2024年06月24日更新
M&Aにおけるトップ面談とは?事前準備や流れ・成功のポイントまで解説!
M&A交渉において、その成否を大きく左右すると言われているのがトップ面談です。
今回は、M&Aにおけるトップ面談とはどういったものなのか、その目的や事前準備の内容、トップ面談の流れや成功するためのポイントと注意点について解説します。
1. トップ面談とは?
M&Aにおけるトップ面談とはどういった目的で行われるのでしょうか。以下の3つのポイントに分けて解説します。
- M&Aにおけるトップ面談の目的
- M&Aでトップ面談が実施される場所
- トップ面談のタイミング
M&Aにおけるトップ面談の目的
M&A交渉におけるトップ面談は、買い手企業と売り手企業の経営者が初めて直接顔を合わせる場です。
トップ面談の目的とは、直接顔を合わせることで、業績や売上などの数字や文字情報だけでは知ることのできない、お互いの経営者の人間性や経営理念などを把握することで、お互いの理解を深める目的で行われます。
異業種同士で行うM&Aの場合に限らず、同業種の場合でも、買い手側企業が売り手側企業のことを詳しく把握していない場合のことも多いです。
そのため、経営者同士の挨拶の場としての目的でトップ面談を行う面もありますが、M&Aの複数の交渉を始める前に両社の事業に関する疑問の解消などを行う目的で行われることもあります。
M&Aでトップ面談が実施される場所
トップ面談では、買い手側企業に売り手側企業のオフィスの雰囲気を把握してもらう目的で、一般的には売り手側企業の社内で行われることが多いです。
ただし、機密保持の問題で、M&Aの仲介業者のオフィスや金融機関の応接室、ホテルの会議室などで行われることもあります。
また、トップ面談を複数回実施する場合は、2度目を別の場所(1度目が売り手側企業のオフィスだった場合は買い手側企業のオフィス)で行われたりします。また、売り手側企業が製造業などの場合は、店舗や工場見学を兼ねた目的でトップ面談を行うこともあります。
トップ面談のタイミング
トップ面談は、本格的にM&Aの交渉が始まる前の段階に行うことが一般的です。売り手側企業の決算書などを基にして書面での初期検討の後の「意向表明書」の提出前に行われることが多いです。
ただし、トップ面談のタイミングや回数の厳密な決まりはないため、疑問点の解消などの目的で、複数回行われることもあります。
トップ面談の参加者
トップ面談の出席者は、大きく譲渡側、譲受け側、紹介元の3つに分けられます。仲介会社が関与している場合、M&Aコンサルタントも参加し、進行役を務めます。
まず、譲渡企業(売り手)側では、株主や経営者など、意思決定権者が出席します。経営者が株主でない場合、M&Aが既に開示されているなら、譲受け側からの質問に対応するために経営者が同席することがあります。
株主が複数いる場合は、筆頭株主や過半数の議決権を持つ株主が出席します。また、仲介会社を介している場合、取引金融機関や顧問の会計事務所の紹介を受けていることがあり、その場合は金融機関の支店長や会計士も同席することがあります。
次に、譲受け候補企業(買い手)側では、経営陣やM&A担当責任者などの意思決定権者が出席します。場合によっては技術部門や工場部門の責任者も参加します。しかし、譲渡側の出席者よりも譲受け側の出席者が多いと、譲渡側に過度な圧迫感を与える可能性があるため、人数の調整には注意が必要です。
2. トップ面談の事前準備
多忙な経営者同士が直接顔をあわせるトップ面談は、一般的に1時間半から2時間といった限られた時間で行われます。
その限られた時間を有意義な時間とするためにも事前準備は大切です。事前準備で行なっておくべき以下の4点について解説します。
- 事前準備①情報収集を行う
- 事前準備②質問事項・疑問点をまとめる
- 事前準備③自社の情報を整理する
- 事前準備④日程の調整
情報収集を行う
事前準備としてまず大切なのが、トップ面談前に相手企業の情報収集をあらかじめ行なっておくことです。異業種同士に限らず、同業種同士での相手の会社の情報が乏しいことはあります。
そのため、事前準備として企業ホームページで情報収集を行いましょう。他にも、東京商工リサーチや帝国データバンク、日経テレコンなどで情報収拾を行うことも良いでしょう。
また、相手企業だけでなく、出席者個人に関する内容を把握しておくことで、トップ面談を和やかに進めることができ、スムーズな信頼関係の構築にもひと役買うことに繋がります。
質問事項・疑問点をまとめる
収集した情報を基にM&Aを検討する上で必要な内容を精査し、質問事項や疑問点をあらかじめまとめておきましょう。主な質問事項としては、以下のようなものがあります。
- 所在地や従業員数など基本的な企業情報
- 経営者個人の経営理念や経営に対する価値観
- M&A検討をしている理由
- M&A後に想定しているシナジー効果
自社の情報を整理する
自身が相手企業へ質問するのと同様に、相手からも自社への質問はあります。スムーズに質問に答えられるように自社の創業経緯や事業内容とその裏にある考え方、組織体制など自社に関しての情報を事前に整理しておくことも大切です。
その際に、自社の会社案内や製品のパンフレットなど関連資料などを用意しておくと、より深い理解に繋がるでしょう。
日程の調整
M&Aの仲介業者に依頼している場合、日程の調整は仲介業者が行なってくれます。トップ面談当日までに相手先の情報収集や質問事項・疑問面を整理してまとめる作業、自社の情報の整理や必要となる書類の用意にも時間を必要とするため、余裕を持った日程に調整しましょう。
3. トップ面談の流れ
一般的なトップ面談の流れやその際に行われる店舗・工場の見学の際の注意点について解説します。トップ面談の大まかな流れは以下の4つとなります。
- トップ面談の流れ①名刺交換
- トップ面談の流れ②自社紹介
- トップ面談の流れ③質疑応答
- トップ面談の流れ④店舗・工場の見学
M&Aの仲介業者を利用する場合は、進行の流れについては一任する場合も多いです。
①名刺交換
トップ面談の流れとして、まずは開始時間前に参加者全員が会場に集合し、名刺交換を行います。名刺交換が終わったら、上座に売り手側企業が着席し、下座に買い手側企業が着席します。
②自社紹介
自社に関しての資料を配布し、双方の代表者が自社紹介を行います。大体、10分から15分程度の時間が良いでしょう。
③質疑応答
自社の紹介が終わったら、質疑応答やフリーディスカッションの時間となります。この時に、事前に用意しておいた疑問点などに関して質問しましょう。
④店舗・工場の見学
売り手側企業が店舗や工場を持つ業種の場合は、トップ面談の際に店舗や工場の見学が行われることがあります。ただし、トップ面談が行われる段階では、従業員が自社がM&Aを検討していることを知らない場合が多いため、見学の際に不審に思われないように配慮することが大切です。
そのため、事前に従業員に店舗や工場へ見学に行く旨を伝えておくなどしておくと良いでしょう。
また、従業員への情報の漏洩を防ぐために、店舗や工場の見学が休日に行割れることも多いです。
4. トップ面談の成功へのポイント
トップ面談の成功へのポイントについて、考えるべきポイントを買い手側企業と売り手側企業それぞれの立場ごとに解説します。
買い手側企業の心得
買い手側企業が意識しておくべき主なポイントは、以下の2点です。
- ポイント①将来のビジョンや期待するシナジー効果を明確にする
- ポイント②売り手企業を尊重する
将来のビジョンや期待するシナジー効果を明確にする
トップ面談の際に売り手側企業は、以下のような点を聞きたいと考えています。
- 自社に関心を持った理由
- M&Aが行われた将来にどのようなビジョンを持っているのか
- M&Aが行われたことによって期待されるメリットやシナジー効果はどういったものか
そのため、前もって将来のビジョンや期待するシナジー効果を明確にしておかないと、売り手側企業への質問内容が的外れとなってしまい、無為な時間を過ごすことにつながります。
他の買い手側企業と競合していることもあるため、前もって将来のビジョンや期待するシナジー効果について明確にしておくことで、有益なトップ面談の時間とするとともに、売り手側企業の心を掴みましょう。
売り手企業を尊重する
日本における中小企業のM&Aは、年々その成約実績も増加傾向にあり、それと共にM&Aに対する理解も深まっています。しかし、それに反して売り手側企業より買い手側企業の方が立場が上であるといった誤解は未だに見られます。
前提として、M&Aにおいて売り手側企業と買い手側企業の立場は対等です。また、M&Aを成功させるためには、お互いの信頼関係は欠かすことができません。
多くの場合、買い手側企業はM&Aの検討も複数人で行われることが多いですが、売り手側企業は経営者が1人であったり、夫婦経営などが多く、少人数で検討をするケースもあります。
ただでさえ不安や孤独を感じている中、買い手側企業が売り手側企業のことを下に見たり、そう捉えられてしまうような言動を行ってしまうと信頼関係を築くことは困難になります。些細な問題に拘泥して、細かすぎる質問を売り手側企業に行うなどを避けるように配慮しましょう。
売り手側企業の心得
売り手側企業が意識しておくべき主なポイントは、以下の2点です。
- ポイント①質問に対して正直に・正確に答える
- ポイント②信頼感が得られる態度を心がける
質問に対して正直に・正確に答える
トップ面談は、業績や売上などの数字や文字情報だけではわからない、それぞれの経営者の人間性や経営の理念などを把握することによって、お互いの理解を深めた上でその後のM&A交渉の段階に進みます。
その際に、大袈裟な表現を用いたり、事実と異なる情報を伝えると、後のトラブルにつながる恐れがあります。特に、事実と異なる情報は、M&A交渉の終盤に行われるデュー・デリジェンス(買収監査)の際に発覚することもあります。
こういった問題は、場合によっては買い手側企業から不信感を抱かれたり、時にはそれまで順調だったM&A交渉が破断するといったことにもつながります。繰り返し述べているように、M&Aにおいてお互いの企業の信頼関係は欠かすことができません。
買い手側企業からの質問に対しては、正直に・正確に答えましょう。
信頼感が得られる態度を心がける
トップ面談で買い手側企業からの質問に対して、後ろ向きな返答ばかりで売り手側企業への理解が進まずに、交渉が破談となってしまったケースもあります。
企業文化や経営資源、事業内容はお互い異なるので、今の時点で実現できないことがあるのは当然です。しかし、M&Aを成功に導くためには、トップ面談を通じてお互いの企業の理解を深めることによって信頼関係を築くことが大切です。
そのためにも、買い手側企業からの質問はポジティブな回答を心がけましょう。「無理です」や「できません」ではなく、「こうすればできるようになるかもしれません」や「買い手側企業にこの点をフォローしていただければできるかもしれません」など、事実を踏まえたポジティブな回答をすると信頼感にもつながります。
アドバイザーに条件交渉を任せる
トップ面談では、お互いの人間性や経営理念、事業内容について理解を深め、信頼関係を築くことが重要です。そのため、「株価は〇〇百万円を希望する。」といった具体的な金額の話題を出すと、場の雰囲気が一気に冷め、相手に不信感を与える可能性があります。
アドバイザーがいる場合は、当事者に代わって豊富な経験を生かした適切な交渉を行ってくれるので、安心して任せましょう。
5. トップ面談の注意点
トップ面談を成功させるために意識すべき注意点があります。主な注意点として以下の4つを紹介します。どれも重要な注意点なので、意識しておきましょう。
- 注意点①従業員や技術者に事前にしっかり説明をしておく
- 注意点②条件交渉は避ける
- 注意点③リスペクトをもった対応を心がける
- 注意点④よい第一印象を与えること
従業員や技術者に事前にしっかり説明をしておく
トップ面談が実施される段階では、従業員や技術者は、自社がM&Aの検討を行っていることを知らされていない場合が多いです。
店舗や工場見学の際に、従業員や技術者から不審に思われることのないように、事前に見学にいくことやその理由などをしっかり説明しておきましょう。また、見学の理由は買い手側企業にもあらかじめ伝えておき、話を合わせてもらいましょう。
条件交渉は避ける
あくまでもトップ面談は買い手側企業と売り手側企業の経営者同士が初めて直接顔の合わせを行う場です。その目的は、双方の経営者の人間性や経営の理念などを把握することで、お互いの理解を深めるためであり、M&A交渉に関する具体的な話はトップ会談の後の段階で行われます。
そのため、トップ会談の場で具体的な譲渡価額といった条件交渉を行ってしまうと、その場の雰囲気が損なわれ、相手方に悪い印象を与えてしまいます。
トップ面談は複数回実施されることも多いため、少なくとも初めのトップ面談では、お互いのことを知るための場とし、条件交渉は避けましょう。
リスペクトをもった対応を心がける
M&Aにおいて売り手側企業と買い手側企業の立場は対等なものです。そして、M&Aを成功させるためには信頼関係をお互いに築くことは重要です。
相手を下に見るような言動やそう思われてしまう言動を行ってしまうと、信頼関係を築くことは困難になります。特に、売り手側企業は1人や2人といった少人数でM&Aの検討を行っている場合も多く、その分不安感もあるため、買い手側企業は特に注意しましょう。
よい第一印象を与えること
M&Aにおけるトップ面談とは、買い手側企業と売り手側企業の両方の企業の経営者同士が最初に直接顔合わせを行う場です。そのため、相手によい第一印象を与えることは重要です。
服装や髪型などを清潔感あるものにすることや横柄な言動を取らない、約束した時間に遅刻しないなど、当たり前のことではありますが注意しましょう。
6. トップ面談のポイントや注意点を理解してM&Aを成功させよう!
本記事では、M&Aにおけるトップ面談とはどういったものなのか、トップ面談の目的や事前準備の内容、トップ面談の流れや成功するためのポイントと注意点について解説を行いました。
トップ面談は、M&Aを成功させるために大切な段階です。M&Aの成功は、それぞれの経営者の相性に左右される面もあるため、相手方の経営者の人間性や経営の理念などが理解や共感できるかどうかをトップ面談の場でじっくり確認しましょう。
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