海外M&Aにて失敗をしています。2008年6月、第一三共は、インドの後発医薬品メーカーであるランバクシー・ラボラトリーズを約4,900億円で買収し、当時は大規模M&A案件なので注目を浴びていました。
しかし、デューデリジェンスが甘く、輸出規制などにより事業がうまく行かず、結果的に失敗に終わってしまいました。
M&Aの失敗要因・事例⑦
2006年2月、日本板硝子はM&Aにより6,160億円でイギリスのガラス大手のピルキントンを買収しました。当時、ピルキントンは年商2倍以上の企業でしたが、リーマン・ショックや欧州債務危機に伴い、需要の減少で急速に業績が悪化しました。
その後は2014年に3期連続で赤字決算を迎え、M&Aは失敗に終わったと考えられています。
M&Aの失敗要因・事例⑧
これは東芝のM&A失敗事例です。2006年2月、東芝はアメリカの原発大手ウェスチングハウスとM&Aを実施しましたが、2011年の東日本大震災の影響により世界的に原発の安全性に対する懸念が強まり、当時の想定に反して収益を上げられない状況に陥ってしまいました。
本件M&Aで東芝はのれん代3,300億円が計上されたうち、2,600億円もの減損損失が生じてしまいました。
本件M&Aの失敗理由としては、買収先企業の収益化が悪化してしまったことだと考えられます。
M&Aの失敗要因・事例⑨
2003年7月、海外M&Aにてイギリスのスーパー大手テスコは、日本の中堅スーパーのつるかめランドを展開していた「シートゥーネットワーク」の買収を行いました。
このときに約300億円を投じていましたが業績が上がることはなく、日本進出からわずか8年後の2011年に撤退しています。
最終的には、イオンが発行した株式の50%を1円で取得し、傘下に収められました。テスコは日本法人の負債を請け負い、事業立て直しのために約50億円の追加投資を行って、全店舗の引き受けと従業員の雇用維持を条件にしています。
M&Aの失敗要因・事例⑩
2002年12月、大手の家電メーカー日立製作所は、アメリカのIBM社からハードディスク事業を20億ドルで買収しました。
買収前後からHDDの価格破壊が進み、毎年100億円規模の赤字が発生し、2011年に同じ事業を行うアメリカのウェスタン・デジタルに約48億ドルで買収しましたが、9年間にもわたる累積赤字や工場への追加投資を考えれば採算割れしている可能性が高いといわれています。
M&Aの失敗要因・事例⑪
2002年4月、アメリカ小売大手のウォルマートは、日本の西友(SEIYU)とのM&Aにて資本提携をしました。
しかし、西友は業績不振からその後も復帰できず、2005年に子会社化したものの業績が伸びず、2007年に1,000億円追加投資して完全子会社化となりました。
最終的な投資資金は2,470億円を超えたとされており、2002年に完全子会社化していれば1,000億円で済んでいたといわれています。
M&Aの失敗要因・事例⑫
2001年7月、非鉄金属メーカーの古河電気工業は、アメリカの光ファイバー事業のルーセント・テクノロジーを22.27億ドルで買収し世界ファイバー業界で2位にまで上り詰めました。
しかし、一時期はM&Aが成功したように見えた事業はピーク時の5分の1まで売り上げが減少し、2004年3月期には1,000億円の評価損を計上しています。
M&Aの失敗要因・事例⑬
2000年8月、NTTコミュニケーションズは6,000億円を投資し、アメリカのベリオを買収しました。
NTTグループとしてはM&Aにて悲願の海外進出を実現し成功を感じていました。ところが、業績が悪化していき、わずか1年後の2001年9月中間期で5,000億円の減損損失を計上しています。
M&Aの失敗要因・事例⑭
1990年11月、総合エレクトロニクスメーカーの富士通は、イギリスの国策IT事業であったICLを1,890億円で買収し完全子会社化しました。
本件M&Aの結果、電算機で世界2位となり成功したように思われましたが、業績は悪化してしまい、2007年3月期の個別決算で2,900億円の評価損を計上しました。
M&Aの失敗要因・事例⑮
1989年10月に実施された三菱地所によるロックフェラーセンターの買収も、海外M&Aの失敗事例の1つです。
当時約2,200億円でマンハッタンのロックフェラーセンターを買収した三菱地所ですが、不動産市場の冷え込みにより時価が暴落し、最終的には本物件の大半をアメリカに売り戻し、1,500億円の損失を計上しています。
M&Aの失敗要因・事例⑯
ソニーは1989年9月、コロンビアピクチャーをM&Aで5,000億円で取得しました。その後、ヒット作がなかなか出てこない状態が続き、多額の減損処理が続いている状態です。
4. M&Aの失敗確率
M&Aにはメリットが多く、会社の規模も拡大し成功できると考える方も多いですが、M&A市場では成功事例の方が話題になり、ニュースを埋めてしまうため実際の失敗事例を語る方は少ないでしょう。
特に、日本企業が海外で行う買収は、約80%〜90%が失敗するとされています。しかし、日本国内でのM&Aに限れば、失敗する確率はそれほど高くありません。実際には、約半数のM&Aが成功しています。
確かに、M&Aには失敗のリスクがありますが、うまくいけば企業成長の大きなチャンスとなり得ます。世界がますますグローバル化していく中で、成長を続けるためには、リスクを伴いながらも、M&Aは一つの有効な戦略です。
M&Aが失敗する主な要因は、細かな部分の配慮が足りていなかったり、トラブル対策が講じられていなかったりすることです。当然ですが、ビジネスの世界では予想できないトラブルが起こり得えます。しかし、失敗の要因を理解していれば、それを未然に防げます。
5. M&Aの失敗要因(買収側)
ここからはM&Aの失敗要因を解説しますが、まず買収側の失敗要因と対策を解説します。M&Aにおける買収側は、購入後はその企業とビジネスをともにしていくことを考えると、失敗は避けたいものです。
失敗要因をしっかりと理解したうえで、買収側は慎重にM&Aの実施を検討しましょう。買収側のM&Aの失敗要因は主に以下のとおりです。
- ゴールが不明確
- 買収企業の選択ミス
- FAや仲介のいいなり
- デューデリジェンスの不足
- 根拠のない自信
- 根拠のない価格設定
- 責任の所在が不明確
- 従業員の離脱
- 簿外債務の見落とし
- 買収対象の業績悪化
- 買収後の放置
①ゴールが不明確
この失敗の要因として考えられるのは、「M&Aありきの経営戦略」となっていることです。M&Aは、あくまでも成功や目的を達成するための経営戦略の手段です。しかし、M&Aの実施を目的化してしまう企業が多く、M&Aの失敗事例に発展してしまいます。
企業買収がゴールになってしまい、M&Aで統合・買収をすれば事業がうまくいくと考えてしまっています。M&A後のアフターケアや統合後の企業の動きを考えずに失敗してしまうでしょう。
②買収企業の選択ミス
基本的にM&Aを検討した場合は、M&A戦略を立案してから行います。M&Aを行ううえで、戦略の立案は最も重要で最も悩ましいですが、このプロセスをおろそかにすると失敗しやすいです。
M&A仲介会社やアドバイザーから買収企業リストなどで企業紹介を受けるのが一般的です。しかし、事前にM&A戦略を細かく決めておかないと買収企業の選択を間違うおそれがあります。
買収企業の選択の失敗は、M&Aの最初の段階では失敗したことに気づきにくく、合併・買収後にリスクに気づくことがありますが、そのときにはもう手遅れのパターンが多いです。M&Aの事前準備として、買収企業候補の細かな設定と重要視するポイントを理解しておきましょう。
③FAや仲介のいいなり
M&Aで買収を行う際の失敗要因としては、ファイナンシャルアドバイザー(FA)やM&A仲介会社のいいなりとなり、M&Aを進めることも挙げられます。この失敗事例は、ファイナンシャルアドバイザーやM&A仲介が持ち込んできた案件に、いわれるがままに買収してしまうことで生じます。
失敗する理由は、M&A仲介会社などは買収側の本質的な事業の強みや重要視している部分を理解せずに案件を持ち出してくることがあるためです。
信頼できないファイナンシャルアドバイザーやM&A仲介会社などに依頼しなければ、問題ありません。しかし、新規事業への参加などの場合、どうしても異業種になるのでその事業に詳しいアドバイザーやM&A仲介を選んでしまうことが少なくありません。事前相談やM&A戦略を立案する場合は、細かなところまで打ち合わせ・相談をしておいた方が良いでしょう。
④デューデリジェンスの不足
M&Aのデューデリジェンス(DD)とは、専門家に売却企業の財務状況やコンプライアンスの状況を調査してもらうことです。デューデリジェンス(DD)不足はトラブルを生む要因です。
デューデリジェンス(DD)を実施した際は、少なからず何らかの知り得なかった事象が発覚します。その際に細かなことを見落としてしまったり、高額であるためにデューデリジェンス(DD)自体を自社内部のスタッフで行ったりすることがあります。これはM&Aに失敗する典型的な要因です。
デューデリジェンス(DD)費用は安くないものの、実施を怠ると将来的に都合の悪い事実が発覚した際に対処しきれない場合があります。M&Aで買収する側は、調査に時間とコストをしっかりとかける必要があります。
⑤根拠のない自信
M&Aでは証券会社からの紹介案件だと失敗するケースが多く、付き合いのある取引先や顧客とのM&Aでは成功しやすいと勘違いしてしまうことも失敗の要因の1つです。
この失敗の原因が日本のM&Aではよくある「情」によるものです。M&Aはあくまでもビジネス上の取引であり、企業の将来を決めるものなので、情が入ることによりリスクを理解せず失敗してしまいます。
「数十年の付き合いだから」「優良顧客だから」など根拠のない自信ではなく、事業を行うかどうかは明確な根拠をもとに推論しないとM&Aは失敗してしまいやすいです。
なぜなら、M&Aは失敗する確率の方が高く、リスクを回避しないと事業自体がなくなってしまう取引であるためです。
⑥根拠のない価格設定
これはオーナー系企業にありがちな失敗事例ですが、企業の評価ロジックを熟知しないまま他社の買収事例から根拠のない価格目線を持ち、買収時の金額交渉で足かせとなるパターンです。
特にこのパターンで多いのが、価格交渉より前にデューデリジェンス(DD)などのプロセスを行ってしまい、その費用をもったいなく感じて、少し高値で交渉されても応じてしまうパターンです。
M&Aでの価格の算定・評価はファイナンシャルアドバイザー(FA)がしっかりと熟知しているので、デューデリジェンス(DD)の結果も踏まえて考えられるよう、専門会社に依頼し根拠に基づいた金額交渉を行いましょう。
⑦責任の所在が不明確
M&Aで買収・合併をした場合、当然買収側の企業の代表者がトップに立ちます。しかし、形だけの代表者となるケースが多く、会社の責任を一身に背負う存在がいなくなるリスクがあります。
この要因として考えられるのは、M&A後に実務上は別の会社のままで各事業が前の事業を行い続ける場合が多く、会社が重大なミスを犯してしまっても責任の所在が不明確となることです。M&Aを実施する際は、事業ごとに責任の所在を明確にする必要があります。
⑧従業員の離脱
失敗事例として表に出てこない場合が多いですが、この要因でのM&A失敗事例は日本のみならず海外でも多いケースです。
企業統合後に企業文化の違いから、買収企業の優秀な人材が離職してしまうことは多々あります。これにより予想していたシナジー効果が得られないと、M&Aの実施自体が失敗と評価されてしまいかねません。
実際、M&Aで買収を行う際に「買ってみないとわからない」とよくいわれますが、この要因に顕著に現れています。
この場合、最終契約前に統合後のプロセスをしっかりと組み立てることや、買収した会社側が強くなってしまうことを防ぐために適切な権限委譲を行うことなどが必要です。
⑨簿外債務の見落とし
M&A契約は、それまでに行ったM&Aプロセスを総まとめにするものです。デューデリジェンス(DD)や専門家の調査で発覚した事象も含めてM&A契約を締結します。
このときに、デューデリジェンス(DD)で簿外債務が示唆されていなかったり、示唆されているのにもかかわらず簿外債務がないことを表明保証に加えなかったりすることなどをM&A契約でカバーすることが必要です。なぜなら、簿外債務が顕在化した場合に売り手企業に請求できなくなってしまい、買い手企業が負担することになるためです。
ポイントとしては、契約条件交渉などの際はM&Aに関して専門的な人と相談し、細かな部分もしっかりと打ち合わせし契約を進めていくことが大切です。
⑩買収対象の業績悪化
売り手企業は、買い手企業に対してあえて対象会社が経営悪化している状況を伝える義務はありません。もちろん虚偽の情報を与えることは違法ですが、基本的な経営状態以外に悪化している状況を伝える必要はありません。
M&Aでは業績状況を把握していないと、統合後に業績が悪化している事象が発覚し、結果として事業を拡大するなどの効果が得られなくなってしまい失敗します。
売り手企業が虚偽の事実を伝えることは、ルール違反です。しかし、周知である市場動向などを自分から教える義務はありません。デューデリジェンス(DD)はもちろん、市場動向なども考慮しつつ買収を進めることが重要です
⑪買収後の放置
このケースは海外で多く、経営陣に買収後も引き継ぎ経営を任せてしまうものの、経営陣がインセンティブなどを失っており、企業経営が破綻してしまう可能性があります。しっかりとPMIを実施したり、経営戦略を見直したりすることが大切です。
6. M&Aの失敗要因(売却側)
M&Aの売却側は事業や会社を譲渡することを目的に掲げますが、買い手企業がいれば売却に成功するとは限りません。
買い手企業がいてもさまざまなプロセスの中で交渉が破談してしまったり、後々トラブルとなる要因を対処したりしておかないと責任問題にもなりかねません。M&Aにて売却側の失敗する要因もしっかり理解しましょう。
売却側のM&Aの失敗要因は主に以下のとおりです。
- 買収側のいいなり
- 情報漏えいによる取引停止
- 株券・株主名簿の未整備
- 議事録の書類不足
- 合理性がない条件変更
- 簿外債務の有無
- 不誠実な対応
- M&A手続き中の業績悪化
- 株主と役員の意思が統一しない
①買収側のいいなり
M&Aを行う際に「弊社が買収すれば、シナジー効果があるため、これだけバリューアップできます」といったように買い手企業が自信満々に乗り込んで来ることもあります。しかし、このようなM&Aの場合、条件の交渉が高圧的になりM&Aの成功は難しいでしょう。
高圧的な態度の企業では従業員の離反や反発などの問題が起きることが多く、よほどの場合でない限りは買い手側の条件に乗らない方が得策だといえます。
②情報漏えいによる取引停止
売り手企業で失敗してしまうことが多いパターンです。M&Aの売却側は情報漏えいに関して特に厳重に管理する必要があります。M&Aの実行自体を周囲に知られない方が良いケースも多く、顧客などがいる場合は不安を抱かせかねません。
情報漏えいが起こると、取引自体が停止になってしまったり、最悪の場合はその後の売却にも影響したりする場合があります。
③株券・株主名簿の未整備
株式の譲渡などをM&Aで行う場合、売り手側の企業では株券・株主名簿の整備をしておく必要があります。M&Aを行う際に株券・株主名簿が未整備の状態では、M&Aが成約して株式を譲渡する際につまずいてしまい、取引が中断することもあります。
中小企業にありがちですが、株券と株主に関する記録をまったく行っておらず、経営者が記憶しているのみの状態になってしまっているケースが多いです。売却側は事前に調査を行い、自社の株式の実態をしっかりと残しておきましょう。
④議事録の書類不足
議事録は、買収側の企業にとっては売却側の企業の動向をチェックする重要な書類です。議事録を整備していない企業は役員登記などをしっかりと行っていない場合があるので、信用を大きく落とし、売却までの交渉がうまくいかず、結果として失敗になることが多いです。
M&Aをする際は、株式総会議事録・取締役会議事録の2つの書類に関して前もって整備しておき、未整備の状態で長期間放置されている場合は司法書士など専門家に相談しましょう。
直近3期分まで整備しておけば、議事録の調査で問題が生じることはほとんどありません。
⑤合理性がない条件変更
M&Aでは、買い手企業と売り手企業の希望条件が異なることが多いでしょう。売り手は可能な限りキャッシュを獲得する必要がありますし、買い手は極力費用を抑えなければなりませんので、この状況に陥るのは当然といえます。
M&Aが成約直前になり条件の変更を申し出ると、変更に向けた十分な準備期間が得られないため、M&Aは失敗となってしまうでしょう。
売り手企業で多く見られる、合理性のない条件変更の事例としては、買収に興味を示している企業が他に現れた場合に譲渡価格の引き上げを希望することなどが挙げられます。
⑥簿外債務の有無
簿外債務はM&Aで買い手企業に深刻なリスクになり得るものなので、買い手企業は対して入念に調査を重ねます。
簿外債務は買い手企業の信用を失うことになりかねません。保証やデリバティブに関する債務なども、売り手側は作らない方が良いでしょう。悪意の有無にかかわらず、買い手企業からすれば簿外債務には変わりありません。
⑦不誠実な対応
この失敗の要因は、M&Aを行う買い手企業と売り手企業の両方にあります。
売り手企業では、希望条件が満たされないからといって情報提供を渋ってしまったり、直前に条件変更を申し出たりするなど、不誠実な対応がたびたび見られます。必要な情報はすべて提供し、そのうえで条件に不満がある場合はM&Aアドバイザーに相談するのが懸命です。
⑧M&A手続き中の業績悪化
M&Aの成約にかかる期間としては3カ月から12カ月程度といわれており、この期間中に業績が悪化してしまうケースも日本国内・海外ともに多く存在します。
ビジネスは季節やその年のトレンドなどにより売上高が左右することも多く、M&A手続き期間でも売却するものだからと気を抜いたり、売却のことばかり考えたりしてしまうのは望ましくありません。経営者も本業に力を入れて取り組み、M&Aの手続きが終わるまで両立することが大切です。
⑨株主と役員の意思が統一しない
M&Aの売り手側・買い手側双方にいえますが、特にこの失敗事例で多い要因は売却側の役員との意見の不一致です。役員と経営者の意思の不一致はM&Aを進める前に判明していれば大きな問題にならないものの、交渉の途中で判明してしまうことがあります。
この場合、スムーズな交渉が行えなくなり、買い手候補の企業が見つかっているのにもかかわらず売却できずに失敗してしまいます。最悪な場合は、時期を逃すことで、企業が破綻するまで事業を続けることになりかねません。
M&Aで失敗したくないならM&A総合研究所に相談しよう
M&Aを成功させたい場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに詳しいM&AアドバイザーがM&A案件をフルサポートします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
7. M&Aで失敗しないための対策
M&Aが失敗する要因を、買収側、売却側に分けて紹介しました。以下では、失敗に陥らないために有用なM&A成功に導く方針を6つ紹介します。
①M&Aの目的に応じて戦略を策定する
M&Aは会社の経営戦略の一手段であって、目的ではありません。会社全体の方針から「なぜこのM&Aをやるのか」を導けなければ、従業員は不安に感じ、M&Aの成功確率は低下します。
経営戦略内のM&Aの位置づけとは、例えば「販路拡大」「関連事業分野への進出」「新規事業創出」などです。自社がM&Aを行うことの必要性を認識している従業員が多いほど、そのM&Aの成功確率は高くなります。
②自社にふさわしい相手先企業を選ぶ
2つの会社がM&Aにより1つになる以上、2つの会社の業績の単純加算よりも高い業績を目指さなければ意味がありません。複数の中から相手先企業を選ぶためには、感覚的に決めるのではなく「なぜふさわしいのか」を言語化する必要があります。
一般的には、「売却のニーズ」「シナジー効果」「財務健全性」「実現可能性」の観点から分析すると良いでしょう。
売却のニーズ
自社と親和性のある企業・事業が存在する場合、その事業を売却するニーズがあるか検討します。
売り手企業の経営者が高齢だったり、別事業を行いたいと考えていたりして事業承継先を探している場合は、相手の売却ニーズが高いでしょう。それ以外にも、企業グループにおける非中核の子会社・事業は売却ニーズが高いといえます。
シナジー効果
買い手企業と売り手企業の持つビジネス上のリソースが化学反応を起こし、2社の単純合算した以上の業績を達成することを「シナジー効果」といいます。
買い手企業の事業分野や販路、ノウハウなどを使って、売り手企業の持つ技術を伸ばしていけるかどうかが重要です。買い手と売り手の経営戦略が合致しているかどうかの試金石になる観点です。
財務面の健全性
相手の財務面の健全性のチェックはM&Aの事前準備として必須です。
買い手企業からすると、売り手企業の財務状態が悪ければ、想定外の追加出資や負債を抱える可能性があります。逆に売り手企業からすると、買い手企業の財務状況がひっ迫しているなら、売り手企業の現預金や資産が吸い上げられる危険性が高いでしょう。
収益性・安全性の観点から、相手方の財務データを分析することが大切です。
M&Aの実現可能性
どれほど相手方の条件が良くても、M&Aが実現不可能であれば交渉を行う意味はありません。実現不可能とは、「オーナー株主の判断」「買収価格目線が全く違う」の2パターンが一般的に挙げられます。
株主構成の中に買収に賛同しなさそうな株主がいたら事前に意向を確認したり、買収価格目線を早期にすり合わせたりすることが必要です。
③企業価値評価を行う
M&Aの実現可能性の要素として、「買収価格目線」の観点があります。M&Aにおける買収価格目線はいわゆる「企業価値評価」によって定めることが一般的です。
実際に計算し、相手方と買収価格目線をすり合わせる際に参考にすると良いでしょう。
コストアプローチ
コストアプローチでは、売り手企業の貸借対照表に記載されている純資産額を企業価値と考え、売却価格の基準にします。資産と負債のみによって企業価値が測られるので、将来期待される収益やキャッシュフローの価値が織り込まれていない計算方法です。
直感的にわかりやすいため、小規模M&Aで広く使われます。
インカムアプローチ
インカムアプローチはファイナンス理論をベースにした方法で、対象企業の将来のキャッシュフロー(期待収益)を現在価値に割り引き、その合計を企業価値とします。
具体的には、売り手企業の事業計画から計算されたフリーキャッシュフローを、アドバイザーが理論的に計算した割引率で割り引いて求められます。
合理的な方法である一方、相手との前提の共有が難しく、水掛け論になることも少なくありません。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、類似上場企業の株価と業績(営業利益やEBITDAなど)の倍率をベンチマークとして、対象企業の業績から想定株式価値総額を計算する方法です。
具体的には、売り手企業の業績の数値に、M&Aアドバイザーなどが算出した類似上場企業の倍率を掛け合わせて求められます。
上場を控えた会社で広く用いられる傾向にあり、非上場企業のM&Aの世界でも頻繁に取り上げられる方法です。
④デューデリジェンスを徹底する
M&Aプロセスの中で専門家の手を借りて行うデューデリジェンスも、M&Aの成功のために重要です。デューデリジェンスでは、将来のキャッシュアウトの原因となる簿外債務や社内外トラブルの発見はもちろんのこと、M&Aによるシナジーおよび経営戦略の実現に関する確認事項が重要です。
デューデリジェンスの内容によって企業価値評価に影響を及ぼす項目もあるので、注意する必要があります。
⑤経営統合(PMI)を念入りに準備する
買収成立後は、買い手企業と売り手企業のどちらも経営統合(PMI)に取り組む必要があります。PMIでは、M&Aを手段とする経営戦略の実現のために行われる各種施策を実行しなければなりません。
具体的には、買収後の3カ月程度の期間を使い、シナジーを見込んだ中期経営計画を作成することが多いでしょう。社風や社内規則のすり合わせなどを行う必要もあり、極めて多忙になることが予想されます。
上場会社ではM&Aの成果が比較的早期に求められる雰囲気があるため、迅速なPMIがM&Aの成功に大きな影響を持ちます。
⑥M&Aの専門家からサポートを受ける
相手先候補の選定からPMIに至るまでには多様な知識が必要となるため、すべてを自社内で完結させるのは非常に難しく、外部の専門家に頼ることは必須です。
しかし、M&A分野は近年高度化しており、成功のためには気を付けるべき点が多数あるにもかかわらず、知識・経験が不足しているアドバイザーが多くいます。
M&A総合研究所は、主に中堅・中小企業を中心にM&Aのお手伝いをしている仲介会社です。経験豊富なアドバイザーが、M&Aを通じた経営戦略の実現や経営計画の実現をサポートします。当社は成約の強みは「成約までのスピード」で、最短で3カ月での成約実績があります。スピードを重視することで機動的なM&A戦略を実現でき、結果としてM&Aの成功につながるでしょう。
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8. M&Aを失敗する理由・事例まとめ
M&Aを進めるプロセスの中には、至るところに失敗の要因となる事項が潜んでいます。失敗事例から推測すると、こまめなチェックが足りていなかったり、コストを使わずにM&Aを行おうとしたりするケースで失敗事例が多いです。
M&Aは企業の将来を左右する経営戦略であり、従業員や関係者にも被害が及ぶこともあります。M&Aを実施する際は、細かいチェックや合理的な取引を行えるよう、専門家のアドバイスや第三者からの意見も取り入れることがM&Aを成功させる切り札といえます。
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