フリーキャッシュフローとは?計算方法や目安から利用する場面まで解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、フリーキャッシュフローの計算方法や目安などを解説します。フリーキャッシュフローとは、会社が自由に使える現金のことです。フリーキャッシュフローがプラスであれば、金融機関の融資に頼らなくとも事業展開が可能です。経理について知識をつけたい方は必見です。

目次

  1. フリーキャッシュフローとは
  2. フリーキャッシュフローから分かること
  3. フリーキャッシュフローの計算方法
  4. フリーキャッシュフローの目安
  5. フリーキャッシュフローを利用する3つの場面
  6. フリーキャッシュフローのまとめ
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1. フリーキャッシュフローとは

フリーキャッシュフローとは、事業で生み出した利益のうち経費を差し引いた後の会社が自由に使える現金のことです。

フリーキャッシュフローが多いほど資金が豊富であることを意味しており、借入金の返済や事業規模拡大の設備投資など、さまざまな資金運用が可能です。単純な資金運用としての使い道のほか、企業の経済状況を調査する際の指標としても使われています。

フリーキャッシュフローを把握して経済状況を明示できれば、M&Aを行う際の企業価値にも活用可能です。フリーキャッシュフローを計算するうえで重要な要素が3つあります。この章では「営業活動」「投資活動」「財務活動」のキャッシュフローを詳しく解説します。

営業活動のキャッシュフロー

営業活動のキャッシュフローは、商品の販売・仕入れや経費・人件費の支払いなどの営業活動から生じるキャッシュの量です。企業の営業活動はキャッシュを獲得するために行っているものなので、営業活動のキャッシュフローはプラスであることが望ましいです。その反面、マイナスの場合は営業活動がうまくいっていないことを表しています。

ただし、企業の成長過程で一時的に営業活動のフリーキャッシュフローがマイナスになっていることもあります。マイナスのときは、何が原因なのかを見極めることが大切です。

営業活動のキャッシュフローのうち業績を表すものは、営業利益・法人税などの支払いや減価償却費があります。特に営業利益は重要な要素であり、営業活動のキャッシュフローをプラスにしたい場合は営業利益の増加がポイントです。

投資活動のキャッシュフロー

投資活動のキャッシュフローは、固定資産(土地・建物・設備など)の取得・売却などの投資活動から生じるキャッシュの量です。投資活動のキャッシュフローの変動は、固定資産を取得したときはキャッシュが流出するためマイナスとなり、固定資産を売却したときはキャッシュを獲得するためプラスとなります。

企業の事業活動は固定資産の運用が必須なので、投資活動のキャッシュフローは基本的にマイナス状態であることがほとんどです。企業の方針や業種によってはある年に投資が集中することもあり、その年の支出によりフリーキャッシュフローがマイナスを示していても、最終的にはフリーキャッシュフローがプラスになることがあります。

財務活動のキャッシュフロー

財務活動のキャッシュフローは、企業が営業活動を行うための資金調達や返済による増減を表すキャッシュの量です。投資家や金融機関からの融資で資金調達を行うと一時的に事業資金を獲得できますが、いずれは返済するべきキャッシュであることや利息が発生することからキャッシュフローは悪化します。

とはいえ、借入金がゼロで自己資本比率100%を目指すことが、必ずしも正しい選択であるとは限りません。調達した資金を元手に早期の事業成長を図れるので、一時的に負債を負う選択が求められることもあります。

大切なのは、財務活動のキャッシュフローの増減を確認し、企業の財務状況を正確に把握しておくことです。企業の返済能力を超えないように常に注意しておけば、健全な状態を保つことが可能です。

M&Aの企業価値評価(バリュエーション)について、下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

【関連】M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?算定方法の種類、メリット・デメリットを解説【事例・動画あり】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

2. フリーキャッシュフローから分かること

会社はフリーキャッシュフローがなければ、自由に事業活動を行えません。フリーキャッシュフローの値は企業の経済状況の指標としても活用されており、プラスかマイナスかで大きく状況は変わります。

この章では、会社のフリーキャッシュフローがプラスとマイナスの場合に分かる状態を解説します。

フリーキャッシュフローがプラスの会社について

フリーキャッシュフローがプラスの会社は、会社が使える資金があることを意味し、プラス分の使い道を自由に決定できます。フリーキャッシュフローの使い道は企業の方針にもよりますが、追加投資や借入金の返済などが一般的です。

追加投資であれば、さらなる企業成長を図ることが可能です。外部からの資金調達に頼ることなく、既存事業の強化や新規事業立ち上げによる事業の多角化などを実施できます。

借入金の返済に充てる場合は、自己資本比率を高めて財務状況の健全化を図れます。財務状況の悪化が長期にわたって続いていると企業として好ましくないので、余裕のあるうちに返済しておきましょう。

フリーキャッシュフローがマイナスの会社について

フリーキャッシュフローがマイナスの会社は、会社が自由に使える資金が少ないことを意味します。事業資金を自己資本でまかなうことが難しいため、投資家・金融機関からの融資や固定資産の売却などによる資金調達が必須です。

なお、プラスの会社と比較すると楽観できる状態ではありません。しかし、企業成長を目指すうえで一定以上の支出は必要経費となるため、「フリーキャッシュフローがマイナス = 危険な状態」とは限りません。

特にベンチャー企業やスタートアップなどは先行投資の考え方が強い傾向にあり、現段階でマイナスでも将来的にプラスに転じるケースが多いでしょう。積極的な投資が必要である場合は、フリーキャッシュフローがマイナスでも割り切ることも必要です。

M&Aの企業価値評価について、下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

【関連】M&Aの企業価値評価とは?算出方法を詳しく解説!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

3. フリーキャッシュフローの計算方法

フリーキャッシュフローは、営業活動のキャッシュフローと投資活動のキャッシュフローを足した値です。基本的に投資活動のキャッシュフローはマイナスな状態であるため、「営業活動のキャッシュフローから投資活動のキャッシュフローを差し引く」とも捉えられます。

営業活動のキャッシュフローのプラス分が投資活動のキャッシュフローのマイナス分を上回っていれば、営業活動の収益で投資活動の支出をまかなえていることを表しているため、健全な経営状況であることが分かります。

会社の成長には、事業活動のための設備導入や維持費用が必要です。特に製造業の場合は、土地や設備投資に多大な資金が必要になるので、正しい計算方法を把握しておくことが大切です。

フリーキャッシュフローの計算方法は下記になります。

  • フリーキャッシュフロー = 営業活動のキャッシュフロー + 投資活動のキャッシュフロー

財務活動のキャッシュフローは、企業の財務状況を分析するために活用されます。企業成長を図るためには融資などの資金調達が必要不可欠なので、フリーキャッシュフローとのバランスを見ながら状態を見極めることが重要です。

キャッシュフロー計算書とは

株式を公開している企業は、キャッシュフロー計算書を作成する決まりです。キャッシュフロー計算書とは、他の諸表では見えにくいキャッシュの流れを明確にするために必要な書類をさします。

損益計算書では赤字・黒字、貸借対照表では売掛金の状況が判断できるものの、キャッシュの状況までは示されません。例えば、売上を計上していても実際の入金までは判断できないことから、現状がつかみにくいです。キャッシュフロー計算書は、こうした空白の部分を補足するために役立ちます。

非上場企業のフリーキャッシュフローの計算方法

上場企業はキャッシュフロー計算書の作成が義務付けられているため、計算書に記載されている値から簡単に計算することが可能です。

しかし、非上場企業にはキャッシュフロー計算書の作成義務がないので、近い概念である資金繰り表を作成しているケースが多いです。資金繰り表は資金の流れを把握できるので、機能的にはキャッシュフロー計算書と同等であるといえます。

フリーキャッシュフローの計算方法は下記のとおりです。

  • フリーキャッシュフロー = 税引き後営業利益(営業利益 ×(1 - 実効税率))+ 減価償却費 - 設備投資 - 運転資金増減額

上の計算式にそれぞれの値をあてはめることで、非上場企業の場合でも簡単に計算できます。EBITDAによる評価倍率の概念に近いため、M&Aの際の企業価値評価でも有効活用できます。

M&Aに関するご相談はM&A総合研究所へ

フリーキャッシュフローは、企業の経営状況を図る指標として有効活用されています。M&Aにおける企業価値評価の際もフリーキャッシュフローが大きく影響するため、専門家に相談することがおすすめです。

M&A総合研究所は、M&A・事業承継の仲介サポートを行うM&A仲介会社です。中堅・中小規模のM&A案件を中心に請け負っており、非上場企業のフリーキャッシュフローの計算も豊富な経験と知識を有しています。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。M&Aやフリーキャッシュフローにお悩みの際は、お気軽にM&A総合研究所の無料相談をご利用ください。

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4. フリーキャッシュフローの目安

フリーキャッシュフローがプラスならば資金に余裕があることを表しているので、フリーキャッシュフローは多ければ多いほど企業にとって望ましい状態です。

健全な状態と判断できるフリーキャッシュフローの目安は業種によっても変わりますが、事業資金を自己資本でまかなえるくらいあれば十分な状態といえます。

しかし、企業は成長するために積極的な投資が必要なこともあります。将来的な収益価値を獲得するための一時的な支出であることもあるので、フリーキャッシュフローがゼロに近かったりマイナスだったりしても必ずしも悲観する必要はありません。

企業の経済状況を正しく把握するためには、数年分のフリーキャッシュフローを分析することが大切です。フリーキャッシュフローの使い道や経営戦略も考慮したうえで判断しなくてはなりません。

DCF法について、下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

【関連】【企業価値算定】DCF法とは?計算式や割引率、メリット・デメリットをわかりやすく解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

5. フリーキャッシュフローを利用する3つの場面

フリーキャッシュフローは、企業の資金としてさまざまな場面に活用できます。主な利用場面は、以下の3つです。

  • 新規事業資金
  • 株主分配
  • 返済

新規事業資金

フリーキャッシュフローの1つ目の使い道は、新規事業資金です。新規事業の目的や必要性を明示した事業計画を提示できれば、株主からの了承を得て新規事業資金に回せます。

フリーキャッシュフローを新規事業資金に回すと株主への配当金は減少しますが、資金をうまく活用して新規事業を軌道に乗せられれば、将来的な収益を確保することにつながります。

新規事業立ち上げによる企業成長は株価上昇にもつながるので、最終的には株主にとっても利益となることが多いです。フリーキャッシュフローを有効活用するためにも、入念な事業計画を作成したうえで新規事業に取り組むことが大切です。

株主分配

フリーキャッシュフローの2つ目の使い道は、株主分配です。事業資金を確保したうえで余剰金が出た場合は、株主への分配に充てることが可能です。

株主分配が大きいほど株主にとってはうれしいものですが、配当の権利落ちによる株価下落リスクに注意する必要があります。高配当すぎる場合はフリーキャッシュフローが悪化してしまう可能性もあります。

株主分配は、現金以外にサービスや製品で支払われることも少なくありません。株主分配を目的に株主になっている投資家も珍しくないため、分配に力を入れる企業も多いです。

返済

フリーキャッシュフローの3つ目の使い道は、返済です。新規事業資金や株主分配に使ってもなおフリーキャッシュフローが手元に残る場合は、借入金の返済に充てる使い方が有効です。

投資家や金融機関からの融資を受けている場合は、常に利息が増加しています。ただ年月がたつだけでもキャッシュフローは悪化し続けているので、フリーキャッシュフローに余裕があるならばできる限り早めに返済しておくことが望ましいです。

借入金の返済を進めると負債価値が減少し、企業価値における株主価値の割合が高まります。自己資本比率が高まると倒産リスクが低くなり、健全な経営状況にあることを対外的に示すことが可能です。

自己資本比率の向上は株価や企業価値の向上にもつながりやすいため、間接的な企業成長を期待できます。

6. フリーキャッシュフローのまとめ

フリーキャッシュフローは、多いほど自由に使える現金が多いことを意味します。持続的な企業成長を図るためには効果的な資金運用が重要なので、フリーキャッシュフローに関する理解は必要不可欠です。

フリーキャッシュフローに関する分析が難しい場合は、専門家に助言を仰ぐのも1つの方法です。分析と同時に改善策を模索することも可能なので、早期に相談しておくことをおすすめします。

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