事業承継で金庫株(自社株買い)を活用する方法とメリットを解説!

企業情報第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

金庫株とは、自己株式のことです。事業承継の際に発行会社が自社株を取得することで、後継者の税金負担を軽減する効果を期待できます。本記事では、事業承継の場面で金庫株(自社株買い)を活用するための方法を解説します。

目次

  1. 事業承継と金庫株(自社株買い)を活用する方法
  2. 事業承継で金庫株(自社株買い)を活用するメリット
  3. 事業承継で金庫株(自社株買い)を活用するデメリット
  4. 事業承継や金庫株(自社株買い)を活用する際の相談先
  5. 事業承継における金庫株(自社株買い)まとめ

1. 事業承継と金庫株(自社株買い)を活用する方法

事業承継は会社を永く存続させるために必要不可欠ですが、実施するまでにさまざまな障壁があります。特に株式分散や後継者の税金負担は深刻な問題であり、中小企業の事業承継を滞らせる大きな要因です。

これらの問題の対策として活用できる手法の1つに、金庫株(自社株買い)があります。会社に株式を買い取ってもらうことで、事業承継で起こり得る問題に対応可能です。

金庫株(自社株買い)とは

金庫株とは、自社株式を買うことです。従来は消却・ストックオプションなど特定の目的に限定されていましたが、平成13年の商法改正で制限が取り払われたことにより、金庫株の活用に注目が集まっています。

現在は取得目的・時期・回数に制限なく自由に自社株を取得できます。会社自身が保管しているようなイメージから、「金庫株」という名称が定着したと考えられるでしょう。

金庫株で実際に会社が保有する数量に制限はありません。株主総会や取締役会の決議で承認を得ることで、株式の消却あるいは再度の放出も可能です。

近年の主流としては、金庫株が市場に再放出されるケースはほとんどありません。取得した株式を消却することで、利益指標に反映させようと考える企業が増加しています。このように株価に与える影響も大きいため、公正性確保の観点から金庫株の活用には一日の注文量などに一定のルールが定められています。

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事業承継で金庫株を活用する方法とは

金庫株には、ストックオプション制度・株価下落対策・買収予防策などさまざまな活用方法があります。上場企業でも積極的に使われており、自社の筆頭株主となる企業が増加傾向にあります。

非上場企業では、事業承継で問題になりやすい株式分散と相続税負担の対策として活用されるケースが多いでしょう。金庫株が事業承継対策として機能する理由は、次章で詳しく解説します。

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2. 事業承継で金庫株(自社株買い)を活用するメリット

事業承継で金庫株を活用することで、円滑な引継ぎを実現しやすくなります。特に株式分散や相続税の納税負担などの対策として高い効果を期待できます。

  1. 株式の分散を防ぐ
  2. 相続税の納税負担引き下げ

①株式の分散を防ぐ

事業承継のデメリットの1つに、株式の分散があります。複数の法定相続人がいて株式分散され引き継がれた場合、経営権を集中できなくなる問題が生じます。

後継者に経営権を集中できなくなると、会社の重要な意思決定を独断で行えなくなり、ビジネスチャンスを逃したりトラブル対応が遅れたりするなどの弊害が予測されるでしょう。

事業承継の株式分散を解決する方法として、金庫株を活用できます。後継者以外の相続人から株式を取得し金庫株にしておけば、後継者の株式保有比率を上げて経営権を集中させることが可能です。

株式の分散は、経営者が遺言などを残していない場合に起こります。生前より金庫株の活用に関して話し合いを進めておくと、事業承継の際に円滑に進めやすくなります。

自社株の売渡請求について

生前に金庫株の活用などを決めていない場合、相続人間でトラブルになることがあります。その場合、「相続人に対する株式の売渡請求制度」を活用すると、強制的に会社が自社株を取得可能です。本制度は、特定の相続人に株式を承継させることで、会社に不利益が生じることを防ぐために設けられています。売渡請求の条件は以下のとおりです。

  • 当該株式が譲渡制限株式であること
  • 定款に売渡請求ができる旨の内容を定めていること
  • 会社による自己株式の取得が財源規制に違反しないこと

上記の条件3つを満たす場合、相続人に対して売渡請求を行えます。その後は、株主総会の特別決議・売渡請求の通知・売買価格の決定などの手順を踏んで株式を取得する段取りです。

②相続税の納税負担引き下げ

事業承継のデメリットの2つ目に、相続税の納税負担が挙げられます。非上場企業の事業承継では、会社の業績に応じて株価が上がるのに対して、換金性が悪く納税資金を確保しにくい問題を抱えています。

事業承継の際に納税資金が不足していると、後継者の個人資産の売却・担保などで補うことになりかねません。この場合も、金庫株を活用することで問題を解決できる可能性があります。

金庫株の譲渡代金での納税

1つ目の方法は、金庫株の譲渡代金で納税することです。事業承継で後継者が承継した株式を会社に買い取ってもらい、その譲渡代金で相続税を納税する方法です。

非上場企業の場合、資産の大半が株式価値で占められていることも多いでしょう。後継者が相続する資産は株式が多一方で現金が少ない傾向が強く、さらに非公開株式には流動性が低く売買機会も少ない問題があります。

金庫株であれば、株式の売却先の確保が可能です。事業承継で問題視される株式分散で他の相続人や株主から経営に口出しされることもないため、後継者の一存で会社の重要な意思決定を行えます。

金庫株特例について

金庫株特例とは、相続の場面で適用される税務上の優遇措置のことです。中小企業の相続税負担を軽減するための救済措置として設けられた特例です。

通常、個人が非公開株式を発行会社に売却した場合、みなし配当として扱われます。みなし配当は、総合課税対象で最高税率55%となっており、所得税の負担は非常に大きいでしょう。

事業承継の相続・遺贈などの場面では、後継者にかかる譲渡益は譲渡所得として扱われるため、分離課税対象となり約20%の税率で済みます。ただし、相続開始後3年10カ月以内に金庫株にすることや、相続税法の規定で納付すべき相続税額がある場合に限られるなどの規定が設けられています。

相続税の取得費加算特例について

取得費加算の特例とは、相続財産の売却・譲渡で生じた利益に対して課される所得税を軽減できる措置です。取得費を加算して利益を少なく計上することで、税金負担を軽くできます。取得費加算の特例の要件は、以下のとおりです。

  • 相続・遺贈・死因贈与により財産を取得した個人であること
  • 財産の取得者が相続税を納めていること
  • 財産の相続開始日から3年10カ月以内に譲渡していること

この特例は、事業承継での金庫株にも適用できます。会社に売却した株式に対応する相続税を取得費に加算し、所得税額を大幅に減額することが可能です。

なお、譲渡所得の取得費の計算は非常に複雑です。不動産価格の算出では、市街地価格指数が参照されることも多いですが、東京23区のように地価が上昇している地域では、市街地価格指数は不適切と考えられることもあります。

適正な取得費を算出するには、専門家のサポートが必要です。上記の3つの要件を満たすことで、金庫株の特例と併せて活用できます。

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3. 事業承継で金庫株(自社株買い)を活用するデメリット

金庫株は事業承継の場面でさまざまなメリットを得られますが、少なからずデメリットもあります。特に下記の場面では注意が必要です。

  1. 会社の分配可能額
  2. 金庫株の取得資金
  3. 金庫株の取得情報
  4. 金庫株の取得時期
  5. 金庫株の取得不可
  6. 事業拡大における制限

①会社の分配可能額

金庫株(自社株買い)は、取引上は株式の売買です。しかし、結果的に会社の資金を株主に移転させる行為であるため、株主への配当として扱われます。

株式会社は、会社の利益を株主に分配することを目的に事業を営んでいます。しかし、配当を行いすぎると債権者が資金回収できなくなる事態が起こるでしょう。分配可能額の制限が設けられています。

会社の分配可能額は、会社の利益剰余金から債権者への支払額を差し引いた金額です。金庫株の活用は、債権者への支払いを確保することが大前提です。

事業承継で金庫株を活用する際は、会社の分配可能額を算出したうえで、その範囲内で株式を取得します。

②金庫株の取得資金

事業承継で金庫株を活用するには、会社に金庫株を取得するだけの資金があることが前提です。会社に取得資金がなければ後継者から株式を買い取れず、株式の分散を防いだり、後継者の税金負担を軽減したりすることがかないません。

会社の資金不足が原因で自社株を安く評価しようとするケースも見られますが、税務申告の際に税務署からの指摘で追徴課税を受ける可能性が高いでしょう。事業承継での金庫株の活用を検討の際は、早期から準備を進めて、会社の株式の取得資金を用意しておくことが大切です。

③金庫株の取得情報

会社法により、金庫株を活用する際は、他の株主に対して金庫株の取得情報を通知する義務が課せられています。

これは、株主間で買取価格や買取機会などの面で不公平が生じないようにするためです。金庫株を取得する際は、すべての株主に対して買取価格や買取する事実を通知しなければなりません。

事業承継の際、特定の株主に対して買取価格を変更することを検討している場合は特に注意が必要です。株主が自身よりも高く買取されている株主がいることを知った場合、反感を買うおそれがあります。

④金庫株の取得時期

金庫株の活用には、分配可能額・取得資金などさまざまな問題があります。これらの問題は、必要に迫られてから対応していては間に合わないケースが多いため、早期から事業承継の準備を進めておくことが大切です。

早期から事業承継の計画を立てられる場合、金庫株ではなく生命保険の活用なども検討できます。法人契約の保険であれば、法人が死亡保険金を受け取り、遺族に死亡退職慰労金が支払われる形です。

退職金は、損金計上による利益圧縮と現金支出による純資産額の圧縮の効果が期待できます。自社株の評価引き下げにつながるため、事業承継の税金対策として活用できます。

このように、早い段階から事業承継や金庫株を検討することで、さまざまな可能性を模索できるようになるでしょう。

⑤金庫株の取得不可

金庫株は会社に買取資金があることが前提ですが、それ以外のケースでも実質的に買取が難しくなる場合があります。金庫株の活用が難しい場面は主に以下の4つが挙げられます。

  • 会社の買取資金不足
  • 買取価格次第で会社のキャッシュフローが悪化する恐れがある
  • 買取価格に制限がある
  • 純資産額が300万円以下のときは、金庫株の買取ができない

キャッシュフローとは、会社のお金の流れを意味し、収入額から支出額を差し引いたときに残る資金のことです。

会社視点だと、金庫株の買取は支出のみで、一切の収入がない状態です。買取資金が用意できた場合でも、キャッシュフローが悪化して事業資金が枯渇してしまっては元も子もありません。

金庫株による株式買取は、株主への剰余金の配当として扱われます。会社法第458条の「純資産額が300万円を下回る場合には剰余金の配当は認められない」に該当します。

2006年5月に施行された会社法で、最低資本金制度は廃止されました。しかし、剰余金の配当を行う場合の最低基準として純資産額300万円のラインが残されたと考えられています。

⑥事業拡大における制限

金庫株の活用により手元にキャッシュがない状態に陥ると、新しく事業を拡大したいときに足かせになるおそれがあります。長期的な成長戦略を見据えた場合、必要な資金がなくならないように注意しなければなりません。自社株買いは、事業承継上のメリットだけでなく、長期的視点から戦略的に実施することが大切です。

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4. 事業承継や金庫株(自社株買い)を活用する際の相談先

事業承継や金庫株の活用する際は、計画性が求められます。自社株の適切な株価の算出や法定相続人間の話し合いなど、事業承継には事前に進めておくべきことが非常に多いです。

M&A総合研究所は、M&A・事業承継のサポートを行う専門家です。M&A・事業承継の知識と支援実績豊富アドバイザーが、事業承継の手続きや金庫株の活用をフルサポートします。

金庫株の活用が難しく事業承継の納税資金を確保できない場合は、M&Aの選択肢もあります。その際もM&A経験豊富なアドバイザーが専任サポートします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

事業承継や金庫株の活用に関して無料相談を受け付けていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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5. 事業承継における金庫株(自社株買い)まとめ

金庫株は、制限が取り払われて以降、事業承継対策として活用されるようになっています。金庫株特例をはじめとしたさまざまなメリットは、効果的に活用すれば事業承継を有利に進められる可能性があります。

しかし、金庫株の活用時は押さえておくべき点もあるでしょう。注意点や欠点を踏まえたうえで金庫株の計画的な運用を検討するなら、事業承継の専門家に相談することをおすすめします。

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