2025年07月11日更新
事業承継の件数データまとめ!市場規模は伸びている?
後継者不足の解決策として、M&Aによる事業承継が注目されています。本記事では最新データに基づき、M&A・事業承継の市場規模や件数の推移を解説します。
目次
1. 事業承継の件数・市場規模は伸びている!
経済産業省・中小企業庁が2005(平成17)年に事業承継の協議会を発足して15年以上がたちました。それにあわせて事業承継の手段の1つとして、M&Aが有効であると叫ばれてきました。現在は、事業承継のM&A市場は件数を伸ばしているとされています。
では実際にどのくらいの伸びになっているのか、市場規模を知るうえでも確認が必要です。ここでは事業承継について、データでの統計件数などから把握します。
事業承継とは?
事業承継とは、会社や事業の経営を後継者に継がせることです。従来の日本の中小企業であれば、親族、特に経営者の子どもを後継者として事業承継することが多く見受けられました。
しかし、昨今の日本における少子化は深刻で、さらに価値観の多様化も起こり、後継者不足を招いている状態です。そうした中、会社・事業を継続させるために、M&Aによって事業承継していく方法を国が推進しています。
後継者不足が深刻化?休廃業・解散企業の最新動向
後継者不在のまま、経営者が引退時期を迎えれば会社は廃業せざるを得ません。たとえ会社の業績がよかったとしてもです。そして、廃業になれば従業員は解雇され職を失います。そのような状況を減らすため、M&Aによる事業承継が推奨されています。
ここでは、東京商工リサーチ調査による、近年の日本における休廃業・解散件数の推移を見ましょう。数値には個人事業主も含まれます。
- 2013(平成25)年:34,800件
- 2014(平成26)年:33,475件
- 2015(平成27)年:37,548件
- 2016(平成28)年:41,162件
- 2017(平成29)年:40,909件
- 2018(平成30)年:46,724件
- 2019(令和元)年:43,348件
- 2010(令和2)年:49,698件
- 2021(令和3)年:44,377件
2021年に休廃業・解散した企業のうち、56.5%は黒字であったことがわかっています。多くは後継者不在などが原因との推定です。
2. 事業承継の件数・市場規模をデータで分析!
それでは、M&Aによる事業承継の市場規模や動向を、公的データから見ていきましょう。今回は、中小企業庁が公表している「事業承継・引継ぎ支援センター」の実績などを基に、以下の項目を解説します。これらのデータから、現在の事業承継のリアルな姿を把握できます。
- 事業承継の件数
- 事業承継スキームの内訳
- 業界の内訳
- 事業承継にかかる期間
- 事業承継の準備状況
①事業承継の件数

平成28年4月26日中小企業庁財務課「事業承継に関する現状と課題」
出典:http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei5.pdf
中小企業庁によると、事業承継・引継ぎ支援センターで請け負った事業承継の案件数は、年を追うごとに増加しています。相談件数、M&Aの案件数ともに、1年ごとに倍増で推移している状況です。統計年数が2015年ですから、現在の件数はもっと多いと見込めます。
②事業承継スキームの内訳

平成28年4月26日中小企業庁財務課「事業承継に関する現状と課題」
出典:http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei5.pdf
事業承継には、親族内承継、役員・従業員承継、そしてM&Aによる第三者承継の3つの方法があります。かつては親族内承継が主流でしたが、近年は後継者不足を背景に、第三者承継の割合が増加傾向です。事業承継・引継ぎ支援センターの実績を見ても、成約案件の多くがM&Aによる第三者承継となっており、中小企業にとってM&Aが事業承継の有力な選択肢として定着していることがわかります。
③業界の内訳

平成28年4月26日中小企業庁財務課「事業承継に関する現状と課題」
出典:http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei5.pdf
事業承継・引継ぎ支援センターの成約案件を業種別に見ると、サービス業が最も多く、次いで卸売・小売業、建設業、製造業と続きます。また、譲渡企業の従業員規模では、5人以下の小規模事業者が全体の約半数を占めており、企業の規模に関わらずM&Aによる事業承継が広く活用されていることがわかります。
④事業承継にかかる期間
事業承継をするうえで、後継者の育成期間には5~10年ほどかかっているようです。この期間からわかるように、事業承継における後継者育成期間の短縮は困難だとわかります。そこでM&Aによる事業承継を行うことで、期間などの効率化を図れる可能性があることです。
⑤事業承継の準備状況
事業承継の準備状況や期間は、経営者の考え方によってそれぞれです。しかし、多くの企業が、事業承継に対して準備不足が指摘されています。70代、80代の経営者でも、事業承継の準備が終わっているのは半数以下という状況です。
3. 事業承継の市場規模が伸びている理由
統計のデータや件数から見ても、事業承継の案件数の中でもM&Aは伸びていることがわかりました。しかし、なぜ事業承継の市場規模が件数を伸ばしているのでしょうか。その理由として考えられるのは以下の5つとなります。
- 事業承継5ヶ年計画の策定
- 事業承継税制の拡充
- 事業引継ぎ支援センターの体制強化
- 高齢化に伴う経営者の引退ラッシュ
- 戦略としての認知度アップ
①事業承継5ヶ年計画の策定
国は中小企業の事業承継を喫緊の課題と捉え、様々な支援策を講じています。かつては「事業承継5ヶ年計画」を策定し、集中的な支援を行ってきました。現在はその後継施策として、M&Aにかかる費用の一部を補助する「事業承継・引継ぎ補助金」や、税負担を大幅に軽減できる「事業承継税制」などが整備され、中小企業がM&Aを活用しやすい環境が整えられています。
中小企業庁が定めた事業承継5ヶ年計画における5つの項目の概要は、以下のとおりです。
経営者の「気付き」の提供
事業承継の必要性があるにもかかわらず、日々の業務に追われてしまい、事業承継の重要性や準備期間などの認識不足が生じているのが現状です。こうしたことがないように中小企業庁では、事業承継プラットフォームの立ち上げを行い支援をすることでニーズを掘り起こしています。
後継者が継ぎたくなるような環境を整備
中小企業が事業承継を考えるときに懸念されることが、赤字などの企業経営です。そうした状況に対して中小企業庁は経営改善の取組を支援しています。さらには早期承継におけるインセンティブの強化を図り、後継者や経営者による経営の合理化やビジネスモデルの転換なども支援内容です。
後継者マッチング支援の強化
日本では、M&Aによる事業承継は中小企業にとってはあまり良いイメージではありませんでした。そうした考え方が変わってきた昨今において、M&Aのマッチングは非常に重要です。
マッチングを図るためには数多くのM&Aの案件数を保持している必要性があります。そうした後継者マッチングの強化を図ることも目標です。
事業からの退出や事業統合などをしやすい環境の整備
企業の廃業は、関連する企業や地域社会へ影響を及ぼす場合があります。そうした事態を避けるためには、取引会社との事業統合や地域企業の協力が不可欠です。
計画では、このようなサプライチェーンや地域における事業承継だけではなく、事業の再編や統合を促進することで、中小企業の経営力強化を後押しするとしています。
経営人材の活用
計画では、経営者候補やアドバイザーなどの役割を担ってくれる、高い経営能力を有している外部人材の活用環境を整えるとしています。これにより、事業承継後の事業継続について、安心して経営を行うことが可能です。
②事業承継税制の拡充
事業承継税制が拡充されたことにより、税制優遇を受けられるようになりました。この事業承継税制を活用すると、贈与税や相続税の納税が猶予され、最終的には免除も可能です。ただし、後継者となるものが、贈与や相続を受ける前に都道府県知事から認定を受ける必要があります。
③事業承継・引継ぎ支援センターの体制強化
事業承継5ヶ年計画にもあるマッチング強化の一環として、事業承継・引継ぎ支援センターの体制強化が行われています。具体的には、マッチング件数2,000件や小規模M&Aマーケットの形成などを行い、事業承継のニーズに答えていくものです。
事業から引退しやすい環境整備の構築を図るとしています。
④高齢化に伴う経営者の引退ラッシュ
現在の日本において、企業の経営者で多い年齢層は60歳代後半といわれています。この数字からわかるように、日本では経営者の引退ラッシュが起きました。
事実、休業や廃業に至る企業の割合は倒産の割合の3倍程度あるといわれており、後継者不足や人材不足が深刻化しています。従業員のことや地域社会の貢献などを考えると、M&Aによる事業承継を選択する場合が増えているわけです。
⑤M&Aが経営戦略の選択肢として認知度向上
日本では従来、大企業などの大きな規模以外のM&Aにおける事業承継は、あまり良い印象を持たない傾向がありました。中小企業においては、親族以外の後継者を嫌う傾向もあったようです。
しかし、昨今の少子高齢化による人材不足により、従来型の事業承継が困難となるケースが多くなりました。そうした背景も受けてM&Aによる事業承継が認知されると、その合理性などもあいまって認知度が一気にアップし、市場が伸びたと考えられています。
4. M&Aによる事業承継のメリットと注意点
M&Aによる事業承継は、売り手と買い手の双方にメリットがある一方で、留意すべき点も存在します。ここでは、それぞれの立場から見たメリットと、共通する注意点を解説します。
売り手(譲渡企業)のメリット
後継者不在の問題を解決できる点が最大のメリットです。従業員の雇用を維持し、長年培ってきた技術や取引先との関係も次世代に引き継げます。また、会社の株式を売却することで、創業者利益(キャピタルゲイン)を獲得でき、引退後の生活資金や新たな事業への投資資金に充てることが可能です。
買い手(譲受企業)のメリット
買い手にとっては、事業基盤や人材、ノウハウを短期間で獲得できるため、ゼロから事業を立ち上げるよりも迅速に事業規模を拡大できます。既存事業とのシナジー効果を創出したり、新規事業へ参入したりする足がかりにもなります。地域に根差した企業の事業を引き継ぐことは、地域経済への貢献にも繋がります。
M&Aによる事業承継の注意点
M&Aは多くのメリットがある一方で、希望する条件に合う相手がすぐに見つかるとは限りません。また、M&A成立後には、異なる企業文化を持つ組織同士を融合させるPMI(Post Merger Integration)というプロセスが不可欠であり、これには多大な労力を要します。M&Aの検討段階で情報が漏洩し、従業員の不安や取引先の離反を招くリスクにも注意が必要です。
5. M&Aによる事業承継を成功させる秘訣
M&Aによる事業承継を成功させるには、信頼できるパートナー選びが極めて重要です。自社の状況や希望を深く理解し、最適な相手とのマッチングを実現してくれるM&A仲介会社や専門家を見つけることが成功の鍵となります。M&A仲介会社には、それぞれ得意とする業種や企業規模があるため、自社に合った会社を選ぶことが大切です。
また、M&Aは法務や税務、財務など専門的な知識が不可欠なため、早い段階で専門家に相談し、計画的に準備を進めることをおすすめします。
6. 事業承継の件数データまとめ
事業承継のM&A市場が伸びている理由には、中小企業庁が策定した事業承継5ヶ年計画などの施策が大きく関わっていることがわかりました。事業承継には準備が必要であることも明白です。
今後は経営者のボリュームゾーンの引退により、事業承継がM&Aの市場でより注目されています。情報を精査するだけではなくM&A仲介会社に相談を行い、余裕を持った事業承継を行うことが重要といえるでしょう。
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