2023年08月22日更新
事業承継の専門家とは?重要性、役割、種類・特徴、探し方を一覧で紹介
事業承継では、株式の譲渡・許認可の取得・登記などさまざまな手続きが必要なので、専門家にサポートを依頼するのがおすすめです。
本記事では、事業承継のサポートを行える専門家の解説と、選び方のポイントといったことについて解説します。
1. 事業承継の実施理由
中小企業の経営者はなぜ事業承継を行うべきなのでしょうか?
事業承継は簡単に済ませられるものではありませんが、日本の中小企業において事業承継問題は重要な課題として位置づけられています。
この章では、事業承継を実施すべき理由を説明します。
顧客・取引先との関係を維持するため
事業承継を行うべき理由の1つに、顧客・取引先との関係を維持すべき点があげられます。
企業経営では、顧客・取引先との関係性はすぐに形成できません。時間をかけて醸成されるものです。
したがって、一度会社を解散してしまえば、その顧客・取引先もすべて失われてしまいます。だからこそ、中小企業の経営者は、顧客・取引先との関係を維持するために事業承継を行うべきです。
従業員の雇用を守るため
事業承継を行えない場合、会社を存続できなければ従業員の雇用を守れません。従業員の雇用を守るためにも、経営者は事業承継を行わなければなりません。
自社のノウハウや知的財産を存続させるため
どのような会社にも無形資産が存在しています。その会社にしかないノウハウ・知的財産などです。形のない資産であるため、それを保有する会社がなくなってしまえば失われてしまいます。
会社の無形資産を活用するためには、事業を承継して会社を存続させる必要があります。
2. 事業承継の専門家とは
事業承継問題は、経営者一人で解決しなければならない問題ではありません。
事業承継の手続きにはさまざまな法律が関係するため、弁護士のような法律の専門家だけでなく、会計・税務などの専門家に頼らなければならない場合もあります。
ここでは、事業承継の専門家の概要を説明します。
事業承継の専門家が持つ重要性
事業承継手続きには、さまざまな専門知識が必要となります。
求められる専門知識が高度なので、経営者だけでは対応できません。事業承継手続きの専門家に頼ることが効果的です。
事業承継の課題を解決する存在
事業承継を実行する場合、そのプロセスでさまざまな課題に直面する可能性があります。
事業承継の課題を経営者一人あるいは社内のリソースのみで解決するのは難しいです。多くの経営者や従業員は、事業承継の専門家ではないうえに、経験を全く持たないケースがほとんどです。
そのようなときに頼りになる存在が、事業承継の専門家です。事業承継の課題について適切なアドバイスをしてくれます。
さまざまな専門知識を備える存在
事業承継では、さまざまな専門知識が必要になります。
多くの経営者は、はじめて事業承継を経験するため、事業承継の際に必要な専門知識を持っていないケースがほとんどです。
そのようなときに頼りになるのが、それぞれの専門知識を備えた事業承継の専門家です。法律の専門家であれば弁護士、会計の専門家であれば公認会計士、税務の専門家であれば税理士というように、それぞれの専門家に頼りながら事業承継の手続きを済ませます。
事業承継の専門家が担う役割
事業承継の専門家はどのような役割を担うのでしょうか。ここでは、事業承継の専門家が担う役割を説明します。
事業承継に関する専門知識の提供
事業承継には、法律や税金など、さまざまな専門知識が必要です。
事業承継の際に弁護士や税理士に相談すれば、適切なアドバイスを得られます。各分野において、彼らは高度な専門知識を有しており、適切な手続きでスムーズな承継を可能としてくれます。
事業承継に関する書面には専門用語が多く、添付の書類などの準備も必要です。司法書士や行政書士など書類作成の専門家にサポートしてもらえば、自分で書類を作成するよりも手間を省けます。
なお、M&Aで事業承継を行うには、承継先を探すネットワークが必要不可欠です。第三者に事業承継を行う場合、その後継者候補を経営者自身あるいは会社で見つけるのは非常に困難です。
M&A仲介会社や事業承継・引継ぎ支援センターといったM&Aの専門家を活用すれば、幅広いネットワークから最適な承継先を探せます。
専門知識を活用した事業承継サポート業務の遂行
事業承継における専門家の役割は、事業承継の知識や経験を提供して事業承継を円滑に行えるよう経営者をサポートすることです。
例えば、書類作成や登記などの手続きをサポートする存在として、司法書士や行政書士など各分野の専門家がいます。彼らは手続きのエキスパートです。
もともと事業承継は本業と並行して行わなければならないため、経営者は時間的・精神的コストを最小にする必要があります。事業承継にあたってはスピードも重要です。手続きがスムーズに進まないようでは、いつまでも事業承継が進みません。経営者のみで悩むのではなく、専門家によるさまざまなサポートを活用すべきです。事業承継を行う経営者の負担をできるだけ軽くするのも、専門家の重要な役割といえます。
3. 事業承継の専門家一覧と特徴
この章では、事業承継の専門家について解説します。
法律の専門家である弁護士、税金の専門家である税理士などとは違い、事業承継の専門家として何らかの士業が存在しているわけではありません。
そのため、事業承継の専門家を探す際は、事業承継に関係する法律・税務・M&Aなど、各分野の専門家を頼らなければなりません。
- M&A仲介会社・アドバイザリー
- 公的機関
- 弁護士
- 公認会計士
- 税理士
- 司法書士
- 行政書士
- 金融機関
- ファンド
- 中小企業診断士
- 認定事業再生士
- 事業承継士
- 事業承継アドバイザー
- 事業承継プランナー
①M&A仲介会社・アドバイザリー
M&A仲介会社とは、M&Aを行いたい買い手と売り手をマッチングし、条件を交渉して成約させる会社です。
買い手・売り手の一方が有利になるように交渉を進めるのではなく、あくまで中間的な立場から双方が納得できる成約を目指すのが仕事です。
最近は、M&Aによる事業承継が増えているので、M&A仲介会社も事業承継を取り扱うケースが増えています。
ファイナンシャルアドバイザー(FA、別名「アドバイザリー」)も、M&A仲介会社と似たようなサービスを提供しますが、M&A仲介会社が買い手・売り手の間に立つのに対して、FAは買い手か売り手いずれかの立場に立つ点に違いがあります。
一般に、M&A仲介会社は中堅から中小企業、FAは大企業のM&A・事業承継で使われる傾向があります。
②公的機関
団塊世代の中小企業経営者が引退していく中で、事業承継によって会社を引き継ぐのは日本経済にとって重要な課題です。
事業承継を行わず中小企業が廃業してしまうと、多くの雇用とGDPが失われるため、中小企業庁は事業承継を積極的に支援し、公的機関の設置や税制優遇措置などを行っています。
中小企業庁による事業承継の公的機関として、「事業承継・引継ぎ支援センター」があり、M&A仲介会社と同様に、M&Aによる事業承継を支援しています。
事業承継・引継ぎ支援センターはM&A仲介会社に比べると知名度が低いものの、中小企業の事業承継の相談先として利用しやすい専門家です。
③弁護士
弁護士は事業承継の専門家ではありませんが、事業承継では法律に基づいた各種手続きが必要とされるため、弁護士に事業承継の相談をするのも選択肢です。
顧問弁護士がいる会社であれば、事業承継の相談を気軽に行えるのもメリットです。ただし、弁護士は仲介業務を行えないため、M&Aによる事業承継の相談先としては不向きな面があります。
弁護士によっては、M&A仲介会社を紹介してくれるケースもあるため、どの程度のサポートが可能かは確認が必要です。
④公認会計士
公認会計士は会計の専門家であり、財務諸表が適切かどうか判断する会計監査などを主な業務としています。公認会計士の多くは税理士も兼ねているため、税務・コンサルティングの専門家であるケースも多くなっています。
公認会計士は事業承継の専門家ではありませんが、M&Aや事業承継に関するサポートも行っている機関もあり、M&A仲介会社に公認会計士が在籍しているケースも多いです。
会社経営者であれば、普段から付き合いのある公認会計士がいるケースも多いため、事業承継の相談を行いやすいです。しかし、公認会計士が事業承継の手続きを全てサポートするのは難しい場合、M&A仲介会社などの専門家に別途相談が求められるケースもあります。
⑤税理士
税理士とは、確定申告書などの税務書類の作成を行ったり、税金に関する相談を受けたりする士業です。
税理士は事業承継の専門家ではありません。しかし、事業承継の手続きでは相続税や贈与税といった税金の内容が関わります。税理士に事業承継の相談を行うのもよい選択肢です。
会社の経営者や個人事業主であれば、税理士に確定申告書などを作成してもらっているケースが多いです。なじみの税理士なら相談しやすく、会社の内情もある程度知っているため、的確なアドバイスを期待できます。
ただし、税理士は基本的にM&A仲介業務は行いません。M&Aによる事業承継の場合は、別途M&A仲介会社などの専門家に相談しましょう。
⑥司法書士
司法書士とは、不動産の登記をはじめ法律にもとづいた書類の作成や手続きを行う士業です。
司法書士は事業承継の専門家ではありませんが、事業承継の手続きには登記など司法書士の力を借りる場面もあるため、相談先として適しています。司法書士ごとに異なる強みを持っているため、事業承継に強い司法書士を探すのも重要です。
Webサイトで事業承継に関して詳しく記載している司法書士事務所であれば、経験豊かな司法書士が在籍している可能性が高いです。無料相談を実施している事務所なら、実際に会って話を聞いてみるのも選択肢です。
司法書士も、税理士や公認会計士などと同様にM&Aの仲介業務は行いません。M&Aで事業承継する場合、別途M&A仲介会社などの専門家からサポートを得ましょう。
⑦行政書士
行政書士とは、会社設立や営業許可などの各種書類を作成したり、許認可申請の代行・相続の相談などに対応したりする士業です。
行政書士は事業承継の専門家とは限りません。しかし、親族内事業承継であれば相続・贈与・許認可の申請などを行う場合もあります。このような業務に長けている行政書士に、事業承継の相談をするのも選択肢です。
⑧金融機関
銀行や信用金庫などの金融機関で、事業承継の相談を行うことも可能です。会社経営者や個人事業主では、融資を受けている銀行がある場合も多いため、普段から付き合いのあるメインバンクに事業承継の相談をするのもおすすめです。
金融機関には事業承継やM&Aの窓口を設けている機関も多く、経験豊富な専門家のサポートを受けられます。
しかし、金融機関はM&A仲介会社と比べて大企業の案件を取り扱う傾向があるため、中小企業のM&Aによる事業承継は受け付けてもらえない可能性があります。金融機関ではあくまでも融資を業務としているため、事業承継の相談者と利益相反になるおそれがある点も注意しましょう。
⑨ファンド
経営者は親族内承継・会社内承継・M&Aによる承継などさまざまな手法を用いて事業を承継できますが、その中の手段としてファンドに自社株を譲る方法もあります。
ファンドでは、多くの投資家から資金を集めて、その資金を使って株式を購入します。ファンドは、株式を買収して企業を成長させ、株式を売却・公開して利益をあげ、投資家に分配する存在です。
事業承継でネックになりやすい資金面のサポートをしてくれます。
⑩中小企業診断士
中小企業経営者が抱えるさまざまな悩みを解決してくれるのが、中小企業診断士です。中小企業診断士といえども、得意分野はそれぞれ異なっており、事業承継を専門としている中小企業診断士も少なからず存在します。
公認会計士や弁護士のような分野で高度な専門知識を持っていることは少ないものの、会社の事業承継に関して適切なアドバイスをしてくれる存在です。
⑪認定事業再生士
認定事業再生士とは、一般社団法人日本ターンアラウンド・マネジメント協会による民間資格です。
認定事業再生士は税理士や司法書士のような士業ではありません。しかし、事業再生に関連する経営・会計・法律の講習を受けて試験に合格した専門家です。
もしも身近に資格を持った専門家がいる場合は、事業承継の相談をしてみるのもおすすめです。
⑫事業承継士
事業承継士は、一般社団法人事業承継協会による民間資格です。事業承継に関する問題を総合的に解決できる専門家を認定する資格です。
事業承継の分野には、税理士や弁護士のような特定の専門家の制度がないため、事業承継士のような民間資格を持つ人に相談するのもよい選択肢だといえます。
⑬事業承継アドバイザー
事業承継アドバイザーは、事業承継の専門家として経営者にアドバイスを行う存在です。事業承継にはさまざまな専門家が関わりますが、事業承継アドバイザーはその中でも最も経営者に身近な存在です。
事業承継に関する幅広い知識を有しており、経営者に事業承継成功に向けたアドバイスをします。ただし、広範な知識を有しているものの、高度な専門知識を有しているわけではありません。
各種専門知識が必要な手続きは、前述したM&A仲介会社や弁護士などの専門家を頼るとよいでしょう。
⑭事業承継プランナー
事業承継プランナーとは、民間企業である事業承継センターが認定している民間資格を有している専門家です。
事業承継センターが実施する講座を受講して認定資格に合格しない限り、この資格を得られません。つまり、認定試験に合格して初めて、事業承継協会に入会でき、事業承継プランナーとして事業承継を支援できます。
経営者の身近な相談役として気軽に相談できる存在が、事業承継プランナーです。気軽に話を聞いてほしいような場合に、心強い存在となってくれるでしょう。
4. 事業承継の専門家を選ぶ際に抑えるポイント
上記が事業承継に携わる専門家の一覧となります。民間の会社から公的な機関、さらには個人事務所まで非常に幅広く存在します。
それぞれに得意分野がありますので、自社に最適なところを選ぶことが大切です。
簡単に大きく分けて2点、専門家選びの際に抑えておきたいポイントをまとめていきます。
専門家のスキルが自社の目的に合っているか
上記の専門家でも、事業承継を一手に引き受けているというところばかりではなく、得意分野がそれぞれで異なるため、お任せしようとすると逆に煩雑化してしまう可能性があります。
事業承継は他社への売却するM&Aという選択肢以外にも、自身の子や孫、従業員へ承継するという方法もあり、誰に承継するかによって必要な手続きが大きく変わります。
経理や事務に関することだからと、日頃からお世話になっている顧問税理士さんなどに相談しても、力になってくれないということもありますので、必ず事業承継のスキルに特化した方を選ぶことと、自社の目的に沿った専門家を選ぶことが大切になってきます。
費用感・コストパフォーマンスは適切か
事業承継は、専門家への依頼によって行われ、複雑な事務手続きや交渉といった事柄を代行してもらうという形になります。
企業の規模や業種などによって、費用も大きく変わってくるため、可能であればいくつかの専門家に相談をして、相見積もりをとって相場を見て決めていくのがベストです。
事業承継の相場を見比べると言っても、なかなか難しいものがありますので、一度国が設置している中小機構の支援を利用するのも一つの手です。
5. 中小機構が行う事業承継に関するサポート
国の中小企業政策の中核的な実施機関として、中小企業にさまざまなサービスを提供している機関が中小機構です。ここでは、中小機構の事業承継サービスを紹介します。中小機構を利用すれば、スムーズに事業承継を行えます。
事業承継・引継ぎ支援センターのサポート
政府は事業承継・引継ぎ支援センターを全国47都道府県に展開していますが、中小企業の身近な相談役として頼れる存在が中小機構です。特に、第三者承継に向けた取り組みのサポートが充実しています。
事業承継セミナーの開催
中小機構では、事業承継セミナーを開催しています。経営者や支援機関向けのセミナーに加えて、後継者育成のための長期研修も実施しているのです。中小企業が自身で行うのが難しい後継者育成教育も、中小機構に任せれば安心できます。
事業承継に関する専門家の紹介・派遣
中小機構には、さまざまな分野での資格や経験を持つ外部専門家が登録しています。事業承継に関する専門家も紹介・派遣しているため、必要に応じて活用できます。
6. 事業承継の専門家を探す方法
事業承継の専門家を探す場合、税理士や司法書士などの職種から見つけたり、業務・サポート内容から見つけたり、所在地・対応エリアなどから見つけたりする方法が挙げられます。これらから、自社にふさわしい方法を選び、採用するとよいでしょう。
事業承継の専門家として信頼できる相談先
事業承継を行う際は、専門家に相談しながら進めていくのが成功のカギといえます。特にM&Aによる事業承継では、親族や社員でない第三者を後継者にするため、より慎重に手続きを進めなければなりません。
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7. 事業承継の専門家まとめ
事業承継を行うには、法律や税務などの専門知識を持った専門家にサポートを依頼するのがおすすめです。
M&Aで事業承継を行う場合はM&A仲介会社、税金のサポートを得たいのであれば税理士というように、必要に応じて適切な専門家を選ぶのが大切です。
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